経営再建を目指すドイツのAAMメーカー、ヴォロコプター(Volocopter)は2025年11月18日、AAMの開発について、実運用に近い環境を再現する「サンドボックス・プログラム」と呼ぶ試験運用プログラムを2026年に欧州で開始すると発表した。対象機体は「VoloCity」と「VoloXPro」(「2X」から改称)で、型式証明取得と商用航開始を視野に入れた重要な工程と位置づけている。今回の発表は、昨年末の破産公表から今年3月の経営体制刷新を経て、改めて開発姿勢を示した形だ。
ヴォロコプターの発表によると、サンドボックス・プログラムは都市部と地域間を想定した実飛行で構成され、離着陸場での地上オペレーション、乗客体験、ポイント-ツー-ポイント(Point-to-Point)ミッション遂行手順など、商用運航を見据えた要素を盛り込む計画だ。運用データを蓄積し、同社が目指す型式証明取得に向けた準備を進める。
今回の取り組みにはドイツの救急航空を担うADAC Luftrettungがパートナーとして加わり、将来的な医療用途への展開可能性も含めて評価を進めるとみられる。
対象機体の一つであるVoloCityは、同社が都市空間でのエアタクシー運用を想定して開発するeVTOL型AAMで、乗客輸送を中心に据えたモデルである。もう一つのVoloXProは、600kg級の軽量eVTOLで、これまで「2X」の名前で公開されてきた機体をリブランディングした機体だ。同社はこれまでエアタクシーとしての都市内移動サービスを目指しており、都市内の短距離移動から郊外連絡まで幅広いミッションに対応する見込みだ。両機とも今回の試験で運航準備性の確認を進める。
ヴォロコプターは2030年までに複数の機体をサービス投入する方針を掲げてきたが、経営体制の変化によりAAMの発部隊に登場する機会が減っていた。今回の発表は改めてAAMの開発計画を進める意向表明で、2026年以降の事業計画の軸を明確化した形となった。実運用を想定したサンドボックス・プログラムを通じ、欧州でのエアタクシーサービス実装につなげる方針だ。
ヴォロコプターは昨年(2024年)12月26日に破産申請し、今年(2025年)3月14日、中国の自動車部品・機器製造で航空部門も持つ浙江万豊汽車有限公司(ワンフェン・オート・ホイール)のグループ会社でオーストリアの軽飛行機メーカー、ダイヤモンド・エアクラフト・インダストリーズが統合すると発表した。日本では2023年3月にVoloCityのフルスケールモックが大阪市で公開されたほか、同年12月12日には2X(現VoloXPro)が大阪・北港緑地でデモフライトを披露している。現在、経営再建とAAMの社会実装を目指している。
(参考)
DroneTribune記事「ヴォロ、中国系オーストリア社が統合」



昨年末に破産を申請したドイツのAAMメーカー、ヴォロコプターはJCAB(日本の国交省航空局)に申請している型式認証の申請について取り下げない方針だ。同社がDroneTribuneの取材に回答した。これまでに2年以上当局と良好な関係を構築しており、「今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もない」という。テスト飛行など必要な作業を続けながら、立て直しに注力し、弁護士をまじえて立て直しの方向を模索するとともに、昨年末から投資家とも接触している。
ヴォロコプターはDroneTribuneの質問に回答し、国交省航空局が申請を受理して手続きを進めている同社の2人乗りeVTOL型AAM「VoloCity(ヴォロシティ)」の型式認証(TC)取得について、申請を取り下げない方針を明確にした。航空局も受理した申請について手続きを継続する姿勢を示しており、当面は従来通り、TC取得手続きが進行む。
ヴォロコプターのTC申請については、国土交通省航空局(JCAB)、欧州航空安全機関(EASA)と日欧それぞれの航空当局が受理し、これに基づいて手続きを進めている。当局が受理したのは2023年2月21日だが、ヴォロコプターが申請したのはその前年(2022年)の末だ。これをふまえ、ヴォロコプターは「2年以上EASA&JCABと良好な関係を築いているうえで、技術説明、テスト飛行、書類の整理などを行なっております。昨年、大阪・関西万博での飛行が商用運航からデモ飛行に切り替わったことに伴い(TC取得を)急ぐ必要性が薄まり、プロセスを一時保留しておりますが、今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もありません」と話している。
