DJI JAPAN株式会社(東京)、豊橋市(愛知県)、中京テレビ放送株式会社(名古屋市)は2月28日、「ドローンの活用促進に関する協定」を締結した。具体策は今後詰める。DJI JAPANが自治体をまじえて包括的な協定を締結するのは今回が初めてで、締結式に出席した呉韜代表取締役は「地域の課題や機体への要望を、製品の改善に生かし、地域に貢献したい」と述べた。豊橋市はドローンの活用に積極的な自治体として知られ、市職員で構成する運航部隊「豊橋市ドローン飛行隊『RED GOBLINS』」も持つ。中京テレビは放送事業以外の事業創出に力を入れる中でドローンに注目しており、1月にドローンスクールを発足させている。
豊橋市役所で行われた締結式にはDJI JAPANの呉韜代表取締役、豊橋市の浅井由崇市長、中京テレビ放送の村井清隆ビジネスプロデュース局長が出席し協定書に署名した。
浅井市長は「本市のRED GOBLINSのメンバーは日々ドローン技術の向上に努め、『ぼうさいこくたい(防災推進国民大会)』への出場も目指しています。災害対応から物流、農業、測量、調査にも幅を広げたい。どういかすかにチャレンジし、市民が安心安全に暮らせる行政サービスにまでレベルをあげていきたいと思っています。昨年12月に『とよはし産業人材育成センター』がドローンの国家資格の実地試験会場に選定されたこともあり、手探りをしながら活用し、ドローンなら豊橋、といわれるように取り組んで参ります」とあいさつした。
中京テレビの村井ビジネスプロデュース局長は「テレビメディアの使命に大規模災害発生時の迅速な情報提供を通じた地域の生活者の生命、財産を守ることがあります。陸路での被災地へのアクセスが困難な場合に、ドローンが迅速で正確な情報提供を可能にすることがあると思っています。豊橋市のRED GOBLINSのようなチームを多くの行政機関が編成することを期待しておりますが、そのためには人材育成が欠かせず、われわれも1月下旬にドローンスクールドローンスクール『そらメディア』を発足させました。国家ライセンスのほか、農業用、産業用などに対応するほか、今後、撮影用のカリキュラムも構築し、すそ野の拡大に貢献しようと考えています」と事業を紹介した。
DJI JAPANの呉代表取締役は「地域の安全、安心のツールとしてわれわれのドローンが活用されることはメーカーとして光栄です。ドローンの技術や人材育成のノウハウを提供しながら、地域に貢献して参りたいと思います」と述べた。また、締結式後に行われた対談の中では呉代表取締役は「ちょうど5年ほど前、はじめて災害に使えるドローン『MATRICE 200』シリーズを発表しました。この5年間で、現場の声を頂いて改善したり、新機種を開発したりと、現場に鍛えられてきました。使い方の話を伺うと、そこには我々も知らないこともありました。DJI JAPANにも多くの開発陣がいます。今後、ドローンをどうしてほしい、といったアドバイスを頂ければ、それを開発にいかしたいと思っています」と話した。
豊橋市のRED GOBLINSはDJIがMATRICE 200シリーズを発売した2017年に発足させたドローンパイロットのチームで豊橋市の職員31人で構成する。消防のほか、道路、水道など部局をまたいだ職員が兼務しており、人事異動があっても原則、兼務が続く。大規模災害が発生したさいには、自動で参集し、災害対策本部のもとで活動するため、発災と同時に出動が可能な体制を整えている。DJI JAPANにとって、特定目的を掲げない包括的な協定を結ぶのは今回が初めてで、製品の改善ポイントや開発の重要なヒントを得る協定になる可能性がある。
衛星ブロードバンド「Starlink」を活用したモバイル通信のドローン配送が1月26日、埼玉県秩父市で始まった。場所はモバイル通信が困難な奥秩父・中津川のエリア。昨年(2022年)9月の土砂崩れ以降、通れなくなっている埼玉県道210号線の崩落現場を挟んで中津川の上流側に住む6世帯に、日用品などを毎週1回、Starlinkで通信環境を確保してドローンで定期配送する。ドローンは崩落場所の手前から向こう側の着陸地点まで2.8㎞を5~7分で飛ぶ。初日のこの日は7分で飛び、荷物をおろして帰還した。生活に不便をきたした住民を支える災害対応の重要なモデルケースになる。秩父市の北堀篤市長は「通信環境に恵まれない山間地域のみなさんに希望を与える日本初のハードル高きミッションに取り組んでいただいきました。期待大です」と述べた。当面う回路の凍結リスクがなくなる3月末まで行う予定だ。
