ドローンの大型展示会JapanDroneの地方開催版、「Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO in 九州(福岡)」が12月6日、福岡国際展示場で始まった。講演、展示とも開場直後から多くの来場者でにぎわった。来場者はレベル4に関連した展示や、デモフライトや初出展、初公開のブースに足を止めた。顔なじみの多い出展者のブースでは、再開に笑顔がはじける場面もみられた。講演では前日施行された改正航空法を盛り込んだ発言が相次いだ。JapanDrone福岡は12月7日まで開催される。
JapanDrone福岡は福岡国際会議場4階の「中・小会議室ゾーン」を全面活用し、2~3の会議室をつなげて展示ホールや講演会場に仕立てている。出展各社が最新の技術や、会場の大きさに合わせた機体を盛り込んでいる。出展企業によっては、デモンストレーションも実施している。
初日、最初に人だかりをつくったのはブルーイノベーション株式会社だ。同社は設置した自社ブースにフライトエリアを設け、同社が提携しているスイスFlyability社の球体点検ドローンELIOS3の飛行を実演した。実演時には報道陣のカメラを含め、多くの来場者が押し掛けた。
ほかにも実機を持ち込んだ出展者のブースが、機体を確認したい来場者の足を止めた。ciRobotics株式会社の物資搬送用ドローン「TR-22」は、今回の展示の中では大きな機体で、会場入り口で来場者を迎えるように展示されている。苗木や資材の搬送や、災害時の緊急支援物資の運搬での活用を想定したウィンチ搭載ドローンで来場者が足を止めて撮影していた。
株式会社kiipl & nap(キプランドナップ)はブースに最大積載量49㎏の特殊大型ドローンEAGLE-49や、自立四足歩行する犬型ロボット「SPOT」など特殊機体を並べた。中でも注目されていた出展のひとつが、煙突や立て坑の点検ソリューション「IIC360°」だ。
「IIC360°」は360度撮影カメラのユニットとドローンがセットになっていてる。ドローンは煙突の真上でホバリングし、細いワイヤーで吊り下げられた撮影ユニットだけを煙突内にウインチでスルスルと降ろしていき、その間に動画で撮影する。撮影の方向や角度は自由に変更でき、ライトで照らすこともできる。撮影ユニットはマイクロドローンのようなプロペラが装着されていて、煙突内を撮影中にクルクルと回転しないよう姿勢を制御できる。撮影が終われば撮影ユニットを巻き上げることもできるが、搭載されたカッターでワイヤーを切り、ユニットを床に降ろして回収することもできるため、環境に応じて選択ができる。担当者は「人が高いところにのぼることがなく、ドローンそのものを煙突内に入れる必要もないのでリスクも時間も抑えられることが特徴です」と話す。
株式会社MAX工業のブースには、株式会社ACSLの「PF2-AE Inspection」が置かれた。展示会で見かけることが少ない機体とあって、事情を知る来場者が担当者に話しかけていた。双葉電子工業株式会社は安全性に重点をおいた産業用ドローン「SkyBuddy」を紹介。
空飛ぶクルマの開発を進めているHIEN Aero Technologies株式会社は、長距離大型VTOL「HIEN Dr-One」の1/4モックを、独自の発電制御技術を搭載したガスタービンハイブリッドシステム「DRAGON」の原寸大モックとともに展示している。イームズロボティクス株式会社もブースを構えてソリューションを展示しているほか、機体も展示して来場者が写真に収めている。
レベル4を見越した展示や、地元産業への展開を見据えた展示も来場者の関心を集めていた。
株式会社Braveridge のブースでは、1.6gの小型、軽量のリモートID「リモートID mini」が展示され、来場者が小ささを確認するようにのぞき込んでいる。19×19mmと小さいため、卓上に置いてあっても展示物を気づかれない。このため、ライトが埋め込まれた展示台に、現在品と比較できるように展示するなど小さいものを目立たせる工夫が凝らされている。1.6gは基盤だけの重さで、搭載するときにはアンテナ、電源線が必要になる。このためアンテナ、電源線をつけたものもそのわきに展示してある。2023年3月の発売を予定していて、来場者は発売前に実物が確認できる。
