ドローン産業は空飛ぶクルマの研究、開発、運用をはじめとした活用の議論が熱を帯び、より広い産業、多くの層から注目されています。そこでドローン研究の第一人者で東京大学名誉教授・未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二氏、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発に携わった航空機開発に詳しいPwCコンサルティング合同会社 顧問(Aerospace&Defense 担当)の宮川淳一氏が最新動向や産業利用拡大に向けた課題などについて対談しました。モデレーターはドローンや空飛ぶクルマ関連の業務・技術支援に携わるPwCコンサルティング合同会社ディレクターの岩花修平氏が務めました。今回は、今後のドローンの未来を切り開くのは、航空機業界以外の分野から参入したスタートアップ企業などの次世代リーダーである可能性を示し、従来の航空機産業を築き上げてきた先人たちとどう協力関係を築くべきかといった方向性について話し合った前半の様子をお届けします。(文中敬称略)

岩花氏 2015年4月の「首相官邸無人機落下事件」をきっかけとして、社会的な観点も踏まえて無人航空機の法規制に関してもさまざまな検討があると聞いています。
鈴木氏 首相官邸無人機落下事件が起こった2015年は、国内のドローンを取り巻く環境が大きく変化した年でした。同年に航空法が改正され、規制が強化されるなど制度化が進みました。一方で、ルールの制定により、正式に利用する際の根拠ができることになるため、事業者はむしろ歓迎しました。この改正は、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、会員とともに安全ガイドラインを国土交通省、経済産業省のアドバイスを得ながら自主的に策定していたことが基礎になったという自負があります。3年後の2018年には、安倍晋三首相がドローンで物流ができるようにすると宣言し、産業化へ向けた動きが加速しました。
岩花氏 2022年に「目視外及び第三者上空等での飛行(レベル4)」に関する規制緩和が見込まれていますが、この動きによって大きく活用の拡大が見込めそうですか。
鈴木氏 第三者上空の目視外飛行というと、2022年に市街地を大型ドローンが飛び交うことを思い描かれる方がいらっしゃるかもしれませんが、現在の技術や安全レベルでは難しいと感じます。リスクを低く抑えられる状況から、段階的に進めていく必要があります。日本では、人口集中地区(DID)では許可なく飛行することが全面的に禁止されていますが、都市部の中でも相対的にリスクの少ない飛行はかなりあります。例えば川に沿った飛行や建物の点検のための飛行、空撮のための小さなドローンの飛行などです。安全が確保されれば、都市部でドローン飛行を許可するように規制を緩和する必要があります。そうしたところから、レベル4が始まると考えています。ただし、現実には、地方でのドローン飛行を重ねて、ステップを踏みながら次第に安全の確保が検証され、空域が広がっていくことになるのではないかと考えています。

岩花氏 小型無人機に関する関係府省庁連絡会議(官民協議会)では、「目視外及び第三者上空飛行」の実現に向けた検討が進められています。今後の論点や方向性、スケジュール感などについて教えてください。
宮川氏 小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発で、2007年にプロジェクトマネージャーとなり、2008年には全日本空輸(ANA)にローンチカスタマーとなっていただき、開発がスタートしました。当時から型式証明(TC)の取得は極めて困難な作業だという認識で、今でも苦労していると聞きます。日本の航空業界では、航空法は「きっちり学んで、守るもの」という意識が強いように感じます。これに対し、ボーイングやエアバスなど海外の航空機メーカーの関係者と話していると、「航空法というのは参加してつくるもの」という発想が主流です。
岩花氏 「守る」だけでなく、つくることに参加する発想ですね。
宮川氏 米連邦航空局(FAA)の使命を謳ったミッションディスクリプションの中は、「米国の国土の空の安全を守る」としたうえで、「航空産業の育成に資する」というものもあると聞きます。ドローンの登場でパラダイムシフトが起こっているときに、どのようなレギュレーションを作っていくかを考えることは、日本にとっては絶好のチャンスです。スペースジェットが参入障壁で苦しんでいるように、従来の有人航空機に関わる航空法制は欧米主導で定められており、日本は学習・追従するしかありませんが、無人機について、人口密集地と過疎地を抱える日本が主導して、もしくは積極的に参加して国際協働で法制制定に関わっていくべきです。