一方、再建にも注力する。現時点で具体策はまとまっていない中、もともとコスト管理を徹底して対応を進めており、立て直す箇所の特定を弁護士とともにすすめている。「他社と比較し認証費用を半分以下に抑えている」ケースもある中で、EASA監査の75%を完了していて、当面は投資家との連絡も図りながら再建策構築に注力する方針だ。
ヴォロコプターがTC取得を目指しているヴォロシティは2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。海外製AAMの中では日本でなじみの深い機体のひとつで、2023年3月には、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開され、居合わせた来場者や通行人の搭乗体験を受け入れていた。もともと、大阪・関西万博で飛行を披露する機体に含まれていたが、2024年9月に飛行を担う4グループのひとつ、日本航空、住友商事グループが、運用機体をヴォロコプターのヴォロシティから、米国 アーチャー社(Archer Aviation, Inc. )のMidnight(ミッドナイト)に変更することが公表された。なお、運用機体変更のタイミングで、万博での運航チームそのものも日本航空、住友商事から両者が出資する株式会社Soracle(ソラクル、東京)に引き継がれている。



国交省航空局は1月6日、ドイツのAAM開発事業者、ヴォロコプターから受理している型式証明申請の手続きを当面、継続する方針を明らかにした。ヴォロコプターは昨年(2024年)末、裁判所に暫定的な破産手続きを申請しており、関係機関の対応に関心が寄せられている。航空局は、ヴォロコプターの破産を情報として把握しているものの、ヴォロコプター側から直接の報告や申請の取り下げなどの連絡は1月6日時点ではないという。航空局が申請者の財務状況を確認する決まりはなく、ヴォロコプターも事業継続姿勢を転換していないことから、当面は受理に従って手続きを進める。
航空局はヴォロコプターの破産について、同社による昨年12月30日の公表と、それをもとにした報道ベースで把握している。一方、破産に関する連絡や型式証明の取得申請に関する方針転換などの連絡はないという。航空局は「手続きにはリソース(労働、時間など)を投入しており、関心は持っている」ものの、ヴォロコプター側から方針を転換する意思表示などがないいため、「受理した状況が維持している前提で作業を続けることになる」という。
ただし、「型式証明の手続きは、航空局が一方的に行うものではなく、申請側(この場合はヴォロコプター)とやり取りをしあう」ため、その中で方針に関する意図が表明された場合には、改めて対応を検討する可能性がある。
ヴォロコプターは昨年(2024年)12月30日、4日前の2024年12月26日に、拠点のあるバーデン=ヴュルテンベルク州のカールスルーエ高等裁判所に破産手続きの開始を申請したことを公表した。裁判所は申請の翌日に暫定破産管財手続きを開始し、現在、管財人の下で対応を進めながら、事業を継続している。同社の公表文では「破産」に該当する英語をinsolvencyと表現していて、一般に資産を売却して、負債を返済しきれない債務超過の状態を示す。
日本では2023年2月21日に航空局がヴォロコプターからの型式証明の申請を受理したことを発表している。ヴォロコプターが申請した機体は「VoloCity(ヴォロシティ)」と呼ぶ2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。同社は航空局に申請した翌月の3月8日、大阪・関西万博でエアタクシーとして運航を目指す機体として、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開していた。2024年夏のパリ五輪会場の飛行を計画していたが欧州の航空当局EASA(欧州航空安全機関)から基準を満たさない個所があると指摘を受けたことなどから、ヴェルサイユ宮殿で「VoloCity」 の前のモデル「2X」を飛行させるなど計画変更を余儀なくされていた。その後、大阪・関西万博でVoloCityの飛行することになっていた日本航空、住友商事のチームが2024年9月に運用機体を変更することを表明していて、VoloCityは万博での飛行計画からはずれていた。