ドローン開発用のコンパクト風洞装置を持ち込み、風を出す様子を見せて関心を集めているのが株式会社日本風洞製作所の「Aero Optim」だ。JapanDrone福岡での展示が初出展となる。ドローンに限らず、自転車など風洞実験が必要な開発事業者が、実験装置まで出向く時間、手間を省くことを可能にしたコンパクト設計で、可搬式であることも特徴だ。扇風機の風のように渦を巻いた乱れの多い風ではなく、整った直進性の高い風を送り出すことができる。最大風速は15m/s(54㎞/s)で、ユニットを連結させたり、吹き出しの角度を変えたりすることも可能だ。
株式会社オーイーシーは、樹木が並ぶ森林をドローンで撮影して資源量を測定するスマート林業サービス「Forestory(フォレストリー)」のソリューションを展示している。担当者が林業従事者の苦労を減らす工夫を、タブレットやパネルなどを使いながらていねいに説明しており、多くの来場者がブースで足をとめ、共感している。オーイーシーのForestoryでは、ぶつからないドローンとして知られるSkydio2+を使う。森林内を飛行させて樹木を撮影し、手持ちカメラで撮影した画像とともに独自開発のソフトウェアで解析すると、検出された樹木の径が高さごとに推計された結果が表示され、生育状況が確認できる。一般には林業従事者が森林内で一本一本測定するが、担い手の減少に伴い、資源管理が難しくなってる。「テクノロジーで負担を軽減させることができれば」と話している。
東京電力ホールディングス株式会社も磁界結合方式と電界結合方式のワイヤレス電力伝送(WPT)システムを展示し、関心ある来場者が見入る姿が見られた。ドローンへの自動充電が可能になる。ブースには開発担当者が来場者からの質問に答える姿が見られた。
この日は開場に先立って行われた開会式や講演で、ドローンやエアモビリティ行政に携わる内閣官房小型無人機等対策推進室の小熊弘明参事官、国土交通省総合政策局技術政策課の伊藤真澄課長、経済産業省製造産業局産業機械課次世代空モビリティ政策室の石尾拓也室長補佐、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の梅澤大輔課長らがあいさつや講演に登壇した。
開会式ではJapanDrone初の地方開催への祝意が示されたほか、内閣官房の小熊参事官は「ドローンの利活用に積極的な九州、福岡での開催は頼もしく嬉しい」と歓迎した。国交省の伊藤課長は「豪雨災害などが起きている九州での開催は、孤立地域への物資輸送などでドローンの活用が期待される中、ますます迅速な対応につながる」と述べた。
JUIDAの鈴木真二理事長は、開会宣言のさいに開催前日の12月5日に改正航空法の施行によってレベル4を可能にする制度が整ったことに触れ、「世界的にも画期的」と改めてコメントした。続く「ドローン、空飛ぶクルマの技術ならびに制度の世界の最新動向」では、ドローン歴史、法制度の世界的な方向性、「リスクベース」「ユースケース」「パフォーマンスベース」の考え方、今後の課題などを整理した。また近く東大出版会から『ドローン活用入門 レベル4時代の社会実装ハンドブック』を出すことを案内した。
ドローンの活用に関するパネルディスカッションも開催されている。「災害時の支援物資輸送におけるドローン活用」には、国交省総合政策局技術政策課の伊藤真澄課長、株式会社プロドローンの戸谷俊介代表取締役社長が登壇し、ブルーイノベーション株式会社の熊田貴之代表取締役社長がファシリテーターを務めた。パネルでは国交省の伊藤課長が、災害分野だけでも、国交省内の水管理・国土保全局、鉄道局、港湾局、気象庁など複数の部局にまたがって活用している事例を紹介し、高ペイロード機の開発や、河川上空を飛行ルートに活用する取り組みを報告した。プロドローンの戸谷社長も高ペイロード対応を「空飛ぶ軽トラ」と称して取り組みを進めていることや、災害時のドローン活用として、水素自動車の活用を提唱した。
開場では多くの笑顔もあふれた。
卒業後の深いコミュニケーションを図る取組に積極的なことで知られるドローンスクール、一般社団法人ドローン大学校が設置したブースでは、開場直後から卒業生が続々とブースに集まり、近況報告をしあって笑顔を見せていた。
