東京モーターショー2019の呼び物のひとつとなったドローンでは、展示のほかにカンファレンスやレースも開催されモーターショーの刷新を印象付けた。FAI Drone Tokyo Racing & Conference実行委員会は11月1日に、ドローン前提社会を率いるキーマンを招いたシンポジウム「ドローン前提社会を目指して」を開き、1日、2日にかけてFAI(国際航空連盟)公認のドローンレースを開催し、両日とも来場者を魅了した。
カンファレンスでは、DroneFundの創業代表パートナーの千葉功太郎氏が、「日本は課題がいっぱいある課題先進国。その特徴はメリットにかえていくことができる。政府は2022年にレベル4を実現するとコミットした。これは先進国では初めてのこと。ドローンについてはよく、日本が世界からで遅れているといわれるが、そんなことはない」と期待を込めた。そして、これからさまざまな取り組みを進めるうえで、大事なことは「まずはやってみること」と指摘した。
続いて登壇した内閣官房小型無人機等対策推進室長﨑敏志内閣参事官は「安全を守ることでドローンの普及につなげたい」、また総務省移動通信課の荻原直彦課長も「ドローンを飛ばして空の基地局のように使おうとする場合、申請から2~3カ月かかるので、現在、制度整備に取り組んでいる。2020年中には、前日とか、せめて前々日とかにインターネットで申し込めば当日に使えるようにできないか検討している。電波の手続きがドローンの普及の支障になることがないようにしたい」と、ドローンの普及を支援することを表明した。
「課題を明確にするためのセッション」では、A.L.I.Technologiesの片野大輔代表取締役社長が進行をつとめる中、慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が、「社会受容性につながる活動が大切になる。ドローンが当たり前に受け入れられる社会をつくるには、さまざまな実例が必要になる。キーワードは実例による啓発という意味で『ラフコンセンサス』。さきほどの、とりあえずやってみよう、という提案ははまさにそれにあたる」と躊躇なく取り組める環境づくりの重要性を説いた。
そのほか、千葉功太郎氏は2015年4月22日に首相官邸で不審ドローンが発見された事件を「あれで全国民が知ったのである意味では、ラッキーだった。だれでも知っているのだからネガティブからポジティブになればいいだけ」と指摘した。株式会社自律制御システム研究所の鷲谷聡之COOも「これまでの3年間は夢だったものを現実にする時間だった。今後3年は、明確に描けている目標に猪突猛進で動く時間」と述べた。
このあと、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)の柴田巧社長、KDDI株式会社経営戦略本部次世代基盤整備室の博野雅文グループリーダー、名古屋鉄道株式会社の矢野裕取締役常務執行役員、株式会社プロドローンの河野雅一社長、NECのロボットエバンジェリスト西沢俊広PSネットワーク事業推進本部マネージャー、株式会社日立製作所ディフェンスビジネスユニットドローン事業開発センターの横山敦史部長代理が登壇し、自社の取り組みを紹介した。
JIWの柴田氏は「点検のオペレーション事情は、各社に話を聞いてみると電力も道路もガスも同じ状況だった。そこで、『オペレーショナルエクセレンス』を提供する会社を設立した。現状では作業の2~3割がドローンによる目視飛行。ドローンの自律航行などの自動化に置き換われば生産性は5割向上する」と述べた。KDDIの博野氏は「2023年度に5Gの基地局を5万局開設する。ドローンは優良なユースケースで、目視外飛行がいわゆるスマートドローンの事業のコアと考えている。まずは産業面では監視、警備で、コンシューマー向けではエンタメになるだろう」と述べた。
KDDIは今回、日本で初開催されることになったFAI公認ドローンレースで5Gを提供し、レース中継やライブ配信を支えた。
名鉄の矢野氏は、鉄道会社と空との関係をこれまでの歴史から説明し、今後、ビジネスとして成立する未来が開けているのは、サービスの代替、周辺ビジネス、ドローン前提社会のインフラ整備と説明。「作業の代替としては、1990年代に登場した無人ヘリが、数の上で2005年に有人機を逆転した。有人機パイロットの養成に時間がかかることを考えると、これからも無人機が伸びる。周辺ビジネスでは、自動車産業がメタファーになる。前提社会のインフラ整備としては、管制システムが大事だろう」と話した。
プロドローンの河野氏は、知財を重視していることを説明。「特許はロボットアームなど94件ある」と説明したうえで、「ドローン配送は中距離、長距離にこそ向いている。ドローンによる300キロ配送は実現できる。近い将来、人の手を介さないAGVも活用した輸送プラットオームができる」と展望した。
NECの西沢氏は、NEDOの究として取り組んでいる運航管理機能を紹介。「目的の異なるドローンが同じ空域で飛ぶことを管理する。1平方キロメートルに1時間で100フライトを目標に掲げ、実際に146フライトは達成した。都市部の物流がターゲットなので、きびしい目標をたてた。また最大37機が、1平方キロメートルで同時飛行した」と成果を説明した。日立の横山氏は、「目指しているのは飛ばすことでも作ることでもなく、社会課題を解決していいことをもたらすPOWERING GOODだ」と強調した。また国際標準化の議論でも日本勢が積極的に関与している実態を紹介した。
登壇者はこのあと、TMI総合法律事務所の弁護士、新谷美保子氏と長﨑内閣参事官のファシリテーションにより行われたパネルディスカッションにも参加し、さらに議論を深めた。