取り組みは秩父市、株式会社ゼンリン(福岡県北九州市)が2022年10月25日に締結した「緊急物資輸送に関する連携協定」を軸に、KDDI株式会社(東京)、KDDIスマートドローン株式会社(東京)、株式会社エアロネクスト(東京)、生活協同組合コープみらい(埼玉県さいたま市)、株式会社ちちぶ観光機構(埼玉県秩父市)、ウエルシア薬局株式会社(東京)の6社が参加して「&(あんど)プロジェクト」を発足させ、遂行している。プロジェクト名には「地域に安堵を届ける」の願いを込めた。ほかにドローンへの電源供給などでサンセイ磯田建設株式会社(秩父市)が協力企業として名を連ね、秩父市大滝国民健康保険診療所(秩父市)も、オンライン診療や服薬指導に対応する。
ドローンは、現在通行止めになっている埼玉県道210号線の崩落場所の近くから離陸する。道路を落石から守る半トンネル状の覆い「大滑(おおなめ)ロックシェッド」の手前に離発着点と、Starlinkを通信網のバックホール回線として利用するau基地局を設置して環境を整えた。機体には重心制御技術を持つ株式会社エアロネクスト(東京)が自律ドローン開発の株式会社ACSL(東京)と共同開発し、日本各地で配送の実用に使われているAirtruckを採用。機体にKDDIスマートドローンが開発したドローン専用のノイズ耐性運航の高い通信モジュール「Corewing01」を搭載し、機体制御にKDDIスマートドローンの運航管理システムを用いることにした。
KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長は「林道が閉鎖の可能性もあり飛行先に作業員を配置しない前提で、離発着、荷下ろしを遠隔で行える機体、システムを使う必要がありました。またStarlink導入のau基地局設置で、山間部でも島嶼部でもモバイル通信の提供が可能な環境も整えました。被災地域に導入する初の事例です。被災地のみなさまの生活に安堵を届けたいという関係者のみなさまの思いにこたえる貢献したいという思いです」とあいさつした。
プロジェクトを先導してきたゼンリンの古屋貴雄執行役員も「秩父市とは2018年から協定を結んで取り組んできました。ドローン配送はそのひとつです。9月13日に崩落が起き、住民の日常生活の支援、安全対応として通信確保、安全に飛べるドローンの確保のために各社の参画を頂いた経緯があります。社会的意義の高い取り組みでもあると思います。社会に貢献すべく、しっかり進めて参ります」と述べた。
土砂が崩落した現場は、国道140号線から埼玉県道210号に分岐して約3.5㎞進んだ場所だ。中津川と急峻な斜面との間を縫うように走る道路だが、中津峡にさしかかる手前で土砂崩落があり、道路を約20mにわたってふさいだ。2022年9月13日に崩落が見つかって以降、県道は通行止めとなっている。通行止めの向こう側にいまも住み続けている6世帯の必需品は、大回りする林道が頼りだが「片道2時間半から3時間かかる」うえ、冬季は凍結し閉鎖される可能性がある。
冬になるまでは、地元の宅配業者など事業者が各社個別に大回りをして届けてきた。頭の下がる努力だが、冬の凍結期を乗り越え、さらに持続可能性を高めるために、代案の構築が急務だった事情がある。今回の取り組みでは、地元商店の配達品をひとまとめにする、という工程をはさむ。これにより各事業者がそれぞれで配送していた手間を軽減することができ、持続可能性が高まる。これは配送の枠を超え、注文を受けてから、注文者の手元に届くまでの一連の流れを集約、整理、最適化した取り組みでもあり、被災地の生活支援の側面と、それを支える側である事業者の支援との両面がある。
現地では土砂崩落の復旧作業が続いていた。道路に積もった土砂を取り除けばよいのだが、実は積もった土砂の上にさらに土砂が積み重なっている。現時点ではざっと1万8000立方メートルの土砂が積もっているとみられている。狭い場所での作業で選択肢も限られる。現在は、斜面の土砂崩落やその可能性のありそうな場所に網をかける作業が進んでいる。そのための工事用モノレールが建設され、作業員が昇っていく様子も見られた。網をかけ、落石被害の危険を減らす。その後、路面に近い土砂を撤去する。上から流れ落ちてくる土砂も撤去する。当面、片側一車線の開通を目指しており、完全復旧のめどはたっていない。
