社会課題の解決や空の産業革命の期待を担うドローン、AAM、エアモビリティなどの活躍が展望される2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は、ドローンやAAMにどんな舞台となり、どんな刺激をもたらすのか。DroneTribuneは若宮健嗣万博相(国際博覧会担当大臣)にインタビューした。若宮万博相は「未来社会の実験場にしたい」と語った。その背景には、1970年の大阪万博で積み残した課題に対する思いがあった。
――第二次岸田政権で万博相をつとめています
「大阪・関西万博」は2025年4月13日から2025年10月13日までの間、大阪の夢洲地区をメイン会場にして開催されます。海外からも多くの国に参加頂き日本の底力を世界に発信して成長を加速させる機会にできればと思っております。そのためには大阪だけでなく周辺の関西地域や全国の積極的な参加も必要です。私は万博大臣、正式には国際博覧会担当大臣ですが、そのほかに共生社会担当大臣、デジタル田園都市国家構想担当大臣、クールジャパンや知財戦略を担当する内閣府特命担当大臣でもあります。融合させるべきところは融合させ、取り組みを進めております。
――大阪・関西万博はドローンやAAM、いわゆる空飛ぶクルマにとってどのようなステージになりますか
ドローンにも「空飛ぶクルマ」にも大きな意味を持つ機会になると確信しています。具体的なことはこれから知恵を絞り創意工夫を重ねて参りますが、日本の持つ技術や創造力をお示しし、来場されるみなさま、海外からお越しのみなさまに驚いて頂き、再び日本に注目して頂ける機会にしたい。ドローンや空飛ぶクルマ、空飛ぶバイクは、周辺技術も含め、世界各国、各地域で開発が進んでいます。その中で日本は何を提案するのか、万博で何を発信するのか、ここは大きな注目点になると思っています。私としましては、こうした機体が飛ぶことで、生活がどう豊かになるのか、人々がどう幸せになるのか、といったものを示していければよいのではと思っております。
――大きな意味を持つ機会としての万博ですね
はい。「飛ぶ」を超えた価値を示したいと考えています。日本は、前回の大阪万博で世界を驚かせた実績を持っています。私自身は、小学校3年生の時に、前回の大阪万博に出かけました。そこでは特に4つ、強く印象に残ったものがあります。携帯電話、リニアモーターカー、電気自動車、ロボットです。1970年当時には、どれも身の回りにはありませんでした。私自身も初めて見るものばかりでとても驚きました。海外から来られた方もみなさん驚かれたと思います。その驚かせた4つがいまや現実になってきています。ロボットは二足歩行でないにしろ産業や介護などさまざまな現場で役立っています。携帯電話はすでに普及し、電気自動車も広がりつつあります。リニアモーターカーも計画が進んでいます。
――その時の驚きを再現したい?
それを超えたい、というのが本音です。たとえば携帯電話。1970年の万博で日本が世界に先駆けて発信して世界を驚かせましたが、現在、どこの国のメーカーが世界のマーケットでシェアを押さえているかというと、アメリカであり、韓国であり、スウェーデンであり、といった状況です。日本製は、素晴らしいのに、世界のマーケットをとっているかといえば、そうはなっていません。そこにやや“残念感”があるのです。その状況を次の万博で打ち破りたいのです。ドローンもそれになれると考えています。ドローンの開発はしばしば海外が先行している、と言われます。そのドローンで、日本のすごさを示したい。飛ばすために必要な環境や条件ですとか、ビジネスでうまくいくためのモデルであるとか、利用した企業や人々や社会が歓迎するためのスタンダードであるとか、そういったものが示せないか、と思うわけです。アフリカのルワンダで血液製剤などをドローンで運んでいるアメリカのジップライン(Zipline)という会社がありますよね。道路網の整備状況などから考えると、あの取り組みは「飛ぶ」を超えた価値があると思うのですが、そんな価値あるビジネスデルを、日本なら構築して提案できると思うのです。
――示したいのは、飛ぶことのその先、ということですか
はい。飛行そのものの質も当然ながら大事ですし、日本の強みになると思いますが、その先のことを示したいのです。ドローンや空飛ぶクルマによる生活スタイルや、ビジネススタイルの変革です。安全性と利便性のバランスをとりながら、ドローンでどのような価値を生み、どのように次の新しい生活スタイルになじませるのか。前回の大阪万博で日本が発信した技術は、マーケットを海外に占められました。しかし今の日本は当時と違います。もはや固定観念にとらわれる日本ではありません。振り返りますと、当時の日本には三公社五現業がありました。電話の事業も国の経営体制の中で運営されていました。その枠の中でもあれだけのことを発信しました。残念ながら普及に至らず、固定観念のない海外勢が普及させたわけですが、今の日本には当時の枠はありません。固定観念にとらわれない新しい発想も出てきています。ドローンが飛んで当たり前の社会を、グローバルスタンダードとして提示していければ、と思います。
――ドローンが当たり前の社会を実装するステップに?
