ゼネコンの清水建設株式会社(東京都中央区)、ドローン制御技術のブルーイノベーション株式会社(東京都文京区)、IT課題解決のオムロンソーシアルソリューションズ株式会社(東京都港区)は3月29日、東京・豊洲の豊洲スマートシティにあるインテリジェントオフィスビル「メブクス豊洲」で、複数のプラットフォームを組み合わせてビル内のロボット運用を高度化する連携基盤の実証を4月1日に始めると発表した。仕様や製造元の異なる機器の連携には手間と時間がかかりがちだが、プラットフォーム同士の連携で乗り超え、自動制御に挑む。清掃ロボット、案内ロボットの運用を皮切りに、利用者、管理者、生活者の利便性の向上に取り組む。
組み合わせるプラットフォームの核は、清水建設の建物OS「DX-Core」。これにエレベーター、自動ドア、案内ロボット、配送ロボット、自動運転車両などを統合制御するプラットフォーム「Mobility-Core」を結びつける。オムロンの複合型サービスロボット「Toritoss」も、ブルーイノベーションのデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(=BEP)」を使ってDX-Coreに連携させる。
3社は4月1日、これらのプラットフォームの組み合わせを使って、ロボット清掃サービス、ロボット案内サービスをスタートさせる。ロボット清掃サービスでは、BEPがDX-CoreとToritossを連携させ、Toritossがエレベーターや自動ドアと連動し、ビル内をシームレスに移動し自動清掃することを実証する。ロボット案内サービスでは、DX-CoreとMobility-Coreで案内ロボットとエレベーター、自動ドアを連携させ、ロボットによる階をまたいだ来客案内サービスを実証する。
あわせてビルとロボットの連携基盤の構築を進め、自動運転車、ドローンなどの自動運用を目指す。高度な統合制御を広域に展開しモビリティ、ロボット、人が共生する街づくりを推進する。
スマートシティでは、域内の施設、設備のデータを収集、統合、分析し、それに基づいて設備、機器などを遠隔制御して、住民や利用者の利便性、快適性の向上を図る。実現のためには、施設の空調、自動ドア、エレベーターなど設備、機器、ビル内の自動走行ロボット、機器類の制御アプリケーションを連携させる必要がある。データの連携には、機器ごとに個別にプログラミングを迫られるケースがあり、連携の実装を妨げる要因となっている。
課題を解消するため清水建設は基本ソフトウェアとして、建物の設備機器などをメーカーの違いや新築であるか既存であるかを問わずに連携させることができ、IoTデバイスや各種アプリケーションの相互連携を容易にするDX-Coreを開発した。
また清水建設はMobility-Coreも構築した。Mobility-Coreはビル側と、ビル内で動くロボットとの統合制御を担うシステムで、施設側の自動運転管制システムや監視システム、エレベーターなどの建物設備と、車両、ロボットを連携させる。自律モビリティの開発事業者、メーカー、サービス事業者は、他社のモビリティ、建物設備との連携をするさい、独自開発なく、複数のモビリティを組み合わせたサービスを展開でブルー
ブルーイノベーションが開発したBlue Earth Platform(BEP)は、複数のドローンやロボット、デバイスを遠隔、目視外で自動制御、連携させるためのデバイス統合プラットフォーム。ロボットによる複数のミッションを同時に遂行できることが特徴だ。点検、物流、運搬、防災、警備、清掃など業務や用途に必要な機能やデバイスを組み合わせた「BEPパッケージ」を提供していて、ドローンやロボットの導入、自動化、DX化を支援している。
実証の舞台となる豊洲スマートシティは域内に約3.7万人が住み、約4万人が働く東京都江東区豊洲1~6丁目が対象の、2019年5月に国土交通省スマートシティモデル事業で先行モデルプロジェクトに選ばれたプロジェクト。清水建設は幹事企業の1社で、地方公共団体、地元企業、技術提供企業と連携し、地域の課題解決に取り組んでいる。
■豊洲スマートシティ:https://www.shimz.co.jp/toyosu/concept/smartcity/
■DX-Core:https://www.shimz.co.jp/engineering/solution/dxcore.html