水中ドローンの利活用にも積極的な株式会社ジュンテクノサービス、CFD販売株式会社ブースには、代表の引野潤氏、ササモモ(佐々木桃子)氏ら、名の知れた担当者がブースにたって説明。YouTubeなどを通じて彼らの活動を知るファンが来場者し声をかける姿もみられた。
このほか、体験会支援などで名の知れたドローンジョプラスや、メーカー、プロバイダー、スクールなど第一線で活躍する出展者が12月7日まで来場者を迎える。
12月6,7日の「JapanDrone福岡」にレベル4関連技術続々 1.6gリモートIDやコンパクト突風発生装置
JapanDrone福岡きょうから 定員超える申し込みの講演も
デジタルハリウッド株式会社(東京都千代田区)が12月1日に開催したトークイベント「DroneTalk」は、定員を超える参加者を受け入れ盛況だった。脱線が得意な編集長3人が登壇したトークは、ファシリテーターaco氏、デジハリ「Digital Hollywood Robotics Academy(ロボティクスアカデミー)講師で株式会社Dron é motion(東京) 代表取締役の田口厚氏が見事にさばき、不安視された放送事故クラスの暴走、暴動を回避。来場者からも「だいじょうぶだった」の声があがり主催者は胸をなでおろした。デジタリルハリウッド関係者は「近いうちにまた開催したい」と意気込むが、発言後、次も「だいじょうぶ」である保証がない事実に気づき、今後、慎重に検討する方針だ。
トークイベントにはDRONE.jp編集長の猪川トム氏、ドローンジャーナル編集長の河野大助氏、DroneTribune編集長の村山繁が登壇した。aco氏、田口氏の質問に3人が答える形式を基本にしながら、匿名投稿アプリLiveQを通じて来場者からメッセージやアンケート結果をスクリーンに表示するなど、会場の一体感を高めながら進められた。
取り上げられた話題は、編集長が気になる話題、レベル4、伸びる市場、調査報告書、空飛ぶクルマ、操縦ライセンス取得の損得など多岐にわたり、質問ごとに編集長がそれぞれの意見を披露したほか、来場者から寄せられた意見も紹介された。来場者からの意見やメッセージは、登壇者への激励、ひやかしも含めて100を超え、共感するメッセージには「いいね」がつけられた。中には「この5年間で意外だったことは?」など、来場者が発信したメッセージがテーマとなって意見交換が展開される場面もあった。
田口氏が豊富な講師経験、現場経験をふまえてコメントをはさんだほか、aco氏も自身の考えを披露して会場を魅了した。また中盤からは、会場に居合わせた多くの専門家に発言を求める場面もあり、会場からの情報や発言に、登壇した編集長が頷いたり、感心したりすることが多くあった。
事前に不安視された編集長の脱線は、田口氏、aco氏の見事な仕切りで暴走に至らず、「意外と真面目www」など、「www」つきながら、「やるときはやる」ことを示した(と本人たちは思っている)。この余韻を引きずって、7時間後に始まったFIFAワールドカップカタール大会グループE第3節・日本代表対スペイン代表(現地時間12月1日)を見届けた編集長もいた。
主催したデジタルハリウッド関係者は、終了後「来場者の協力もあり会場の一体感を高めることができ、会場集合型のイベントの価値を再確認できた」と話した。今後も同様のイベントの開催に前向きなものの、有頂天になりやすい編集長が一部含まれる(すみません)ため、今後、登壇者の人選や時期を含め、冷静に検討する方針だ。
制御技術のブルーイノベーション株式会社(東京都文京区)は、送電線の点検業務で、ITやドローンの専門家でなくてもドローンで専門家の作業と同水準に遂行できるソリューション「BEPライン」を開発し、11月7日にサブスクリプションと業務委託で提供を始めると発表した。BEPラインはブルーが独自開発したセンサーモジュールとアプリケーションで構成され、搭載するドローンも幅広く適用が可能だ。ブルーは5月に、東京電力ホールディングス株式会社(東京)、株式会社テプコシステムズ(東京)と共同で、たわんだり揺れたりする送電線にドローンが自動追従してリアルタイムで撮影する技術「送電線点検用ドローン自動飛行システム」の開発を発表している。BEPラインはこの共同開発の技術を採用し、ブルーの制御技術「Blue Earth Platform(BEP)」をベースに、現場作業の要求を蓄積し、コストなどの負担を考慮し、使い勝手などのユーザー体験の改善を積み重ね、5年7カ月かけて開発した。今後、国内外の電力会社や点検事業者への普及を図る考えだ。
