一般社団法人DPCA(ドローン撮影クリエイターズ協会)は7月14日、京都サンガF.C.のホームスタジアム「サンガスタジアム by KYOCERA」(京都府立京都スタジアム、京都府亀岡市)で、近く導入される国家資格の動向やドローン事業者の最新動向に触れる「DPCA ドローンフェス 2022」を開催した。一般社団法人日本ドローンサッカー連盟によるドローンサッカーの体験会が行われたほか、空飛ぶクルマやカーゴドローン開発のSkyDrive、点検事業の株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)、機体販売や講習事業の株式会社セキドなど業界や系列を超えたドローン事業者が最新事情を報告した。DPCAは7月22日に奈良県コンベンションセンター(奈良市)で開催される「京阪奈ドローンフォーラム」(京阪奈ドローンプロジェクト実行委員会主催)を後援しており、出展も予定している。
DPCA ドローンフェス 2022 は、DPCAが会員や広くドローンの利用者に向けて、日々変化するドローン事業を知る機会を提供するために開催された。午前中には会員限定で国家資格に関する説明がなされ、参加者によると、かなり重要な情報交換ができたという。
午後からは、各事業者の最新動向の説明やデモンストレーションが行われ、SkyDriveの大型カーゴドローンSkyLiftの実機を展示したうえで、同社カーゴドローン事業部の村西正行氏らが、福井県内で行われた際が支援物資運搬の実証実験の事例などを報告した。報告で使用した動画は、スタジアムの大型映像モニターに映し出された。
村西氏は飛行の事例について「場所を提供していただき、あたたかく見守って頂き、小学生にも応援して頂き、多くの方々の協力で実現できました。協力が大事であることを実感しています。わたしたちだけではできません。私たちではなく、地元の方々に運用して頂くことができて成果がでると考えているので、受け入れて頂けるよう、ネガティブな反応を少しでも減らすことができるよう、地道にていねいに取り組んで参ります」と鼻s亭た。
このほか、佐賀県でのドローンの取組が報告され、セキドがDJIエンタープライズのM30を、JIWがAIドローン「Skydio2+」をスタジアムでデモ飛行。それぞれ飛行の様子や機体がとらえた映像をスタジアムのモニターに表示させ来場者が見入っていた。体験型ワークショップでは、ドローンサッカーの体験会などが催された。
DPCAの上原陽一副代表は「ドローンの普及には各事業者が手を取り合うことが大事。フェスを通じて、来場者が何かやってくれそう、と期待してもらえたらよいと思っています」と話した。上田雄太代表も「こういう機会を通じてドローンに理解を深め、親しんでほしいと思っています」と述べた。
DPCAは7月22日に奈良県コンベンションセンター(奈良市)で開催される「京阪奈ドローンフォーラム」(京阪奈ドローンプロジェクト実行委員会主催)を後援しており、出展も予定している。
AIドローンを手がけるSkydio Japan合同会社(東京)は11月16日、東京オフィス設立を報告する説明会を都内で開催した。米Skydioにとって初の海外現地法人で日本での営業、マーケティングなどを担う。説明会では2021年度中に、産業用の新モデル「Skydio X2」や、機体をスマートに格納するボックス型の専用ドック「Skydio 2 Dock」、新開発の自動点検ソフトウェアを投入する計画を明らかにした。当面は企業、自治体、政府など法人向けに特化し、個人向けの機体販売などは行わない。トム・モスCEOは「技術で選ばれる会社になりお役に立ちたい」と抱負を述べた。
Skydio Japanは、米Skydioが開発した機体などのプロダクトについて、日本国内での普及を担う。港区内にオフィスを構え、株式会社NTTドコモ、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)、株式会社FLIGHTSをパートナーに、市場を開拓する。日本法人としての体制強化も進める。日本国内の有望市場などについては米本社に報告し、新モデルの開発に役立てる。日本市場での提供方法については、JIWなどと検討していく。