■Mobility-Core:https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2021/2021032.html
ドローンの運用やドローンポート開発を手掛けるブルーイノベーション株式会社(東京)は3月20日、国土交通省と共同開発した災害用ドローンポートシステムを活用した物資輸送実験を実施したと発表した。実験では荒川に停泊している船舶からドローンを自動飛行させ、避難所に設置したドローンポートまで支援物資を届けた。2022 年度中の実用化を目指す。
実証実験は、関東地方整備局、東京都、江東区豊洲スマートシティ推進協議会などが実施した荒川決壊を想定した避難実証訓練の中で、東京大学羽藤研究室、清水建設株式会社とともに実施した。地震、洪水など災害が発生時の物資輸送のありかたや、国、自治体、民間企業、住民など関係先との連携方法のありかたを明らかにすることが目的で、災害時の体制構築に貢献する。
ブルーイノベーションは、2016 年から国交省や東大と、ドローンの正確な着陸を支援するドローンポートシステムの開発を進め、現時点で目標に対し誤差数十センチ以内の精度で着陸させることできる。また、ポートに人が立ち入ったり、ポート周辺で強風が吹いたりしている場合には、離着陸を禁止させる機能を備える。次世代モビリティ活用による公共交通の見直しを提言する東大、東京都江東区を対象とした交通防災まちづくりで各種モビリティを活用した社会実験を行っている清水建設と連携し、船舶を起点としたドローンによるラストワンマイル輸送の課題解決を目指すことにした。
実証では、周辺道路が水没し避難先への支援物資輸送が困難になった場合を想定し、避難先の近くまで海上輸送された支援物資を、避難先までドローンで届ける場合に、ドローンポートがどの程度有効かを確認した。ドローンは約500mを自動飛行しドローンポートに着陸した。
ドローンポートシステムはブルーイノベーションの独自のAPI連携技術でデバイスを統合するプラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」で運用している。情報発信、共有、ドローンポート周辺の危険感知と安全確保、ドローンの自動運航支援の一連のオペレーションを一元的に管理する。今後も実験を重ね、2022 年度中の実用化を目指す。
ドローンポートをめぐっては、ブルーイノベーションは国際標準化機構(ISO)にISO規格化を提言。2020年9月にISO内に設置された空港インフラを検討するサブコミッティ「SC17」のISO規格化を進めるワーキンググループで議長を務め、検討を進めている。ワーキンググループ内のプロジェクト「Infrastructure and equipment for vertiports(垂直離着陸用飛行場のインフラと設備の標準化)のプロジェクトリーダーも務め、2023年中のドローンポートのISO規格発行を目指している。
東京都の公設試験研究機関である地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(東京)とドローンやロボット制御シシテム開発を手掛けるブルーイノベーション株式会社(東京)は、屋内を巡回撮影した写真をバーチャル空間上で再現してVRで点検できる「360°実写 VR マップ自動生成・更新システム」を共同開発した。AGVが自動走行して必要な画像を取得する。複数のAGVを手分けして巡回させて取得した画像を結合することもできる。デバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」を活用したソリューションで、3月9~12日に東京の大型展示場「東京ビックサイト」で開催された「2022国際ロボット展」で展示され、来場者が足を止めていた。
「360°実写 VR マップ自動生成・更新システム」では、AGVが360°カメラを搭載して、設備の中を撮影する。広い設備を手短に点検するために複数のAGVを手分けして撮影させることもできる。撮影した画像をVRで再現し、作業員が肉眼で確認できるほか、設備に備え付けられているアナログメーターを読み取りデジタル化することもできる。異常値を検出した場合に警告を発することも可能だ。
ブルーイノベーションのデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」を活用したソリューションで、施設のVR 化、点検したい個々の設備、機器の画像の表示を可能にした。高容量データを高速通信できるよう5G通信にも対応している。