BEPラインは、ドローンの機体に搭載するセンサーモジュールと、操作やデータ管理のアプリケーションで構成される。モジュールは重さが750g、大きさが16㎝×11㎝×8.5㎝で、洗練されたデザインのボックスに納められている。点検に使うドローンは、メーカーを選ばず、モジュールが搭載できれば、チューニングをしたうえで適応できる。
センサーモジュールは、搭載したドローンの機体とカメラのジンバルを同時に制御し、送電線の点検に適切な距離を保ち、たわみやゆれに追従する。事前に飛行ルートを設定する必要はない。作業員はリアルタイムに送られてくる映像で不具合の有無を確認でき、鉄塔にのぼるなどの従来の重労働の必要性から解放される。映像内で気になる個所を見つけた場合などに、ドローンをホバリングさせることもアプリ操作で可能だ。
11月4日の発表会で行われたデモンストレーションでは、モジュールを搭載したドローンが、送電線を認識するとピクっと認識した挙動を示し、そのあとは送電線にカメラを向け、一定の距離を保ちながら安定して移動する様子が確認できた。またモニター画面には、送電線のキズの有無などが確認できるレベルの鮮明な画像が、ピントのずれなく映し出された。
ブルーイノベーションの熊田貴之社長は「われわれの技術は東京電力グループと開発した技術を採用しておりますが、用途は特定の電力会社に限りません。各方面で多様な技術やドローンの投入が検討されていると思いますが、われわれの技術もあわせて使って頂きたい、というスタンスです」と、幅広く役立つことへの期待を表明した。また提供先として、国内外の電力会社や点検事業者を想定していることについて、「官も含めたプロジェクトとすることも視野に入れています」と、普及に向けた幅広い選択肢を示唆した。
開発にあたった同社システム管理部の千葉剛マネージャーは、モジュールの搭載に工具を使わずに済むようにしたことなどいくつもの工夫点をあげたうえで、「開発を開始したのは2017年3月です。それからどのセンサーを使うか、現場で使いやすいかなど、膨大なヒアリングをし、フィードバックを受けながら、人がすることと同じことができなければ意味がないという思いで開発してきました」と説明した。
同社は今後、時事体験できる機会を設定し、使い勝手を確認してもらう計画だ。
同社の発表は以下の通り。
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田 貴之、以下 ブルーイノベーション)は、たわみや揺れのある送電線に沿ってドローンが自動追従飛行し、点検に必要な各種データを撮影・取得することで点検業務を自動化・効率化・安全化するソリューション「BEPライン」※1を開発し、国内外の電力会社や設備点検・メンテナンス会社などに向けて、11月7日からサービス提供を開始します。
「BEPライン」は、ドローン機体に搭載する独自の送電線追従モジュールと操作・データ管理アプリから成り、自社で点検作業が行える「サブスクリプション」と、点検作業をお任せいただく「委託点検」の2つのサービスプランからお選びいただけます。
なお、「BEPライン」には、ブルーイノベーション独自のデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform®」をベースに、東京電力ホールディングス株式会社、および株式会社テプコシステムズと共同開発した「送電線点検用ドローン自動飛行システム」が採用されています。
■「BEP ライン」の特長
① カンタン操作|事前のルート設定が不要。すぐに高画質な自動撮影を開始
ドローンに搭載したモジュール内のセンサーが、送電線の自動検知とドローン機体ならびにカメラジンバルの制御を同時に実施します。ドローンは自動で送電線と適切な距離を保って追従飛行し、最適な画角で対象となる送電線を捉え撮影し続けるため、事前の飛行ルート設定なしで点検を開始できます。
