DRONE FUNDの代表パートナーで投資家の千葉功太郎氏は6月29日、共同所有するプライベートジェット「HondaJet Elite」に株式会社ユーグレナ(東京)のバイオ燃料「SUSTEO(サステオ)」を給油して鹿児島から東京・羽田まで飛行し、国産バイオ燃料で飛行した民間機の第1号となったことを、飛行直後の発表会で報告した。千葉氏は今秋スタートするチャーターフライトのサービスでも所有機を提供する。利用者は「SUSTEO」の燃料を選べる。操縦士として操縦桿も握る千葉氏は、この日の発表会で「バイオ燃料で飛ぶ人を増やしたい」と述べ、空からの環境改善に強い意欲を示した。
千葉氏はユーグレナが開催した「ユーグレナ、民間機によるバイオ燃料によるフライト成功および新事業戦略発表会」に、ユーグレナの出雲充代表取締役、永田暁彦取締役副社長、ユーグレナのCMに出演しているお笑いユニットメイプル超合金のカズレーザーさんとともに登壇した。千葉氏、出雲氏、永田氏は、直前に鹿児島からバイオ燃料を給油したHondaJet Eliteで羽田空港に到着し、そのまま発表会に臨んだ。会見場には到着したばかりのHondaJet Eliteも置かれた。機体には「ユーグレナ」のロゴが描かれ、国産バイオ燃料使用の民間機1号であることを象徴した。
発表会では、ユーグレナ社が開発したバイオ燃料に従来の呼称「ユーグレナバイオ燃料」から「サステオ」にブランドを刷新すること、サステオによる民間機の初飛行が成功したこと、今秋スタートするチャーターフライトなどが発表され、開発までの経緯やバイオ燃料の持つ意義や重要性、今後の増産計画などの発表が行われた。
ユーグレナ社長の出雲氏は「バイオ燃料で飛ばすことに成功しました。きょうから“飛び恥”などと言わせません。これからはバイオ燃料でグリーンにエコに飛べるようにします。2050年にはCO2排出をオフセット(埋め合わせ)します。6月29日はそのための第一歩の日です」とこの日の意義を強調した。ユーグレナ副社長の永田氏も、同日以降は同社のバイオ燃料を「SUSTEOディーゼル」、「SUSUTEOジェット」として展開することや、バイオ燃料がCO2排出を埋め合わせる仕組みについて説明した。
あいさつを求められた千葉氏は「さきほど、夢を追ってきた2人とともに歴史的なファーストフライトができました。感動してしまいました。ミドリムシが空を飛ぶ。8年前にこの話を聞いたときにはさすがに健康食品だろう、と思っていたのですが、飛んだ瞬間にジワっときました」とSUSTEO実用化の嬉しさを表現した。
千葉氏は日本で操縦士の免許を取得し、その後米国でもパイロットを取得している。現在、近い将来、所有するHondaJet Eliteの機長になることを目指している。説明会でのプレゼンテーションでは千葉氏は「ただし空を飛ぶたびにCO2を排出している後ろめたさがありました。しかしユーグレナがプラスマイナスゼロにできる国産バイオ燃料を作った。値段は高いです。分かっています。でもユーザーとして積極的に使っていくつもりです」と国産バイオ燃料の普及促進に取り組む方針を示した。
千葉氏はSUSTEO実用化の重要性にも言及。「今回のユーグレナの偉業がどれほど信じられないか。航空機というのは、シート、部品、燃料に至るまですべて厳格なレギュレーションに沿って認証されたものでないと使えないことになっています。つまりバイオジェット燃料を作った、と言ってもそれだけでは使えないのです。ユーグレナは燃料を作ったうえで認証も受けた。これ、とてつもなく大変なことです。創業16年目のぴよぴよ会社が、認証を受けるまでをやり遂げたこと。これは歴史的なことだと思うのです」と強調した。
本業のひとつであるドローンや空飛ぶクルマに対する投資との兼ね合いについては、ドローンの航続距離との関係から発言。「航続距離を伸ばす工夫のひとつとして、化石燃料を燃やして発電するハイブリッド化の取り組みがあります。短距離短時間の飛行なら電気、長距離ならエンジンなど、バッテリー、ハイブリッド、エンジンの組み合わせが重要になります。その組み合わせのうち燃料を使うところでSUSTEOが使えることは大きい。これで2050年のカーボンニュートラルを空から実現できます。2023年には空飛ぶクルマの商用利用が始まります。空の産業革命をこうした組み合わせで作りたい」と表明した。
さらに所有するHondaJet Eliteを、一般ユーザー向けのチャーター利用に提供することについて、「2050年を見据えた、未来を先取りした画期的な取り組みです」と説明。「先進的なユーザーに使って頂きたい。新型コロナの影響で海外への渡航は不自由になりましたが、代わりに国内の旅行地が見直されるようになりました。この企画では、たとえば鹿児島にある『天空の森』(鹿児島県霧島市)のような極上のリゾートに、SUSTEOをいれたHondaJet Eliteで行く2泊3日のサステイナブルな空の旅、のようなものを展開したいと考えています。さまざまな日本の発見につながればいい。先進的なユーザーとともに切り開き、移動革命を実現させて頂ければと思っています」と期待を膨らませた。
発表会ではこのほかユーグレナのCMに出演中のカズレーザーさんがクイズに挑戦し、燃料が認証を受けるために必要な項目の数や、航空機が飛行中に排出するCO2の重量を問う出題に多角的に推理してみせて、登壇者を感心させた。
