福島県田村市の福島県立船引高等学校(猪狩良一校長)ドローン科学探求部が、地域の農作物に深刻な影響を与えているクマ、イノシシなど鳥獣による農作物被害などについて、ドローンを活用した対策を講じる取り組みを進めている。12月11日には、地元の猟友会(福島県猟友会田村支部、同小野支部)を中心に構成する田村市鳥獣被害対策実施隊が部員に取り組みについて説明した。部員も鳥獣被害対策ドローンについての構成を発表した。船引高校ドローン科学探求部は今後、田村市と包括連携協定を結んでいる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)の支援、助言を受けて、鳥獣害対策に適したドローンの開発も視野に活動を進める。この日の取り組みは田村市の白石高司市長も視察し、「高校生が地域の課題に正面から向き合い大変心強いです」と目を細めていた。
船引高校ドローン科学探求部が鳥獣害対策に取り組むのは、ドローンを地域の課題に役立てることができる期待が高まっているためだ。田村市では今年5月、市内でツキノワグマが捕獲されるなど鳥獣被害不安が深刻化している。また対策にあたる鳥獣被害対策実施隊の高齢化が進み、捕獲の効率化を必要だ。一方、船引高校では2016年12月以降、田村市と包括連携協定を結んだ慶應義塾大学の教員、研究所員が定期的にドローンの担い手育成に力を入れており、すでに防災、観光振興などドローンを活用した取り組みに実績がある。
このため田村市は、船引高校ドローン科学探求部、慶応SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム、鳥獣被害対策実施隊と連携し、ドローンを活用した鳥獣被害対策に中長期的に取り組む方針を決め、12月に公表した。
12月11日の活動では、慶応による特別講座を開催。講座の中で田村市鳥獣被害対策実施隊が、獣害駆除の方法を駆除に使う猟銃の実弾を見せながら説明した。説明の中では、駆除活動がいくつもの法令に従って行われていること、狩猟捕獲と有害鳥獣捕獲との違い、地域での捕獲実績のほか、実施隊の高齢化の実態などについて説明を受けた。
この中で「どこにいるか分からないクマの所在が分かる、どこに向かって移動しているかが分かることは駆除にとって大切」などの話があると、聞き入っていたドローン科学探求部員がメモを取るなどしていた。
ドローン科学探求部員は説明を受けたあと、ドローンを活用する場合の、「最善の方法」について班ごとに考えを発表。えさでおびき寄せて捕獲したり動物園に引き渡したりする案や、害獣の苦手な音や光を発して近寄らせないようにする案などと、そのために考えられるドローンの案を示した。
中には、クマのエサとなるサカナをつりさげ、クマを誘導する水空両用ドローンを提案するユニークなアイデアもあった。提案した部員は「クマの走る速度より速く移動できる性能を持たせたい」などと説明し、見学していた市の担当者らものぞき込んでいた。
発表を受けて、この日の講座の指導を担当した慶應の下田亮研究所員が「みなさんが考えたアイデアを具体的に形にするため、ドローンを開発していきましょう」と述べ、今後、中長期的にドローンの開発も含めた対策に取り組む方針を示した。
この日の特別講座では、ドローンでカプセルを運ぶデモンストレーションも実施。3月の法改正で認められることになった、地上から1メートル以内の高さから積み荷であるカプセルを切り離す様子を示した。下田研究所員は「この方法は、ルールがかわるまではできませんでした。ルールはかわります。いまできないことでも、必要なことであればルールを変えることができます。ドローンがなかった時代のルールを、ドローンがある時代のルールに変えられる可能性も含めて考えていきましょう」と呼びかけた。
この日の取り組みを見ていた田村市の白石高司市長は「大変心強い」と述べ、「ドローンには大きな期待を寄せています。空を使うことで解決できる課題や、叶えられる望みは多いと思うので、田村で進められることは進めていきたいと考えています」と話していた。
