ドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(WDRC)」が、2024年10月30日から11月3日まで中国杭州市のShangcheng Sports Centre Stadiumで開催され、日本からは5人の選手が出場し世界の部隊で活躍した。ドローンレーシングチーム「RAIDEN RACING」所属の高校生パイロット、橋本勇希選手(17歳)は個人総合、ジュニア部門の2部門で優勝した。女性個人部門でも佐藤姫夏選手(16歳)が6位と健闘した。各選手の成績を集計した国別順位では日本代表チームが3位に入った。元日本代表の白石麻衣氏がチームマネージャーを務めた。
個人総合、ジュニア部門の二冠を獲得した橋本選手は、ドローン関連イベントの企画、プロチームの運営などを手掛けるDRONE SPORTS株式会社(箕面市<大阪府>)のドローンレーシングチーム「RAIDEN RACING」に所属する選手。今回の世界選手権で、個人部門総合1位で10,000ドル、ジュニア部門1位で6,000ドルの合計16,000ドルを賞金として獲得した。国別で3位の日本代表も10,000ドルの賞金を獲得した。
今大会には世界30カ国・地域から112人のパイロットが集まった。日本代表チームは、RAIDEN所属で元日本代表の女性パイロット、白石麻衣氏がチームマネージャーを務め、橋本選手、佐藤選手のほか、小塚研采選手(26歳)、高野奏多選手(16歳)、山本悠貴選手(15歳)の5人が選手として出場した。
RAIDENに所属する海外出身のパイロットも出身国代表として出場していて、スペイン代表のVicent Mayans Cervera選手、オーストラリア代表のGabriel Barrasso選手、トルコ代表のNazim Tüzün選手も活躍した。
WDRCは航空競技の世界選手権を主催する国際組織、FAI(国際航空連盟)が2018年から公認、主催しているドローンレースの世界選手権。ドローンを使った新しいスポーツであり、世界選手権であり、賞金も設定されていることから熱気あふれる大会になることで知られ、国際的にも注目されている。
レースへの参加費用は自己負担。このためクラウドファウンディングも実施し、当初目標の50万円に対し、最終的には132人から達成率141%の70万9,000円を活動資金として集め参加を実現し、好成績を収めることができた。
日本代表チームは「このような国際大会で日本人パイロットが首位に輝いたことは、大変意義のある快挙です」「温かい応援メッセージもたくさんいただき、大きな励みとなりました。本当にありがとうございました」とコメントしている。
DRONE SPORTSが発表したプレスリリースの内容は以下の通り。
個人部門・ジュニア部門の2部門で「世界の頂点」に
2024年10月30日から11月3日まで中国の杭州市で開催されたドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(以下、WDRC)」において、DRONE SPORTS株式会社が運営するドローンレーシングチーム「RAIDEN RACING」所属の高校生パイロット、橋本勇希選手(17歳)が個人部門で優勝を果たし、悲願の “世界一” に輝きました。本大会で橋本選手が個人で獲得した賞金は、個人部門総合1位の10,000ドル、ジュニア部門1位の6,000ドル、合計16,000ドルとなります。
WDRCは、各種航空競技のルール制定や世界選手権を主催する国際組織、FAI(国際航空連盟)が、2018年より公認し主催しているドローンレースの世界選手権です。ドローンという最新テクノロジーを使った新たなスポーツの世界選手権かつ賞金争奪をかけた熱気あふれる大会でもあることから、例年国際的に非常に注目されています。そのような国際大会で日本人パイロットが首位に輝いたことは、大変意義のある快挙です。
2024年は、世界30の国と地域から112名のパイロットが集結して、技術とスピードを競い合いました。日本代表チームは、RAIDEN所属で元日本代表の女性パイロットとして国際大会への出場経験豊富な白石麻衣氏がチームマネージャーを務め、小塚研采選手(26歳) 、佐藤姫夏選手(16歳)、高野奏多選手(16歳)、橋本勇希選手(17歳)、山本悠貴選手(15歳)の5名が出場しました。個人部門、ジュニア部門、female部門があり、選手の総合順位によって国対抗チームの順位が決定するというルールのもと、日本代表チームは総合3位入賞を果たし、10,000ドルの賞金を獲得しました。
なお、RAIDEN所属のパイロットとしては、スペイン代表のVicent Mayans Cervera選手、オーストラリア代表のGabriel Barrasso選手、トルコ代表のNazim Tüzün選手の3名が本大会に出場し好戦しました。今後もRAIDEN RACINGは、ワールドワイドなチームとしてグローバルに活動を進めていきます。
■日本代表チームメンバーの皆様、お疲れ様でした!
