社会課題の解決や空の産業革命の期待を担うドローン、エアモビリティなどの活躍が展望される2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は、ドローンや空飛ぶクルマにどんな舞台となり、どんな刺激をもたらすのか。DroneTribuneは若宮健嗣万博相(国際博覧会担当大臣)にインタビューした。若宮万博相は「未来社会の実験場にしたい」と語った。その背景には、1970年の大阪万博で積み残した課題に対する思いがあった。
――第二次岸田政権で万博相をつとめています
「大阪・関西万博」は2025年4月13日から2025年10月13日までの間、大阪の夢洲地区をメイン会場にして開催されます。海外からも多くの国に参加頂き日本の底力を世界に発信して成長を加速させる機会にできればと思っております。そのためには大阪だけでなく周辺の関西地域や全国の積極的な参加も必要です。私は万博大臣、正式には国際博覧会担当大臣ですが、そのほかに共生社会担当大臣、デジタル田園都市国家構想担当大臣、クールジャパンや知財戦略を担当する内閣府特命担当大臣でもあります。融合させるべきところは融合させ、取り組みを進めております。
――大阪・関西万博はドローンや空飛ぶクルマにとってどのようなステージになりますか
ドローンにも空飛ぶクルマにも大きな意味を持つ機会になると確信しています。具体的なことはこれから知恵を絞り創意工夫を重ねて参りますが、日本の持つ技術や創造力をお示しし、来場されるみなさま、海外からお越しのみなさまに驚いて頂き、再び日本に注目して頂ける機会にしたい。ドローンや空飛ぶクルマ、空飛ぶバイクは、周辺技術も含め、世界各国、各地域で開発が進んでいます。その中で日本は何を提案するのか、万博で何を発信するのか、ここは大きな注目点になると思っています。私としましては、こうした機体が飛ぶことで、生活がどう豊かになるのか、人々がどう幸せになるのか、といったものを示していければよいのではと思っております。
――大きな意味を持つ機会としての万博ですね
はい。「飛ぶ」を超えた価値を示したいと考えています。日本は、前回の大阪万博で世界を驚かせた実績を持っています。私自身は、小学校3年生の時に、前回の大阪万博に出かけました。そこでは特に4つ、強く印象に残ったものがあります。携帯電話、リニアモーターカー、電気自動車、ロボットです。1970年当時には、どれも身の回りにはありませんでした。私自身も初めて見るものばかりでとても驚きました。海外から来られた方もみなさん驚かれたと思います。その驚かせた4つがいまや現実になってきています。ロボットは二足歩行でないにしろ産業や介護などさまざまな現場で役立っています。携帯電話はすでに普及し、電気自動車も広がりつつあります。リニアモーターカーも計画が進んでいます。
――その時の驚きを再現したい?
それを超えたい、というのが本音です。たとえば携帯電話。1970年の万博で日本が世界に先駆けて発信して世界を驚かせましたが、現在、どこの国のメーカーが世界のマーケットでシェアを押さえているかというと、アメリカであり、韓国であり、スウェーデンであり、といった状況です。日本製は、素晴らしいのに、世界のマーケットをとっているかといえば、そうはなっていません。そこにやや“残念感”があるのです。その状況を次の万博で打ち破りたいのです。ドローンもそれになれると考えています。ドローンの開発はしばしば海外が先行している、と言われます。そのドローンで、日本のすごさを示したい。飛ばすために必要な環境や条件ですとか、ビジネスでうまくいくためのモデルであるとか、利用した企業や人々や社会が歓迎するためのスタンダードであるとか、そういったものが示せないか、と思うわけです。アフリカのルワンダで血液製剤などをドローンで運んでいるアメリカのジップライン(Zipline)という会社がありますよね。道路網の整備状況などから考えると、あの取り組みは「飛ぶ」を超えた価値があると思うのですが、そんな価値あるビジネスデルを、日本なら構築して提案できると思うのです。
――示したいのは、飛ぶことのその先、ということですか
はい。飛行そのものの質も当然ながら大事ですし、日本の強みになると思いますが、その先のことを示したいのです。ドローンや空飛ぶクルマによる生活スタイルや、ビジネススタイルの変革です。安全性と利便性のバランスをとりながら、ドローンでどのような価値を生み、どのように次の新しい生活スタイルになじませるのか。前回の大阪万博で日本が発信した技術は、マーケットを海外に占められました。しかし今の日本は当時と違います。もはや固定観念にとらわれる日本ではありません。振り返りますと、当時の日本には三公社五現業がありました。電話の事業も国の経営体制の中で運営されていました。その枠の中でもあれだけのことを発信しました。残念ながら普及に至らず、固定観念のない海外勢が普及させたわけですが、今の日本には当時の枠はありません。固定観念にとらわれない新しい発想も出てきています。ドローンが飛んで当たり前の社会を、グローバルスタンダードとして提示していければ、と思います。
――ドローンが当たり前の社会を実装するステップに?