慶應義塾大学と包括連携協定を結んでいる福島県田村市の県立船引高校で10月24日、ドローン特別講座が開かれ、ドローン科学探求部のメンバーがアメリカ国立標準技術研究所(NIST)の技能評価手法にチャレンジしました。初挑戦のメンバーもゲーム感覚で楽しみながら、上手な生徒をはやしたてたり、自分の操縦の課題を発見したりしていました。この日も指導役の慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が、チャレンジの内容や目的をていねいに伝え、生徒たちのいきいきとした表情を引き出していました。
NISTの評価手法は、文字が書かれたバケツ型の被写体を取り付けたツリーを使うところが特徴です。バケツは内側の底に円が縁どられ、その中にアルファベットが描かれています。正面からのぞきこむと円と文字が読み取れますが、のぞき込む位置がずれたり、距離を取り誤ったりすると、文字が読み取れなかったり、縁取りの円の一部が欠けたりします。バケツの大きさや向き、高さ、角度は予め決められています。技能評価では、時間や飛行方法の条件が与えられ、ドローンを飛ばし、カメラでバケツ内の文字や円をとらえられるかどうかを判定することになります。
船引高校には昨年秋、この評価のためのツリーが1セット導入されました。この評価はドローンの技能の評価として世界に広まりつつあります。船引高校は、これに沿った練習ができるきわめて珍しい高校といえます。ただ導入後には、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策の一環で活動休止が余儀なくされていました。今年秋以降、感染状況をにらみながら、活動を少しずつ再開したところで、この日は2020年度にはいって初めて、ツリーを使った練習となりました。
4月に新入部員となった生徒にとっては、ツリーを使った練習は初めてでした。初めてであったり、久しぶりであったりしながら、好奇心も手伝って作業はするすると進み、生徒たちは体育館に機材を持ち込み、ツリーを組み立てるところまで約10分で準備を終わらせました。背の低い株ふたつと、高さ3メートルのツリーひとつを並べたコースができると、まずは小型のカメラ付きドローンで、3チームに分かれて、バケツの中の文字をとらえる練習で腕をならします。あちこちから「読めた!」「円が欠けてる!」と声があがります。「もうちょっと左」などと励ます声も混じり、体育館の中は練習が進むにつれて活気が満ちてきました。
この日のハイライトは、決められたバケツの文字を読み取ったうえで、離陸から着陸までの時間をできるだけ1分に近づける「1分チャレンジ」でした。機体は学校で持っているPhantom4です。このチャレンジでは、初心者であるなど不慣れなチャレンジャーほど、ゴールまで急ぐことに専念しがちですが、実は早ければいいというわけでもないところがキモです。器用に読み取れる操縦者にとっては、着陸までの時間を1分に近づけるためには、同じペースを保てるかどうかが重要になります。
準備が整ったところで順番を決めて、チャレンジをスタートさせると。最初の生徒が離陸からなめらかに操縦し、文字もとらえ、無事に着陸させて、いきなり1分2秒の好タイムをたたきだしました。順番待ちの生徒から「おおっ」「うますぎるっ」などと声があがりました。実際、これが、この日の最高タイムとなりました。ただ、そのほかの生徒も実はかなり手馴れていました。この日の二番手の成績は1分8秒。それに1分10秒台も複数いました。最も時間がかかった生徒でも2分を超えることはなく、練習量が多く確保できない中でも、この先さらに上手になる可能性を実感できました。
練習の最後に南氏は、この日の取り組んだNISTの評価手法が、現在、世界中に広まりつつあることや、飛ばし方にいくつもの種類があることを説明しました。その中で、「世界中に広まりつつある方法であるということは、これで獲得した技能評価は世界中どこにいっても通用するということになる可能性があるということです。またツリーを使う飛ばし方には、オービット、スパイラルなどいろいろありますが、今回チャレンジしてもらったのは、並べられたツリーの外側を周回するトラバースという方法です。時間があればいろいろな方法で練習をしてみると楽しいと思います。最後の1分間チャレンジでは、より速くということよりも、どれだけ滑らかに動かせるか、というところが重要です。そんなことも頭に入れながら練習してみてください」。と伝えました。