準備に奔走したゼンリンの深田雅之スマートシティ推進部長も「昨年9月13日の朝に秩父市から土砂崩落の連絡があり、その日の午後に現地に入りました。それからドローン配送の検討を進めてきました。当初12月に開始の目標をたてていましたが実際には想定していたより過酷な状況で、今日まで検討を続け、やっと先週、今週になって可能な状況ができました。私たちは2018年に秩父市と提携してドローン配送の取り組みをしてまいりました。2019年には国内2例目のレベル3と呼ばれる飛行も実現し、その後も経験を重ねてきました。今回の取り組みはこれまでの経験で蓄積したノウハウを毛州させました。『&プロジェクト』は『地域に安堵を』がコンセプト。あきらめずに中津川のドローン配送実現を推進し、安堵に貢献したい。安堵とは、安全、安全がすべて確保し終えたあとにたどり着くものだと思っています。冬を乗り越え、林道閉鎖のリスクがなくなる春が来るまでやりきります」と宣言した。
秩父市産業観光部産業支援課の笠井知洋主席主幹は「(中津川の)みなさんが寂しい思いをされてきました。ところが(中津川の)みなさんにドローン配送がはじまると説明をしてから明るい気持ちになっています。この『&プロジェクト』をほかの地域にも展開できるよう願っています」と切望した。関係者によると、中津川の人々に説明を開いたさい、ドローン配送が可能になった場合に注文したいものは何か、という話題をふると、はじめのうちは買い置きでだいぶ我慢できる、という様子だったみなさんが、そのうち「たばこはほしいかな」「ビールもいいのかな」などと嗜好品をあげるようになり、表情がやわらかくなったという。
発表会や登壇の様子を見守っていたエアロネクストの田路圭輔代表取締役CEOは「このプロジェクトに参加しているみなさんはあたたかくて本気のいい人ばかり。取り組むみなさんの思いが結実し、多くのみなさんに届けば素晴らしいと思っています。われわれも全力で貢献したいと思っています」と話した。
発表は以下の通り
秩父市、株式会社ゼンリン(以下、ゼンリン)、KDDI株式会社(以下、KDDI)、KDDIスマートドローン株式会社(以下、KDDIスマートドローン)は、株式会社エアロネクスト(以下、エアロネクスト)、生活協同組合コープみらい(以下、コープみらい)、株式会社ちちぶ観光機構(以下、ちちぶ観光機構)、ウエルシア薬局株式会社(以下、ウエルシア)らとともに、2023年1月26日から、土砂崩落の影響が続く秩父市中津川地内で、Starlinkを活用したモバイル通信のもと、ドローンによる物資の定期配送(以下、本取り組み)を開始します。
本取り組みは、2022年9月に土砂崩落が発生し、物流が寸断された秩父市中津川地内の地域住民への冬季期間の生活支援を目的としています。2022年10月25日に秩父市とゼンリンが締結した「緊急物資輸送に関する連携協定」をもとに、賛同企業6社が加わり「&(アンド)プロジェクト」として連携・実施します。 ドローン定期配送の実現により、中津川地内へ食品や日用品、医薬品などを短時間で配送することが可能となります。
現在、ドローンによる物資の配送先となる中津川地内へアクセスするには、一部の緊急車両などの通行のみ許可されている森林管理道金山志賀坂線(※1)を通行する必要がありますが、冬季は降雪や凍結のため通行が非常に困難となります。また、当該地域の地形の特性上、モバイル通信が不安定な環境であるため、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を活用してauのモバイル通信環境を確保し、ドローンの遠隔自律飛行による物資の配送を実施します。食品や日用品など最大約5kgの物資をドローンで複数回配送し、中津川地内の住民のみなさまの冬季期間の暮らしに貢献します。
■ドローン定期配送の概要
■関係者・体制図
全国各地でドローン物流の実証・サービス実装を行うゼンリンが、プロジェクトの全体統括を担当し、技術面・配送面のノウハウを持つ各社と共に、体制を構築しました。
■配送フロー
(1)住民は、電話などで事前に商品を注文。
(2)コープみらい・ウエルシア秩父影森店、ファミリーマート道の駅大滝温泉店が、注文商品をピックアップ。
(3)各社トラックで道の駅大滝温泉まで配送。
(4)ちちぶ観光機構が、各社の注文品を個人ボックスごとに箱詰め。
(5)注文商品をドローン離陸地点まで配送。
(6)注文商品をドローンで配送。