鈴木氏 全くその通りです。有人航空機の世界では、欧米がはるか彼方を飛んでいます。一方で、無人航空機、特に小型のドローンは世界中で同時に始まったわけですから、日本もルール作りにコミットできるはずです。国際標準化機構(ISO)ではドローンの委員会が設置され、最近になって日本から多くの専門家が参加しています。また、ワーキングの「コンビナー」と呼ばれる座長も日本から出すなど、国際的な業界標準化にむけて日本も活躍しています。特に日本がリードしている分野はオペレーションやトレーニング、ドローン運航管理システム(UTM)です。ただ、機体製造に関しては中国が大きな力を持っています。
岩花氏 ISOの国際会議に日本から積極的に出席しているのは良い流れだと思います。その延長で、今後は法規制の整備なども国際協調の中で、日本が主導的な立場をとることが期待されます。
鈴木氏 標準化で主導的な立場を取ることは、産業化を考えると極めて重要です。例えば、電気自動車のバッテリーの充電システムは日本勢が標準化に後れを取り、そのうちに欧州市場などに参入障壁ができてしまったと聞いています。国内では、新しい分野ですので、官民合わせて制度作りや研究開発テーマの設定を協議する環境が2015年度からスタートし、毎年ロードマップを改定しています。これも一つの標準化です。縦割りの組織で、しかも会社間の競争の厳しい日本では、こうした例は珍しいと思います。他の分野でも、ドローンのモデルにならった官民協議会が作られています。例えば、「空の移動革命」を目指した官民協議会が2019年に設置されました。

岩花氏 政策として、ドローンの機体や操縦者の情報登録や「車検」のような許認可制度など、管理制度の導入によるメリットとしてどのようなことが考えられますか。
鈴木氏 欧米の場合は、ドローンがテロに使われることに対する恐怖心が強く、誰が何を所有しているかを把握しておくことは重要です。一方、日本は比較的に安全と考えられ、危機意識は高くありませんでした。しかし、最近、訪日外国人旅行者などが、日本の航空法をしっかり理解せずにドローンを飛ばす事態が起こっています。関西国際空港の滑走路付近でパイロットがドローンのようなものを目撃し、安全確認のため全ての航空機の離着陸を停止する事態になりました。しっかり管理しないと、自由な飛行にブレーキがかかってしまうので、管理された状態をつくることは必要であると思います。
岩花氏 管理された状態をつくるためにどのような取り組みがされているでしょうか。
鈴木氏 レベル4の実現に向けた官民の検討会において議論を開始し、先ごろ中間報告を出しました。リスクが高くなった場合、そのリスクに応じた機体の安全性や検査制度、操縦者の資格や、管理方法が求められるというのは各国共通の認識です。「リスクベースアプローチ」と呼ばれています。登録者制度は事故時に所有者を特定するというものですが、どちらかというと所有者の意識を高め、管理を容易にするとともに、不正利用を防止する(特にルールを知らない外国人旅行者)意味が大きいと考え、米国でも2015年に導入されています。
岩花氏 リモートIDの導入でリアルタイムに機体の飛行を管理することや、無登録のドローンを排除することも検討されています。
鈴木氏 ドローンへの対処に関しては、特にテロの危険性が高い諸国で早期に検討が始まりました。日本ではその認識も薄かったのですが、先ほど述べた通り、関西国際空港で不審なドローンらしきものが見つかり、1時間ほど航空機の飛行が停止された事案もありました。また、2020年は東京オリンピック・パラリンピック競技大会も開催されますので、他人事ではなくなっています。警察や自衛隊、国土交通省もそのための予算を計上し、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)もリモートIDの研究に着手しました。リモートIDはドローンが自らのIDと位置情報などを周囲に発信しながら飛行するもので、米国では2020年早々に法案が、欧州では2020年からその装着を義務づけようとしています。登録しても番号を機体につけるだけですので、遠くからは全く見えません。そのために、WifiやBluetooth、LTEなどの方式で電波を周囲に発信しながら飛ばそうというものです。運航管理の在り方を検討する日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)では福島ロボットテストフィールド(福島RTF)を使ったリモートIDの実証実験を行ったところです。これらは本当にドローンなのか、正規に登録されて飛行するドローンなのか、不正なドローンなのかを判定するためにUTMと連携して使用することが想定されています。テロ行為を行おうとするドローンへの対処は警察や自衛隊の課題ですが、さまざまな方式が提案されています。