日本代表チームが行なっていたクラウドファンディング( https://camp-fire.jp/projects/789450/view/activities/635813#main )から以下抜粋
「2024 FAI World Drone Racing Championship」は招待制ではなく、レースの参加費用はすべて各自が負担する形になっています。ドローンレースの選手は10代をはじめとする若年層が多いことなどから、このたびクラウドファウンディングにも挑戦しました。当初の目標金額50万円に対して、最終的には132人もの方に支援いただき、目標達成率141%の70万9,000円を活動資金として集めることができました。温かい応援メッセージもたくさんいただき、大きな励みとなりました。本当にありがとうございました。
【DRONE SPORTS株式会社について】
DRONE SPORTSは、国産ドローンブランド「Rangle」(https://rangle.jp)を展開し、インフラ設備点検の請負や、ドローンレースチーム「RAIDEN RACING」の運営、ドローンイベントの企画運営など、多岐にわたる事業を手がけています。RAIDEN RACINGは、世界最高峰のプロリーグDrone Champions League (DCL)で三連覇を成し遂げた実績を誇ります。また、CMや番組撮影に対応する空撮サービスの提供に加え、Rangleサブスク導入企業様には、ドローン運用内製化を支援する伴走型サポートも行っています。
詳細な情報は、DRONE SPORTSのウェブサイト(https://dronesports.jp)をご参照ください。
■会社概要
会 社 名: DRONE SPORTS株式会社
住 所: 〒562-0026 大阪府箕面市外院2丁目1番53号
代 表 者: 代表取締役 小寺 悠
国内トップレーサー8人が頂点を目指す屋内ドローンレース大会「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」は、レーシングチームJAPRADAR所属の上関風雅選手が熱戦を制して2代目のチャンピオンに輝いた。上関選手と決勝で死闘を繰り広げたTEAM SkyDRONE所属の⼩松良誠選手が準優勝に、また髙梨智樹選手、小塚研采選手が3位に入った。熱戦の様子は3月21日に、テレビ東京系で放映され、番組の冒頭から準決勝までCMをはさまずに一気に激戦を放映する演出で緊張感を演出した。レースの模様は動画い配信サイトdTVも3月26日から配信される。
レースは2人ずつ1対1で勝敗を競うトーナメント方式で行われた。ゴールに先に飛び込んだら勝利とし、先に2つの勝利を収めた選手が次のラウンドに勝ち上がる。前回王者の鈴木匠選手(RAIDEN RACING所属)と、そのときの決勝で激闘をみせた⼩松選手との激突や、12歳で最年少の上関選手、最年長のSaqoosha(さくーしゃ)選手(RAIDEN RACING所属)の対戦など、初戦の第1回戦から目が離せない展開となった。
レースは、高さ18メートルの急上昇と繊細な機体バランスが求められる「dTVタワー」や、グラビティーと呼ばれる垂直に上から下にくぐるゲートが機体の行く手を阻み、実績ある各選手の技術と勇気を容赦なく試した。選手と機体との相性、クラッシュからの復活が勝敗を大きく左右するヒートばかりで、会場は観戦者を予想も予断も許さない緊張した空気で包んだ。
1回戦は、上関選手、小塚選手、高梨選手、小松選手が2ヒートを先取してセミファイナル(準決勝)に勝ち上がった。なお勝敗とは別に、スタートからゴールまでにかかった時間をみると、小松選手が48.310秒と最速タイムを記録した。高梨選手と競った⼭⽥開⼈選手(WTWHIVE・ドロテック所属)が、48.440秒とそれに次ぐ記録をたたき出したほか、小塚選手も49.216秒と50秒を切る好タイムを記録した。また齋藤三佳選手(WTWHIVE・ドロテック所属)はクラッシュのない丁寧できれいなコース運びと、立ち姿勢でのゲームスタイルで印象付けた。