また、画像認識と異なり逆光や影、類似する構造物の影響を受けないため、常に高品質なデータ取得が可能です(特許取得:特開 2018-156491:設備点検システム)。
② 安全・確実|点検員の負担と危険を軽減
ドローンが自動で送電線の追従飛行と映像データ取得を行うため、点検員は昇塔の危険やドローン操縦の負担がありません。ドローンからリアルタイムに送られる映像を確認し、気になる点検箇所や異常箇所があれば、アプリ操作によりその場でドローンを一時停止させ、映像を拡大するなどして状況を確認することができます。
③ 品質向上|取得情報のデジタル化・共有化による点検品質の維持・向上
送電線の自動追従飛行では常に一定の離隔距離を保ち、映像を記録します。そのため、電線の映像を常に安定して画角に捉えることができ、送電線のより線までしっかりと記録できます。
また、常に送電線を検知しながら飛行するため、送電線のたわみが大きい箇所や傾斜の勾配がある現場でも、常に送電線を追従しながら飛行し映像を記録できます。さらに、風の影響でドローンの向きや位置が変わっても、位置や向きを補正して飛行します。
■「BEP ライン」 導入メリット
「BEP ライン」を導入することで、従来の高倍率スコープやヘリコプターなどを使う従来の目視確認と比べ、点検品質の向上、点検員の安全確保、作業の効率化、コスト低減が可能となります。さらに、将来的な点検員不足や、設備の高経年化による点検対象増加への対応など柔軟な点検体制の構築と、データ利活用による施設の高度な運用・管理、予兆保全、DX 化の推進に寄与します。
■選べる2つの導入方法。社内研修による自社点検にも対応。
「BEPライン」の導入方法は、点検頻度や運用方法などにあわせて、以下のサービスプランからお選びいただけます。
※サブスクリプションプランでもパイロット派遣が可能です。また、お客様自ら点検運用できるよう、運用・育成カリキュラム
(許可申請など法規制関連や安全管理、実技講習など)もございます(オプション)。
【BEP ライン|導入ご相談・お見積り】
送電線ドローン点検ソリューション BEPライン
■「BEP ライン」主な仕様
埼玉県は10月14日、「第2回ロボティクスセミナー~ドローンの研究開発と活用の潮流~」を開催した。埼玉県が2026年度の開所を目指すロボット開発支援施設「SAITAMAロボティクスセンター(仮称)」への興味や期待を喚起することが目的で、福島県南相馬市にあるロボットの開発支援拠点、福島ロボットテストフィールドの所長で一般社団法人日本UAS産業振興協議会の理事長を務める鈴木真二氏ら、ドローン事業で名の知れた関係者が登壇した。鈴木氏は、「埼玉と連携したい」と話し、SAITAMAロボティクスセンターへの期待を表明した。
登壇したのは鈴木氏のほか、ドローン物流の実現に向けた動きを加速させている秩父市産業支援課の笠井知洋氏、秩父市の実験でドローンの運用を担い、物流へのドローン活用に取り組む楽天グループ株式会社(東京)ドローン事業課の谷真斗氏、埼玉県内に本社を構え地元にフライトスペースを構え、農業、空撮などの地元貢献にも力を入れる株式会社NTTe-Drone Technologyの山崎顕代表取締役、ドローンやロボットなどの人手を自動化するデバイスを制御するプラットフォーム関連技術を手がけるブルーイノベーション株式会社(東京)の熊田貴之代表取締役らで、それぞれが近況や埼玉との関係などについて述べた。
鈴木氏は、「レベル4実現に向けたドローンの新制度と今後の展望」の演題、ドローンの歴史、用途、市場の成長、理事長をつとめるJUIDAの事業や、会員の推移、所長を務める福島ロボットテストフィールドの役割などを説明し、「埼玉県もSAITAMAロボティクスセンターをつくるということなので、今後連携をとらせて頂きたいと思っています」と期待を表明した。また、JUIDAの理事長として毎年、年頭に公表しているスローガンを振り返り「来年のスローガンをどうするか、みなさんと考えたいと思っております」とアイディアを募った。
秩父市の笠井氏は、秩父市が埼玉県で最も広い市であることや、年間の観光客数ガパリのエッフェル塔に匹敵するなどのエピソードで関心を引き、ドローンでは、物流、遠隔医療、MaaSなどに取り組んでいることを説明した。関わり方については「行政として使命感をもって取り組んでいる」と明言した。市内で行われた物流の様子については動画を披露し「未来技術で住み続けたいまちを目指します」とメッセージを寄せた。