モスCEOはアジア太平洋地域全体の統括も務める。Skydio製品は世界で需要が拡大しており、アジア太平洋地域での事業拡大も視野に入れる。
Skydioは2014年にシリコンバレーで発足したAI搭載ドローンのメーカーだ。機体周囲を3Dでリアルタイムに認識し、環境変化を予測して判断することができる「Skydio Autonomy」と呼ぶ技術を搭載していることが特徴で、ドローンは航路を探して自律航行する。
Skydioの最初の機体は、林の中をかける自転車を障害物避けながら追尾する映像で愛好家の間であっという間に話題となり、「熟練パイロット並の動きを自動で実現する」と世界中に拡散された。
2代目のSkydio2は、障害物を避けるために搭載したカメラの個数が12個から6個に半減するなど、小型化、軽量化、低価格化を実現した。日本でも点検現場向けにカスタマイズされ「ぶつからないドローン」として投入されている。
新モデル「X2」はSkydio2の性能を引き継いだうえで、自律ソフトウェア、赤外線カメラを搭載し、折り畳んで持ち運びが可能な手軽さを備え、航続時間を最大35分間にまで拡大させた、点検などの産業用途に特化した機体だ。カメラから得られる情報を頼りに飛行するが、暗い場所での飛行が可能になる。2020年度中に市場投入され、日本には2021年度中の投入を目指す。
Skydio JapanのモスCEOは説明会の中で、「統計によると、企業がドローンを導入するさいに最も心配している事はクラッシュです。クラッシュは操作ミスで起こります。しかしSkydioのドローンは操作が不要で障害物を避けて飛行します。ドローンの導入が進み、より安全で生産性の高い社会のためのお手伝いをしたいと思っています」と話した。
さらにモスCEOは経済性についても言及。「産業の現場ではドローンはほぼマニュアルで運用されています。運用には、パイロットと補助者の2人で行われることが多く、そのため、ドローン導入料金の8割は人件費です。Skydioのドローンは、自律航行をするのでマニュアル操作の必要がなくその分コストを抑制できます。費用が抑制できれば、別の現場にドローンを導入することにもつながります」と、自律航行が人件費抑制にも効果的だと説明した。説明の中で取引先の言葉として、「ある会社は、ドローンの運用を拡大するため今年は100人のパイロットを育成し、来年は200年育成する。でもその次の年はゼロだ、と言っていました」と紹介した。
説明会ではパートナーであるNTTドコモ執行役員の坪谷寿一5G・IoTビジネス部長が、同社が提供しているドローンプラットフォーム「docomo sky」や、奥多摩などでの災害対応運用などを紹介。「2016年に中期戦略を発表して以来、常にドローンを意識してきました。通信環境、AI、運航管理などでともに取り組んでいきたいと考えています」とあいさつした。
説明会ではSkydio2のデモ飛行も実施した。コントローラーのタップで、画面で設定した「A地点」「B地点」に向かったり、目的地までのルートを、邪魔するようについたてを立てても、機体が迂回して目的地を目指したりする様子を披露した。途中、ついたてがわりにモスCEOが立ちはだかって、ドローンがモスCEOを避けて飛ぶ様子も見せた。
日本では海外で開発された機体も含め、多くのドローンが活躍を模索している。モスCEOは、「どこの国の会社であるかなど、選択基準はいろいろあると思いますが、われわれは技術で選ばれる会社でありたいと思っています」と話した。
慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムが11月3日に静岡県御殿場市で開催するドローンの飛行ショー「富士山UAVデモンストレーション2020 in 御殿場」の出場チームが固まった。企業や研究機関など10組がデモフライトに臨み、6組も機体や関連プロダクトを展示する。最大航続50分の大型機「ALTA-X」や、日本向けにカスタマイズされたAIドローン「Skydio J2」、独自に作られた機体などが集う。米大統領選の投票日であり、日本の誇るスーパーアイドルグループ「嵐」が無観客ライブ「アラフェス2020 at 国立競技場」を配信する日でもあるなど巨大イベント目白押しの祭り一色の文化の日は、御殿場ではドローンの話題機が秋空を彩る。