なお発表会当日の6月29日は55年前の1966年にビートルズが初来日した日でもあり、当時話題となった、日本航空のドアからメンバー4人が法被姿で現れるシーンに重ね合わせ、3人がそろいの法被で登場した。法被はユーグレナを象徴するグリーンが基調で、襟字は左側に「GREEEN OIL JAPAN」、右側に「日本をバイオ燃料先進国に」とプリントされていた(ヒートルズ来日の法被姿は機内でメンバーの思い付きで実現したもので、襟時は「JAL」だった)。カズレーザーさんもトレードマークの赤の衣装ではなく、CMで着用している全身、緑色のスーツで登場して会場を沸かせた。
AAM(アドヴァンスト・エア・モビリティ)運航事業を手掛け、大阪・関西万博の運航事業者にも名を連ねる株式会社Soracle(ソラクル、東京)が、2027年中にも大阪・関西エリアで旅客運航を目指す計画を明らかにした。9月10日に大阪府、大阪市と連携協定を結んでおり、その席で計画を明らかにした。米Archer Aviation(アーチャー・アヴィエーション)のパイロット1人を含めた5人乗りのeVTOL型AAM、Midnight(ミッドナイト)を使うことを想定しているという。
Soracleは2026年にも大阪府内で実証飛行を実施し、必要な審査をふまえ27年にも大阪ベイエリアでの遊覧飛行などを始める。周回して出発点に戻る運航のほか、離陸地点から別の場所に移動する二地点間飛行も想定する。
大阪府と大阪市との連携協定は、ソラクルの事業環境を整えることや、運航網整備に必要なインフラ整備に向けた調査、制度の整備、関連ビジネスの展開支援などの事業環境整備に向けた取り組みを進める。締結式では太田幸宏CEOが、大阪に来れば全国に先駆けて空飛ぶクルマに乗ることができる未来を実現し、中長期的には関西・瀬戸内海地点を結ぶ観光体験を創ると抱負を述べた。
吉村洋文知事は「さまざまな課題はあろうかと思いますが、Soracleさんと協力し、大阪府・市も全面的に当事者として取り組むことで、2027年に商用運航を、そして大阪に来れば空飛ぶクルマに乗ることができるということをめざしていきたいと思います。大阪・関西から、空の移動革命を実現していきましょう」と述べた。
Soracleの公式発表はこちらにあります
スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
参考:GMO熊谷氏、HEXA搭乗し飛行を公開
参考:GMO熊谷氏にHEXA公開搭乗の理由を聞く
参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始
ドローンショーの株式会社レッドクリフ(東京)が、フィンテックのフリー株式会社(freee株式会社)の活用事例に登場した。レッドクリフが搭乗したのはfreeeが提供しているプロダクト「freee販売」の活用事例で、ビジネスの急拡大に伴う業務管理の効率化に役立てていることが紹介されている。取引先の業務効率化をアピールすることが多いドローン事業者にとって、freeeの活用事例はモデルになりそうだ。またドローン事業者が他の事業者の活用事例に取り上げられることも今後、増えそうだ。
フリーが公表したレッドクリフの活用事例はこちらからみられる。
それによると、事業の急拡大で案件別の収支管理や、全体の把握、属人依存の管理に限界が見えてきた中で、それまでスプレッドシートに頼ってきた業務フローを見直しに着手した。freee販売の導入で、受発注データと原価情報を集約し案件ごとの収支把握が容易になり、部門を越えたデータ共有や、各部門がそれぞれの業務に集中できる態勢が整ったという。チェック漏れリスクの軽減と業務負担の軽減が同時に果たせ、人件費、立替経費、ドローンの減価償却費を案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が実現し、経営判断の精度向上にも繋がっている。
結果として、IPO準備に不可欠な「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」をデータに基づいて説明できる環境ができたという。
ドローンの事業者も、取引先の効率化をソリューションとしてアピールする事例が多く、活用事例でも導入先の作業の時間短縮効果などが掲載されることが多い。一方で、導入先にとっては、その事例が解決したい課題の一部にすぎないことや、導入による新たな負担などが発生するケースもあり、活用事例のアピールの方法について、各者が試行錯誤している。
freee販売の活用事例では、汎用性の高い困りごとを取り上げていて、freee販売の商品性のアピールになるとともに、多くの企業にそのアピールの手法そのものが参考になりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンによるマンション外壁点検の仕事を請け負うための力を養う講座「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」の内容を解説する「講座ご案内ウェビナー」をJUIDAの公式ページ上で公開した。ウェビナーは7月に視聴者を募って行われ、講座は8月に開講した。現在も受講生を募集している。
