• 2021.11.23

    航空宇宙フェスタに新技術、掘り出し物集結

    account_circle村山 繁

    ロボット技術の集積を進める福島県で製品や技術を集めた毎年恒例の技術展、「ロボット・航空宇宙フェスタふくしま」2021が11月19、20日に、福島県郡山市にある複合コンベンション施設、福島県産業交流館「ビッグパレットふくしま」(福島県郡山市)で開催された。会場には出展者が話題の新製品、新技術を展示していた。中にはこれから社会に出る新製品や、隠れた新品もあり、関心層が次々とブースをのぞき込んでいた。

    風力発電ブレードの点検機、救命具配送アタッチメント、水中も陸上も

     会場はJR郡山駅から南に約4㎞の場所に広がる、複合コンベンション施設、福島県産業交流館「ビッグパレットふくしま」で、会期の2日間は郡山駅との間でシャトルバスが運行された。新型コロナウイルス対策のため、入場者は事前登録者に限定され、過密にならない工夫がされた。

     ロボットの技術の中でも目立ったのはドローン。機体そのものや、その個性を引き出す技術、飛行を支えるシステム、ドローンを使うための研究開発、ドローンを安全に飛行させるための運航管理を支える技術の研究成果、地域を活性化させる取り組みなどが展示された。また、飛行するドローンに限らず、地面を走る機体、水の中で活動する機体も展示された。会場内には大きな水槽が設置されてあり、子供たちが水中ドローンの操作体験ができるようになっていて、子供たちが周囲をとりかこむ場面もあった。

     株式会社東日本計算センターと株式会社福島三技協の共同出店ブースにあったドローンは、機体の頭上にZ型のアームがついていた。隣に風力発電用の風車の模型もある。尋ねるとこれは、大型風力発電用ブレード(風車の羽のこと)を安全、確実、効率的に点検するためのソリューションという。ブレードは雷対策用接地線の断線確認が必須。一般的には特殊な資格を持つ作業員が、フルハーネスでロープに体をくくりつけてブレードの先端を見回り確認するという。危険が伴うが、必要な作業だ。この作業をドローンで行うためのソリューションが展示機だ。ブレードまで浮上し、機体のアームをのばし、先端についている装置で確認するという。頭上のZ型アームは折り畳み式で持ち運びを考慮した。実用化までもうすぐだ。

     株式会社東日本計算センターは別の共同出展ブースで、救命具を届けるドローンも展示していた。機体の床下のウインチから延びたロープに救命具を吊り下げて届けることを想定している。注目したのは救命具を取り付けるアタッチメント。これはプラスチック製品開発、株式会社ニックスがドローンの個性を引き出すために開発したプロダクトだ。吊り下げた荷物が、地面に三度ほど触れると、取り付け部分のカギがカチャっと開き、吊り荷が切り離される。すぐに使えるように、機体を着陸させることなく、荷物が下せるよう工夫した。ドローンの周辺や小物に、こうした掘り出し物が見つかることがこの展示会の醍醐味でもある。会場にいたニックスの担当者は「見学者からフィードバックを頂き、よりよいものにブラッシュアップさせたい」と話していた。

     会場中央には水槽が設置され、水中ドローンの動きを見せていた。株式会社スペースワンや、同社が事務局をつとめる一般社団法人水中ドローン協会、同社と連携して活動している株式会社SkyBee、福島ドローンスクールなどが、水中ドローンを持ち込み動く様子をデモンストレーションしていた。子供たちが操作を体験する時間もあり、水槽の中の荷物をドローンでつかまえるなどの体験を楽しんでいた。

     一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、一般財団法人総合研究奨励会・日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)、日本産業用無人航空機工業会(JUAV)のブースでも活動をパネル展示。国内でのドローン活動が普及したことを証明する。