今回のUAVデモンストレーションは、西に富士山をのぞむ御殿場市陸上競技場を会場に開催される。御殿場市が共催し、当日は400mトラック8コースを備えるグラウンドで、上空40mまでの空域を、10組が持ち込むドローンが飛行姿を見せる。これまで展示会の陳列や、フライトゲートでのホバリング、ネット上の広告や動画などで関心を集めた話題機や珍しい機体が空を舞う、いわばドローンの航空ショーだ。
屋内展示会場も準備され、フライトに登場した実機を間近で確認したり、担当者から説明を受けたりできる。フライト参加チームとは別の6組も機体や関連プロダクトを持ち込む予定で、関心の高い来場者には、目の前で実物を確認できる機会となる。
なお、新型コロナウィルス感染拡大対策のため、観覧者は全員、検温、アルコール消毒、マスク着用、観覧同意の意思確認を受ける。観覧希望者は事前登録が必要で、観覧席から見ることになる。
https://uav-demonstration.jp/
出場機のバリエーションは多岐にわたる。
株式会社イデオモータロボティクス(東京都府中市)は米Freefly Systems社の重量級大型機「ALTA-X」で当日に臨む。最大積載可能重量が15.9kg、無負荷時の最大飛行時間50分という飛行性能や、高性能GPS、オープンソースのPX4フライトコードを採用した拡張性のあるシステム、3重化されたIMUをもつフライトコントローラー、折りたたみ可能で、防塵防雨対策が施されたフレーム、可変安定機構を備えた33インチ大型プロペラなどが話題を集めた機体だ。
日本の機体制御技術をリードする株式会社自律制御システム研究所(千葉市)は、同社の主力機「PF-2」で日本の底力を見せ、ジオサーフ株式会社(東京都大田区)は、スイスsensFly社のマッピング向け固定翼機「eBee」の新型機「eBee X」を披露する。インフラの設備点検などを手掛ける株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(大阪市)は、米Skydio社のAIドローンに磨きをかけた日本仕様の機体、Skydio J2を持参して会場入りする。
株式会社空撮技研(香川県観音寺市)は、空撮専門業者が撮影のさいに頼る係留装置、「ドローンスパイダー」を、DJIの Phantom4をフライトさせながら、飛行する機体を一定のテンションでつなぎとめる暴走防止機能の真価を見せつける。千葉県君津市にある広大なフィールドで多彩な機体の飛行実績を多く積むDアカデミー株式会社(神奈川県横浜市)はフランスParrot社のDiscoの編隊飛行などを予定。火山観測を実施した株式会社HEXaMedia(埼玉県川口市)や、さまざまな機体開発を手掛けている徳島大学制御工学研究室が披露するオリジナル機体も見逃せない。
スタイリッシュで活用の範囲が拡大しているVTOL機も登場する。有限会社森山環境科学研究所(名古屋市)がスイスWingtra社の「WingtraOne」を、株式会社WorldLink & Company(京都市)がドイツWingcopter社の「Wingcopter」を、それぞれ飛ばす予定で、スタイリッシュな外観や飛行スタイルが来場者の目をひきそうだ。
また慶応義塾大学はこの夏、藤沢の海岸の安全確保の活躍したDJIのMatrice300 RTKを、Flying Beach Guardians仕様としてフライトさせる計画だ。
出場チームや登場する機体、デバイスは以下の通り(10月30日現在) <デモフライト&展示(50音順)と飛行させる機体など> ・株式会社イデオモータロボティクス(東京都府中市) Alta-X(米Freefly Systems社) ・株式会社空撮技研(香川県観音寺市) 係留装置ドローンスパイダーとPhantom4(DJI社) ・慶應義塾大学 Matrice300 RTK(DJI社,Flying Beach Guardians仕様) ・ジオサーフ株式会社(東京都大田区) eBee X(スイスsenseFly社) ・株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(大阪府大阪市) Skydio