セミファイナルでは、上関選手が小塚選手に先勝を許したものの逆転で2勝を連取し決勝に進出。小松選手は高梨選手に連勝し、2大会連続の決勝進出を果たした。
この息をのむ展開にテレビの放映も対応。番組冒頭から1回戦、準決勝までをCMをはさまず一気に伝えた。ゲストとして観戦していた乃木坂46の金川紗耶さん、田村真佑さんが「速い!」「すごい!」と歓声をあげたり、「クラッシュからの立て直しが素晴らしい」と興奮の観戦コメントをしたりして盛り上げた。
決勝では小松選手が第1ヒートをクラッシュ後に華麗な復活フライトを見せて先勝したものの、第2ヒートでスタート直後に機体を落下させ上関選手に勝利を譲った。0.01秒を競うエアレースの決着は最終の第3ヒートの行方次第となる息の詰まる様相となった。第3ヒートは上関選手がスタートダッシュに成功。小松選手が0.01秒差で追いながら、dTVタワーのゲートに激突し立て直しを余儀なくされた。上関選手はその間に安定した疾走を見せ、48.581秒でゴールに飛び込み、2代目チャンピオンの座を獲得した。
レース終了後にFPVゴーグルをはずした上関選手はインタビューに「これが本当の緊張だと思いました」と喜びととともに、極度の緊張から解放された表情を見せ、選手が戦ったプレッシャーの大きさを物語った。
終始盛り上がった大会は株式会社NTTぷらら、株式会社NTTドコモ、DRONE SPORTS株式会社の主催。コースにはdTV、株式会社イースト・グループ・ホールディングス、ミクサライブ東京、株式会社カスタマーリレーションテレマーケティング、ワールドキャリア株式会社といった各スポンサーの名前やロゴがあしらわれたゲート、設備が配置されレースと会場を彩った。。
地上波で3月21日に放映された熱戦の様子は、3月26日午前0時からdTVで配信される。視聴サイトには大会公式サイトからもアクセスできる。
国内トップレーサー8人が頂点を目指す屋内ドローンレース大会「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」は3月16日、無観客で行われ、大熱戦が繰り広げられた。この日のために設定されたダイナミックなコースには、高さ18メートルの「dTVタワー」など攻略すべき数々の工夫の凝らされた設計が施され、出場選手の力を待ち受けた。各選手は急上昇後の急降下を含む難コースに全力で挑んだ。色とりどりのライトで演出されたコースは機体の華やかさを際立たせ、選手の奮闘を歓迎した。昨年覇者の鈴木匠選手は? 初出場の高梨智樹選手、齋藤三佳選手は? 最年少の上関風雅選手は? 最初から最後まで息をのむ展開となった大会の様子は、3月21日(日)にテレビ東京系列6局ネットで放送される。
「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」はDRONE SPORTS株式会社、株式会社NTTぷらら、株式会社NTTドコモの主催で行われた。昨年の初開催で国内最大級の屋内ドローンレースとして知られるようになり、今回の開催で2年連続だ。
大会は8選手が2人ずつ1対1で、どちらがゴールに先に飛び込むかを競う。3本(3ヒート)勝負のうち、2ヒートを先取したら次のラウンドに進む。2選手ともクラッシュした場合は、スタートから進んだ距離の大きさで勝敗を判定する。
コースは光の演出で美しく彩られ、銀河を旅する「惑星間飛行」の世界観を演出していた。高輝度LEDを搭載した通常の1.7倍の大きさの機体が疾走する様子は、今大会のテーマである「閃光のリミットレスフライト。」を表現し、居合わせた会場関係者からは、「レースだけどアート」との感想が聞かれた。実力は十分な8人のうちセミファイナルに進出した4人とは? ファイナルを戦った2人とは? 優勝は?