また、「学期の終わりあたりで実際に技能レベルを測ってみたいと考えています」と、生徒たちのチャレンジ精神を刺激しました。また田村市の美しい紅葉を撮影してみることや、学校を撮影してみることなども提案しました。
船引高校のドローン活動は2016年12月にスタートして、あと少しで丸4年になります。船引高校の地元である田村市と、慶応義塾大学との連携協定をきっかけに人材育成の一環として始まった活動は、船引高校の大きな特徴のひとつとなり、地元の田村市の人々や、周辺自治体から一目も二目も置かれるようになりました。DroneTribuneは、船引高校をはじめ田村市の取組を折に触れて見て、伝えて参りました。これからも田村市や船引高校の取組に声援を送ってまいります。
慶應義塾大学と包括連携協定を結んでいる福島県田村市にある福島県立船引高校で、9月10日、「ドローン特別講座」が開催され、船引高校でドローンに関連する活動を展開している「ドローン科学探求部」の1~3年生が、ドローンの操縦訓練に励んだ。この日も、慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が直接手ほどきをした。中には南氏の短い助言でコツを飲み込み短時間で上達する生徒もいて、ドローンの取組に積極的な田村市での担い手育成がまた一歩、進み始めた。
この日は同校の体育館を会場に、ドローンの操作に親しんだ。講師の南氏が参加者に与えたテーマは「〇を描く」。体育館の床に描かれたバスケットボールのコートなどを利用して、トイドローンが円を描くように飛ばすことを求めた。初心者は空中に停止させるところから、手元のプロポの左右スティックの倒し方や、スティック操作に応じた機体の反応を理解させていった。
経験者には、「ノーズ・イン・サークル」や「8の字」などの飛行を求め、技量の向上を促した。
講座の途中で、周囲と距離を取る必要性や、その距離の確認方法など、飛行させるために知っておくべき基礎知識もまじえた。
トイドローンのあとには、Phantom4も操作。屋外で撮影をするなどの活動により近い飛ばし方について指導を受けた。この日は、過酷な現場でドローンを運用している専門家も南氏の補佐として学校を訪れ、生徒の指導を手伝った。
福島県立船引高校は、慶大が田村市と2016年12月に協定を締結して以来、ドローン指導を取り入れている。南氏を中心にドローンの専門家が学校に出向き、直接、指導をする「ドローン特別講座」を提供しており、これまでに映像クリエイター、ドローンレーサーら第一線で活躍する専門家が指導に関わってきた。
船引高校はそれ以外にも、独自にドローンの練習をしたり、撮影をしたり、交流希望を受け付けたりと活動の場を増やしてきた。田村市内で開催された音楽フェスで飛行させたり、市内の総合防災訓練で撮影を請け負ったりとか領域も拡大させてきた。卒業生が県内のドローン関連企業に就職したり、農薬散布の資格を取得したりと、社会に役立てる道筋も描き始めている。
船引高校の高校案内の表紙が、平成30年、令和元年、令和2年とドローンで撮影した写真が採用されているのも、ドローンが特徴であることを示しており、船引高校のドローン活動が地域の特徴を形作り、住民の誇りとなるなど、さらに地元の活性化に貢献することが期待されている。
ドローンの利活用に力を入れる福島県田村市にある福島県立船引高校で11月16日、ドローン特別講座が開かれ、受講した高校生が機体を空中で回転させるピルエットなどの基本練習に励んだ。指導をしたのは田村市と連携協定を結んでいる慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表。南副代表は次回以降、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の技能評価にそった練習を進めることを伝え、受講生たちは気を引き締めていた。
この日の講座では前半、体育館でトイドローンを使ってピルエットを中心とした基本技能の練習をした。そのさい南副代表は、体育館床面のバスケットボール用のフリースローサークルをなぞるように飛ばして90度ごとに静止させて、その場で回転させる、などの訓練メニューなどを示した。センサー類が機体の姿勢維持を助けてくれる産業用の機体とは違い、練習用は操縦者の腕が試される。生徒たちは楽しみながら機体を操縦した。