これによりVRデータ取得のためスタッフが巡回して撮影する手間から解放される。またAGVが走行するたびにVR画像が最新の取得画像に更新される。針が数字を指し示すようなアナログ情報のデジタル化も可能だ。
東京ビックサイトで開催された「2022国際ロボット展」の都産技研ブースでは、自動搬送ロボット開発の株式会社Doog(ドーグ、茨城県つくば市)が開発した搬送車「サウザーミニ」をベースにした車両が360°などを搭載し、任意の軌道を自動で進む様子や、パソコンの画面で一元管理できる様子が紹介され、来場者が見入っていた。
ブルーイノベーション株式会社(東京)は10月26日、放射線センサーを搭載した屋内点検用球体ドローン「ELIOS 2 RAD」(エリオス・ツー・ラド)発売した。飛行経路中の放射線の検知、計測のほか、漏洩位置の特定ができる。「ELIOS 2 RAD」はスイスのドローンメーカー、Flyability社が開発した。同社は2011年3月の福島第一原子力発電所事故をきっかけに点検の安全確保を目指して設立されており、「ELIOS 2 RAD」は同社の設立の思いを形にした機体となる。発売日の10月26日は、日本政府が「原子力の日」に指定している。
ELIOS 2 RADは原子力発電所の施設内点検に特化させた球体ドローンで搭載した放射線センサーが放射線を検知、計測する。飛行経路を3D点群マップ化し、放射線の漏洩箇所を特定したり、ドローンが撮影した動画や画像で現場の状態をリアルタイムで確認したりすることも可能だ。
ELIOS 2 RAD は施設内点検ドローン「ELIOS2」をベースに開発された、原子力発電所の施設内点検に特化した球体ドローンだ。原発での放射線漏洩確認のさい、放射線検出器を持ち込む方法では点検員の安全確保が、自走式ロボットに検知、計測では高さのある設備での計測範囲の制約がそれぞれ課題だ。
ELIOS 2 RADは施設内の空間を移動することで計測範囲の制約を克服。管理区域外や保全区域外にいながら操作が可能なため、点検員や運用者の安全確保も図れる。
ブルーイノベーションの熊田貴之社長は「ELIOS 2 RAD の開発元であるFlyability社は、2011年3月11日に福島で起きた原子力発電所の事故をきっかけに設立されました。当時、限られた手段で何とか状況を収拾しようと懸命に努力している方々を目の当たりにし、瓦解した施設内部を点検するためには、もっと安全で、もっと効果的な方法が必要だとの想いから開発されたのがELIOSシリーズです。今回のELIOS 2 RADにより、その想いが現実のものとなりました。ELIOS 2 RAD により原子力発電所に携わっていらっしゃる方々の安全が確保され、緊急時に即応した点検フローの確立に貢献したいと考えています」と話している。
ブルーイノベーション株式会社(東京)と水道インフラ管理の株式会社フソウ(東京、本店は香川県高松市)は、設置型デバイスとドローンを使い、上下水道設備内外の3Dモデル化するトライアルサービスの提供を8月23日に開始した。
3Dモデル化サービスでは、施設内部に計測デバイスを設置して計測し、点群データ化する。施設外部はドローンを飛ばして撮影し、画像から専用ソフトで点群データ化する。
上下水道は高経年化が進むインフラの代表格のひとつで、機能の維持には点検が欠かせない。一方で、肉眼での確認の難易度が高いところや、改築を繰り返した結果現状が図面と異なっていて状況把握の難しいところが点検を難しくしている。フソウとブルーイノベーションが提供する3Dモデル化サービスは状況把握の難点克服を目指すサービスだ。
3Dモデル化は、現状の可視化と、関係者間での共有を容易にすることが期待される。その結果、合意形成の迅速化、省力化、保守・運用業務の記録の一元化、遠隔化や効率化、高 度化の効果が期待できる。さらに、都市デジタルツインの実現などまちづくりのデジタル化の促進にも活用が期待される。
両社は今後、対象範囲を広げた展開を視野にサービス開発を加速する。
■談話:フソウ執行役員ソリューションデザイン事業部長・平尾嘉一氏