(7)中津川地内の区長が注文商品を受け取り、各世帯まで商品を配送。
■「&プロジェクト」の命名に込めた想い
プロジェクト名には、“決して(A)あきらめずに、(N)中津川地内の(D)ドローン配送の実現を推進し、住民生活の安全・安心の確保を支援し、地域の安堵(AND)に貢献する”という想いを込めています。今回、このビジョンに賛同する8者が連携し取り組みをスタートすることになりました。
■Starlinkを活用したモバイル通信とドローン配送のシステム構成
中津川地内のドローン離発着地点には、操作者などの作業者を配置できず、また、崩落地手前の地点からは中津川地内の離発着地点を目視で確認することが出来ません。そのため、中津川地内までの飛行、機体の離発着、荷下ろしのすべてを遠隔操作で実施する必要があります。
そこで、本取り組みでは、以下の製品・サービスを組み合わせたシステムの構築を行いました。
1.Starlinkの活用
衛星ブロードバンドの「Starlink」を活用した、「どこでも、素早く、広い範囲」にauエリアを構築するソリューション「Satellite Mobile Link」により、映像を用いたドローンの遠隔制御も可能にするauのモバイル通信環境を確保しました。
2.スマートドローンツールズとAirTruckの活用
「スマートドローンツールズ」の運航管理システムと物流専用ドローン「AirTruck」を組み合わせることにより、遠隔制御による機体の飛行、離発着、荷下ろしを可能としました。
・スマートドローンツールズ
KDDIスマートドローンが開発した、ドローンの遠隔制御や自律飛行、映像のリアルタイム共有を可能とするシステム。
・AirTruck
エアロネクストがACSL社と共同開発し、ペイロード5kgに対応した日本発の量産型物流専用ドローン。物流用途に特化してゼロから開発した「より速く、より遠く、より安定した」機体。エアロネクストの空力特性を最適化する独自の機体構造設計技術4D GRAVITY®により、荷物の揺れを抑え安定した飛行を実現。遠隔操作による荷物の切り離し、荷物の上入れ下置きの機構など、オペレーション性にも優れる。日本経済新聞社主催の「2022年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞」を受賞。
■今後の展望
通信不感地域におけるドローン定期配送の運用ノウハウを蓄積し、中山間地域や災害時などの通信環境が不安定な状況においても、ドローン配送を実現可能とするソリューション構築を検討していきます。これにより、全国の様々な地域・環境下でのドローン配送の社会実装を目指します。
株式会社自律制御システム研究所(ACSL、本社・東京都江戸川区、鷲谷聡之代表取締役社長)は、農薬散布機、災害対応機などの開発を手掛ける東光鉄工株式会社(本社・秋田県大館市、虻川東雄代表取締役会長)と、防災・減災対策ドローンの開発・販売に向けた協業を開始したと発表した。東光鉄工は主要技術、主要部品を日本製でそろえた災害対応のレスキュードローン「TSV-RQ1」を開発しており、ACSL製のフライトコントローラーの搭載することは既定路線。今年2月の展示会でも注目されており、今回の協業で実装にはずみがつくことになりそうだ。
東光鉄工の災害対応ドローン「TSV-RQ1」は、ローター間1100ミリのクアッドコプター。折りたたむと520ミリ×570ミリになる。水を浴びても影響を受けないIPX5の防水性能、秒速15メートル以上の風速に耐える耐風性能を備える。スピーカー、投下装置、8000lmのサーチライト、高感度カメラを備え、状況確認、避難勧告、救援物資の投下、捜索など災害現場に必要な作業に対応することを視野に入れている。今年2月に東京ビッグサイトで開催された展示会「ロボデックス」では同社のブースの中央に展示され、多くの来場者が足を止めていた。
同社は「TSV-RQ1」について、災害対応の前線で活躍する官公庁や、消防、海上保安庁、自治体などの利用を見込んでおり、厳格な要求にこたえるため、フライトコントローラーをはじめ、主要技術、部品の大半を国産でそろえる。フライトコントローラーにはACSL製を搭載する。
両社は、国産の防災・減災対策ドローンの実装に向けて、開発・販売面の協力を緊密にしていく。
DJIが公開した「DJIドローンレスキューマップ」が話題だ。ドローンによる人命救助の活動を拾い集め世界地図に表示したオンラインレファレンスで、ドローンがDJI製であるかどうかは問わない。7月16日午前9時現在、28か国で253件、414人の救助例が報告されている。