秩父市での物流事業にも参加した楽天グループの谷氏は、ドローン配送に取り組む背景を、宅配の増加と担い手の減少がもたらす将来不安の解消をあげ、「不便解消のひとつの手段がドローン」と説明した。三重県志摩市の離島物流や、長野県白馬村での山小屋への荷物配送などの事例を紹介し、「過疎地物流が地域に根付けば地域の外からその仕事に関わるために人材が流入する可能性があります。ポジティブなスパイラルを生み出す起爆剤になると思っています」と述べた。
ブルーイノベーションの熊田氏は、ひとつの作業で複数の業務をこなす制御技術、Blue Earth Platform(BEP)技術を紹介し、用途別にプラント点検、送電線点検など用途ごとにカスタマイズしたソリューションを用意していることやスイスFlyability社製の球体ドローンELIOSシリーズを使った点検など事業概要を説明。送電線点検では、送電線のドローン点検の悩みの種である送電線のたわみに追随した撮影を可能にするため、たわみにそってドローンが飛行するためにセンサーを組み合わせたモジュールを開発した実例を紹介した。送電線点検は「東京電力グループの中で22の支社が検討を進めているか、すでに実用化しているかしています」と拡大している現状を報告した。またドローンなどの離着陸に用いるポートについて、固定式、可搬式のそれぞれの開発に取り組んでいるほか、国際標準を定めるための会議でリーダーシップをとっていることなども紹介した。熊田氏は「今後のものづくりは自律分散がテーマになっています。そこに貢献するプラットフォーマーを目指します」と決意を表明したあと、「最初にお伝えしようと思ったのですが、私は埼玉県和光市の出身です」と埼玉県とのつながりを伝え、会場をなごませた。
埼玉県朝霞市に本社を構えるNTT e-Drone Technologyの山﨑氏は、主力事業である農業、点検のほかに、NTTグループの光ファイバーをひくために特殊なドローンを使ってる事例などを紹介した。山﨑氏は事業として機体を扱うことの意義について「機体を理解しないとエコシステムの運営はできない」と解説した。また、埼玉県川島町、埼玉県坂戸市でコメづくりの手伝いをしていたことや、朝霞市の茅葺の農家建築で、平成13年に国の重要文化財に指定された「旧高橋家住宅」をドローンで撮影して「文化財デジタルアーカイブ」として保存しているなど、地元密着の取り組みを進めていることも明らかにした。さらに「すぐにではないですが」と前置きをして「将来的にローカル5Gを介し、ドローンとクラウドが常時接続するコネクテッドドローンを展望しています」と今後を見据えていることを明らかにした。
講演にあたり埼玉県の村井秀成次世代産業幹が「埼玉県はロボティクスに取り組んでいて、“ロボットといえば埼玉県”と言われるように取り組んでいきたい」と強調。次世代産業拠点整備担当の新井賢一主査はSAITAMAロボティクスセンターの概要や整備状況について「インターチェンジ直結のテストフィールド」と特徴を強調し、「詳細を検討中で、模擬住宅をどうするかなど、ご意見があれば伺いたい」などアイディアも募った。
当日の様子は、10月21日からオンデマンド配信(11月4日まで)を予定している。配信の申し込みフォームはこちらから。
ドローンのアンバサダーとしても活躍しているシンガーソングライターのSaasha(サーシャ)が、湘南エリアの活性化に向けた活動を担う“湘南Boys&Girlsコンテスト2022”の表彰式で熱唱を披露し、会場に集まった候補者や関係者を圧倒した。コンテストはストリーミングサービスの株式会社マシェバラ(東京)、株式会社ジェイコム湘南・神奈川 湘南・鎌倉局(神奈川県藤沢市)、湘南スタイル株式会社(神奈川県藤沢市)、コミュニティ放送「レディオ湘南」を手がける藤沢エフエム放送株式会社(神奈川県藤沢市)が参画して開催された。DroneTribuneの編集長、村山繁も実行委員に参加した。
