ドローンやその周辺技術の開発を手掛ける株式会社ロックガレッジ(茨城県古河市、岩倉大輔代表取締役)は1月26日、同社がドローン、スマートグラスなどを組み合わせた捜索活動支援システム「3rd-EYE」のデモンストレーションを、古河市の利根川河川敷で実施した。デモンストレーションでは、古河市など7市町で構成する茨城西南地方広域市町村圏事務組合消防本部の消防隊員が、システムの運用、ドローンのオペレーションなどすべてを実施。開発者の支援なく、遭難者の発見、関係者での情報共有、隊員への駆け付け指示、救助の作業と時間を大幅に削減し、円滑に救助できる可能性を示した。
「3rd-EYE」はドローン×AI×XRを融合させた捜索支援システムだ。ドローンで空から情報収集した映像をAIで解析し、助けを求めている人物の有無、人物の位置、姿勢、性別などを判定し、判定結果をわかりやすく、捜索活動の本部のモニター「HQタブレット」に集約されるとともに、現場の隊員が装着しているスマートグラスの映像内でも空間表示される。
捜索では指揮を執る本部と、捜索に向かう現場とで分かれて活動をするため、本部と隊員との意思疎通や情報共有が捜索活動の成果に大きく影響する。「3rd-EYE」は指揮本部と隊員が同じ情報を共有できるため、意思疎通や情報共有の大幅な効率化につながる。指揮本部はこの映像をもとにより的確な指示を隊員に出せる。現場の隊員は装着しているスマートグラスに、目指す要救助者までの距離、方位などが示され、要救助者を探し当てるまでの作業が大幅に効率化する。
指揮本部と隊員間の意思疎通も、映像を共有できるためより円滑化し、精度も向上する。ロックガレッジが消防隊との協議、訓練を重ね、捜索に求められる一連の情報処理を自動化することで効率的な情報共有ができるシステムとして開発した。
デモンストレーションでは、西南広域消防の3人が本部の指揮役、4人が現場の捜索隊役となった。情報収集のために飛行させたローンはAI、自動飛行システム統合したドローン自動飛行システムを搭載してあり、これも消防隊員が飛行を担った。
デモは大規模災害が発生し、河川敷に要救助者がいる想定で、現場にドローンを飛行させるところからスタート。本部のモニターにドローンからの映像とAIで解析された情報が共有された。あらかじめ要救助者にみたてた人形3体を設置してあり、その人形をシステムを活用して迅速に発見し、現地に駆け付け、救助することがデモのミッションとなった。
本部のモニターに映し出されたドローンの映像とAI解析結果には、映し出されている映像内に救助すべき人がいると判断した場合に、人の形をしたアイコンが該当箇所に表示される。検知した人が、倒れているのか、立っているのか、おぼれているのか、といった姿勢に関する情報や、距離も映し出される。本部のモニターに加え、現場に向かう隊員が装着しているスマートグラスにも情報が共有される。また別のモニターにはスマートグラスを装着した隊員の見ている映像が表示される。複数のスマートグラスを装着した隊員がいる場合、それぞれを切り替えられる。スマートグラスの映像は、ドローン映像のAI解析結果と連動していて、助けを求めている人のアイコンが、スマートグラスの映像に反映される。同時に、方位や距離も示され、装着した隊員は、それを頼りに捜索に向かうことができる。
本部はこれらの映像を見ながら、複数の要救助者のうち、どこに向かうかを判断し、隊員に指示。隊員は、指示された要救助者の救出に向かう。このさい、スマートグラス内に示された映像を照らし合わせる。隊員が救出に向かい、要御救助者の人形に近づくと、映像内に示される人形までの距離の数字が小さくなり、近づいていることを理解できる。この様子は、隊員のスマートグラスと、本部のモニターとで共有されている。本部と現場の意思疎通は音声で行われる。映像や情報を共有しているため、本部からの指示の内容が的確に伝わり、隊員からの報告も本部が理解しやすくなる。
デモンストレーションでは、3体の人形を河川敷、河川内、茂みの中に設置したが、いずれも最短ルートで発見し、救出ができた。