一方、市場投入を目指す姿勢は維持し続けていて、万博の飛行計画からはずれたさいも、引き続き商用運航を目指す方針を示していた。破産申請も事業継続をするための選択であったと言われており、同社は管財下で財務基盤の強化を目指しつつ事業継続を模索するとみられる。
<関連>
Volocopter破産申請:https://www.volocopter.com/en/newsroom/volocopter-files-for-insolvency-in-germany
航空局がTC申請受理(2023年):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001588330.pdf
大阪で実物大モデル公開(2023年):https://dronetribune.jp/articles/22336/



次世代エアモビリティ開発の独ヴォロコプター社は9月3日、経営体制の刷新を実施した。同社のアドバイザリーボード(諮問委員会)は、アドバイザリーボードのチェアマンに、前ダイムラーCEOのディーター・ツェッチェ(Dieter Zetsche)博士を任命した。またジーリーテクノロジーズ(Geely Technology Group=吉利科技集団)CEOのジーハオ・シュウ(Zhihao Xu)博士が新たにアドバイザリーボードのメンバーに加わった。ヴォロコプターの経営を2年間率いてきたダーク・ホーク(Dirk Hoke)CEOは本人の申し出により2025年2月に退任する。ホーク氏の後任CEOは今後、公表される見通しだ。
ディーター・ツェッチェ新チェアマンは任命を受け、ただちに就任した。ツェッチェ氏は就任にあたり「ヴォロコプター社とともに都市交通革命構築を支え、ドイツが21世紀もモビリティの先進地であり続けることに貢献することを楽しみにしています」とコメントした。ステファン・クローク(Stefan Klocke)前チェアマンや、マジド・ムフティ氏(NEOM Investment FundのCEO)は引き続きアドバイザリーボードメンバーにとどまる。
新たなボードメンバーとなったジーハオ・シュウ氏がCEOを務めるジーリーテクノロジーズは、中国の自動車製造大手、吉利汽車や、スウェーデンのボルボ・カーズ、ドイツのメルセデス・ベンツ・グループを傘下に持つ持株会社、ジーリーホールディンググループ(Zhejiang Geely Holding Group=浙江吉利控股集団有限公司)のグループ会社で、ダイムラーとともにヴォロコプターの株主でもある。「未来のモビリティは、道路上と空中とで生じます。相乗効果は明らかで、だからこそ、私の豊富な経験を提供できることを嬉しく思っています」とコメントしている。
ヴォロコプターは8月、オリンピック開催中のパリで、都市部での実践的な運用をためす運用ヴァリデーションフェーズの検証活動キャンペーンを終え、重要な段階を乗り越えた。パリで飛行した機体は「2X」で、今後、大阪万博での飛行が期待されるエアタクシー用「VoloCity」の開発を完了させ、欧州連合の航空当局、EASA(欧州連合航空安全機関)の認可取得を目指すことになる。
2年間経営を率いてきたホークCEOは「私のキャリアの中でこれほど短期間にダイナミックな会社の発展を経験したことはありません」「素晴らしい従業員を抱える偉大な新興企業を率いることができたのは光栄なことでした。2025年2月末までは、EASA認証の取得に全精力を注ぎ、ヴォロコプターの将来に不可欠なビルディングブロックを作り上げるつもりです」などと話している。本人が退任を申し入れ、アドバイザリーボードが受け入れた。
同社の発表はこちら:https://www.volocopter.com/en/newsroom/volocopter-to-undertake-leadership-changes




いわゆる“空飛ぶクルマ”を開発するドイツのヴォロコプター社(Volocopter)は3月8日、2025年に開催する大阪・関西万博でエアタクシーとしての商用運航を目指す機体「VoloCity」の実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開した。公開されたのは万博での飛行を目指し型式証明の申請をしているVoloCity 第4世代機で、飛行や安全などの性能、デザイン、快適性などで前世代機から全面的に進化した。DroneTribuneのインタビューに応じた同社のクリスチャン・バウアーCCOは「交通手段を拡張する機体で大都市・大阪に最適だと思います」と述べた。一般公開は3月10日から12日まで。