はい。どれだけ示せるかはこれからですが。その前に、もしかしたらドローンを軍事用と感じておられる方がいらっしゃるかもしれませんので、生活の利便性を高めるものと認識して頂けるようにしたいです。良い面、悪い面がそれぞれあると思いますので、そのいい面を育てる。悪い面を減らす。AIを組み合わせることでそれができるかもしれません。普及のためには製品やサービスが普及しやすい価格になることも大事だと思います。万博会場やその周辺エリアでのサービスの中に取り込むことも考えられます。オリンピック・パラリンピックで、日本のおもてなしの心を示すことに取り組みましたが、万博でも日本の思いやりを届けられれば。行き届いていないところに手を差し伸べるようなことができれば。
――地方活性化であるデジタル田園都市国家構想にもつながりそうです
はい。デジタル田園都市国家構想は、地方も含めて全国で光ファイバーをめぐらせ、Wi-Fiが使えるように整備して利便性を高める政策です。地方の生活の中で、行き届いていない部分を満たしていく対策です。現状の生活で買い物が不便なのであれば、ドローンで宅配してもらえれば早くて便利かもしれません。その通信インフラを整えることが必要となりますので、デジタル田園都市国家とドローンは非常に相性が高いと私は思っています。私はよく街頭演説で「不便」や「不満」など「不の要素」を取り除く取り組みに価値があるのではないか、とお話します。日常生活もそうです。産業もそうです。不便なところがあればそれを取り除く。農業ではたとえば農業従事者の負担となる散布や生育状況の監視、養殖ではいけすの監視に使うことで、負担を取り除く。それを可能にすることに取り組むつもりです。
――それがグローバルスタンダードになればよいと
はい。「不の要素」を減らせば、そこで生まれたゆとりで新しい価値を生み出せます。ドローンも大きく寄与します。人々の時間の使い方や働き方も変わってくるでしょう。万博で新たな生活スタイルとかモデルを見せることで、デジタル田園都市国家構想の実現につながってくると思います。ノウハウを凝縮したものが国際ルールになれば知的財産になりますし、各国を魅了するモデルにできればクールジャパンになります。私は万博、デジタル田園都市国家とともに、クールジャパン、知的財産を担う特命大臣でもあります。それぞれがすべてつながるのです。万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」(Designing Future Society for Our Lives)をテーマに掲げております。それをふまえて、私は万博を未来社会の実験場にしたいと思っています。
――「大阪・関西万博」の「関西」への広がりをどうお考えですか
大事なことです。大阪の盛り上がりを関西全域に広げたい。ちょうど関西広域連合の8府県が大阪を囲むようにあり、それぞれ個性豊かな風土と文化を持っています。ドローンという切り口に限りませんが、関西広域連合やそこに参加する府、県、市の持つ役割にも照らして、より盛り上げられる施策につなげられればよいと考えております。万博には約2,800万人の来場を見込んでおります。特に海外からご来場の方には会場を囲む関西エリアに足を運んで頂き、たとえば京都や奈良などの古都の風情や個性や魅力を味わって頂きたいです。大阪で議論が盛り上がっておりますが、これからそれ以外の地域での議論も活発化していくと期待しています。
――経済効果も見込まれますね
インバウンドの効果も高いと思います。海外からお見えの方は年々増えておりまして、新型コロナウイルスの影響を受ける前の2018年、2019年は年間で3000万人を超えました。約5兆4000億円の経済効果がありました。これは消費税の税収の2%にあたります。しかも海外の型がご自身の国にお帰りになったあとにもお買い上げいただいたり、PRして頂いたりと波及効果もあります。関西に限らず全国で、万博を地域の魅力をアピールする場にして頂いてはいかがかなと思っております。とくに関西エリアでの盛り上がりと積極的な参加を期待しています。
――デジタル田園都市国家構想に沿ったインフラ整備が進むと地域の利便性はますます高まりそうです
そうです。日本の「田舎」と呼ばれる地方都市の温泉や風景や土地の言葉や食べ物に触れて頂くことがより便利になると思います。日本にお越しのみなさまにはぜひ「田舎」にも赴いて頂き、楽しんで頂き、それを発信して頂ければと思います。発信するために必要なインフラは整えて参ります。北海道のニセコのように、海外で先に人気に火が付く、ということが各地で起こる可能性があります。地方でこそ作れるビジネスモデルに期待しているのはそこのところです。一極集中の打開につながる期待もあります。
――デジタル田園都市国家が進んで地域の利便性が高まった場合、その利便性を生かす人材の育成は
大変、重要です。地方には、自分の生活スタイルを変えたくない、住んでいる場所も変えたくない、友達が少なく交流も限定的ながらそのままでいい、買い物もここ、と決まった生活スタイルで過ごしておられて、別に新しいことを必要としていない、とおっしゃる方、刺激的なことなどいらない、とおっしゃる方がいらっしゃると思います。そこで私が思っていますことが、それぞれの自治体や地区に、よりどころになる寄り合いの進化版のようなものを作ることです。昔からあったところなら、それを少しおしゃれにして、必要で欲しい情報がそこに行き届くようにして、その土地を訪れた方も気兼ねなくは入れて交流ができるようにして。海外の方も入れるようにして。そこでは地域同士の交流の場でもあり、別の地域の人からの交流も気兼ねなくできる。訪れると地元の人から地域の名産の農作物の話や見どころの話が聞ける。豚汁をふるまってもらうこともあるかもしれません。そこが楽しいと、それまで新しい刺激はいらない、と思っていた人の中にも、楽しんでくださる方が出てくるのではないかと思うのです。そこで重要になるのが、そういうことを仕掛けるコーディネートする方です。それまで東京に造っていたアンテナショップを地元につくることで地元に訪れる方を増やしたり、定住者を増やすための医療、教育、仕事の確保をしたり。それができる機能的な設備もあればよいと思います。そうなると、買い物サービスや肉体労働の手段としてドローンは不可欠になりそうです。
――ところで若宮大臣は未来のドローンとか空飛ぶクルマといったら、どんなものを想像しますか?