DJIドローンレスキューマップは、信頼できるニュース記事やSNS投稿などの情報を集めて編集し地図に表示した救命情報地図。地図では、発生場所、発生年月日、概要、情報源のリンクなどがみられる。2020年7月16日午前9時現在(日本時間)で、28か国で、253件、414人の給餌例が掲載されている。信頼性を確保するため、DJIは関連当局に情報共有と地図への掲載に協力を求めているという。
掲載されているのは、森林、野原、山などでの行方不明者の発見、河川や海での溺水、落水者の救命具投下による救助、遠隔地の河川で身動きが取れなくなった人々の発見、自殺からの救出などが含まれている。掲載しているケースはいずれも、ドローンが直接、発見、支援、救助などに関わった事例で、ドローンが使われても、直接の発見、救助に関わっていなければ含まれない。たとえば、ドローンを使用した捜索で地上の調査員が行方不明者を発見した場合や、救助活動の様子をドローンが監視した場合は、掲載対象にはしていないという。
掲載事例は多岐に及ぶ。
米国カリフォルニア州レディングでは今年(2020年)6月、サクラメント川に崖から100フィート(約30メートル)落下した10代の少年を、警察がドローンで発見し救助に成功した。オーストラリアのブルーマウンテンズでは2019年7月、ロッククライマーが高さ100メートルの崖で身動きが取れなくなっているところを、警察がドローンで発見し、救助にこぎつけた。
韓国では今年2月、山の中で自殺しようとしている少女をドローンが発見し救出。中国山東省では2018年3月、自殺しようと山に入った女性を携帯電話の電波を追跡しながら警察が捜索。立ち入りが困難な場所でドローンを使って本人を発見した。骨折していて、脱水症状がひどかったため、現場に出動したヘリで救出したという。またインドでは2019年8月、クリシュナ川沿岸の洪水地域で、テック系スタートアップの起業家がサーマルカメラを搭載したドローンで、2人の女性と1人の男性を発見し救助につなげた。
ほかにも米メリーランドでは公園でケガをした男性が、ボランティアのドローンパイロットに発見され救われた例、ユタ州ウェーバー郡捜索・救助ドローンチームが、夜に危険な地域で身動きが取れなくなったハイカーを発見し救助したケースなども紹介されている。
DJI の公共安全インテグレーション担当シニアディレクターRomeo Durscher氏は「公共安全の場で働く人はドローンで自分達の仕事に革命的な変化をもたらしていることを知っている。(中略)DJIドローンレスキューマップは、彼らの素晴らしい救助活動を讃え、将来、ドローンがいかに救助活動において活用され得るかを確認することができる」と、ドローンの救難救助の有効性を説明している。
またDJIの政策&法務担当バイスプレジデント、Brendan Schulman氏は「市場参入の障害を低くし先進的な運用規制に準拠しながら、ドローンを広域でアクセスしやすくすることで、確実に世界中で多くの命を救うことに繋がる。ドローン導入の促進を阻むような運用規則がある地域は、ドローンによる救助活動の報告が格段に少ないようだ」と、ドローンの運用の制限が、救助活動のせいがを活用話している。
DJIによると、ドローンによる救助活動の最初の報告例は2013年のカナダの事例で、2番目の事例はそれから1年以上たった後だった。現在では毎週平均1件程度と報告は増えている。DJIは現在、掲載されているほかにもドローンによる救助活動が多く埋もれているとみており、事例に関する情報提供を呼び掛けている。また、情報提供のさいには、プライバシーを尊重するとともに、当局の活動など機密に関連する情報を共有しないよう求めている。
大規模災害が起きたら、困りごとが短時間に大量生産される。救いを求める声と差し伸べる救いの手のバランスが崩れ、消防、役所、救急の連絡窓口が目詰まりを起こし、救助部隊は道路の寸断で立ち往生と迂回を余儀なくされるー。災害発生時に必要度の高さが再認識されている状況把握に、長距離ドローンで挑む企業のひとつが、株式会社テラ・ラボ(愛知県春日井市)だ。災害対策の研究開発を続ける研究開発ベンチャー、テラ・ラボが5月20日、DRONE FUND(東京)などから合計3億円の資金調達を実現させたことを受け、オンライン会見を開き、取り組み状況などを説明した。現在、翼長8mの固定翼機がモックアップの仕上げ段階に入っているという。またDRONE FUNDの共同創業者・代表パートナー、大前創希氏の社外取締役就任も発表された。
