• 2020.8.5

    感染対策実施し「国際ドローン展」開催 期間中に1192人の来場登録

    account_circle村山 繁

     一般社団法人日本ドローンコンソーシアム、一般社団法人日本能率協会が大阪で開催した「第6回国際ドローン展」は、7月29~31日の3日間で1192人の来場登録者(速報)を数えた。コロナ騒動が再浮上する中、併催イベント目当ての来場者の回遊もあり、各ブースには多くの来場者が足を止めた。マスク着用、会場の換気、出入り口での検温、距離確保などの感染対策が見られる一方、会場内で間近で談笑する光景も多くみられた。

    併催展にもドローン事業者の出展 来場者と情報交換の手ごたえも

     「国際ドローン展」は、「インフラ検査・維持管理展」「i-construction推進展」「事前防災推進展」など、20以上の展示とともに、大阪の展示会場「インテックス大阪」(一般財団法人大阪国際経済振興センター、大阪市住之江区)の7月29~31日に開催された。この期間に開催されたイベントは、会場の1~6号館を使い、「国際ドローン展」は3号館の入り口に近い一角にまとめられた。この一角には15の団体、企業などが出展した(下図参照)。そのほか、ドローン関連企業の中には、自社が手掛ける事業とかかわりの深い併催展に出展していたドローン関連企業もあった。

     感染対策と催事の両立の難しさが顕在化する中での開催で、主催者としては来場者の獲得に不安を抱える中での開催となったが、初日の7月29日の午前中から客足はあり、出展者は「来場者が少なくても仕方がないと思ってはいたが、フタをあけてみたらそこそこ来場者がいて驚いた。併催展をめざしてこられた来場者とも情報交換もできた」などと手ごたえを口にしていた。

    併催を含め1万を超える登録があった

     今年2020年7月1日に株式会社ミライト・テクノロジーズから独立したばかりの、ドローン事業専門子会社、株式会社ミラテクドローン(東京)は「インフラ検査・維持管理展」に出展。ハード事業者を問わず、センサーを活用したソリューション構築などに定評があり、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA) 認定スクールも運営する。2019年の「Japan Drone2019」に開催された「School Award」では金賞(GOLD)が贈られた実績も持つ。ブースではパネルを展示して同社の取り組みを披露。同社の本田信夫取締役は、初日の午前中の時点で「すでに来場者との情報交換ができた。目的を持っている来場者と交流できることは意義がある」と話していた。

     水中ドローンと空を飛ぶドローンを自在に使い分けて撮影、点検などのソリューションを提供する株式会社ジュンテクノサービス/ドローンテクニカルファクトリー川越(埼玉県)は、「インフラ検査・維持管理展」に出展し、大型の水槽を設置して水中ドローンのデモンストレーションで注目されていた。パーソルプロセス&テクノロジー株式会社(東京)は「事前防災・減災対策推進展」でドローンの活用手順などをパネルで紹介。3Dマッピングソリューションの株式会社サイバネテック(東京)、地図データ作成の株式会社みるくる(東京)は「i-construction推進展」などで取り組みを来場者に紹介していた。

     「国際ドローン展」は3号館の入り口に近い場所で開催。日本一ドローンの飛ぶ町を目指している徳島県那賀町は、町の取り組みをパネル展示し、那賀町の活用を訴えた。機体や無線操縦装置、フライトコントローラーなどを自前開発する技術集団、株式会社TKKワークス(大阪市北区)は、無人移動体画像伝送システムの周波数帯を使用した169MHzの操縦機(プロポ)や2.4GHzのテレメトリ無線機の実機を展示。ArduPilotを駆使したソリューションの一端を紹介しながら、利用者の要望に応じた機体開発を請け負う取り組みをアピールした。
     株式会社アイ・アール・システム(東京)は、ブース内にフライトエリアを設置し、スイスフライアビリティ社製の球体ガードのついたドローン「ELIOS」をときおりフライトさせるなどして紹介していた。屋内の狭小空間内での点検に必要となる、壁面に接触させて損傷を生じさせない機能や、壁面に設置しても落下しない機能などを伝えていた。また、“はかる”ことで高い専門性を持つ有限会社タイプエス(群馬県前橋市)は、取引先でもある株式会社自律制御システム研究所(ACSL、東京)の「PF2」「MINI」といった機体や測量のためのデバイスを展示し来場者の関心を引いた。
     測量事業に力をいれる株式会社オリエンタルコンサルタンツホールディングスの子会社、株式会社エイテック(東京)は、DJIの空撮機の頭上にInsta360の360度カメラを固定し、おなかにかかえるカメラをはずしたうえでPAUI株式会社(福岡市)製の球体ガードを装着したカスタマイズ機を展示。利用者の用途にあわせて機体をアレンジする姿勢をアピールした。テクノドローン株式会社(岡山市)は、市販機と独自開発機を展示。高さ200メートルのエントツも安定飛行させ、3Dモデルを作ることができる技術をアピールした。各ブースとも併催展からの回遊客の来場などもあり、ブース前では初日から情報交換をする姿が見られた。