大会の様子は3月21日午後4時から、テレビ東京系列の6局ネットで地上波放送される。その後NTTドコモが運営する「dTV」、テレビ東京スポーツ公式YouTubeでアーカイブ配信する予定だ。生配信視聴アプリ「FanStream」では地上波放送にあわせて出場選手たちによる座談会を配信する。視聴者はコメント投稿やアニメーション付きアイテムを使った投稿ができる。番組では乃木坂46から金川紗耶さんと田村真佑さんがゲスト出演し大会を盛り上げる。
・大会公式サイトはこちら
・番組公式サイトはこちら
「ドローン前提社会」の実現を目指す慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの副代表として、人材育成、研究、開発、社会実装など幅広い活動をこなす南政樹氏が、いま気になるキーパーソンを迎えて気の向くままに、自粛、忖度ほぼ抜きでしゃべりつくすヒヤヒヤものの企画「みなみの部屋」をスタートさせることにしました。今回のゲストは、ドローンレーサー元日本代表で、株式会社ドローンエンタテインメントの代表、横田淳さん。全国の桜を空撮し日本の素晴らしさを世界に発信する「桜ドローンプロジェクト」の活動にも精力的です。好奇心の塊のような2人による、縦横無尽、自由奔放なエンタメ論議をお届けします。(対談は外出自粛要請前に行われました)。
南氏 本日はよろしくお願いします。ドローンのエンタメとしての可能性を考えるときに、日本のドローンレースをけん引してきた横田さんにお話をしたいと思っておりました。一番知りたいのは、ぶっちゃけ、ドローンレースってどうなんですか?というところです。
横田氏 こちらこそよろしくお願いします。
ぼくが感じるのは、世界の事情はほぼ一緒である、ということです。よく日本では収益になっていない、と言われますけど、どの国でもほぼ同じです。日本に限らず世界の多くで収益にはなっていないし、収益を生む市場も形成されていないと思っています。どのレースも開催は協賛頼みで、そこが主催者やオーガイナーザーの悩みです。ぼくはレーサーとしてレースに参加したり、最近までJDRA(一般社団法人日本ドローンレース協会)に参画したりしていて、世界の団体と交流し、ディスカッションをしてきましたが、途中で退場した団体もありますし、課題はどこでも山盛りです。
南氏 競技人口が増えない要因としては何が考えられますか?
横田氏 複合的なものだと思います。まずドローンの特性として、物理的に飛ぶ、という点が挙げられます。バーチャルのeスポーツにはない危なさがドローンレースにはあって、それがきっかけとなりにイベントの開催を躊躇する声はよく耳にします。
何よりも大前提となる遊ぶ人が少ない。時間があればタイニーウープで遊ぶ、とか、聞かないじゃないですか。DRL(The Drone Racing League)や、DCL(Drone Champions League)などの大会はあるんですけど、これはドローンレース競技のピラミッドでいえば頂点です。日本のレーシングチーム「RAIDEN」が海外に進出していますが、それも頂点の話です。頂点が先行しているのです。この頂点の層の活発化と並行して進めるべきなのが一般の層の広がりです。実際に、「このままだと裾野が広がらない。」と、いろんな団体が気づきだして、いま教育に力を入れ始めている状況です。なんとか母数を増やそうと取り組んでいます。
南氏 裾野という意味でいうと、田村市(福島県の市。慶応義塾大学SFC研究所は同市と2016年12月にドローン活用に関する連携協力協定を結び、ドローン利活用のために大学と自治体が連携協定を締結する先駆けとなった)で高校生や小中学生にドローンを教えていると、レースをやりたいっていう生徒、児童は多いんですよ。でもアマ4(第4級アマチュア無線技士)を取らなきゃいけないという理由で、ここで離脱が起きる。海外の状況とかを考えると、これは由々しき事態だな、と思っていて、どうにかしたいと常々思ってきました。それと、ピラミッドの頂点ができたのちに、アニメで人気に火がついて裾野が広がるという形もあります。段階的なアプローチもあっていいのかもしれない。
南氏 エンタメを考えるときに、これはドローンレースに限らないのですが、どうしても収益につながらないと運営が難しい面がありますよね。産業利用であれば収益と一体なので分かりやすいのですが。横田さんはXFLAG PARK(ゲーム、音楽、スポーツなど幅広いステージやアトラクションを融合させたLIVEエンターテインメント。2019年は千葉・幕張メッセで開催され、ドローンシューティングが初導入された)にも関わりましたが、そういう発想だったのですか?
横田氏 イベントの関係者とは2015年からレースを一緒に開催してきた間柄です。ドローンレースはどれだけ派手に演出しても、あるいはどれだけ盛り上げるMCを入れても、結局のところ、ルールが理解されないと、オーディエンスは「やりたい」とは思わないし、あの人を応援したい、とも思わないんです。ほかのスポーツのように感情移入しにくいんです。そこでちょっと趣向を変えてみようか、といって、やってみたのがあれです。
南氏 なるほど
横田氏 いったんゼロベースで考えることから始めました。みんながドローンを使った遊びで楽しめるものはなんだろう? というところからスタートして、その中で、操縦してもらおう、とか、どう操縦させるのか、みたいなことを考えて、UFOキャッチャーがいいんじゃないか、とかいろいろなアイディアが出た中で、シューティングバトルにたどり着きました。シンプルにドローンを撃ち落とすゲームです。ゲームのシンプルさがとても重要だなと思ったんです。万人が理解できて、多くの人が「これ、おもしろね」って思ってくれて、その中でドローンレースも盛り込んで、「ドローンレース、ヤバい!」ってなる。そんな順番を考えました。
実際、手ごたえはありました。たとえばバスケットボールは初めて見た人でも、「あのゴールにボールが入れば得点になるんだな」って分かるじゃないですか。ドローンレースにもそのシンプルさがあるといい。はやるものってたいていシンプルですよね。ドローンでも渋谷の道玄坂の上からスクランブル交差点をゴールにして直線だけのスピードレースができたら熱いんじゃないかな、などと考えてます。
南氏 スピードを単純に競う、みたいな?