岩花氏 日本ではJUIDAを代表とした操縦者、運航管理者向けの資格が既に存在し、一定の知名度と資格者を輩出していますが、今後、運航管理システムや目視外飛行、自律航行が進むと新たな操縦者、運航管理者要件が出てくると想定されますが、資格制度にどのような変化が見られそうでしょうか。
鈴木氏 レベル3においては、資格があれば飛行申請の許可が簡単におりそうです。レベル4および明確な規定のなかった25キログラム以上の大型ドローンに関しては、より高いレベルの資格が要求されるというのも国際的な共通認識です。JUIDAでは個人向けに「無人航空機安全運航管理者」という資格を出していますが、UTMが普及するとそのための管制官に相当する資格も必要になり、運航事業者に対する承認制度も必要になると思います。
岩花氏 「目視外及び第三者上空飛行」の実現に向けて空域の管理や飛行機体の管理のためにUTMが必須の仕組みになると想定していますが、今後の普及に向けたスケジュールや関連する法規制、海外との連携、カウンタードローンとの連携の可能性などについてご意見をいただけますでしょうか。
鈴木氏 UTMに関しては、小規模なものは商品化され既に利用されていますが、広域においてそれぞれのUTMを統括するスパーバイザーとしてのUTMをどう設計し、どのように運用し、だれが管理するのかという大きな課題があり、国際的にも未踏の分野です。現在では、長距離を飛行するドローンもなく、高密度の利用もないわけですから、将来に向けた投資にもなりますが、個人的には、高度なセキュリティーが要求される空港や原発、大使館などの周囲では、UTMが今すぐにでも必要と感じています。ただ、まだUTMの基本方針も明らかになっていませんので、スケジュールも明確ではありません。将来、長距離飛行のドローンや、高密度運航にも対応できるアーキテクチャーを早期に固める必要があります。ISOの標準化作業も始まったばかりです。

岩花氏 PwCコンサルティングにおいてもドローンを利用したビジネスを海外でも展開したいというクライアントの声が多く聞かれるため、規格などの標準化の取り組みも重要だと考えています。海外における無人航空機の標準化や法規制、知財、利活用の動向なども調査していますが、グローバル展開する企業にとって海外の技術開発動向、法規制と足並みを合わせることが重要と感じています。海外の技術開発、法規制と歩調を合わせるために、日本として何か取り組んでいることなどはありますか。
宮川氏 無人機に関わる標準化は、モビリティ専門家を会員とする米国の非営利団体であるSAE(Society of Automotive Engineers)などがすでに委員会を構成して議論を進めており、日本は出遅れ感が強いと言えます。標準化も従来は学習・追従と捉えてきた日本の産業界に、少なくとも参加を促すことが必要になります。
鈴木氏 大型ドローンや電動航空機に関してはそうですが、小型ドローンに関しては、特に電波法や法規制が国によって異なるという課題があります。機体はドローン最大手のDJIがほとんどですので、国によって異なる制度が現時点での大きな課題です。ISOの国際標準化が進めば機体や運用などに関しては世界で共有化が進むと思います。各国で電源のコンセントが違ったり、昔の話ですが携帯電話の方式に違いがあったりしたこともあり、その際は本当に苦労しました。
岩花氏 人が乗ることも想定する空飛ぶクルマの実現に向けた検討も進めていると思います。これは無人航空機の延長としてとらえるのか、それとも技術的にも法規制面でも全く別のものと定義されるのか、どちらになるでしょうか。
鈴木氏 技術はドローンをベースに電動のマルチコプターで進むと思いますが、法制度などは有人機の超小型版と位置付けられるので、小型航空機のルールを参考にして決められていきそうです。そうなると日本にとっては不利となりますので、早急な整備が求められます。
宮川氏 空飛ぶクルマは従来の航空製造事業「上」から降りてきた人たちと、ホビー用を代表とする新規の航空デバイス製造業「下」から昇ってきた人たちに分かれます。昔は、ドローンは鳥や凧と同じ扱いでしたが、今や、下から上がってくる「ディファレントスピーシーズ(異なる人種)」が出てきて、どのように折り合いをつけるべきか戸惑っている段階だと思います。これは私見ですが、この世界を発展させる人たちは、下から上がっている新しい人種ではないでしょうか。最近はロケットをつくっているスタートアップ企業が多いですが、こうした新しい人種が、新しい技術を引っ張っていくという気がします。私も含め、上からの人たちは極めて保守的な考え方が多い。飛行機の場合は、落ちることが許されません。もし、不具合が見つかれば臨時対策、恒久対策と完璧を期す必要があります。