公開されたのはVoloCityの最新世代機の実物大モデル。利用者が乗る搭乗部は伸びやかな流線形で、天井から直径11.3メートルの大きな円形の輪が“天使の輪”のように広がり、18個の小型固定ピッチプロペラが取り付けられている。内装は大きな局面ガラスで覆われ視界が広がる。シートや、自動車でいうダッシュボードもツートーンでまとめられていて高級車の運転席に近い。ペダルもなく足元も広い。2つのシートの間にあるひとつのタブレットが唯一の機器だ。ただし公開機は、自動航行バージョンで、万博で飛行を予定している機体は、パイロットが乗るバージョンのため、操縦席にはジョイスティックのような操縦桿がつき、頭上の天井にスイッチ類が並ぶ。万博機と公開機とでは、そこだけが違う。
第4世代では飛行性、安全性、快適性など全面的に改善が施された。ドアの開き方や、乗る時のステップなど、利用者が乗る動作にも工夫が凝らされた。
VoloCityは電気で動き真上に浮き真下に降りられる滑走路を必要としないeVTOL型のマルチコプター機で、バッテリー9本を本体に積む。航続距離は35㎞で、混雑しがちな都市内での速やかな移動需要を見込み、エアタクシーとして運用するUAM(アーバン・エア・モビリティ)だ。離発着場で離着陸をすることを想定していて、大勢の来場が見込まれる万博会場と大阪中心部や主要観光拠点などに離発着場が整備され、航路が作られることが期待されている。
2011年に世界で初めて人を乗せて飛ぶことに成功した電動機で、現在は4世代目。最新機体は現在ドイツ国内で試験飛行を繰り返していて、2024年にシンガポールやフランスのパリで商用運航を始める計画で、その他にも多くの国で飛行が見込まれている。消費者への直接の販売はしない方針だ。
公開初日に行われたオープニングセレモニーでは、大阪府の山口信彦副知事が「2025年に万博が開催されます。商用運航をめざして実現に向けて一歩が進んでいると感じています。その折にこのお披露目会を開催して頂けて大きな意義があると思いました。われわれの空をこのVoloCityが飛ぶことをイメージできると思います。実現にはまだ課題がありますが、デモンストレーションではなく、定着をさせるつもりです」とあいさつした。
またヴォロコプターのクリスチャン・バウアーCCOが「日本とドイツにはものづくりに強みがある点や革新性などさまざまな共通点があると思っています。この公開の機会に、大阪の皆さまにわれわれのUAM、VoloCityを感じ、体験して頂けることはそれぞれにとってとても喜ばしいことです。企業紹介の動画をご覧頂きますが、次にPR動画を作る時には大阪を舞台にしたものになると思っています」などとあいさつした。
ヴォロコプターは「VoloCity」のほか、固定翼を備えたeVTOL型リフト&クルーズ機で100㎞の航行ができる「VoloRegion」も2026年ごろの完成を目指して開発中だ。ペイロード200㎏の物流ドローン「VoloDrone」や、運航管理を司るデジタルインフラ「VoloIQ」、UAMの離発着場である「VoloPort」などを含むUAMのエコシステム整備を進めている。2011年にドイツのブルッフザールで起業したスタートアップで、3月6日には積水化学工業株式会社が資本業務提携の契約を締結したと発表した。2月には住友商事株式会社が出資を発表している。2020年2月にMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社傘下の三井住友海上火災保険株式会社が業務提携をして以降、日本航空株式会社がCVCを通じた出資や業務提携したほか、東京センチュリーが出資やグループ会社を通じた業務提携するなど、日本経済界との関係が強まっている。
公開初日に会場のグランフロント大阪北館では、仕事や買い物でたまたま来た通行人が足をとめ、写真に収める様子が見られた。
DroneTribuneはヴォロコプターのクリスチャン・バウアーCCO兼CFOにインタビューをした。
――VoloCityを通じ、利用者にどんな価値を提供しますか?