『007/私を愛したスパイ』という映画で水中にもぐるクルマを思い出します。普段は道路を走り、必要なときに海や川を潜る潜水艦仕様になって、いざとなれば空も飛ぶ、みたいなものにあこがれますね。あれば映画の中ですが、普段の生活にも使えて、災害のときには別の姿で活躍できる機体があればいいなと思いますね。
――ありがとうございました。
■わかみや・けんじ
国際博覧会担当大臣、共生社会担当大臣、デジタル田園都市国家構想担当大臣、内閣府特命担当大臣。
1961年9月2日、東京都千代田区生まれ。永田町小学校(現麹町小学校)、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学商学部卒業。大学卒業後セゾングループに入社。グループ代表の堤清二氏の秘書等を務めたのち、2005年9月の衆院選に自由民主党公認で出馬し初当選。これまでに外務副大臣、防衛副大臣兼内閣府副大臣、防衛大臣政務官、衆議院外務委員長、衆議院安全保障委員長などを歴任。60歳。
万博相就任時以来、消費者を取り巻く環境の変化に対応できる制度の構築、食品安全の確保、日本の産業競争力の強化や新型コロナにより打撃を受けたクールジャパン関連産業の存続と発展に努めること、万博相として日本の魅力を世界に発信し、日本の子供に夢、希望、驚きを与える取り組みを掲げている。担務が多いが「所管する担務が多岐に及んでおりますが、すべての課題にスピード感を持って対応してまいります」と話す。
安全保障政策に強く、「日本の、経済だけ仲良くしてほしい、というスタイルは、安全保障の連携の面では限界があった」と断言する。関係各国との多面的な信頼関係の構築が、新型コロナウイルス感染症対策ワクチン確保にもつながった。
政策では、「安心した暮らし、安全な生活を守る」「次世代教育と豊かな働き方による、経済発展」「現場を重視した効率的な予算を」「自然災害への備えと環境保全」「自由で開かれたインド太平洋地域の安定と発展へ」などを掲げる。
海で溺れるなど水難事故が起きたときに海岸から空を飛んで現場に急行する海難レスキュードローンの実証実験が2月13日、鎌倉市(神奈川県〕の材木座海岸で行われた。実験ではライフセイバーが溺れた遭難者役として海岸から離れた水面に漂い、ドローンが急行して救命浮環や、海水を着色できるシーマーカーなどの封入したカプセルを投下した。カプセルにはGPSが搭載されていて、陸上で現場の場所を特定できるため、海岸からボートなどでかけつけるさいに役立つことが確認できた。実験を主催した神奈川県産業振興課の高橋敦課長は「ドローンが新しい救助の道具として活用できることで海の安全安心につながることを期待しています」と話した。
レスキュードローンは田村市(福島県)に本社を構える株式会社manisonias(マニソニアス)が、「Quick」(クイック)ブランドで国内のドローン開発を数多く手掛ける五百部商事有限会社(鹿沼市<栃木県>)の機体をベースに、レスキュー機「SAKURA」にカスタマイズした。サイズは1.18m×1.18m×0.60mで機体重量は20㎏。最大離陸重量は24kg。機体からカプセルを投下するための筒を4つ搭載していて、膨張型救命浮環を複数備えて飛べることが大きな特徴だ。水難者が複数人いた場合に、一度の飛行で救命浮環をそれぞれに届けられる可能性が高まる。
この日の実験では離岸流により沖合に流された人を救助するため空からドローンがかけつけるケースを想定した。実験は2度行われ、はじめに1人のライフセイバーが溺れ役として海上に待機し、レスキュードローン「SAKURA」が海岸から急行。現地の上空20メートルあたりからシーマーカーを投下した。パラシュートがついたシーマーカーの入ったカプセルが風に流されながらも現地に近い海面に着水する様子が確認できた。二度目は溺れ役が二人になり、ドローンはそれぞれぞれの上空から、今度は膨張型救命浮環を投下させた。飛行と投下はひとつのコントローラーで操作可能だ。
なおレスキュードローン「SAKURA」はスピーカーが備えてあることも特徴だ。ライフセイバーによると、水難者への救助には声掛けが重要な要素になるという。たとえば救命浮環へのつかまり方を水難者に伝えることができる。また「SAKURA」の着陸用の脚にはフロートがついている。救命浮環を投下しきっても、まだ水難者がいる場合などに、機体そのものを着水させると、水難者がつかまって救命浮環がわりになる。ただし水につかったあとの機体が再浮上できる期待は薄く、「人命を第一として万が一の場合の活用法として準備した」(manisoniasの開発責任者、下田亮さん)という。
実験を主催した神奈川県は2024年度に新規事業としてドローンの開発支援に乗り出しており、今回の実験はその一環だ。実用化、実装のために有望なプロジェクトを県内事業者に限らず広く募集し、33件の中から開発2件、実験2件を採択していた。manisoniasは開発として採択されていた。田村市の事業者だが、鎌倉市、藤沢市など湘南海岸の沿岸パトロールなどで6年間の実績がある。今回の神奈川県の採択を受けて、「既存機体でできなかった複数救命浮環搭載などの要素をつめこんだ」という。
海で溺れる水難事故が発生した場合、海岸からライフセイバーがかけつけるが、現場にかけつけるまでに一定の時間がかかる。ドローンが急行し救命浮環を投下することができれば、ライフセイバーがかけつけるまでの救命につながる。このためライフセイバーにもドローンに期待する声は多い。
今回の実験では、電波の干渉を受けるケースがあることも分かり、manisoniasは「今後の改善すべき点を発見することができた」と今後の開発につなげる考えだ。
福島県の県道で雪崩が道路を寸断し孤立状況が起きている問題で、福島県は12日、県が保有するドローンで現地の調査に踏み切った。運航も県職員が自主運用したため迅速な対応が可能だったとみられる。確認した映像などから現地の危険性などを見極め、除雪作業の可否などを判断する方針だ。
雪崩が起きたのは福島市土湯温泉町で、10日午前4時に雪崩で県道本宮土湯温泉線がふさがれた。除雪作業により一時、通行止めが解除されたものの、同日正午前に再度雪崩が起き、再び道路が寸断された。12日現在、野地温泉、鷲倉温泉が孤立状態になっている。