鈴木氏 確かにドローンを進めてきた人たちは航空機とは別の世界の人たちです。違う人種の人たちが進めてきたから、うまく進んできた側面もあります。しかし、空飛ぶクルマが人を乗せて飛ぶとなると、確実に安全を担保しなければなりません。これは上の世界の人たちの領域です。今後は、上の人たちと下の人たちをどうつないでいくのか、まさに今、大激論が交わされています。
宮川氏 私が三菱重工時代に有人機でやってきたのはシステムインテグレーションです。無人機を安全に飛ばすには、機体のシステムだけを見ていては不十分です。すぐに思いつくだけでも、無人機を最終的に確保するには、地上装置や通信インフラ、管制インフラ、法制、社会的受容性をどう調整するか、物理的な攻撃とサイバーの面でのセキュリティー、パイロット育成などの運用支援など、数々あります。もっと広い視野で、システムで支えていく必要があるのではないでしょうか。極論すると、機体が落下することを予め想定して、どのように安全安心をつくり、価値を享受していくのかという発想が重要になってきます。
鈴木氏 米国FAAでは小型航空機の型式証明の方式が最近大きく変化しました。コックピットの液晶パネルのような新しい技術を積極的に利用したいという理由からです。そこではパフォーマンスベースのルールが採用され、その性能の認証に、業界団体のコンセンサスで提案されたものが採用されるという劇的な変化が起きています。空飛ぶクルマの認証を従来の方法で行っていては非常に時間とコストがかかってしまいますので朗報とはいえますが、日本にそのノウハウがほとんど入ってないのが問題です。(後編に続く。PwCはドローンによる課題解決に力をいれていて「ドローン・パワード・ソリューション」のWEBページで情報を提供しています。ページ内でも本対談を御覧頂けます)

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【JapanDrone関西】11月26,27日に大阪で「第2回」開催 台湾Wistron、米Inspired Flightなど出展 ブルーイノベーション株式会社(東京)の熊田貴之社長がドローントリビューンのインタビューに応じ、「お客様」との向き合い方について語った。同社は複数のドローンやロボット、センサーなどを統合管理するデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」や、球体ドローン「ELIOS」シリーズ、ドローンポートなどの事業を展開していて、取引先、顧客との関係について模索を続けている。
ブルーイノベーションはBEP技術を軸に、「点検」、「ドローンポート」、「教育」、「ネクスト」の4つに分類したソリューションを提供している。11月14日に発表した2025年12月期第3四半期決算によると売上高は、7億7000万円で、1年前の第三四半期から4.3%増加した。売上高を構成する4ソリューションのうち「点検ソリューション」の構成比が46%と半分近くを占めた。
熊田貴之社長 「わたしたちはソリューションを提供している会社ですが、ソリューションはお客さまの声をしっかり聞くことなしに作れません。ドローンの機体を開発する、販売する、ということにだけ集中してしまうとプロダクトアウトになり、お客さまの要求に必ずしも合致せずにソリューションにならない、あるいは十分ではないということが起こりえます。ソリューションを提供するには、機体をお客さまの求める作業や動作ができるようアプリケーションが必要になるかもしれません。場合によってはドローンでない方がソリューションとしてふさわしいかもしれません。ソリューションはお客さまのご要望を伺うところから始まります。わたしたちはお客さまとメーカーとをつなぐ部分を担う面があるのかもしれません」
――持ち味はドローンやロボットなどの統合管理プラットフォーム「BEP」だ
熊田社長「はい。主な対象はドローンですが、お客さまとは無人搬送車の運用の話もしています。無人搬送車の複数制御。これにドローンが組み合わされることになれば、走る、飛ぶが統合されて、制御系に対するニーズにつながるのだと思います。それまでお客さまのご要望を伺いながら試行錯誤をしてまいります。プラットフォーマーになることは、その技術がみんなの共有財産になるということだと思っています」
――お話の随所に「お客さま」が登場し、強い意識を感じる
熊田社長「一般論ですが、ドローンに関連する産業が実証実験の段階から商売やビジネスなどの事業の段階に移りつつあることと関係しているかもしれません。実験は提供期間が実験の期間に限られます。それに対して商品を提供する事業段階になると、購入頂いた先での満足度の重要性が高まります。わたしたちも社内でカスタマーサポートの重要性に対する認識が日々高まっています」
――たとえば