J2(米Skydio社) ・株式会社自律制御システム研究所(千葉県千葉市) PF-2 ・Dアカデミー株式会社(神奈川県横浜市) Disco(フランスParrot社、編隊飛行)、Matrice300 RTK(DJI社) その他小型VTOL機 ・徳島大学制御工学研究室(徳島県) オリジナルHEX機(RTK-GPSによる飛行経路再生)、 オリジナル倒立型ダクト機 ・株式会社HEXaMedia(埼玉県川口市) オリジナル機(大型マルチコプター ・有限会社森山環境科学研究所(愛知県名古屋市) WingtraOne(スイスWingtra社) ・株式会社WorldLink & Company(京都府京都市) Wingcopter(ドイツWingcopter社) <屋内展示(50音順)> ・一般社団法人アジア総合研究所(東京都) 中国RichenPower社の農薬散布機 ・合同会社アドエア(京都府京都市) ドローン用パラシュート ・株式会社ジーエスワークス(東京都) GNSS受信機、PPK処理ソフト ・合同会社スカイブルー(愛知県岡崎市) ドローン用ガード ・株式会社D-eyes(大阪府堺市) ドローン搭載高性能カメラ ・有限会社ボーダック(埼玉県吉川市) オリジナル 2.5m VTOL機、産業用VTX <開催概要> 開催日:2020年11月3日(火・祝) 時 間:11:00~17:00 場 所:御殿場市陸上競技場(静岡県御殿場市ぐみ沢670-1) 入場料:無料 主 催:慶應義塾大学SFC研究所 ドローン社会共創コンソーシアム 共 催:御殿場市 ※観覧の申し込みは以下の富士山UAVデモンストレーション2020のホームページから https://uav-demonstration.jp/2020/10/14/uav2020/
ドローンを利用したインフラ点検ソリューションを手がける株式会社ジャパン・インフラ・ ウェイマーク(大阪市中央区、JIW)は4月20日、電力設備、通信設備など社会基盤を持つ事業者7社と資本業務提携を締結したと発表した。柴田巧代表取締役社長はこの日WEBを利用した会見に登壇し、点検作業の効率化を実現させるAIの共同開発に取り組むと表明した。DroneFundも同日、2号ファンドからJIWに出資すると発表した。
JIWが資本業務提携を結んだのは、東京電力パワーグリッド株式会社、北陸電力株式会社、大阪ガス株式会社、 西部ガス株式会社、 東洋エンジニアリング株式会社、株式会社NTTデータ、DroneFundの7社。資本提携にあたってJIWが第三者割当増資を実施。提携各社はJIWの普通株を取得した。西部ガスは、2019年7月に組成したSGインキュベート第1号投資事業有限責任組合を通じて取得した。共同開発、設備の共同保全のほか提携各社から事業を受託する。
JIWの柴田巧社長はこの日の会見で、冒頭に、新型コロナウイルス感染拡大防止の第一線として危険と隣り合わせで活躍する医療従事者に感謝を述べた。そのうえで生活や産業の基盤となるインフラ事業者を重ね合わせ、厳しい環境下での作業が生活や産業基盤を守っていると指摘。「FIELD WORK AT HOME」を掲げて、現場のデジタル化、自動化を進め、現場環境の改善を目指す方針を改めて表明した。
会見の中で柴田社長は、JIWが1年間に1500の設備を点検した実績や、効率化を進めている現状を報告。すでに作業時間の最小化を進めてきた一方で、さらなる効率化のためには現場で撮影された写真などのデータを分析する作業の自動化が必要になると指摘した。このため今回の提携に参加した各社とは、自動化に必要な膨大なデータを提携各社で持ち寄り、業界を超えてAIを共同開発する。
柴田社長は「ベンチャー企業のスピード感と、民間インフラ事業者の工夫によって、維持管理コスト削減を実現し、それを日本全国に広めることが使命」と述べた。
会見では提携した7社を「1年目に参加頂ける企業」として紹介しており、「今後もご協力頂ける企業様をお待ちしております」と述べるなど、提携企業の拡大にも意欲を示した。