    株式会社ミラテクドローンのブースと同社の本田信夫取締役
    水中ドローンのソリューションを紹介した株式会社ジュンテクノサービス
    TKKワークスのブース
    テクノロドーンのブース
    エイテックのブース
    タイプエスのブース

    感染対策、入場時に徹底 場内では間近で談笑も

    徹底した感染対策の一端

     今回の開催について主催者は現在、来場者向けアンケートの回収、集計を進めている。開催の総合評価について、国際ドローン展事務局は「主典者へのアンケートを集計したうえで見極めて判断したい」と話しており、現時点での評価はしていない。アンケートから読み取れる部分と、そこからは読み取れない部分も含めた評価がなされることが期待される。 特に感染対策の是非は、今後の催事の貴重な判断材料になりうる。
     国際ドローン展をはじめとするこの期間のイベントにあたり、主催者は感染対策を工夫した様子が見られた。
     会場に入るまでの導線では、入場ゲート前で来場者同士の間隔を確保するよう足もとにラインを設けたり、来場者に呼びかけたりと距離確保に力を入れている様子が確認できた。入口では検温、来場登録の確認、マスク着用の確認などがなされた。報道陣の作業向けに準備されたプレスルームの受付では、2枚の名刺の提示を求められ、その際にも受け渡しをトレーの上で行い、直接の接触を回避する工夫がされていた。
     会場とJR大阪駅桜橋口との間を往復するシャトルバスの料金600円の受け渡しでも工夫がされていた。現金決済だけだが、1000円札での支払いに備え、つり銭の400円を小さいトレーに入れて用意してあり、1000円札で支払う来場者にはそのトレーを差し出してお釣りを渡し、接触せずにすむ対応をしていた。
     一方、課題があるとしたら、展示会の会場内部での距離確保や会話だろう。
     初日の午前から午後にかけて、併催イベントも含めて会場に滞在していたが、出展者や来場者の間で、間近で会話を交わすシーンはそこここでみられた。いつもの展示会であれば活発な交流は展示会としてあるべき姿だが、感染対策下ではリスクのあるシーンと受け止められる。来場者は全員がマスクやフェイスシールドを着用してはいる。しかし、興が乗ると話がはずみ、距離が縮まる様子に、感染対策意識が薄らぐようにもみえた。主催者による距離確保は入口ではかなり徹底していた。しかし会場内に入ると、意識が緩む印象だ。
     実際、期間終了後に事務局に確認したところ、「そこは出展企業、来場者のご判断になる。われわれは入場前に登録頂く際に、注意事項に納得頂いたうえで登録、来場頂いている。出展企業にもガイドラインにそった対応をアナウンス(お知らせし)している」という。
      一方、会場内を巡回するスタッフが距離確保を促すため声を掛けることにもなっていたという。「1対1で話をしているときに注意をするというのはどうかな、という思いもあるが、いわゆる“密”になっている現場を発見したさいには、巡回スタッフが声をかけて注意を促すことになっていた。国際ドローン展以外のところで、実際に注意をしたという報告もあった」という。
     開催にあたり、事務局は感染対策など会場の保安のため、例年より多くのスタッフを採用した。どこまでの準備をして、どこまでできたのか、限界はどこか。感染対策は実行が目的でなく、感染防止が目的であるなら、今回の経験がその観点からも分析され、今後の開催可否判断や、開催時の運用に生かされることをのぞみたい。

    ゲートの内側でもスタッフが整列して来場者を迎える徹底ぶり
    番外編。併催イベント「猛暑対策展」で目を引いた、ねこ耳つきの透明袋。モデルさんによると「換気機能がついていて、中は涼しい。飛沫も飛ばない」。株式会社空調服(東京)の試作品

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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