横田氏 そうそう。最後、ゴールでは壁に激しく爆音でぶつかる前提(笑い)。緊張感も高まるし、そのときの風だとか運が左右するという要素もあるし、声援がプレッシャーになるという要素もある。シンプルで深い。
南氏 エアレースのような最近話題になっているエクストリームスポーツも分かりやすいですよね。
横田氏 その分かりやすさが、大事なんだと思うんです。ぼくはどっぷりドローンレースにつかっているので偏っているかもしれませんけど、新しく始める人や、それまでにまったく関わったことのない人には、ドローンは相当ハードルが高いもののはずなので。ただ、ホントは調べれば分かるんですけどね。「どこで飛ばせばいいんだろう」とか。
南氏 それはそれでありますね。おもちゃのドローンを買って「どこで飛ばしていいですか」という質問はよくぼくも受けますね。許可がないことを気にする人も多い。二極化しているかもしれませんね、やってみる人と。やらずに手っ取り早く答えを知りたがる人と。調べれば分かるんだけど。
横田氏 調べない人、いますよね。一方で彼らは、「おもしろい」とか「いいな」と思えば突き進むんですよ。ということは、ドローンが生み出す魅力は、彼らにとってはまだ小さい、ということかもしれない。ぼく自身は「おもしろい」から突き進んだのですが、ほかの人にはそうでもないということはあり得る。ぼくにはドローンで撮影した映像はすごくおもしろいんですけど、そう思わない人は、その映像をみても「で?」みたいな感じになる(笑)
南氏 「おもしろさ」や「すごさ」の感じ方には差がありますね。
横田氏 ありますね。ぼくはいま、全国の桜を撮影する「桜ドローンプロジェクト2020」という企画を進めているんです。
<桜ドローンプロジェクト2020=日本全国の桜を4Kドローンで撮影し世界に発信するプロジェクト。「桜を鑑賞する」という日本の独自文化をドローンの活用でそれまでにない視点で表現することを通じ日本にある地方の美しさを発信する>
横田氏 幅広い年齢層のクリエイターと一緒に作業をすることがあるのですが、20代前半の方とか15歳の動画クリエイターに動画作ってもらったりするのですが、「桜って別に興味ないっスよ」みたいな(笑)。桜を撮りに「ここ行くよ」って言っても、「ぼくはだいじょぶです」って(笑)。そのギャップを実感しています。
南氏 桜への思い入れの強さは、卒業の回数が影響するかも。年齢が高くなってから思うことが出てくるかもしれない。
横田氏 年齢だったり、それまでの経験だったり。
南氏 そういう層も含めてどうアテンションをとるのか、ですね。たとえば300メートル上空まで一気に上昇させるまでの時間を競うとか。速いと「すごい」と思ってもらいやすくないか。どう測るかは考えないといけませんけど。あと、絶対に自分じゃマネのできない神業を組み合わせないとクリアーできないレースとか。
横田氏 ぼくはドローンについては、大きくゲームチェンジする必要があると思っています。ふたつ軸がありまして、ひとつは、新しいことをやる。もうひとつが、圧倒的に認知数を増やす。特に認知が不足していると感じます。いま手掛けている「桜ドローンプロジェクト」も、そういう思いの中で企画しました。全国各地に関わって頂いて、それを世界に発信して、話題を作りたい。一方、レースはレースでやります。やっぱり、おもしろいから。ただ、ピラミッドの裾野を広げるのは今のドローンレースではない。
南氏 運動会ぐらいシンプルな競技があればいいんですけどね
横田氏 そうそう。
南氏 最近の運動会は、危ない、という理由で競技がなくなっているものもあるんですが、たとえば棒倒しとか騎馬戦とか。でもあれ、シンプルですよね。勝ち負けがはっきりすると、見る人も「がんばれ」とか感情移入をしやすくなる。
スポーツって、見る、する、支えるのキーワードがあるんですけど、「見る」の部分がもうひとつ欠けていることがあるのではないかな、という気がしています。特にドローンレースではドローンが小っちゃいし速いしで、慣れている人や視力のいい人じゃないと何が起きているのか分からない。画面を用意してたくさん工夫を重ねておられることも存じ上げてはおりますが。それとは別に、シンプルに、「よーい、ドン!」で一斉にバーンっとスタートして、100メートル先のゴールに飛び込んで、勝ち!みたいな、そういうシンプルな種目があると違うんじゃないかと。