当社はこれまで、点群データや BIM/CIM を実際の改築・更新工事における設計・施工業務 を通じて、利活用の検討に取り組んできました。今回発表した 3D モデル化サービスには、高い 表現性と情報量を活かした「コミュニケーションツール」としての可能性を感じています。 例えば、既存の2D 図面データに、本サービスで取得した点群データや BIM/CIM、360°パ ノラマ画像など、様々なデータを重ねて表示することにより、各データのズレを視覚で直感的に 理解できます。また、全てのデータを一元管理できるため、3D モデルの中で気づいた内容や指 摘事項を記入すれば関係者全員に簡単に共有でき、そのコメント内容をリスト化機能で指示書 の様に出力することも可能です。 当社は、これからも「みんなのための BIM/CIM」実現に向けて活動してまいります。
■談話:ブルーイノベーション代表取締役社長・熊田貴之氏
当社は、ドローンやロボット、AI などを活用し、予兆保全の強化や、施設の DX 化に貢献してい ます。この度の上下水道施設の 3D モデル化の取り組みは、当社の強みとフソウ様の強みを活 かした革新的な取り組みです。 今後は、本サービスを広く展開するために、ドローンや測量機器を当社のデバイス統合プラッ トフォームである「Blue Earth Platform(BEP) ※4 」に接続し、遠隔で自動制御しつつ、撮影デ ータを解析までワンストップで提供できるシステムにまで拡張し、3D都市モデルの構築に貢献 していきます。
ドローン関連技術のブルーイノベーション株式会社(東京)と、移動ロボット開発の株式会社ドーグ(Doog、茨城県つくば市)は6月10日、それぞれの技術を持ち寄り、企業、自治体など法人向けソリューションを開発する業務提携を交わしたと発表した。
発表によると、ドーグが開発する協働運搬ロボット「THOUZER(サウザー)」に、ブルーイノベーションのプラットフォーム技術「Blue Earth Platform(BEP=ベップ)」を連携させ、課題解決に対応する。BEPは、別のメーカーのセンサーやロボットを接続するさいに、うまく連携させ、統合制御ができるプラットフォームの役割を果たす。物流、点検、警備など異なる分野から課題が寄せられた場合にも、組み合わせの幅を広く解決策を模索できる。
連携や実装の時期、対応する具体的な業務などについては明らかにされていない。またドーグには、搭乗型ロボットとして「ガルー」、「モビリス」などがあるが、連携の対象になるかどうかについて触れていない。
プレスリリースでは両社長のコメントが発表されている。
■熊田貴之・ブルーイノベーション代表取締役社長
ブルーイノベーションは、2027 ビジョンに「ドローン・ロボットを通じて、世界に貢献するグローバルカンパニーになる」を掲げており、今までのドローンを中心としたソリューションからロボットという広義なデバイスを活用したソリューション開発、サービス展開を進めています。特に、屋内空間でのソリューションを開発し、様々なロボットの適用を検証する中で、Doog のサウザーシリーズの技術力の高さに感銘を受け、またブルーイノベーションの BEP との連携によるシナジー効果の高さが明確になり、両社が提携することで、大きなイノベーションを引き起こす可能性が高いと確信し、提携、共同開発する運びとなりました。Doog の大島社長も、ソリューションの実証実験の現場に自ら参加し、開発へフィードバックするなど、ロボットづくりへの情熱は素晴らしく、今回の共同開発では、間違いなく、今迄のロボットによるソリューションの概念を大きく変え、導入のお客様へ大きく貢献することになると思いますので、今後のサービスのローンチをご期待ください。
■大島章・Doog代表取締役
ドローンを始めとして各種機器を統合したソリューション構築においてとても高い実力や知見を有するブルーイノベーションが当社のロボットを認めてくれたことを心より嬉しく思っています。当社では様々な強みを持つパートナー事業者との連携を拡げてゆくことで、サウザーシリーズを社会の隅々へ届ける事業をしています。サウザーは多彩な機能とカスタマイズ性をパートナー事業者に活かして頂くことで、各業界・業務において生産性や働きやすさの向上に繋げてゆくことが出来るベースユニットです。本提携によって両社が持つ技術力や課題解決力を結集し、より良いソリューションを産み出すために一層の加速をし、BEP と共にサウザーを進化させてゆけることがとても楽しみです。また、サウザーを既に導入頂いているお客様や、既存のパートナー事業者におかれましても、本提携の成果によって新しい選択肢が拡がり、サウザーの持つ可能性がさらに高まることをご期待いただきたいです。