熊田社長「ドローンポートは、購入頂いたお客さまのもとにずっと置いてあるわけです。そうするとお客さまからのご意見も寄せられます。問い合わせ、不安、クレーム、トラブル連絡など含めて、お客さまの声に向き合う期間が長くなります。わたしたちも十何年ドローン関連の事業に取り組んでおりますが、お客さまを担当する担当者が現場で親身に対応するフェーズから、組織として対応するフェーズに変わってまいりました。お客さまと向き合うサービスのフェーズに入ってきた、と言い換えてもいいかもしれません。ほかの会社ではすでにできているところもあるのだと思いますが、わたしたちは今年、社内にその体制をつくりました」
――トラブルを現場まかせにしない
熊田社長「はい。経営会議でも話をします。それはそのお客さまの中でわたしたちのサービスが浸透し始めている裏返しでもあると思っています。産業全体でもドローンがサービスのフェーズに入りつつあることを示しているかもしれません。いまではわれわれの提供しているプロダクトやサービスなどを通じて、LTV(Life Time Value)をしっかり提供できているか、本当の意味で長くお客さまに価値を提供するか、より強く意識するようになりました。LTVがKPIにもなりました」
――「お客さま」重視のサービスの会社だと
熊田社長「それを目指していますが、正直なところ、まだ全然です。ようやくそのフェーズに入ったという感じです。サービスがお客さまに浸透していくプロセスを体験している段階かもしれません。カスタマーサポートには大きなコストがかかる面もありまし、決して華やかなことばかりではないです。注目もされないし記事にもなりません。それを繰り返していくことが大事なのだろうと思っています。いま巨大企業になっているメーカーもそこからはじまって、やがて強いブランドになっています。わたしたちもそこを通っていかなければいけないと感じています。社内でもお客さまからの声に、現現も組織も対応する。会社としてちゃんと向き合おうという話をしています。営業、開発、保守などすべてです」
――ありがとうございました。

「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」は11月27日閉幕し、二日間の合計で3006人が会場を訪れた。事前に公開していた来場者目標の3200人には届かなかったが、期間中は来場者、出展者の笑顔がはじけた。機体メーカーなど主要プレイヤーの出展の上積みなどが、来場者拡大のカギとなりそうだ。
Japan Drone関西は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の主催、株式会社コングレの共催で11月26、27日の2日間、JR大阪駅直結の「ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター」を会場に開催され、26日に1604人、27日に1402人が足を運んだ。講演、パネルディスカッションなどのステージには2日間で1131人が参加した。来場者の中には出展者ではないドローン事業の経営者、関係者も見られ、会場内で知人を見つけてはあいさつをかわす光景や談笑する様子が多くみられた。
関係者や愛好家の間で話題になったのは初出展、初公開プロダクトだ。360度カメラの開発で知られる中国のテクノロジー企業Insta360がパートナー企業と設立したドローンブランド「Antigravity」が、日本の展示会に初出展し、機体やコントローラー、ゴーグルを紹介した。日本での発売計画は未確定だが、来場者の多くが足を止め、製品の仕様や今後の計画を担当者にたずねていた。
台湾の電気機器メーカーWistronも、系列のドローンメーカーGEOSATとブースを共同出展し、GEOSATの機体3種が初公開された。イタリアのモニタリングソリューションを展開するTAKE OVERも老朽インフラの課題と向き合う日本市場の調査をかねて初出展し、来場者と意見交換をしていた。米Skydioが9月に発表したふたつの新型ドローンについて、日本市場向けの公式アナウンスが出ていない中、JapanDrone関西に出展したジャパン・インフラ・ウェイマークは、二機種のうちの屋内向けドローン「R10」について独自のポスターを張り出したほか、チラシも用意し来場者に配布するなど関心を集めた。
会場では多くのブースで来場者と出展者が意見交換をしたり、説明を求めたりしている様子がみられ、あちこちで笑顔がはじけていた。ジュンテクノサービスやMizubiyoriは会場内に設置されたプールで水中ドローンを実演し、来場者に囲まれていた。
自治体の取り組みなどを紹介するパネルも多く設置され、じっくりと観察する来場者がいた一方、説明員のいるところは限られ、見学者が途切れる時間帯もあった。自治体の取り組みについては、「主催者テーマ展示ゾーン」と「ドローン×地方創生:自治自治体PRゾーン」とに分かれて展示されていて、来場者の利便性に合致していたかどうかの検討が加えられる可能性がある。