横田氏 そうですね。それに加えるとすると、「努力すればトップになれるんじゃないか」っと思えればなおいいと思います。ぼくももともとは目視でドローンを飛ばしていて、FPVはやっていなかったんです。やりたいな、と思ってシミュレーターをやりまくったんですね。そしたらある日シミュレーターで「世界ランク1位」みたいなのが出たんです。まだ実機で飛ばしたことがないのに。それで実際のレースに出てみたらそこで4位。その次の大会で1位。そこで「あれ? もしかしたらいけるな」って思えたんです。そのとき、ぼくですら、やったらいけるんだ、と思えたんです。動体視力がいいわけでも、ゲームをやっていたわけでもないですし、ラジコンをやっていたわけでもないぼくですら、という意味です。運動会の棒倒しとか玉投げにしても、工夫したら俺うまいことできるんじゃないか、って思えるじゃないですか。
――レースには「あこがれが足りない」という話を耳にします。ファンがふえるための戦略ってなんでしょう?
横田氏 いまぼく「新日本ドローンレース協会」をたちあげようとしているんです。
南氏 イノキ的な響き・・・(笑)
横田氏 もともとぼくがやりたかったことのひとつに、「ライセンス化」があります。いまのドローンレースでは、トップを目指そう!と声をかけてみても、初心者にとってはトップまでが果てしなく遠くて、目指しにくいな、って感じちゃうんです。集まってくるとしたら、お金や時間に余裕がある人。子供たちが「ぼくもやりたい」って思える環境じゃない。そこで、目標を作ることが重要だと思って、そのためにライセンスがあればいいと思っているわけです。
自動車のモータースポーツでも、国内の競技会やレースに出るにも、世界のレースに出るにも必要です。それがいったん目標点になります。まずは国内のB級を取って競技会に出場して、次に国内Aを取ると国内のレースに出られて、となります。そのあと国際を取ろうとなる人もいるし、海外には興味がないから日本でやりたい、という人もいます。そのまま踏襲するつもりはないけど今の時代にフィットさせた環境をドローンレースでも作りたいとぼくは思っています。
ライセンスは国交省の認定も取れればいいとも考えています。自作機にも、バッテリーの保護カバーや、プロペラガードをつけるなどの安全基準を設ける。自作しようとしても、レギュレーションが任意に設定されているために、特定のパーツや機体を買わないとできないような状況を変えたいんです。マニアにはいいかもしれないですけれど、一般に広げるには国交省認定などを設けたほうが分かりやすい。
裾野を広げるという意味では、アニメがもたらす波及効果も大きいと思っています。ドローンレースはよくミニ4駆に例えられるんですが、ドローンは社会的、産業的、教育的な価値を考えるとそれ以上だと思っています。それに、ミニ4駆がはやったときと今とでは、拡散させる力もテクノロジーも全く違います。
南氏 先ほどもちょっと触れましたが、ぼくもアニメによるdeployの可能性にはずっと注目しています。実際にアニメがきっかけではやったものも、スポーツでは多いですよね。野球、サッカー、バスケも。あらゆるスポーツが通ってきた道だと思います。産業にも結び付けやすいし、パイロットのセカンドライフにもつながる可能性があります。その意味でもやっぱり、分かりやすさは大事だと思うんです。
100メートル競走みたいなものは機会があればぜひいっしょにやりませんか? たとえば、ぼくらが毎年開催している「UAVデモンストレーション」というイベントがあります。屋外で産業機を飛ばすショー仕立てのイベントです。出場チームは、たとえば30分の時間をさしあげて、その時間の使い方について自分たちでシナリオを作ってもらいます。おぼれている人を助ける、というシナリオなら、うち(慶應義塾大学)のライフガードのメンバーの学生を動員して、かれらを水難者にみたてて救命胴衣を適切な場所に落としてみる、といった具合です。そういう場で、やってもらえると本当にありがたい。UAVデモンストレーションの趣旨は「ドローン前提社会に向けた理解と共感」を得ることです。単にビジネスショーとしてメーカーの機体のデモを見るだけじゃなくて、ギネス記録にチャレンジとかメーカーが本気出してスピード競争に挑戦してみるとか、ドローンの可能性を認知してもらうイベントにしたいと思っています。