表彰式は9月6日、JR辻堂駅から徒歩8分の株式会社ジェイコム湘南・神奈川(横浜市)の湘南拠点、「J:COM 湘南・鎌倉(湘南・鎌倉局)」(神奈川県藤沢市)で行われた。MCをプロ野球の実況中継などで活躍中の元フジテレビアナウンサー、田中大貴氏が務めた。田中アナは表彰式が開催された藤沢市内にキャンパスを構える慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの出身で、湘南に縁があることから表彰式でも、学生時代の辻堂駅の周辺の風景やなどのエピソードを披露した。
また、MCアシスタントを務めたSaashaも、田中アナの問いかけに答える形で、ミスコンテスト参加の経緯(ミス東スポに参加しグランプリを獲得)や、湘南エリアでのステージやラジオ出演、業務などの経験談、ドローンのアンバサダーになった経緯などを語った。そしてドローンにかかわるきっかけとなった楽曲『Fly』を熱唱し、力強い歌声で会場を圧倒した。
コンテストでは出場者がマシェバラの動画内でファン獲得を競ったほか、8月には江ノ島の海の家で開催されたイベントにも出場し、直接参加者に支持を訴えた。表彰式では勝ち残ったファイナリストが最終プレゼンテーションを披露し質疑応答にも対応した。湘南Girlsのファイナリストは清水美聡さん、木下ふうかさん、花倉樹美さん、美音さん、山口穂花さん、湘南Boysのファイナリストは中野友哉さん、岩本知樹さん、高尾優吾さん、二宮寛明さん、内田竣介さんで、Girlsのグランプリに山口穂花さん、凖グランプリに花倉樹美さん、Boysのグランプリに内田竣介さん、凖グランプリに二宮寛明さんがそれぞれ選ばれた。
ロボット、ドローン、関連技術を実演展示する「ロボテスEXPO2022」が福島県南相馬市の大型研究開発拠点、福島ロボットテストフィールドで9月15、16日に行われた。50haの広大な敷地に点在する各施で展示や実演が行われた。そのうちのいくつかをめぐる見学バスツアーが今回の目玉企画で、満席で運行した回もあった。初日のオープニングセレモニーでは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二所長が「このイベントを通じて未来を感じてほしい」とあいさつした。
今回の目玉企画である見学バスツアーは、展示や実演のいくつかを効率的にめぐる取組。利用者は、案内に従えばプレゼンテーションを受けたり、見学できたりするため、移動の徒歩の労力、実演までの待ち時間の無駄を省ける。実演時間を逃すこともない。また、出展者もバス利用者の到着にあわせて実演ができるため、無観客で実演せざるをえない状況の解消が期待できる。
バスツアーは1日6便ある。各回約1時間の行程で、バス2台で展示会場をめぐる。回ごとにみられる展示は異なる。初日午前10時に本館(開発基盤エリア)前を出発したバスは、ほぼ満席の状態。各シートにヘルメットが用意されていて、実演を見学するさいには着用が求められた。この回ではテトラ・アビエーション株式会社(東京)のAAM「Mk-5」の実機見学、株式会社RoboDex(ロボデックス、横浜市)の水素燃料電池を搭載した次世代ハイブリッドドローンの飛行実演、ciRobotics株式会社(大分市)が大分県産業科学技術センターと共同開発したドローンの動作や耐久性などを確認する性能評価装置「ドローンアナライザー」の運用実演、東北大学ASC(Advanced Science Course)の繊毛を持つ能動スコープカメラのセキュリティーソリューションとしての実演を見学した。
この回には地元の中学生が職場体験として見学に来ていて、その一人は「会場で見たことをレポートにまとめることになっています。ロボットテストフィールドは自分で希望を出しました。日頃みられないものが見られました」と話していた。
会場では、開発、製造、人材育成などを手掛ける各社、各機関がブースを展示していた。「南相馬ベンチャー×連携VCミートアップ-Vol.3」「みちびき(準天頂衛星システム)講演会~ドローン・UGV最前線~」なども行われた。
参加者の一人は、「バスツアーは利用者にとって効率的に見学できた点でとてもよかった。ただ、すべての座席が埋まるほどにまで埋めるのは、機材や荷物を持つ利用者にはきつかったのではないか。ユーザー体験をもっと考慮すると、満足度がさらに高まると思う」と話していた。