温泉の宿泊客、従業員らをヘリコプターなどで救助する方針であるほか、除雪作業の可否などについて、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研、つくば市<茨城県>)や国立研究開発法人土木研究所雪崩・地すべり研究センター(妙高市<新潟県>)の研究者らが検討する。
福島県は孤立状態解消のため除雪作業の可否を検討しており、検討にあたり現地の様子をドローンで確認した。県が保有する機体を県職員が飛行させた。撮影した映像などから雪崩の規模や雪が積もっている状況などから、除雪作業にともなう危険性の有無などを見極め、除雪作業にふみきるかどうかなどを判断する。
埼玉県八潮市の道路陥没で、対応にあたっていたドローン運航業務のチームが2月5日、下水管内でドローンを飛行させた。このうち株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)が開発した超狭小空間点検ドローンIBIS2(アイビスツー)が「キャビンらしきもの」を発見した。埼玉県が発見した事実を公表した。埼玉県によるとこの飛行で、下水管内には事前に推測されていた堆積物があり、管内をふさいでいることも分かったという。現場では一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が統括し、屋内空間の点検に使われるドローンが運用された。IBIS2のほかブルーイノベーション株式会社(東京)が運用するスイス、Fliabirity社の屋内点検用球体ドローンELIOS3も運用されている。埼玉県は2月6日以降も、ドローンで状況の確認を進める。
埼玉県によると、IBIS2が埼玉・八潮の陥没対策として飛んだのは2月5日午前10時25分から45分の20分間。陥没現場より下流方向に600mほどのところにあるマンホールから機体を投入した。もともとは、下水管の流れをせき止めているものがあると推測されていたため、この下水管内の捜索を邪魔している堆積物の有無や状況を確認するための飛行だった。IBIS2はマンホールから陥没現場方向に400~500mのところに、金属製の白っぽい構造物が、下水管の水につかり一部が水面に出ているのを見つけた。
埼玉県はIBIS2が飛行後に撮影した映像を確認し、同日午前11時34分に「キャビンらしきもの」と判断した。「らしきもの」と含みを残しているのは、「原型をとどめておらず正確な判断ができないこと、該当するクルマであると断定できないこと」によるという。
またIBIS2はこの「キャビンらしきもの」からさらに陥没地点近くまで進んだ場所で、下水管をふさぐ堆積物も確認した。ただし堆積物そのもがなにかはわかっていない。また人の姿もこの時点では確認できていない。
埼玉県の大野元裕知事は2月5日夕方の会議や記者会見で「これまでも何度かドローンを挑戦してうまくいかなかった。今回、下水管の水位が下がり下流側から飛行ドローンを投入することができた。これは支障となっているものを確認するためだった」「われわれとして力を尽くし、また多くのみなさまの協力を頂きながら、これまでの事故から一週間で手がかりがほぼなかった。今回ようやくの一歩前進。奇跡を信じる」「今回超狭小空間点検ドローンによる管渠(かんきょ)内の確認ができ、キャビンらしきものを発見した。引き続きドローンを使用してまきこまれた方の消息などの確認をお願いしたい」などと述べた。
複数の情報を総合すると、現地には能登半島地震の被災現場でも状況確認、物資搬送などで活躍したJUIDAのドローンチームが八潮の現場にかけつけている。JUIDAの統括のもと、IBIS2のLiberawareのほか、内部に損傷を及ぼさないよう機体を球体ガードで覆った屋内点検用ドローン「ELIOS3(エリオススリー)」も満ち込まれ、ブルーイノベーションが飛行させているとみられる。
現地では、「速い水流、土砂、人が活動できる濃度を超えた硫化水素」が作業を阻んでいる。堆積物により下水管内の水流がせき止められていることは、下水管内で鉄砲水が起きるリスクと背中あわせで、人が立ち入れない危険の要因となる。今回、堆積物や「キャビンらしき」ものの場所の特定ができたことで、今後は肝心の人の確認や下水道機能の確保、周辺住民の生活確保などへの手順策定などの対応を加速させることになる。
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本、東京)は2月4日、米ASKA社が開発中のAAM「ASKA A5」の導入を検討していると明らかにした。JR高輪ゲートシティ駅一体型の大型開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」で、将来的にここを発着する「プレミアム国内観光」を担う機体となることを想定している。3月27日に迎えるまちびらきでは、関連催事の一環として、実機の三分の一サイズのモックアップを展示する。あわせて、「サービス提供の姿を披露する」としている。
ASKA A5は米ASKA社が開発中のAAM(いわゆる「空飛ぶクルマ」)で、走行と飛行の両方ができることが特徴だ。パイロット1人を含め4人まで乗ることができる。飛行は電動だが、バッテリーのほかに電力を供給するためのガソリンシステムも持つハイブリッド機だ。走行時はSUV車ほどの大きさで技術的には公道が走れる。飛行時には格納している翼を展開して離陸する。仕様上の航続飛行は250マイル(約400㎞)で、計算上は高輪ゲートウェイから仙台市、佐渡、能登半島、奈良などが収まる計算だ。ASKAのHPでは動いている様子を動画で確認できる。
JR東日本はJR高輪ゲートウェイ駅直結の「TAKANAWA GATEWAY CITY」を開発中で、3月27日正午に先行施設の開業などとともにまちびらきをする。JR東日本は「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置付けていて、まちびらきから数か月間にわたり、サービスやイベントを展開する計画だ。ASKA A5のモックは、イベントの一環としてTAKANAWA GATE CITYの一角にモックを展示し、「サービス提供の姿」を披露する。
TAKANAWA GATE CITYは、AAMのほかのモビリティ関連技術も導入する方針だ。自動走行モビリティ5台が運行し無料で街の回遊に乗車できる。一部は水素由来の電気で動き、水素由来の充電場面を見ることもできる。警備ロボットや清掃ロボット、アプリで注文した商品をオフィスなどに配達するデリバリーロボットも走る構想だ。