南氏 ドローンが危ないものであると思われがちなのも、ドローンをよく知らないからということが大きいと考えています。福島県の南相馬でドローン物流の実験が行われたときには、初日こそ地元のおじいちゃんが指をさしてドローンが来た、みたいな反応をしていたんですが、二日目からは反応を示さなくなってきたというんです。当たり前になるから。そうなってくれればいいなと思うんです。そのためにも飛ばす機会を増やしたい。
横田氏 ほかの産業に比べてドローンは認知してもらう機会が極端に少ないですね。
南氏 ドローンで農薬散布をすると今でも毎回、通報されます(笑い)。そのたびに顔なじみのおまわりさんがやってくるので「おれだよ」ってあいさつをさせて頂きます(笑い)。飛ぶ回数が増えれば慣れてくるかな、とは思うんですけど。とにかく目に触れさせるということをやらないといまのまま変わらない。ぼくらは田村市(福島県)ではドローンの体験会をしたり、小学校向けにドローンを使ったプログラムを教えたりしているんですけど、その中では経年変化を追いたいと思っています。今は、「ドローンを見たことがある人?」って言うと、パッと手が挙がる。「触ったことがある人?」って聞くと、それが半分ぐらいになって、「持っている人?」で1人とか2人とかが残る感じです。これがどう変わるのか興味があります。
田村市ではドローンが当たり前になりつつあります。昨年(2019年)10月に各地に大きな災害をもたらした台風19号がありましたが、市の職員が率先して「ちょっとドローン、持ってくわ」って言って、被災状況の調査に出かけたんです。
横田氏 いいですね。
南氏 ぼくも「すごいね、それ」って言ったんですけど、当事者はそのすごさは認識しておられないんです。田村市は「ドローン前提社会」をつくるため、実験的に取り組んでいるところがあるのですけど、そのたむらモデルを大都市、東京とか、神奈川とかでも応用、活用できたらいいな、と思っていまして。
横田氏 ドローンの遊びって全てにおいて「善」なんですよ。
映像作品を作るにしても、ドローンレースをするにしても、子供たちがドローン体験をするとかにしても、やってると勝手に良い事につながる。産業にも、教育にも、レースにもつながります。その意味ではセカンドジョブも作りやすい。だから「あとから良いことが勝手についてくるから絶対にやったほうがいい」っていろんな子供や大人に言ってます。
桜ドローンプロジェクトも最初は「成功したら絶対面白い!」から始まったプロジェクトなのですが、40を超える自治体と協力して魅力を世界に発信しよう!っていつのまにか地方創生・日本文化の世界発信プロジェクトになっているんです。
ドローンレースにしたって、過去にぼくらが開催するマイクロドローンレースにほぼすべて参加してきた小澤諒祐くんは中学生で米津玄師のPVまで撮っちゃって。こういうことが起きるのは当然本人の努力が一番だけど、「楽しい!が仕事になるっていうこと」を体現しているよい例だと思ってます。
――いろんな話が出ましたね。
南氏 まとめ、というわけでもないですけど、ぼくはとにかく、子供たちに、たくさん、飛ばしてもらいたい。ドローンが当たり前社会になると言い続けている以上、子供のころから当たり前にしないとダメだと思っています。これをやりたい。今も小学生向けのプロジェクトを進めているのですが、そういったものを横につなげるようなことを、大学というファンクションがせっかくあるので、やれたらいいかな、と改めて強く思いました。それと、イベントごとはひとつ、ぜひ、お手伝いしたい。ドローンレースをやって頂くことも考えられるし、UAVデモンストレーションで会場となる陸上競技場のトラックをひたすらまわるでもいいですし、一定の高さまでビューンっ!と急浮上するのもいいし、シンプルなものを、産業機の航空ショーと組み合わせることができたらいいな、と思います。
あとエンタメとしては、ドローンレースの楽しみ方には開発余地があることを実感しました。見方、楽しみ方が分かると、愛好者は増えます。ラグビーもそうでした。「ジャッカル」という言葉がこれほど一般に浸透したことは過去にないと思います。ナビゲートをしてくれる優秀な実況役がいるとわかりやすいかもしれませんね。
横田氏 分かりやすいMCって大切ですね。ぼくがやりたいなと思っているのはスポーツベッティング。従来とは異なる応援のインセンティブを生み出せると思っていますし、ドローンレースはテクノロジーを使っているメリットがうまく生かせます。たとえば、加速度とか、スピードとか、進んだ距離は測れるし、そうしたデータを可視化できます。変換すれば会場のイスをゆらすとか、選手の感覚を体験できたり、一体となって応援できたり、選手の心拍数がリアルタイムで伝わるとか仕掛けがあったり。そういうしかけをやりたいですね。