会見は愛知県春日井市のテラ・ラボの本社で行われた。会見では松浦孝英代表が2020年度を含めた今後の取り組みを、これまでの経緯をふまえながら説明した。
テラ・ラボは、長距離ドローンの研究開発を手掛けるベンチャーだ。2014年に創業して以来、災害対策へのドローンの利活用を目指している。地域との連携を重視していて、活動では地域の防災情報リテラシーの向上を目指してきた。また航空測量技術のデータ解析をいかした災害対策システムの構築に取り組んできた。令和元年度に採択された補助事業では、写真測量やレーザー測量などの航空測量技術のデータ解析を生かした災害対策システム構築などを手がけた。
特に注意を払っているのが、本拠地のある愛知県も直撃を受けると見込まれている南海トラフ巨大地震だ。中央防災会議が30年以内に8割の確率で発生すると予測しており、こうした大規模災害発生時に活躍する衛星通信制御の長距離ドローンや空間情報収集システム、車両型地上支援システムの開発に力を入れている。すでに高度1,000~2,000mを時速60~100㎞で飛ぶ翼長4mの航空測量専用の固定翼機や、高度10,000~20,000mを時速100~140㎞で飛ぶ翼長8mの高高度広域観測向け固定翼機を設計している。
2020年度は、航空測量技術を活用した大規模災害対応技術の実用化、事業化を目指し、機体のさらなる高度化に取り組む。テラ・ラボの飛行空域は有人機が飛行する空域でもあるため、衝突回避技術の搭載も見込む。松浦孝英代表は「今は翼長8メートルの固定翼機のモックアップの仕上げをしているところ。今年度内に本試験機を作る」と状況を説明した。あわせて有人機との衝突リスク軽減、航空測量技術の高度化などに取り組み、「平時の事業化を目指す」などと表明した。
DRONE FUNDの共同創業者・代表パートナー、大前創希氏も東京から会見にリモートで参加。テラ・ラボの強みを「長距離固定翼ドローンを開発する技術力、地域と災害面での連携体制の構築やRTFの利活用体制、新ビジネスモデルの開発力」と次々に列挙した。大前氏自身がテラ・ラボの社外取締役に就任することも説明し、「新しいビジネスを作ることができるチームと判断した。既存投資先に重複する事業体はないこともあり、今回の決断に至った。しっかり連携し、ドローン・エアモビリティ前提社会づくりに邁進したい」と決意を述べた。
神戸市は4月17日、神戸市中央区の三宮の繁華街に隣接する生田神社でスピーカーを備えたドローンを飛ばし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため外出を控えるよう空から呼びかけた。ドローンの運用は一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)が担った。
神戸市がドローンを飛ばしたのは、兵庫県には4月7日に特措法第32条第1項に基づく緊急事態宣言が発令されたにも関わらず、県内最大の繁華街の玄関口、三ノ宮駅周辺の人手が目標ほどに減っていない事態を重くみたため。この日は、DPCAのパイロットが生田神社からスピーカーを装備したMavicを飛ばし、上空50メートルほどの高さから「兵庫県には緊急事態宣言が出ています。みだりに外出しないようにしましょう」と女性の声で呼びかけた。
呼びかけた声は地上で明瞭。関係者は「ドローンからであれば呼びかけが広範囲に届く。地上でもはっきりと聞き取れる。新型コロナウイルス感染症対策での一環としてドローンをもっとうまく使うべきだと思う」と話し、この日のドローンの有効活用への手ごたえを感じていた。
新型コロナウイルス感染症への対策としては、世界各国でもドローンが殺菌剤などの散布、監視、輸送、呼びかけなどで活用されている。DPCAはこうしたドローンの有効活用を、災害協定を締結している自治体などに提案しており、賛同を表明した神戸市で今回の取り組みが実現した形だ。
この日は兵庫県や県の要請をうけた神戸県警も外出自粛を呼びかける活動を展開。夕方には三宮の繁華街で制服姿の警察官が通行人に外出自粛を促した。今後、福原エリア(神戸市兵庫区)や神田新道エリア(尼崎市)、魚町リエア(姫路市)などの歓楽街でも、同様の活動を実施するという。