ASKAのHP:https://www.askafly.com/
株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーラストワンマイル株式会社(東京)など4社は、ドローン配送と既存の陸上配送などを融合させた新スマート物流の長野県全域への拡大と地域課題解決、地域経済活性化に向けて業務提携を締結した。
提携したのは、エアロネクスト、セイノーラストワンマイルのほか、交通、観光事業が柱のアルピコホールディングス株式会社(松本市<長野県>)、エアロネクストの物流子会社、株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)の4社。平常時の物流ネットワーク強化、買い物弱者対策、災害時の被災地への迅速な物資輸送をともに可能とするフェーズフリーな地域物流インフラの構築を目指す。
プレスリリースで提携内容を発表している。
内容は以下の通り。
アルピコホールディングス株式会社(本社:長野県松本市、代表取締役社長:佐藤裕一、以下アルピコホールディングス)とセイノーラストワンマイル株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:河合秀治、以下セイノーラストワンマイル)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路圭輔、以下エアロネクスト)および株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路圭輔、以下NEXT DELIVERY)は、2025 年1月31日に、新スマート物流の長野県全域への拡大と、新スマート物流を通した地域課題の解決や地域経済の活性化に向けた業務提携を締結しました。
アルピコグループは、長野県を中心に交通、観光、流通等広く事業を展開しており、2023年9月に新規事業としてドローン事業を立ち上げ、既存事業とのシナジー創出により、地域課題の解決や豊かな地域社会の実現に貢献しています。
エアロネクストとセイノーラストワンマイルの親会社のセイノーホールディングス株式会社(以下セイノーHD)は、トラックや軽バン等の陸上配送にドローン輸送を組み合わせ、独自の輸配送管理システムをベースに、物流を効率化する新スマート物流SkyHub®を、山梨県小菅村、北海道上士幌町など、全国9ヶ所で展開しています。
エアロネクストとNEXT DELIVERY は、2024年1月に起きた能登半島地震において、孤立集落・避難所へのドローンによる医薬品の物資輸送を国内で初めて実施した経験を踏まえ、平時、有事を問わず、ドローンを活用したフェーズフリー型統合ソリューションの構築が必須であり、そのためには新スマート物流 SkyHub®が基盤になると考え、国や自治体と前向きな会話を進めています。
2023年9月には、アルピコグループとNEXT DELIVERYは、茅野市蓼科地区の別荘地エリアにおいて、新しい食品・日用品配送サービスの構築を目指し、ネットスーパーと連携したドローン配送の実証実験を実施しました。
今回、4者が相互の連携・協力により、長野県における 2024年問題など平常時の地域の物流ネットワークの強化や買い物弱者対策、並びに災害時の被災地への迅速な物資輸送を可能とするフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、県民生活や地域経済基盤の強靱化を図ってまいります。
1.締結日 2025年1月31日
(1) 長野県全域における新スマート物流の導入、推進
(2) 長野県全域における新スマート物流(お買物支援、共同配送、ドローン配送を含む)の拠点および体制整備
(3) SkyHub® Emergency Packageの構築と運用
(1)4 者共通の役割
・長野県庁、長野県内の基礎自治体との関係構築全般
(2)アルピコホールディングスの役割
・長野県全域における買物支援、夕食難民対策等、SkyHub®TMS を活用した新スマート物流の実装
・グループのアセットを活用した共同配送の拠点づくり、インフラ、防災目的の支援物資等の提供
・グループのアセットを活用した新スマート物流における新サービス開発
(3)セイノーラストワンマイルの役割
・長野県全域における物流事業者の取りまとめ、荷物の集約
・長野県全域における共同配送の体制づくり
・SkyHub® Emergency Package 構築
(4)エアロネクストおよび NEXT DELIVERY の役割
・ドローン運航体制(物流専用ドローンの提供を含む)の構築
・全国展開している新スマート物流の運営ノウハウの提供
・アルピコホールディングスに対する SkyHub® Provider Licenseの提供
<アルピコホールディングス 代表取締役社長 佐藤 裕一のコメント>
アルピコグループは、長年にわたり地域社会に根ざしたサービスを提供してまいりました。また昨年からアルピコドローンアカデミーを開校し、ドローン事業にも参入いたしました。一方、セイノーラストワンマイル・エアロネクスト様は、ドローンを活用した先進的な技術やノウハウを持つ企業として、業界をリードしています。この提携により、私たちは新たな価値を創造し、地域社会とお客様にさらなる貢献ができると考えております。
<セイノーラストワンマイル代表取締役社長 河合 秀治のコメント>
今後、ラストワンマイルに求められる機能やご期待はさらに大きく、幅広くなることが予想されます。顧客ならびに様々なパートナーとの連携を強化し、チーム一丸となって社会課題を解決しつつ、未来のインフラ構築として、ラストワンマイル領域にて新たなチャレンジを続けていきます。
<エアロネクスト代表取締役 CEO/NEXT DELIVERY 代表取締役 田路 圭輔のコメント>
新スマート物流の長野県全域展開のパートナーとして、アルピコグループ様とタッグが組めることを本当に嬉しく、心強く思います。長野県の地域資源とアルピコグループ様の様々なアセットやネットワークと我々のこれまでの経験、システム、サービスを統合して、長野県全域の地域生活インフラを持続可能にしていくための活動にしっかり取り組んでいきたいと思います。