FAI Drone Tokyo Racing & Conference実行委員会は、11月1日、2日にFAI(国際航空連盟)公認のドローンレースも開催。1日の予選に出場した世界各国から出場した約40人の選手から、上位16人が2日の準々決勝に進み、準決勝を経て、決勝には日本人4人が進出。国内ランキング1位の岡聖章選手と、 川田和輝選手(小学5年)、上関風雅選手(小学5年)、小松良誠選手(高校1年)が熱戦を繰り広げ、岡選手が優勝した。
決勝ではレースの合間にアイドルグループでイベントアンバサダーを務める日向坂46がライブパフォーマンスを披露し、会場を埋め尽くした来場者がライブとレースとを堪能した。
カンファレンスでKDDIの博野氏が伝えた通り、レースの様子はKDDIが開発した5G(第5世代移動通信システム)を活用した超低遅延4K伝送システムで戦況をリアルタイムで会場内の大型モニターに投影し、会場を盛り上げた。
また日向坂46のライブイベントでは、人気DJピストン西沢氏がリミックスした「誰よりも高く跳べ!」や「ドレミソラシド」などの人気曲を披露した。
レースの観戦者は4000人程度とみられ、ドローン初心者にも楽しんでもらうためのステージの第一歩を踏み出した。
AAM(アドヴァンスト・エア・モビリティ)運航事業を手掛け、大阪・関西万博の運航事業者にも名を連ねる株式会社Soracle(ソラクル、東京)が、2027年中にも大阪・関西エリアで旅客運航を目指す計画を明らかにした。9月10日に大阪府、大阪市と連携協定を結んでおり、その席で計画を明らかにした。米Archer Aviation(アーチャー・アヴィエーション)のパイロット1人を含めた5人乗りのeVTOL型AAM、Midnight(ミッドナイト)を使うことを想定しているという。
Soracleは2026年にも大阪府内で実証飛行を実施し、必要な審査をふまえ27年にも大阪ベイエリアでの遊覧飛行などを始める。周回して出発点に戻る運航のほか、離陸地点から別の場所に移動する二地点間飛行も想定する。
大阪府と大阪市との連携協定は、ソラクルの事業環境を整えることや、運航網整備に必要なインフラ整備に向けた調査、制度の整備、関連ビジネスの展開支援などの事業環境整備に向けた取り組みを進める。締結式では太田幸宏CEOが、大阪に来れば全国に先駆けて空飛ぶクルマに乗ることができる未来を実現し、中長期的には関西・瀬戸内海地点を結ぶ観光体験を創ると抱負を述べた。
吉村洋文知事は「さまざまな課題はあろうかと思いますが、Soracleさんと協力し、大阪府・市も全面的に当事者として取り組むことで、2027年に商用運航を、そして大阪に来れば空飛ぶクルマに乗ることができるということをめざしていきたいと思います。大阪・関西から、空の移動革命を実現していきましょう」と述べた。
Soracleの公式発表はこちらにあります
スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
参考:GMO熊谷氏、HEXA搭乗し飛行を公開
参考:GMO熊谷氏にHEXA公開搭乗の理由を聞く
参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始
ドローンショーの株式会社レッドクリフ(東京)が、フィンテックのフリー株式会社(freee株式会社)の活用事例に登場した。レッドクリフが搭乗したのはfreeeが提供しているプロダクト「freee販売」の活用事例で、ビジネスの急拡大に伴う業務管理の効率化に役立てていることが紹介されている。取引先の業務効率化をアピールすることが多いドローン事業者にとって、freeeの活用事例はモデルになりそうだ。またドローン事業者が他の事業者の活用事例に取り上げられることも今後、増えそうだ。
フリーが公表したレッドクリフの活用事例はこちらからみられる。
それによると、事業の急拡大で案件別の収支管理や、全体の把握、属人依存の管理に限界が見えてきた中で、それまでスプレッドシートに頼ってきた業務フローを見直しに着手した。freee販売の導入で、受発注データと原価情報を集約し案件ごとの収支把握が容易になり、部門を越えたデータ共有や、各部門がそれぞれの業務に集中できる態勢が整ったという。チェック漏れリスクの軽減と業務負担の軽減が同時に果たせ、人件費、立替経費、ドローンの減価償却費を案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が実現し、経営判断の精度向上にも繋がっている。
結果として、IPO準備に不可欠な「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」をデータに基づいて説明できる環境ができたという。
ドローンの事業者も、取引先の効率化をソリューションとしてアピールする事例が多く、活用事例でも導入先の作業の時間短縮効果などが掲載されることが多い。一方で、導入先にとっては、その事例が解決したい課題の一部にすぎないことや、導入による新たな負担などが発生するケースもあり、活用事例のアピールの方法について、各者が試行錯誤している。
freee販売の活用事例では、汎用性の高い困りごとを取り上げていて、freee販売の商品性のアピールになるとともに、多くの企業にそのアピールの手法そのものが参考になりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンによるマンション外壁点検の仕事を請け負うための力を養う講座「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」の内容を解説する「講座ご案内ウェビナー」をJUIDAの公式ページ上で公開した。ウェビナーは7月に視聴者を募って行われ、講座は8月に開講した。現在も受講生を募集している。