Japan Drone関西はJUIDAが10年前から毎年、千葉・幕張メッセで開催しているドローンの大規模展示会「Japan Drone」の地方開催版で、大阪で開催するのは2度目。一度開催した地域で二度目を開催したのは今回が初めてだ。JUIDAの鈴木真二理事長は初日の講演の中で、「アンケートで大阪での開催を求める声が大きかったことが今回の開催につながりました」と話している。今後も来場者の声が開催方針に反映されることになりそうだ。








11月26日に開幕した「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」では初公開、初出展を含め、多くの取り組みが披露されている。イタリアの保守、モニタリングソリューションを提供するTake Over社はFranz Lami CEO自身が来日して初出展。株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(東京)は、日本市場向けには公式発表がない米Skydioの屋内用ドローン「Skydio R10」について独自のポスターを作成し公開している。セントラル警備保障は不審ドローン対策ソリューションを提案している。
イタリアのTake Over社は日本の老朽インフラが抱える課題に対しイタリア仕込みのソリューションを提案している。同社はイタリア国内で橋梁、鉄道、高速道路、ダムなどの保守点検などで実績を積んでいる。イタリアは歴史的な建造物から近代的な道路まで公共構造物の時代背景が幅広く、その知見が老朽インフラを多く抱える日本での需要を見込む。
来日し会場のブースにも立ったFranz Lami CEOによると、イタリアのインフラは近代のコンクリートと中世からの石でできたものなどとがある。課題の緊急性が高いのは重量のあるトラックなどを支える道路などコンクリート製のインフラで、内部の亀裂などをいち早く察知し対処する必要がある。同社はその点検やモニタリングなどで実績を積んできた。
データ取得のためDJIを中心としたドローン、3Dレーザースキャナ、モバイルマッピングシステムなどを機材として使っている。JapanDroneのブースではFranz Lami CEO自身が来場者に実績、技術などをアピールし、情報収集、市場調査を進める。来場者には。同社のロゴの入ったキャップを渡している。最近東京に開設したオフィスの人員の増強にもつとめていて、リクルートにも積極的だ。
JIW、日本向けアナウンスがされていないSkydio「R10」のポスター独自作成
ジャパン・インフラ・ウェイマークは米SkydioのAIドローン「Skydio X10」や、専用の格納庫「Dock for X10」など点検ソリューションを展示しているが、ブースにはもうひとつ、日本市場向けには正式なアナウンスがない機体のポスターがある。屋内向けドローン「Skydio R10」だ。
9月17日と18日に米国で開催されたSkydioの毎年恒例の発表会「Skydio Ascend 2025」では、「Skydio R10」が屋内向けドローンとして発表された。もうひとつ。長距離飛行に対応した固定翼ドローンのプロトタイプ「Skydio F10」も発表されているが、いずれも日本市場向けには公式の見解はない。
屋内の点検ソリューションを展開するJIWはR10について独自にチラシを作成し、ブースではポスターとして来場者に見せている。それによると、R10は785gでX10の2140gから大幅な軽量化が図られる。暗所飛行用の補助ライトを備え、自律飛行し、ライブ映像を配信し、点検を支援するという。市場導入の時期は公式発表を待つ必要があるが、関係者や愛好家の間で関心を喚起しそうだ。
セントラル警備保障が不審ドローン対策展示
セントラル警備保障株式会社(東京)は、不審ドローン対応のためのソリューションなどを展示している。会場にはカウンタードローンシステムのほかいくつもの緊急対応機能を備えた移動指揮所車両「CSP Drone Base Car」を車両ごと持ちこみ、中に搭載している映像監視システムや、電源機能、車内で指揮がとれる機能などを公開している。屋根にはドローンポートを備え、ここから離陸させることもできる。
また、不審ドローンを検知するためのソリューション「DS_005D」も展示してある。ブースではその機能や上位モデルの説明を求めて来場者が足を止めていた。
レッドクリフ、ジュンテクノ、ROBOZが存在感
このほか、開場では大阪・関西万博の協会企画催事プラチナパートナーとして連日ドローンショーを繰り広げた株式会社レッドクリフ(東京)が前面を赤、黒でペイントしたブースで来場者にドローンショーの特徴や効果を説明していた。また屋内ドローンショーを手がける株式会社ROBOZ(名古屋市)は、ドローンショーに使う機体の特徴や通信、飛行の安定性などについて石田宏樹代表取締役が率先して説明していた。会場の隣室でデモンストレーションも行い、手軽に運用できることを実践した。