バウアー氏 「新たな交通手段を提供します。これはメトロ、鉄道、乗用車の代用ではなく、新しい交通手段として、既存の交通手段とともに交通分野の可能性を拡張したいと考えています。一例ですが、私の場合は出張でパリに行くと、中心街にたどりつくまで既存の追う通手段使うで多くの時間を費やします。時間に余裕があるときにはそれもよいのですが、会議が立て込んでいるときの移動にはVolocityを使えば時間に苦しまずに済みます。使い分けができる選択肢を提供できることが第一の提供価値です。東京、大阪などベイエリアのダ都市の場合、湾を周る移動には時間がかかります。直接に進めれば時間が節約できます」
――そのほかの価値とは?
バウアー氏 「遊覧飛行です。日本には多くの旅行者がいますが、一部でヘリコプターによるサービスがありますが、ほとんどの旅行者は、都市部上空を空から遊覧することを体験していません。街を眺めるという新たな観点を、手ごろな価格で提供できることがふたつめの価値になると考えています。3点目はサステナビリティの観点から主にふたつの価値を提供します。ひとつが電動のためCO2を出さない飛行です。お客さまには環境負荷の低減に貢献する体験を提供します。そしてもうひとつが騒音です。ヘリコプターの離着陸の音を聞いたことがある方であれば、比較するとその違いがわかると思います。そして4点面が緊急対応です。医師が現場に急行する必要があるときの移動手段を提供することができます」
――大阪はVoloCityが活躍するのに適していると感じますか?
バウアー氏 「最適だと思います。人口が約877万人ととても多く、人の移動も盛んです。空港から中心街までのアクセスにはやや時間がかかり、VoloCityはスケジュールがみっちりつまったビジネスマンの移動に対する期待に応えられると考えています。また大阪府や此花区(大阪市、編集部注:空飛ぶクルマの推進に関わる覚書を2022年5月に交わした)など行政の後押しが強力で、ものごとを進めるうえで大きな支えになっています」
――日本の知恵や技術が生かされているところは?
バウアー氏 「さまざまなところで多くの知恵や技術が生かされています。一例をあげますと機体本体のカーボンファイバーは東レの製品です。業務提携した積水化学の知見も大きく期待しています」















住友商事株式会社は2月21日、AAM(アドバンストエアモビリティ、いわゆる“空飛ぶクルマ”)開発の独Volocopter GmbHに出資したと発表した。Volocopterも住商からシリーズE資金調達ラウンドでの資金を調達したことを公表した。またVolocopterは国土交通省航空局が、同社が開発する「VoloCity」の型式証明(TC)の申請を受理したことも公表。国土交通省もVolocopterからの申請を受理したと発表した。Volocopterは3月8日~12日に、大阪でVoloCityの実物大モデルを初展示する方針だ。Volocopterは、提携する日本航空株式会社が大阪・関西万博での空飛ぶクルマ運航事業者のひとつに決定したことから、同社のVoloCityが万博で利用者を乗せて運航する現実味が高まっている。
Volocopterは、AAM開発を早くから手掛け、日本のエアモビリティ関連の事業者の間で知られてきた。日本企業では2020年にMS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険株式会社が業務提携に合意して以降、連携も加速している。住友商事も2018年からAAM分野への取り組みを加速させている。
住友商事の発表は以下の通り
住友商事株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:兵頭 誠之、以下「住友商事」)は、Advanced Air Mobility(以下「AAM」)の分野で電動垂直離着陸機(electric Vertical Take-Off and Landing、以下「eVTOL」)を開発・製造するドイツのVolocopter GmbH(以下「Volocopter(ボロコプター)」)に出資しました。