JIWは2019年4月にNTT西日本の子会社として発足したドローンを活用したインフラ点検ベンチャーで、昨年7月にはドローン点検大手であるマレーシアのエアロダイン社と提携、今年1月にはAIドローンを開発している米SKYDIO社と提携するなど活動を活発化させている。
AIドローン開発の米Skydioが日本市場に参入することになった。ドローンでのインフラ点検ソリューションを提供する株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(本社・大阪市、JIW)は1月22日、米Skydio.Inc(カリフォルニア州、Skydio)と、点検のための特別仕様機「Skydio R2 for Japanese Inspection」(J2)の開発を完了したと発表した。また両社は同時に、この開発機J2を使った橋梁点検を、東南アジアと日本で展開する独占パートナーシップを締結したことも発表した。点検のトライアルを実施することも決め、希望事業者の募集も開始した。
米SkydioはAIとコンピュータビジョンに高度なロボティクスを組み合わせたドローンシステム開発で知られ、2018年2月に13のカメラを搭載したコンシューマー向け「R1」、2019年10月にはカメラを6つにして小型、軽量、長時間化させた後継機「R2」を発表した。R2発売前の2019年7月からティザー広告の公開をはじめると、草木が生い茂る丘陵で疾走する自転車をドローンが見失うことなく自動追尾する動画が反響を呼んだ。10月には機体を発売。発売翌日にはHPで「完売」を報告するほどだった。
昨年7月には統合ドローンソリューションを提供する米CAPE社(カリフォルニア州)が、商用ドローンの統合的なセキュリティ確保を目的に発表した「Cape Preferred Partner Program(P3、ケイプ・プリファード・パートナー・プログラム)で、DJIとの統合を中止し、Skydioの参加を発表している。
JIWとの点検のための共同開発機J2は、このR2がベース。R2はプロペラが折り畳みできるコンパクト設計のVisual SLAM搭載機。60fpsに対応した4Kカメラ6機で機体の周囲を全方位で見渡せる。45メガピクセルの画像をリアルタイムで収集し、毎秒1・3兆回の演算ができるAIで解析する。障害物を検知し避けながら飛行することが可能だ。また特定の人物の動きを予測し先回りして撮影することもできる。ジンバルは3軸。スマートフォンのアプリのほか、専用コントローラーでも制御できる。バッテリーは本体の底に脱着する。
J2では、こうしたR2の機体性能はそのままで、点検用に特別機能を装備した。衝突回避の範囲を、従来機で基準点から150センチだった距離を50センチ以内に収まるように設計。これにより、三角形の部材同士をつなぎあわせたトラス構造の橋梁など狭い空間で作業を容易にした。また、橋梁の裏側のオルソモザイクを取得できるようカメラが機体の真上に向くようにした。さらに非GPS環境下での画像でもGPS座標が取得できるよう、機体全方位を確認できる特性をいかしGPS座標をExifファイルに記録。非GPS環境下の画像でクラックなどの異常を検知した場合、その場所をGPS座標と照合し特定できる。ドリフトがあった場合でも機体がGPS環境下に出た時点で補正できる。
これによって、点検個所の拡大、点検精度の向上、工期短縮化とそれに伴うコスト削減が図る。点検個所としては、橋梁床板、送電設備、変電設備、建築物の屋内、灯台、鉄道橋梁などを想定している。
JIWは昨年7月からJ2の開発に着手。米国で開発してきたが、昨年11月に電波法の緩和で、技術適合証明(技適)未取得機の実験飛行が可能になったことから、国内でも実験を重ねてきた。急こう配の渓流に築造された砂防ダムの点検実験では、機体が勾配をスムーズにたどり、渓流を覆う草木を避けながら自律飛行する様子が確認できた。
JIWの柴田巧代表取締役社長は「点検作業員の負担軽減や人事不足解決のためにドローンを活用する動きは活発化しているが、どうしても点検の専門知識を持たないドローンパイロットが飛行させ、その後点検の専門家が確認する必要があった。効率化に限界があった。J2なら点検の専門家がドローンを自律飛行させて点検させることに道を開く。自動車がマニュアルミッションからオートマチックに転換したほどのインパクトがあると思う」と、点検作業の大幅な効率化を展望している。