1 新スマート物流
物流業界が共通に抱える人手不足、環境・エネルギー問題、DX 化対応、等の課題を、デジタルやテクノロジーを活用しながら解を探究し、人々の生活に欠かせない生活基盤である物流を将来にわたって持続可能にするための取り組みで、特に地域物流の効率化と地域社会の課題解決を推進する。地域の状況やニーズに応じて、ラストワンマイルの共同配送、車による陸送・ドローンによる空送のベストミックス、災害対応も含むフェーズフリー型物流、貨客混載、自動化技術等を官民、業界内外の壁を越えたオープンパブリックプラットフォーム( O.P.P.)による共創で検討し、実現を目指すものである。
2 新スマート物流 SkyHub®
エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存の陸上輸送とドローン物流を繋ぎこみ、地上と空のインフラが接続されることで、いつでもどこでもモノが届く新スマート物流のしくみ。ドローン配送が組み込まれた、オープンかつ標準化したプラットフォームで、ドローンデポ®を拠点に、車とドローンを配送手段として、SkyHub®TMS をベースに、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送、SkyHub®Delivery(買物代行)、SkyHub®Eats(フードデリバリー)、SkyHub®Medical(医薬品配送)など、地域の課題やニーズに合わせたサービスを展開、提供する。SkyHub®の導入は、無人化、無在庫化を促進し、ラストワンマイルの配送効率の改善という物流面でのメリットだけでなく、新たな物流インフラの導入であり、物流 2024 年問題に直面する物流業界において、物流改革という側面から人口減少、少子高齢化による労働者不足、特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対、物流弱者対策等、地域における社会課題の解決に貢献するとともに、住民の利便性や生活クオリティの向上による住民やコミュニティの満足度を引き上げることが可能になり、地域活性化を推進するうえでも有意義なものといえる。
3 SkyHub® Emergency Package
平時はもとより、災害時にも物流ドローンなどを活用して緊急物資配送をスムーズに実現することができるフェーズフリー型の SkyHub®のこと。
4 SkyHub® TMS
地域物流を効率化する新スマート物流のベースとなる輸配送管理システム。
5 SkyHub® Provider License
新スマート物流 SkyHub®のノウハウやツール、オペレーションの一部を第三者にライセンス提供する仕組み。
【アルピコグループとは】
アルピコグループは、長野県を中心に事業を展開している企業グループで、主に流通(スーパーマーケット)、交通(バス・鉄道・タクシー)、観光(ホテル・旅館・旅行)等を手掛けているコングロマリットグループです。2024 年 1 月に新規事業としてアルピコドローンアカデミーを開校し、既存事業とのシナジー創出により、地域課題の解決や豊かな地域社会の実現に貢献することに努めています。
*会社概要は https://holdings.alpico.co.jp/company/をご覧下さい。
【株式会社エアロネクストとは】
IP 経営を実践する次世代ドローンの研究開発型テクノロジースタートアップ、エアロネクストは、「新しい空域の経済化」をビジョンに、空が社会インフラとなり、経済化されて、ドローンで社会課題を解決する世界を生み出すために、産業用ドローンの技術開発と特許化、ライセンスビジネスを行っています。コアテクノロジーは、重心、空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させる、独自の構造設計技術 4D GRAVITY®。この 4DGRAVITY®を産業用ドローンに標準搭載するため強固な特許ポートフォリオを構築し、4D GRAVITY®ライセンスに基づくパートナーシップ型のプラットフォームビジネスをグローバルに展開しています。また、ドローンを活用した新スマート物流 SkyHub®の実現のために戦略子会社 NEXT DELIVERY を設立し、ドローン配送サービスの社会実装、事業化にも主体的に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
【株式会社 NEXT DELIVERY とは】
エアロネクストグループのミッション「人生 100 年時代の新しい社会インフラで、豊かさが隅々まで行き渡る世界へ」に基づき、2021 年に山梨県小菅村に設立されたドローン配送を主事業とするエアロネクストの戦略子会社。エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存物流とドローン物流を繋ぎこんだ新しい社会インフラとなる新スマート物流の仕組み SkyHub®の企画運営、全国展開を推進しており、共同配送とドローン配送に関わるハード及びソフトウェアの開発、販売、運用及び保守事業等の周辺事業も展開しています。山梨県小菅村を皮切りに、北海道上士幌町、福井県敦賀市等、全国各地で地域物流の効率化と地域社会の課題解決に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
【セイノーラストワンマイル株式会社とは】
セイノーラストワンマイル株式会社は 2024 年 4 月にセイノーホールディングスの子会社として誕生しました。「ラストワンマイル」と言われる”お客様にとって物流サービスの最後の接点”となる領域は今後もさらに拡大すると予測されており、「お客様のご要望に柔軟にお応えできるように」と新たに設立する運びとなりました。現代の日本における物流課題は多岐にわたり、具体的には買い物弱者問題、過疎地域問題、荷物再配達の問題、宅配クライシス問題などが挙げられます。セイノーラストワンマイル株式会社は、それらの
社会課題に対してビジネスの手法を使ってアプローチしていく「社会課題解決型ラストワンマイル」を担っています。
*会社概要は https://slo.co.jp/company/をご覧下さい。