AAMはeVTOLおよび無人航空システム(ドローン)を用いた航空交通・物流システムの総称です。eVTOLは、既存の民間航空機と比較し、電動のため駆動時の温暖効果ガス排出量が格段に少なく、滑走路が不要で離着陸時の騒音も小さい、環境にやさしい次世代航空機です。また、維持管理が必要な部品点数が少なく、将来的には自律飛行が可能で、運航費用を大幅に節減できると期待されています。eVTOLを活用することで、環境負荷が小さく、安心・安全・安価で手軽な空の交通・物流サービスを実現できます。日本国内おいては「未来社会の実験場」をコンセプトとする2025年大阪・関西万博を皮切りに、eVTOLの社会実装と商業運航開始が計画されています。
Volocopterは2011年にドイツ・Bruchsal(ブルッフザール)市で設立されたeVTOL開発・製造会社であり、開発中のVoloCityについて既存航空機と同基準の安全要求値を実現すべく、500名以上の体制で開発に取り組んでいます。世界の競合企業に先駆けて2024年に欧州航空当局(EASA)からのVoloCityの型式承認取得と運航開始を計画しています。翌2025年には本邦国土交通省航空局(JCAB)からの型式承認取得と大阪・関西万博での運航開始を目指しています。また、機材開発と並行して、航空業界・自動車業界・物流業界のグローバルパートナーとの連携も進めており、eVTOLによる交通・物流サービスの提供、離発着場の開発・運営・整備を含めた全体エコシステムの構築を通じてAAM業界をリードしています。さらに、搭乗可能人数が多く航続距離の長い次世代機材の開発にも着手しており、将来の市場拡大を見据えた取り組みを行っています。
住友商事は、航空業界におけるネットワークや多角的な事業活動を通じて培ったノウハウを活用し、2018年からAAM分野における事業化を検討しています。2020年にはAAMの社会実装に不可欠な無人機管制システムを開発する米国のOneSky Systems Inc.に出資し、日本で市場開拓を行ってきました。同時に物流課題・地域課題の解決に向け、国内外で小型ドローンを用いた各種実証を通じて、AAMと既存物流を組み合わせた持続可能な物流システムの実装に挑戦しています。本出資を通じ、Volocopterとの連携を図り、新たな空の交通・物流手段として期待されるAAMの日本国内の普及浸透と持続可能な新しい社会インフラの構築を行うことで、地球環境と共生しながら地域と産業の発展へ貢献していきます。
国交省航空局の発表は以下の通り
本日、国土交通省は、ドイツの空飛ぶクルマの設計製造者である Volocopter社 が開発中の機体について、同社からの航空法に基づく型式証明申請を受け付けました。空飛ぶクルマとしての型式証明申請の受理は、我が国で3件目となります。国土交通省としては、今後、開発の進捗に合わせて、航空機の安全性及び環境適合性に係る審査を適切に進めることとしております。
○ 今般、ドイツ・ブルッフザールに所在する Volocopter 社において開発が進められている電動・垂直離着陸型の航空機、いわゆる“空飛ぶクルマ”について、同社より航空法に基づく型式証明※1の申請があり、国土交通省は本日付けでこれを受理しました。
※1 型式証明とは、機体の設計が安全性及び環境適合性に関する基準に適合することについて国が
審査及び検査を行う制度のこと。国は、機体の開発と並行して審査及び検査を行う。
○ 空飛ぶクルマとしての型式証明申請の受理は、我が国で3件目※2となります。
国土交通省としては、今後、開発の進捗に合わせて、欧州航空安全当局(EASA)とも連携し、航空機の設計・製造過程等に係る型式証明審査を適切に進めることとしております。
※2 空飛ぶクルマとしての型式証明の申請をこれまでに2件受理。
・㈱SkyDrive (本社:東京都)から、令和3年 10 月 29 日付で受理
・Joby Aviation(所在地:米国・カリフォルニア州)から、令和4年 10 月 18 日付で受理
【Volocopter 社の会社概要及び機体概要】
設立: 2011 年
所在地: ドイツ・ブルッフザール
人数規模: 500 名以上
CEO: Dirk Hoke
事業内容: eVTOLの開発/設計/製造
日本航空等が出資