ジュンテクノサービス(埼玉県川越市)も水中ドローンを中心に展示。ダム堤体、取水口、吐口撮影からポンプ場撮影、流域下水道点検など多くの現場での点検実績などのノウハウをブースで展示しているほか、会場内のプールでデモンストレーションも実施し、来場者がその様子をみるために取り囲む様子もみられた。











アメリカのドローンメーカー、Inspired Flight Technologies社の産業用ドローン「IF800 TOMCAT」「IF1200」が、「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」で公開されている。展示したのは株式会社栄光エンジニアリング(茨城県つくば市)だ。リスクを回避するオペレーターへの提案として出展した。いずれのモデルも日本のドローンの展示会での出展は初めてだ。
栄光エンジニアリングが展示しているのはアメリカInspired Flight Technologies社のクワッドコプター「IF800 TOMCAT」とヘキサコプター「IF1200」だ。
IF800 TOMCATはバッテリーなし重量が4.2㎏、バッテリー搭載時で8.5㎏で、最大54分飛行する。インフラ点検、LiDAR調査などの用途を想定している。また「IF1200」は最大43分飛行、最大積載量8.6㎏だ。栄光エンジニアリングの大島健一社長は、取引先からよりリスクの低い機体を求める声を聞き、Inspired Flight社にゆきあたった。「IF800 TOMCAT」「IF1200」とも米国防省のサイバーセキュリティやサプライチェーンの健全性基準を見た居た場合に認定を与えるプログラム「Blue UAS」に認定されている。栄光は現在、Inspired Flight社の日本国内代理店だ。
ブースでは大島社長らが機体の特徴などを来場者に説明していた。ブースではそのほかExyn Technologies社の自律飛行型3Dマッピングシステム「Nexys」「Nexys Pro」、Teledyne Optech社の軽量LiDARシステム「EchoONE」も展示している。




台湾の電子機器大手ウィストロン(Wistron)は、同社系のドローンメーカー、GEOSAT Aerospace & Technology Inc.(経緯航太科技)と共同でブースを構えた。GEOSATのドローンが日本の展示会で一般公開されるのは初めてだ。
初公開されたGEOSATのドローンは3機で、日本での展開は今回の反応をふまえるなどして今後検討するという。3機はいずれもスタイリッシュで、「スタイルは重視して作った」という。
ブースにはウィストロンでドローン部門を統括するAnn Liu氏も訪れ、来場者の反応などを確認していた。
展示会で製品を見る機会はそう多くなく、ブースを訪れた来場者の中にはこのブースに立ち寄ることを来場理由にあげる人もいた。
ブースの壁面にかけられていた薄型ディスプレイはウィストロンの製品で、その薄さに来場者が指をさしている様子もみられた。ディスプレイは投影する映像の切り替えや明るさの調整は遠隔で可能だという。




中国Insta360系のANTIGRAVITYが「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」に出展している。同社は8月に8Kで360度の映像が撮影できるドローン「Antigravity A1」の発表をし、話題を集めた。日本の展示会に出展するのは今回が初めてで、ブースのAntigravity A1にも多くの来場者が見入っている。
Antigravity 社は日本の展示会の出展は今回が初めてだ。出入口に近い場所に構えたブースにはひっきりなしに来場者が訪れた。8K360度全景ドローン「Antigravity A1」が今年8月に初の製品として発表され、ドローン愛好家や関係者に間で一気に話題が広がった。
全方位を捉える「デュアルレンズ設計」でドローン周囲のすべてを360度で記録し、ライブ映像や最終映像からはドローン本体を消すことができる。操作はレバー状のコントローラーで直感的な操作が特徴だ。
ブースでは機体重量がバッテリー含めて249gであることや、2026年1月に世界同時発売を目指していることなどが説明されていた。ただし日本での発売は、諸手続きの進み具合にもよるため未定で、今後正式に公表される見込みだ。
操作はゴーグルを装着して行うため、いわゆる目視外飛行の扱いとなる。価格は今後決まるが、現時点では標準型のセットで30万円台、最も基本的なセットで20万円台を想定しているという。
JapanDrone関西ではデモフライトを実施。開催2日目も行う予定だ。