株式会社エアロネクスト(東京)、株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)は長野県南西部の木曽エリア3町村でドローン配送を実演した。エアロネクストなどは3町村を含む木曽郡でドローン配送ルートの策定や離着陸座標設定などのドローンインフラ整備を進めていて、今回もその一環として大規模災害への備えに向けて行われた。
フライトは1月28日、木曽郡内の上松町、大桑村、南木曽町(木曽郡はこのほか木祖村、王滝村、木曽町の6町村で構成)で行われ、長野県木曽地域振興局、木曽広域連合も参加した。大規模災害対応を念頭に、災害時に孤立集落となる可能性のある地域に災害支援物資を配送した。
実施後にプレスリリースが公表され、その様子を報告している。発表は以下の通り。
上松町(町長:大屋 誠)、大桑村(村長:坂家 重吉)、南木曽町(町長:向井 裕明)、長野県木曽地域振興局(局長:渡邉 卓志)、木曽広域連合(連合長:原 久仁男)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路 圭輔、以下エアロネクスト)、株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下NEXT DELIVERY)、は、2025年1月28日(火)に、上松町、大桑村、南木曽町において 木曽郡における災害時対応を想定したドローン配送 お披露目フライトを実施し、報道関係者に公開しました。
木曽郡では、郡内でのドローン活用、災害時の迅速な支援につながる取組として、木曽町、上松町、南木曽町、木祖村、王滝村、大桑村、長野県、木曽広域連合、エアロネクスト、NEXT DELIVERYが共同し、郡内6町村を対象に、ドローンインフラ整備(ドローン配送ルート及び離着陸座標設定)を進めています。
今回のお披露目フライトは、その一環として大規模災害への備えに向けて行われたもので、具体的には、上松町、大桑村、南木曽町の災害時に孤立集落となり得る地域に災害支援物資を配送いたしました。
4人その3:写真向かって左より木曽広域連合 楯憲吾、長野県木曽地域振興局 局長 渡邉卓志、南木曽町副町長 向井 庄司、NEXT DELIVERY 取締役 運航統括責任者 青木孝人(南木曽町)
飛行:物流専用ドローンAirTruckによる災害支援物資を搭載した飛行を見守る住民(南木曽町 大野正兼集会所)
大桑村:災害支援物資を搭載して着陸する物流専用ドローン”AirTruck”(大桑村 野尻向分館)
大桑受け取り:物流専用ドローンAirTruckにより置き配された災害支援物資を受け取る住民(大桑村 野尻向分館)
1.背景と目的
木曽郡は総人口 23,781 人(2025 年 1 月 1 日現在)。長野県の南西部に位置し、美しい木曽川を中心に豊かな森林や山々に囲まれた自然環境が広がっています。木曽川の支流や山間部からの湧水は、地域の農業や生活用水として利用されるだけでなく、周辺の生態系を支えています。一方で、自然災害の
リスクが高く、大雨や土砂災害、地震による道路寸断など、有事の際には集落が孤立する可能性が指摘されています。特に中山間地域では、地理的条件からアクセスが制限される場合が多く、緊急時の物資輸送や医療支援が大きな課題となっています。また、木曽郡内では、地域住民の高齢化が進む中、災害発生時の迅速な支援体制の構築や、孤立集落の発生を防ぐための新たな取り組みが求められています。こうした状況に対応するため、ドローン技術の活用が注目されており、地域住民の利便性向上や有事の際の迅速な対応を目指し、DX 技術を活用したドローンの導入が模索されています。
このような背景を踏まえ木曽郡では、災害発生時に孤立地域へ迅速に物資を届ける仕組みとしてドローンを活用した防災インフラの構築を実施しました。
2.実施内容
災害時に孤立集落となり得る地点に向け、災害時を想定した物資輸送の実証実験を実施しました。事業概要やドローン機体の説明後、以下3つのドローン配送のデモフライトを実施しました。
1上松町 よろまいか駐車場⇒台生活改善センター/
2大桑村 大桑村役場駐車場⇒野尻向分館 /
3南木曽町 渡島総合グラウンド⇒大野正兼集会所 ※計 3 ルート
【1ルート】上松町で孤立が想定される台生活改善センターに向けて災害物資輸送を想定したドローン配送を実施します。飛行距離約 4.6 kmを約 12 分かけて配送。
【2ルート】 大桑村で孤立が想定される野尻向分館に向けて、災害物資輸送を想定したドローン配送を実施します。 飛行距離約 4.1 kmを約 10 分かけて 配送。
【3ルート】 南木曽町で孤立が想定される大野正兼集会所に向けて、災害物資輸送を想定したドローン配送を実施します。飛行距離約 6.1 kmを約 15 分かけて配送。
機体はエアロネクストが開発した物流専用ドローンAirTruckを使用しました。上松町では、よろまいか駐車場から台生活改善センターまでの片道約4.6 km・約 12 分を、災害支援物資を搭載してドローン配送しました。ドローン配送で災害支援物資を受け取った田中秀子さんは、「素晴らしい。置いて行ってもらえれば、非常に楽。もしもの時にはとても助かる」とコメントしています。今後も災害時対応用のドローン配送ルートの構築及び座標設定を拡大していき、ドローン配送用のインフラ整備・構築をさらに進め、災害時の迅速な対応ができる地域づくりを進めてまいります。
※本実証実験は「令和6年度 木曽郡におけるドローンを活用した災害対策インフラ整備業務委託」として採択されています。
※本事業は「令和 6 年度長野県地域発 元気づくり支援金」を活用した事業です。
1 物流専用ドローン AirTruck
次世代ドローンのテクノロジースタートアップ、株式会社エアロネクストが ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY® により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機です。日本では各地の実証地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高 1300m、外気温-15°Cという環境下の飛行実績をもつ(2023 年 11 月)。最大飛行距離 20km、ペイロード(最大可搬重量)5kg.