その後、指が慣れたのを見計らって、ピルエットをさせながら機体を上昇させたり、下降させたりと派生操作の練習に取り組んだり、生徒ひとりひとりがオリジナルの動きを編み出すように取り組ませたりと、楽しみながら自在に操ることができるための練習メニューをこなした。
後半は、校庭でPhantomを活用した実践向けの練習を実施した。3班に分けて、班ごとに校庭にあるサッカーゴール、タイヤなどのターゲットを設定。それぞれのターゲットをノーズ・イン・サークルなどの方法で被写体を中心にとらえて撮影する訓練を実施した。生徒たちはかわるがわるプロポを手に取り、画面の中心に被写体をおさめる撮影に取り組んだ。
練習終了後、南氏は次回以降、アメリカ国立標準技術研究所(以降、NIST)の技能評価にそった練習を実施することを伝えた。南氏はこの方法が、空撮で事業などを展開する株式会社ヘキサメディア(埼玉県川口市、野口克也代表)が日本で初めて、10月28日に埼玉県川口市で消防隊員、救助隊員を対象にした訓練で取り入れたことを伝え、「高校でこれを取り入れた訓練をしているところは、おそらくないでしょう。今後、国際的なルールになると思われるので、みなさんには日本の高校生の先駆けとして、これに取り組んでほしいと思っています」と話すと、高校生は気を引きしめた。
この日の特別講座は船引高校ドローン部の部員らが受講し、その様子を菅井友宏副市長はじめ、田村市職員、船引高校関係者、自治体関係者らが見守った。生徒たちの練習に様子を見守っていた学校関係者は「うまくなりましたよね」と目を細めていた。
ドローン部には現在13人が在籍している。ドローン特別講座は慶應義塾大学と田村市が産業振興、地域活性化などについて2016年12月に包括的な連携協定を締結したことをきっかけに、人材育成の取り組みの一環としてスタートした。当時は部活動でなかったが、近隣のドローン事業を展開する企業に就職した卒業生もいるなど、市内ではドローンに取り組む学校としての認知度が高まっている。
これまでに防災訓練、地域の祭り、音楽フェスなどの行事の記録撮影を引き受けたり、最近では、市内の標高718.6メートルの片曽根山で秋色に色づいた風景を空撮したりと、対外的にも精力的に活度している。
船引高校ドローン部の部長、赤石沢響さん(3年)は、ドローンをやっていてよかったかどうかをたずねると、迷いなく「よかった」と答える。「大人からドローンについて聞かれることも増えました。どう飛ばすのか、どこで飛ばせるのか。そういう質問に答えることで会話が増えることもあります」とその理由も明確だ。近く、2年生に部長を引き継ぐことになるが「今は1年生もがんばってくれています。これからも船引高校のドローンがこれからもずっと続いてほしいと思います」と話していた。
船引高校での特別講座に限らず、田村市では慶大と提携して以降、地元でドローンに取り組む活動隊「ドローンコンソーシアムたむら」が創設されるなど取り組みが広がっている。コンソーシアムでは、NPOや企業などが取り組みを進めるなど、地域主体での活動が活発化している。
ドローンの利活用をめぐっては、利用促進と乱用防止のそれぞれの観点から着地点を模索する議論や意見交換が続いているが、田村市ではドローンの利用を歓迎する風土が広がりつつある。慶大との連携協定の締結が、地元による自律的な利活用につながる一連の循環を創出する流れは「たむらモデル」と呼ばれ、今後、社会受容性を育むモデルとしても重要な参考例となりそうだ。
慶大ドローン社会共創コンソーシアムは9月13日、福島県田村市役所で9月10日から取り組んできたフィールドワークの成果を発表した。学生ら16人が4グループに分かれ、それぞれのテーマで、テレビコマーシャルフィルム風の15秒の動画と、それよりも少し長い1分の動画に仕立てた。当日は発表を聞きつけた市民ら約25人が参観に訪れた。田村市からみれば“よそ者”の学生が作った映像は田村市への愛情にあふれ、来場者からは「すばらしい作品」「感動した」などの声が相次いだ。映像作品は今後、市の玄関口であるJR船引駅前のディスプレーで公開するほか、地元のドローン活動隊「ドローンコンソーシアムたむら」がSNSを活用するなどして、海外からの渡航者に対し「ドローンツーリズム」をアピールし呼び込みに力を入れる。