     JUIDAのブースでは初日、事務局をサポートするブルーイノベーション株式会社がAGVの走行デモを披露。近く、正式に発表される可能性がある。また、ブースにはJUIDA会員企業であるヒトロボ株式会社が同社の取り扱う製品を展示。その中には、DJIの新しい話題機、Mavic3が、おろしたての1フライトもしていないピカピカな状態で来訪者を歓迎していた。

     国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も、手掛けるドローンプロジェクトのこれまでの成果を公開したほか、最近話題のドローンを解説するCGアニメーション『ドローンが活躍するミライ』を使った子供向けクイズ端末を展示。クイズは全3問で、不正解だと同じ問題が再び出題される。3問おわると必ず「全問正解!」と表示される、利用者に超絶やさしい仕様になっている。

     イームズロボティクス株式会社は、産業用ドローンE6106FLMP(ASSY)とともに、高精度衛星アンテナ、SLAMを併用し屋内外をシームレスに自動走行する搬送用無人車両(UGV)を展示していた。「これが今回の目玉といえるかもしれません。屋内外自動走行、遠隔操縦、遠隔監視、非対面、非接触の車両で、スーパーシティ対応です」と担当者が話していた。

     福島県田村市が慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムと連携協定を締結した一連の活動の中で、地元主導で設立された地域のドローン普及組織、「ドローンコンソーシアムたむら」もブースを出展。この5年でドローンの活動が飛躍的に進んだことを印象付けた。

     このほか南相馬市で新工場の竣工を済ませたばかりの株式会社テラ・ラボ、南相馬市の株式会社eロボティクス、マグネシウム機体で独自性を発揮する株式会社石川エナジーリサーチ、水陸両用機開発の株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー、橋梁点検ソリューションで定評のある株式会社デンソー、福島県いわき市に本拠を構えるメーカー株式会社DroneWorkSystem、有限会社ボーダック、株式会社リビングロボットなども独自機体やロボット、ソリューションを展示した。

     会場のステージでは、地元在住のエアレースパイロット、室屋義秀さんの講演や、福島空港ダンスチームFLYERSのパフォーマンスなども行われた。なお、11月19日に福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドで取材をしたJUTMの運航管理に関係する実証実験で、実験の柱となったドラマの中で主役級の活躍をした警備会社の女性が、FLYERSのメンバーの1人と交流があると話していたため、パフォーマンス終了後にチームに話しかけてみたところ該当者と遭遇できた。警備会社女性が活躍されておられたこと、ダンスチームにエールを送っておられたことを伝えると、「とてもうれしいです」と喜んでいた。警備会社の社員と、福島空港のダンスチームメンバーとの縁を、ドローン関連の取材でつなげることができた縁は、ドローンの社会受容性拡大への期待を高めさせてくれた。

    40㎏配送機、30㎏配送機を展示するDroneWorkSystem
    JUIDAのブース
    来訪者が立ち寄るUIDAのブース
    JUIDAブースに展示されたヒトロボの取り扱い機。ぴかぴかのMavic3も
    ブルーイノベーションが自動走行車の動きをお披露目
    前日に実証実験を行ったJUTMも出展
    株式会社NESI
    イームズロボティクスの目玉の自動走行車。衛星やSLAMをスムーズに切り替えられるところがポイント
    イームズの自動走行車の全体像
    イームズのブース
    テラ・ラボはここでも話題
    デンソーの橋梁点検ドローン
    福島県田村市の地域組織ドローンコンソーシアムたむらのブース
    ウインチからのびるワイヤーの、荷物を下げるフックがニックスのプロダクト。荷物が地面に2~3回接地すると操作なしで荷物が切り離される。一度では切り離されないのは誤作動対策の工夫という
    室屋さんの講演には多くのオーディエンスが集まった
    福島空港のダンスチームのパフォーマンスは会場を魅了した
    石川エナジーの機体
    非接触給電ソリューション
    会場の一角に設けられた体験ブースではドローンで風船を割るアトラクションが
    風力発電用大型ブレード点検機
    「このようにドローンで接近し、点検するのです」

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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