2 機体構造設計技術 4D GRAVITY®
飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させるエアロネクストが開発した機体構造設計技術。エアロネクストは、この技術を特許化し 4D GRAVITY®特許ポートフォリオとして管理している。4DGRAVITY®による基本性能の向上により産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がる。
【上松町とは】
上松町は長野県の南西部、木曽郡のほぼ中央部に立地し、東西 24.5km、南北 13km、総面積 168.42km2 の東西に長い地形です。そして、東には木曽駒ヶ岳(2,956m)を主峰とする中央アルプス山系が連なり、西には卒塔婆山(1,541m)、台ヶ峰(1,503m)などの山々が連なっています。町の中央部を北から南へ木曽川が貫流し、それに沿って国道 19 号、木曽川右岸道路、JR 中央本線が並行して走っています。木曽川左岸には木曽駒ヶ岳に源を持つ滑川、十王沢ほか中小河川の急流が木曽川に注ぎ、右岸にも国有林から小川が流入しており、いずれも急峻な地形を呈しています。これらの河川は幽玄な渓谷
を形づくり、木曽五木の森林地帯を流れ、奇勝絶景をなしています。
また、総面積の 95%が森林であり、そのうち 69%と大半を国有林が占めています。耕地や宅地は、合わせてもわずか3%しかありません。この耕地や宅地は主に、河川沿いの台地、標高 550mから 1,100mの地域に集積しています。国内森林浴発祥の地として名をはせる赤沢自然休養林では、施設・エリアが「森林セラピー基地」として認定を受け、赤沢の森林浴が医学的にもリラックスできることが実証されました。
*詳細は https://www.town.agematsu.nagano.jp/をご覧下さい。
【大桑村とは】
長野県の南西部に位置する大桑村は、東西 30km、南北 10km、総面積 234.47 平方 km の山村です。東は南駒ヶ岳をはじめとする中央アルプスの山々、南は南木曽町、北は上松町、西は岐阜県中津川市及び王滝村へ隣接。地形は急峻で、村の総面積の 96%を山林が占めています。中央部を北東から南西に流れる木曽川に沿って国道 19 号、JR 中央線が走っています。集落及び耕地は、木曽川とその支流の伊奈川などの流域(標高 500~800m)に点在しています。
*詳細は https://www.vill.okuwa.lg.jp/をご覧下さい。
【南木曽町とは】
南木曽町は、長野県の南西部・木曽谷の南端に位置し、岐阜県との県境にある町です。総面積は 215.93k m2で東西20km、南北 15km、周囲 70km の山間地であり、木曽川とその支流の与川・柿其川・蘭川・坪川等により形成された狭い段丘上に、与川・北部・三留野・妻籠・蘭・広瀬・田立の7集
落と農用地が細長く点在し、各集落の標高は約 300m から約 950m におよんでいます。また、町の面積の9割は森林で占められており、そのうち約 70%が国有林です。町の中心部を流れる木曽川沿いには南北に JR 中央線と国道 19 号が走り、東西には国道 256 号が伊那谷に通じています。隣県の中津川市中心部まで約 20km、県内近隣市町村の木曽町まで約 35km、飯田市まで約35km の距離にあり、古来より伊那谷、木曽谷を結ぶ交通の要衝でした。急峻な斜面が多く平坦面が少ない地形を作っています。また気候的には温暖ながら雨量が多く、年間降水量は多い年で 2,500mm から 3,000mm に達します。このような地形と気候により、過去より幾多の土石流災
害を引き起こす一方で豊かな森林資源を育み、町は古くから木材生産・木工業を基幹産業としてきました。国選定重要伝統的建造物群保存地区の妻籠宿や、国の近代化遺産に指定された桃介橋をはじめとする恵まれた文化遺産等をはじめとする観光産業が町の主要産業に位置付けられています。
*詳細は https://www.town.nagiso.nagano.jp/をご覧下さい。
【木曽広域連合とは】
長野県木曽地域の特別公共団体です。介護保険・消防・環境・地域振興・森林経営管理・文化教育・ケーブ
ルテレビなど、規約により 31 の広域行政を担っています。
*詳細は https://www.kisoji.com/をご覧ください。
【長野県木曽地域振興局とは】
木曽地域振興局は、長野県が設置する現地機関です。木曽町・上松町・南木曽町・木祖村・王滝村・大桑村の 6 町村で構成される木曽地域で生じている課題やニーズを的確に把握し、関係機関と連携してスピード感を持って主体的・積極的に課題解決に当たる組織です。
*詳細は https://www.pref.nagano.lg.jp/kisochi/somu-kankyo/をご覧ください。
【株式会社エアロネクストとは】
IP 経営を実践する次世代ドローンの研究開発型テクノロジースタートアップ、エアロネクストは、「新しい空域の経済化」をビジョンに、空が社会インフラとなり、経済化されて、ドローンで社会課題を解決する世界を生み出すために、産業用ドローンの技術開発と特許化、ライセンスビジネスを行っています。コアテクノロジーは、重心、空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させる、独自の構造設計技術 4D GRAVITY®。この 4D GRAVITY®を産業用ドローンに標準搭載するため強固な特許ポートフォリオを構築し、4D GRAVITY®ライセンスに基づくパートナーシップ型のプラットフォームビジネスをグローバルに展開しています。また、ドローンを活用した新スマート物流 SkyHub®の実現のために戦略子会社 NEXT DELIVERY を設立し、ドローン配送サービスの社会実装、事業化にも主体的に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
【株式会社 NEXT DELIVERY とは】
エアロネクストグループのミッション「人生 100 年時代の新しい社会インフラで、豊かさが隅々まで行き渡る世界へ」に基づき、2021 年に山梨県小菅村に設立されたドローン配送を主事業とするエアロネクストの戦略子会社。エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存物流とドローン物流を繋ぎこんだ新しい社会インフラとなる新スマート物流の仕組み SkyHub®の企画運営、全国展開を推進しており、共同配送とドローン配送に関わるハード及びソフトウェアの開発、販売、運用及び保守事業等の周辺事業も展開しています。山梨県小菅村を皮切りに、北海道上士幌町、福井県敦賀市等、全国各地で地域物流の効率化と地域社会の課題解決に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
*エアロネクストおよびエアロネクストのロゴ、NEXT DELIVERY、並びに「4D GRAVITY(R)」「SkyHub(R)」は、株式会社エアロネクストの商標です。
*その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。