今回の発表会を企画した慶大ドローン社会共創コンソーシアムは、ドローンを活用した地域の産業振興に取り組んでいる。田村市では人材育成、農業への活用などを多角的に進めてきた。田村市がドローン関係者の間で、ドローンに理解のある受容性の高いまちとしての認知度が高まり、関係者が田村市を訪れる機会が増えているのもこうした地道な取り組みの積み重ねの成果でもある。慶大はこうした産業振興のサイクルを「たむらモデル」と位置づけ、地域振興の体系化に取り組んでいる。
発表会の冒頭、慶大ドローン社会共創コンソーシアムの古谷知之代表が、「短期間ではありますが田村の各地に協力を頂きました。学生もそれをありがたく感じて、一生懸命動画を作りました」と経緯を説明した。実際、学生たちは発表当日の午前4時ごろまで編集作業に没頭していたという。南政樹副代表は一連の取り組みを「ドローンツーリズム」と位置づけていることを説明。田村市で取り組んできた人材育成、農業に次いで、ドローンを観光振興に役立てる取り組みであると伝え、「田村のみなさんには、こうした取り組みが続けていることを頭の片隅に置いて頂けると大変助かります」と地元の理解と協力を求めた。
発表では参加大学生が4つのグループに分かれて実施。A班は海外からの渡航客誘致を目指し、ふたつの動画を製作した。ひとつは「景色」に焦点をあて、自作したBGMを背景に15秒でテレビのコマーシャルのインパクトを狙った作品で、もうひとつが、「見る人が“楽しい”を想像できるように」SNSでの拡散も念頭に1分に編集した動画だ。それぞれを発表したあと、「事前アポ。交流風景が取れたのではないか」と反省点をあげることも忘れなかった。
ここで田村市の菅井友宏副市長が会場を訪れて登壇し、「慶應大学の学生のみなさんには、おこし頂き、ありがとうございました。田村市の名所、施設を見て頂きました。編集作業に少しだけ立ち会いましたが、真剣に議論を重ねておられました。住んでいるわれわれにさえ気づかない田村の魅力を気づかせてもらえるのではないかと期待しています」とあいさつした。
このあと、B班は、ドローンのほかに小型カメラ、360度カメラも活用して、「ユニークなまち」と「人とのふれあい」を表現するように1分間に編集した作品を発表した。発表時に披露できなかったVR映像を、発表後に体験できることを説明し、声をかけてもらうよう会場に呼びかけた。C班は滝、川など「田村市の水」の魅力に絞って編集。班員がそれぞれの視点でまとめた。滝の勢い、穏やかさなど、水の表情を「ふだん見ている人では気づかない視点を見せられるように」15秒や1分の動画にまとめた。なおC班では石原匠さん(1年)が同じ素材を使いながら、市民や班員の笑顔をちりばめた作品に仕上げた。D班は外国から訪問者が抱くと推測される感情を「まだ見ぬ物語」として15秒にまとめることを試みた。映像から漏れたメイキング動画もBGMをつけて紹介した。タイ語のテロップを入れたものも作り、海外への拡散も意識した作りを強調した。
これらの映像では、赤いそばの実がなる畑、神社、田んぼアート、食事どころ、天文台、鍾乳洞、風車、滝など多くの田村市の見どころが紹介され、観覧した市民からは「これをたった2,3日で作るなんて驚いた。どれも素晴らしい作品ばかり」、「一生懸命に取り組んでくれたことが映像からあふれていた。田村への愛情を感じて感動しました」などと話していた。
会場からは「動画で魅力を発信する先鞭になるかもしれません」「田村市民でもよさをすべて知っているわけではありません。地元の子供たちが地元の良さを知り、やがて広くPRすることにつながると思いました。教育面でも活用を考えたい」などの発言があった。
参加した学生の一人でドローンのサークルに所属している中村光一さん(環境情報学部2年)は「ドローンを飛ばしていると地元の人が寄ってきて『それいくらなの』と声をかけてくれ、とても暖かく感じました。ドローンについては、まだ特別な思いを持っている人もいるかと思いますが、触れる経験を重ねていけば特別なものではなくなると思っています。ネガテフィブな印象を持っている人がいらっしゃることも知っていますが、今回のような取り組みを重ねることで、特別なものから一般的なものにできると思っています」と述べた。発表前はほとんど眠れていなかったというが、「とても楽しい4日間。ぜひまたきたいです」と声をはずませた。