JIWはSkydioと共同開発した「J2」を使った橋梁点検を、日本と東南アジアで展開する。点検作業はJIWと、同社が認めたパートナーだけが展開できる独占パートナーシップに基づいて実施する。現時点では日本国内で2社、海外勢では昨年7月に業務提携した、世界25カ国でサービスを展開するマレーシアのドローンソリューションカンパニー、Aerodyne gronpがJIWのパートナーとなっている。
点検事業は、J2が技適を取得したのちに展開する。技適取得は4月ごろになる見込みだ。ただそれまでの間もトライアルは継続する。さまざまな環境での点検効果を確認するため、同社のトライアルに有償で参加を希望する事業の募集も始めた。
募集対象は、J2利用のインフラ点検を希望する企業で、募集期間は1月22日から3月31日まで。メールか電話で問い合わせを寄せたうえで、JIW担当者と打ち合わせを実施する。
問い合わせ先は以下の通り
・株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク 管理部
・電話:03-6264-4649
・メール:info-support@jiw.co.jp
株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)と、株式会社センシンロボティクスは1月8日、国営飛鳥・平城宮跡歴史公園(奈良市)で、ドローンによる全自動点検の実証実験を行った。実験は国土交通省が推進する公園のスマート化事業「パークスマートチャレンジ」の一環で、センシンが開発したシステム「SENSYN DRONE HUB」が、ドローンの離着陸や業務遂行などの自動運用を、JIWが取得データの解析を担い、汚損、亀裂、塗装の剥がれの有無の確認などを実施した。
この日は実験では、朱雀門の前に広がる広場のわきにある駐車場にドローンを格納する基地を設置。あらかじめ設定された指示に従い、格納庫が開きドローンが起動すると、自動的に離陸し、少し離れた朱雀門まで飛行。そこからデータ取得、データ転送、SfM処理、帰還、給電を自動で実施した。午前から昼にかけて3回のフライトを実施した。午後には、風速10メートル/秒をこえる強風に見舞われると、気象センサーがドローンの離陸を見合わせる判断を下すなど、安全確保の仕組みが機能する様子も確認した。
実験は国交省が推進する都市政策の一環で、実施にあたっては、自治体、民間企業とコンソーシアムが編成され、民間から応募のあったアイディアの中から、2019年度は11件が採択されている。今回の実験はそのうちの一件。JIWのアイディアが採用され、全自動システムを持つセンシンロボティクスが参加した形だ。
コンソーシアムの事務局を務める国土交通省近畿地方整備局国営飛鳥歴史公園事務所平常分室の宇川裕亮調査設計課長は「全国でモデル事業が展開される中、国の直轄で維持管理をする国営公園でも先導的にチャレンジを実施することになっており、今回はその一環。国営公園でドローンの実験が実施されるのは今回が初めてだ。結果を見ながら、地元などへの横展開を進めたい。平常宮跡歴史公園は平成30年に開園したばかりの新しい国営公園。この実験を機に知名度向上や利用促進も図りたい。実験は次年度も継続したい」と手ごたえを感じていた。
実験の運用を担ったJIWの吉田達也さんは、「現在、原則として人の手で行われている構造物の維持管理や、公園の植生の解析について、ドローンが代わりにできるかどうかを確認することが実験の目的。実験が国営公園でできることは、ドローン活用の普及など、ドローン前提社会を構築するうえで大きな意義がある」と話した。
また、全自動システムSENSYN DRONE HUBの運用を担ったセンシンロボティクスの妹尾美樹さんは「自動化は、業務フローの煩雑さや高所作業に伴うリスクから人々を解放することができる。今回も機体の現場への持ち込みや充電などの作業をすべて自動化した。構造物の実験で威力を発揮する。そのほか、大規模災害の発生時には状況の把握を担う担当者自身が被災している可能性があり、人に代わって視察ができるため災害場面での活用も想定している」と自動化の意義を強調した。