「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」は、JUIDA、マンション管理など不動産管理大手の株式会社東急コミュニティー、ドローンスクール運営の株式会社ハミングバードの3者が作った講座で、5月に公表し、6月に開催された展示会「JapanDrone」で3者そろって発表会に臨んでいた。3者は新たな講座のマンション外壁点検の現場で求められる実務を盛り込んだことと位置付けている。
マンション外壁点検でのドローン導入期待は高いものの、外壁点検の現場や実務を知るドローン事業者は多くない。マンションの管理組合などから点検業務を請け負うマンション管理事業者側にとっては、現場知識の乏しいドローン事業者にドローンでの点検を依頼すると、ドローン事業者が担うべき実務を一から伝えなければならず、手間、時間、コストの負担が大きい。これがドローンの導入を阻む要因になっていると言われている。このため講座を通じてマンション外壁点検に求められる実務の知識を習得することで、マンションの外壁点検現場へのドローン導入を後押ししようとする狙いがある。
公開された動画は、全体で50分弱。事務局のあいさつ、カリキュラム概要、受講料、受講会場など講座に関わる説明が27分ごろまで行われる。この中では、点検作業後に作成し、依頼主に納める報告書の重要性が強調されている。ドローン作業者には、報告書の重要性や、報告書に掲載するための画像の要件が講座で解説されることなどが伝えられている。
その後、事務局が設定した想定質問に、担当者が回答する一問一答が行われる。一問一答の中では、講座の修了生には必ず外壁点検の仕事があっせんされるのか、タワーマンションにも対応可能なのか、など受講判断に関わりそうな質問がいくつも盛り込まれていて、担当者の回答は、受講を検討者の参考になりそうだ。
高校生FPVドローンレーサー・山本悠貴選手が、9月13日にドイツで開幕する国際レース出場に向けてクラウドファンディングを実施中だ。山本選手をスポンサーとして応援している株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)がプレスリリースで山本選手の活躍を紹介している。
山本選手は今年7月12日~13日にイタリア・アルビッツァーテで開催された「World Drone Cup Italy 2025」で予選を総合3位で通過してジュニア部門の決勝に進出した。山本選手としては初の決勝進出で、決勝でも4位入賞に食い込む活躍を見せた。なお、ジュニア部門ではすでに数々の大会で優勝経験を持つ日本の橋本勇希選手が優勝している。
山本選手は、2024年10月30日から11月3日まで中国杭州市のShangcheng Sports Centre Stadiumで開催されたドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(WDRC)」で、橋本選手とともに日本からの5人の選手の一人として出場し、各選手の成績を集計した国別順位で日本代表チームが3位に導く立役者の一人となっている。 なお、イタリア大会で優勝した橋本選手は、中国杭州市の大会でも個人総合、ジュニア部門の2部門で優勝している。
ドローンショー・ジャパンのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000080729.html?fbclid
イタリア大会結果詳細: https://fpvscores.com/events/0DNj73gpMX/results
山本選手の動画:https://youtu.be/1auUXebjYTc
<参考>中国大会で日本総合3位、橋本選手は個人総合、ジュニア部門の二冠:https://dronetribune.jp/articles/24276/
山本選手のクラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/876711/view?utm_campaign=cp_share_c_msg_projects_show
ブルーイノベーション株式会社は9月3日、沿岸防災ドローンとして注目されている「BEPポート|防災システム」の解説動画を公開した。仙台市と千葉・一宮町に配備されたシステムは津波警報のさいに初出動したことをきっかけに、自治体からの注目度がさらに高まっている。
動画は7分弱。「BEPポート|防災システム」について、「災害発生時の初動を支援する次世代型ソリューション」と説明していて、主に自治体の防災担当者や関係者、協力事業者らを対象としているとみられる。
開発したブルーイノベーションの紹介、災害時の初動対応に求められる3要素などの説明があり、それらの説明をうけて、2分50秒ごろから具体的な説明に入る。Jアラートを受けてBEPポートが自動的にドローンに離陸を指示する仕組みなどが説明されている。
また終盤の5分ごろからは、7月30日の津波注意報、津波警報を受けて一宮町<千葉県>のシステムが初出動した模様を紹介している。
システムは一宮町と仙台市<宮城県>に設置していて、7月30日の津波注意報、津波警報を受けてそれぞれ出動した。
なおブルーイノベーションは、東京都立産業技術研究センターの「クラウドと連携した5G・IoT・ロボット製品開発等支援事業 公募型共同研究」に、同社が「BEPポート|防災システム」の活用を前提に提案した「自動離発着型ドローン多目的災害支援システムの研究開発」が採択されたことを9月1日付で発表している。孤立地域の状況調査、倒壊家屋の監視など災害現場で求められる機能を新規開発する計画だという。