「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」は、JUIDA、マンション管理など不動産管理大手の株式会社東急コミュニティー、ドローンスクール運営の株式会社ハミングバードの3者が作った講座で、5月に公表し、6月に開催された展示会「JapanDrone」で3者そろって発表会に臨んでいた。3者は新たな講座のマンション外壁点検の現場で求められる実務を盛り込んだことと位置付けている。
マンション外壁点検でのドローン導入期待は高いものの、外壁点検の現場や実務を知るドローン事業者は多くない。マンションの管理組合などから点検業務を請け負うマンション管理事業者側にとっては、現場知識の乏しいドローン事業者にドローンでの点検を依頼すると、ドローン事業者が担うべき実務を一から伝えなければならず、手間、時間、コストの負担が大きい。これがドローンの導入を阻む要因になっていると言われている。このため講座を通じてマンション外壁点検に求められる実務の知識を習得することで、マンションの外壁点検現場へのドローン導入を後押ししようとする狙いがある。
公開された動画は、全体で50分弱。事務局のあいさつ、カリキュラム概要、受講料、受講会場など講座に関わる説明が27分ごろまで行われる。この中では、点検作業後に作成し、依頼主に納める報告書の重要性が強調されている。ドローン作業者には、報告書の重要性や、報告書に掲載するための画像の要件が講座で解説されることなどが伝えられている。
その後、事務局が設定した想定質問に、担当者が回答する一問一答が行われる。一問一答の中では、講座の修了生には必ず外壁点検の仕事があっせんされるのか、タワーマンションにも対応可能なのか、など受講判断に関わりそうな質問がいくつも盛り込まれていて、担当者の回答は、受講を検討者の参考になりそうだ。
高校生FPVドローンレーサー・山本悠貴選手が、9月13日にドイツで開幕する国際レース出場に向けてクラウドファンディングを実施中だ。山本選手をスポンサーとして応援している株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)がプレスリリースで山本選手の活躍を紹介している。
山本選手は今年7月12日~13日にイタリア・アルビッツァーテで開催された「World Drone Cup Italy 2025」で予選を総合3位で通過してジュニア部門の決勝に進出した。山本選手としては初の決勝進出で、決勝でも4位入賞に食い込む活躍を見せた。なお、ジュニア部門ではすでに数々の大会で優勝経験を持つ日本の橋本勇希選手が優勝している。
山本選手は、2024年10月30日から11月3日まで中国杭州市のShangcheng Sports Centre Stadiumで開催されたドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(WDRC)」で、橋本選手とともに日本からの5人の選手の一人として出場し、各選手の成績を集計した国別順位で日本代表チームが3位に導く立役者の一人となっている。 なお、イタリア大会で優勝した橋本選手は、中国杭州市の大会でも個人総合、ジュニア部門の2部門で優勝している。
ドローンショー・ジャパンのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000080729.html?fbclid
イタリア大会結果詳細: https://fpvscores.com/events/0DNj73gpMX/results
山本選手の動画:https://youtu.be/1auUXebjYTc
<参考>中国大会で日本総合3位、橋本選手は個人総合、ジュニア部門の二冠:https://dronetribune.jp/articles/24276/
山本選手のクラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/876711/view?utm_campaign=cp_share_c_msg_projects_show
ブルーイノベーション株式会社は9月3日、沿岸防災ドローンとして注目されている「BEPポート|防災システム」の解説動画を公開した。仙台市と千葉・一宮町に配備されたシステムは津波警報のさいに初出動したことをきっかけに、自治体からの注目度がさらに高まっている。
動画は7分弱。「BEPポート|防災システム」について、「災害発生時の初動を支援する次世代型ソリューション」と説明していて、主に自治体の防災担当者や関係者、協力事業者らを対象としているとみられる。
開発したブルーイノベーションの紹介、災害時の初動対応に求められる3要素などの説明があり、それらの説明をうけて、2分50秒ごろから具体的な説明に入る。Jアラートを受けてBEPポートが自動的にドローンに離陸を指示する仕組みなどが説明されている。
また終盤の5分ごろからは、7月30日の津波注意報、津波警報を受けて一宮町<千葉県>のシステムが初出動した模様を紹介している。
システムは一宮町と仙台市<宮城県>に設置していて、7月30日の津波注意報、津波警報を受けてそれぞれ出動した。
なおブルーイノベーションは、東京都立産業技術研究センターの「クラウドと連携した5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業 公募型共同研究」に、同社が「BEPポート|防災システム」の活用を前提に提案した「自動離発着型ドローン多目的災害支援システムの研究開発」が採択されたことを9月1日付で発表している。孤立地域の状況調査、倒壊家屋の監視など災害現場で求められる機能を新規開発する計画だという。