那須蘭太郎さん(環境情報学部2年)も「飛ばせる場所が多いことはとてえがたい経験でした。ほかでも飛ばせますよ、というところはあるのですが、そこが気兼ねなく飛ばせる場所か、といえば、必ずしもそうでないことも多いのです。気を使ったフライトで撮影すると、映像にもダイナミックさが出なかったりすることがあります。でも田村市は違いました」と、ドローンに理解のある町ならではの価値を感じていた。また、ドローンを使える人を増やすために「ドローンは、機械に詳しくなくても、ITの知識がなくても、スマホと同じように使えることを伝えたいと思っています。ドローンが特別なものでく一般的なものになれば、楽しくて豊かになると思います。楽しいって大事なことなので、ぜひ『楽しい』を多くの人に味わってほしい」と話していた。
編集作業の最終局面で笑顔に切り替えた石原さんは、「田村ではふだんできない経験ができました。もともと笑顔の力を発信したいということが自分もここ最近のテーマで、思い切って途中で切り替えました。笑顔の力を伝える方々が世の中にいらっしゃいますが、この機会にこの動画を創れたことで、そんな人に一歩でも近づければと思っています」と充実した表情を見せた。
田村市は今後、動画をFBやHPほか、PRに活用できる場所で公開していく予定だ。
慶應義塾大学でドローン研究に取り組む学生と引率の教員らが、福島県田村市で、地元の見どころを探索し、映像にまとめて発信する取り組みにチャレンジしている。映像にはドローンも活用し、ドローンの利活用に力をいれる田村市らしさが表現される。本稿が公開される9月13日(金)の午前10時から、田村市役所でその成果を発表する。発表の様子は市役所でだれもが見ることができる。
参加しているのは、慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの代表、古谷知之さんのゼミ生、南政樹副代表が率いる自主活動グループ「ドロゼミ」の学生ほか総勢15人。一行は福島県田村市の観光宿泊施設「スカイパレスときわ」を拠点に9月10日から活動している。
初日の10日には田村市役所から、撮影に適しているとみられる珍しい花が咲く畑、地元に伝わる街道沿いの魔除け人形、400メートル続く杉並木、パノラマの絶景地、鍾乳洞、風車などの31のスポットの説明を受けたあと、グループごとにテーマや、取材計画、編集方針などを話し合った。
夕方には、ドローンの初心者、経験者も含めて、南ドロコン副代表から、操作の手ほどきや、撮影技法についての講義が行われた。ひととおりの知識を備えたところで、スカイパレスときわのテラスで、腕試し替わりにドローンをフライトさせ、操作の感触を確かめ、ドローンができることを確認した。
一行は翌11日、12日と、グループごとに立てた計画にそってフィールドワークを実施。現地からの報告だと、とりためた映像の編集作業など、発表の準備は12日の深夜まで続けられたという。成果は本日13日、市役所で公開される。
田村市は2016年12月に、慶大とドローンの利活用に関する連携協力協定に締結した。慶大がドローンの利活用で自治体と連携協定を締結する第1号が田村市だ。締結後は、市内にある県立船引高等学校でドローンの担い手を育成する「特別講座」を開催したり、市で開催された音楽フェスでドローンの腕を磨いた高校生が公式に撮影する活動の場を提供したり、地元の名産品のひとつでビール主原料のひとつであるホップの生育状況確認などの農業利用の実験をしたりと、田村市内でのドローンの取り組みを広げてきた。地元主導でドローンを普及させる「ドローンコンソーシアムたむら」も設立されて活発に活動をしているほか、今回の活動の拠点となっている「スカイパレス」も、株式会社ドローンエモーション(東京)が展開しているドローンのフライトエリア登録サービス「そらチケ」に登録されているなど、田村市はドローン関係者の間では、日本を代表するドローンを歓迎してくれる町として知られ始めている。