子供って、ほんとにきっかけ次第じゃないですか。なのでそれを大事にしたいなと思っています。以前、子供の前でドローンを飛ばしたときに、関係者がぼくのことをトップドローンレーサーであると紹介してくれたみたいで、それに感動した子供たちが「サインください」って言ってきたことがあったんです。子供たちにとっては、それがあこがれになるかもしれないし、今後の自分の夢を考えるきっかけになるかもしれない。少なくともポジティブな思い出をつくることができる。だからレーサーは、あこがれの存在になる努力をもっとしないといけないと思います。もっとカッコをつけていい。というかカッコつけないと。服装もおじさんクサい人、多いし(笑)。ぼくはもう2~3年で、ドローンレースの時代が来るって思っています。おもしろいし、役に立つし、ドローンの遊びはすべてが善だと思っているので、やったほうが良すぎるぐらい。
南氏 ドローンがインターネットと似てるのは、ひとつきっかけがあるとさっと広がる感覚がある点です。インターネットはWindows95で市民権を得て広がりました。日常的にドローンが使われる場面を見聞きしているとか、操縦機会があるとか、ドローンに置き換えたらこんなに便利になったという体験とか、そういうことが見えてくると、とたんに広がるのではないかと思うんです。デザインの仕方次第かな、とも思っています。タレントが出てくるということかもしれないし、ライセンスの話もありましたけれど、それが話題になることがあってもいいし、そういうことが複合的に効果を発揮すれば、この2年ぐらいで一気に開ける可能性があると感じます。
きょうはありがとうございました。
横田氏 ありがとうございました。ぜひ一緒にやりましょう。(完)
DRONE SPORTS株式会社、株式会社NTTドコモ、 株式会社NTTぷららは、3月31日に実施を予定していた千葉・幕張メッセで開催される大規模屋内ドローンレース「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」の生中継や配信を取りやめると発表した。
主催者は本来、無観客で開催し、「AbemaTV」での生中継のほか、関係各局のアーカイブ放送、配信を予定していたが、感染拡大が深刻化する中で、放送、配信を見合わせると判断した。
レースそのものは開催する方針で、主催者は「安全面に配慮しながら、素晴らしい大会となるようスタッフ一同全力で取り組みます」としている。
DRONE SPORTS株式会社、株式会社NTTドコモ、 株式会社NTTぷらら(東京)は、3月31日に千葉・幕張メッセで国内最大級の屋内ドローンレース「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」を3月31日に開催し、「AbemaTV」で生中継するほか、「AbemaTV」「GAORA Sports」「ひかりTV」「dTVチャンネルⓇ」でアーカイブ放送・配信 をすると発表した。
「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」の生配信は、AbemaTVで3月31日、16:00~20:00に開催する。岡聖章選手、上関風雅選手、鈴木匠選手らトップクラスのパイロットが参加予定。視聴者がスピードやスリルを最大限味わえるよう、DRONE SPORTSが開発した通常の1.7倍の大きさのレース機を使う。また、最先端デジタルアートを活用することでリアルとバーチャルを融合した世界観を演出し、新しい視聴体験の提供を目指すという。
開催各社は今回の開催を通じて、スポーツ観戦、エンターテインメント鑑賞体験の高度化に向けた知見を得て、将来的な5G活用の検討も進め、価値創造につなげる。
SUPER DRONE CHAMPIONSHIPは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、無観客で開催し、選手、運営スタッフなど関係者も最小限に絞り、マスク着用、アルコール消毒液の設置、換気の実施など徹底した対策を講じるという。
公式サイトはこちら