今回のデモンストレーションは、茨城県が取り組む「DXイノベーション推進プロジェクト」に採択された「ドローン×AI×拡張/複合現実による要救助者空間表示システムの実用化」の一環として行われた。この日のデモンストレーションを含め、複数回の試験が売り返され、システムの実用化に向けた性能の検証、利便性の評価が行われている。開発の特徴は利用者の使い勝手を踏まえた改善。ロックガレッジは西南広域勝消防の日頃の訓練の成果をいかし、能力を引き上げるために、活動に必要な要素を優先して実装する開発を繰り返してきた。
システムの運用をすべて消防が行ったことも特徴のひとつ。システムの専門家の手を借りずに、利用者が使えるように仕上げた。ロックガレッジの大畑令子取締役は「われわれの出番がいらないほどに完全に使いこなしておられます」と目を細めていた。
参加した西南広域消防の隊員の1人は、「災害発生時に助けを求めている現場では、どれだけ短い時間で救助できるかが人命救助の成果を左右します。われわれは日々、その訓練をしていますが、このシステムは要救助者の発見、情報の共有、医師の疎通などの作業に必要な時間の短縮に大きな力を発揮してくれます」と話した。
ロックガレッジの岩倉大輔代表取締役は「吸い上げた情報のすべてを垂れ流すように提供することはできますが、それでは現場が混乱することをわれわれは学んできました。指揮する皆さんや現場に向かうみなさんが、最も必要な情報を、最も使いやすく適切な形で提供する方法とその仕組みを、意見交換や試験を繰り返しながら検討してきました。今回、ここまでの成果をお示しできました。これを役立てて頂ける現場でお使い頂き、成果に親羽立板出ればありがたいと思いますし、これからも改善を続け、さらに使い勝手のよい、より役立つものにしてまいりたいと考えています」と話した。
「3rd-EYE」は災害利用のほか、山岳遭難、徘徊者の捜索、警備、害獣調査などへの応用が可能で、ロックガレッジは今後、このシステムの普及と利便性向上を続ける考えだ。
湘南・茅ヶ崎(神奈川県)の海岸、湘南エリア唯一の海沿いのキャンプ場など、魅力的な見どころを満載した茅ヶ崎・柳島地区の、ドローンで空から撮影した映像をまじえたプロモーション動画が茅ヶ崎市の公式YouTubeチャンネルで公開された。「湘南Girlsコンテスト」の4代目グランプリ、大月海風さんら3人のモデルが地域の魅力を満喫していて、視聴者を誘いそうだ。
動画は2025年7月7日にオープンした道の駅「湘南ちがさき」の周辺の柳島地区の魅力を伝えていて、砂浜と岩場が美しく、江の島や富士山を眺められる柳島海岸、湘南エリア唯一の海沿いのキャンプ場「ちがさき柳島キャンプ場」、はらっぱ、親水池、テニスコートなどが整備された柳島しおさい公園、陸上競技場、ジョギングコース、スタンドなどが整備された柳島スポーツ公園が紹介されている。
動画の中では柳島海岸の砂浜が上空から波打ち際を見下ろしている映像や、ちがさき柳島キャンプ場が海沿いにあることを象徴するように海岸と並んでうつる場面が収録されている。空撮ではDJIのMavic 3 Proが使われた。
動画に登場する3人のうち、2人は湘南地域のPRを目的に開催されている「湘南Girlsコンテスト」の入賞者。大月海風さんはこの夏決定した4代目グランプリで、2024年に決定した3代目特別賞受賞の鈴木桜子さん、さらに「鎌倉きものイメージモデルコンテスト」で特別賞を受賞した嘉山茜さんと3人で動画に彩りを添えている。
湘南Girlsコンテストは、ライブ配信事業の株式会社マシェバラ(東京)のほかJCOM湘南・鎌倉、レディオ湘南(藤沢エフエム放送株式会社、藤沢市)などが2022年にスタートさせた地域の活性化を担うキャラクターの選抜コンテストで、入賞者の中からPR動画に出演することが恒例だ。DroneTribuneも開催に参画している。
また今回、柳島地区のプロモーション動画に出演した3人は「道の駅・湘南ちがさき」のプロモーション動画にも出演している。
AAM(アドヴァンスト・エア・モビリティ)運航事業を手掛け、大阪・関西万博の運航事業者にも名を連ねる株式会社Soracle(ソラクル、東京)が、2027年中にも大阪・関西エリアで旅客運航を目指す計画を明らかにした。9月10日に大阪府、大阪市と連携協定を結んでおり、その席で計画を明らかにした。米Archer Aviation(アーチャー・アヴィエーション)のパイロット1人を含めた5人乗りのeVTOL型AAM、Midnight(ミッドナイト)を使うことを想定しているという。
Soracleは2026年にも大阪府内で実証飛行を実施し、必要な審査をふまえ27年にも大阪ベイエリアでの遊覧飛行などを始める。周回して出発点に戻る運航のほか、離陸地点から別の場所に移動する二地点間飛行も想定する。
大阪府と大阪市との連携協定は、ソラクルの事業環境を整えることや、運航網整備に必要なインフラ整備に向けた調査、制度の整備、関連ビジネスの展開支援などの事業環境整備に向けた取り組みを進める。締結式では太田幸宏CEOが、大阪に来れば全国に先駆けて空飛ぶクルマに乗ることができる未来を実現し、中長期的には関西・瀬戸内海地点を結ぶ観光体験を創ると抱負を述べた。
吉村洋文知事は「さまざまな課題はあろうかと思いますが、Soracleさんと協力し、大阪府・市も全面的に当事者として取り組むことで、2027年に商用運航を、そして大阪に来れば空飛ぶクルマに乗ることができるということをめざしていきたいと思います。大阪・関西から、空の移動革命を実現していきましょう」と述べた。
Soracleの公式発表はこちらにあります
スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
参考:GMO熊谷氏、HEXA搭乗し飛行を公開
参考:GMO熊谷氏にHEXA公開搭乗の理由を聞く
参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始
ドローンショーの株式会社レッドクリフ(東京)が、フィンテックのフリー株式会社(freee株式会社)の活用事例に登場した。レッドクリフが搭乗したのはfreeeが提供しているプロダクト「freee販売」の活用事例で、ビジネスの急拡大に伴う業務管理の効率化に役立てていることが紹介されている。取引先の業務効率化をアピールすることが多いドローン事業者にとって、freeeの活用事例はモデルになりそうだ。またドローン事業者が他の事業者の活用事例に取り上げられることも今後、増えそうだ。
フリーが公表したレッドクリフの活用事例はこちらからみられる。
それによると、事業の急拡大で案件別の収支管理や、全体の把握、属人依存の管理に限界が見えてきた中で、それまでスプレッドシートに頼ってきた業務フローを見直しに着手した。freee販売の導入で、受発注データと原価情報を集約し案件ごとの収支把握が容易になり、部門を越えたデータ共有や、各部門がそれぞれの業務に集中できる態勢が整ったという。チェック漏れリスクの軽減と業務負担の軽減が同時に果たせ、人件費、立替経費、ドローンの減価償却費を案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が実現し、経営判断の精度向上にも繋がっている。
結果として、IPO準備に不可欠な「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」をデータに基づいて説明できる環境ができたという。
ドローンの事業者も、取引先の効率化をソリューションとしてアピールする事例が多く、活用事例でも導入先の作業の時間短縮効果などが掲載されることが多い。一方で、導入先にとっては、その事例が解決したい課題の一部にすぎないことや、導入による新たな負担などが発生するケースもあり、活用事例のアピールの方法について、各者が試行錯誤している。
freee販売の活用事例では、汎用性の高い困りごとを取り上げていて、freee販売の商品性のアピールになるとともに、多くの企業にそのアピールの手法そのものが参考になりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンによるマンション外壁点検の仕事を請け負うための力を養う講座「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」の内容を解説する「講座ご案内ウェビナー」をJUIDAの公式ページ上で公開した。ウェビナーは7月に視聴者を募って行われ、講座は8月に開講した。現在も受講生を募集している。
「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」は、JUIDA、マンション管理など不動産管理大手の株式会社東急コミュニティー、ドローンスクール運営の株式会社ハミングバードの3者が作った講座で、5月に公表し、6月に開催された展示会「JapanDrone」で3者そろって発表会に臨んでいた。3者は新たな講座のマンション外壁点検の現場で求められる実務を盛り込んだことと位置付けている。
マンション外壁点検でのドローン導入期待は高いものの、外壁点検の現場や実務を知るドローン事業者は多くない。マンションの管理組合などから点検業務を請け負うマンション管理事業者側にとっては、現場知識の乏しいドローン事業者にドローンでの点検を依頼すると、ドローン事業者が担うべき実務を一から伝えなければならず、手間、時間、コストの負担が大きい。これがドローンの導入を阻む要因になっていると言われている。このため講座を通じてマンション外壁点検に求められる実務の知識を習得することで、マンションの外壁点検現場へのドローン導入を後押ししようとする狙いがある。
公開された動画は、全体で50分弱。事務局のあいさつ、カリキュラム概要、受講料、受講会場など講座に関わる説明が27分ごろまで行われる。この中では、点検作業後に作成し、依頼主に納める報告書の重要性が強調されている。ドローン作業者には、報告書の重要性や、報告書に掲載するための画像の要件が講座で解説されることなどが伝えられている。
その後、事務局が設定した想定質問に、担当者が回答する一問一答が行われる。一問一答の中では、講座の修了生には必ず外壁点検の仕事があっせんされるのか、タワーマンションにも対応可能なのか、など受講判断に関わりそうな質問がいくつも盛り込まれていて、担当者の回答は、受講を検討者の参考になりそうだ。
高校生FPVドローンレーサー・山本悠貴選手が、9月13日にドイツで開幕する国際レース出場に向けてクラウドファンディングを実施中だ。山本選手をスポンサーとして応援している株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)がプレスリリースで山本選手の活躍を紹介している。
山本選手は今年7月12日~13日にイタリア・アルビッツァーテで開催された「World Drone Cup Italy 2025」で予選を総合3位で通過してジュニア部門の決勝に進出した。山本選手としては初の決勝進出で、決勝でも4位入賞に食い込む活躍を見せた。なお、ジュニア部門ではすでに数々の大会で優勝経験を持つ日本の橋本勇希選手が優勝している。
山本選手は、2024年10月30日から11月3日まで中国杭州市のShangcheng Sports Centre Stadiumで開催されたドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(WDRC)」で、橋本選手とともに日本からの5人の選手の一人として出場し、各選手の成績を集計した国別順位で日本代表チームが3位に導く立役者の一人となっている。 なお、イタリア大会で優勝した橋本選手は、中国杭州市の大会でも個人総合、ジュニア部門の2部門で優勝している。
ドローンショー・ジャパンのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000080729.html?fbclid
イタリア大会結果詳細: https://fpvscores.com/events/0DNj73gpMX/results
山本選手の動画:https://youtu.be/1auUXebjYTc
<参考>中国大会で日本総合3位、橋本選手は個人総合、ジュニア部門の二冠:https://dronetribune.jp/articles/24276/
山本選手のクラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/876711/view?utm_campaign=cp_share_c_msg_projects_show