はい。どれだけ示せるかはこれからですが。その前に、もしかしたらドローンを軍事用と感じておられる方がいらっしゃるかもしれませんので、生活の利便性を高めるものと認識して頂けるようにしたいです。良い面、悪い面がそれぞれあると思いますので、そのいい面を育てる。悪い面を減らす。AIを組み合わせることでそれができるかもしれません。普及のためには製品やサービスが普及しやすい価格になることも大事だと思います。万博会場やその周辺エリアでのサービスの中に取り込むことも考えられます。オリンピック・パラリンピックで、日本のおもてなしの心を示すことに取り組みましたが、万博でも日本の思いやりを届けられれば。行き届いていないところに手を差し伸べるようなことができれば。
――地方活性化であるデジタル田園都市国家構想にもつながりそうです
はい。デジタル田園都市国家構想は、地方も含めて全国で光ファイバーをめぐらせ、Wi-Fiが使えるように整備して利便性を高める政策です。地方の生活の中で、行き届いていない部分を満たしていく対策です。現状の生活で買い物が不便なのであれば、ドローンで宅配してもらえれば早くて便利かもしれません。その通信インフラを整えることが必要となりますので、デジタル田園都市国家とドローンは非常に相性が高いと私は思っています。私はよく街頭演説で「不便」や「不満」など「不の要素」を取り除く取り組みに価値があるのではないか、とお話します。日常生活もそうです。産業もそうです。不便なところがあればそれを取り除く。農業ではたとえば農業従事者の負担となる散布や生育状況の監視、養殖ではいけすの監視に使うことで、負担を取り除く。それを可能にすることに取り組むつもりです。
――それがグローバルスタンダードになればよいと
はい。「不の要素」を減らせば、そこで生まれたゆとりで新しい価値を生み出せます。ドローンも大きく寄与します。人々の時間の使い方や働き方も変わってくるでしょう。万博で新たな生活スタイルとかモデルを見せることで、デジタル田園都市国家構想の実現につながってくると思います。ノウハウを凝縮したものが国際ルールになれば知的財産になりますし、各国を魅了するモデルにできればクールジャパンになります。私は万博、デジタル田園都市国家とともに、クールジャパン、知的財産を担う特命大臣でもあります。それぞれがすべてつながるのです。万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」(Designing Future Society for Our Lives)をテーマに掲げております。それをふまえて、私は万博を未来社会の実験場にしたいと思っています。
――「大阪・関西万博」の「関西」への広がりをどうお考えですか
大事なことです。大阪の盛り上がりを関西全域に広げたい。ちょうど関西広域連合の8府県が大阪を囲むようにあり、それぞれ個性豊かな風土と文化を持っています。ドローンという切り口に限りませんが、関西広域連合やそこに参加する府、県、市の持つ役割にも照らして、より盛り上げられる施策につなげられればよいと考えております。万博には約2,800万人の来場を見込んでおります。特に海外からご来場の方には会場を囲む関西エリアに足を運んで頂き、たとえば京都や奈良などの古都の風情や個性や魅力を味わって頂きたいです。大阪で議論が盛り上がっておりますが、これからそれ以外の地域での議論も活発化していくと期待しています。
――経済効果も見込まれますね
インバウンドの効果も高いと思います。海外からお見えの方は年々増えておりまして、新型コロナウイルスの影響を受ける前の2018年、2019年は年間で3000万人を超えました。約5兆4000億円の経済効果がありました。これは消費税の税収の2%にあたります。しかも海外の型がご自身の国にお帰りになったあとにもお買い上げいただいたり、PRして頂いたりと波及効果もあります。関西に限らず全国で、万博を地域の魅力をアピールする場にして頂いてはいかがかなと思っております。とくに関西エリアでの盛り上がりと積極的な参加を期待しています。
――デジタル田園都市国家構想に沿ったインフラ整備が進むと地域の利便性はますます高まりそうです
そうです。日本の「田舎」と呼ばれる地方都市の温泉や風景や土地の言葉や食べ物に触れて頂くことがより便利になると思います。日本にお越しのみなさまにはぜひ「田舎」にも赴いて頂き、楽しんで頂き、それを発信して頂ければと思います。発信するために必要なインフラは整えて参ります。北海道のニセコのように、海外で先に人気に火が付く、ということが各地で起こる可能性があります。地方でこそ作れるビジネスモデルに期待しているのはそこのところです。一極集中の打開につながる期待もあります。
――デジタル田園都市国家が進んで地域の利便性が高まった場合、その利便性を生かす人材の育成は
大変、重要です。地方には、自分の生活スタイルを変えたくない、住んでいる場所も変えたくない、友達が少なく交流も限定的ながらそのままでいい、買い物もここ、と決まった生活スタイルで過ごしておられて、別に新しいことを必要としていない、とおっしゃる方、刺激的なことなどいらない、とおっしゃる方がいらっしゃると思います。そこで私が思っていますことが、それぞれの自治体や地区に、よりどころになる寄り合いの進化版のようなものを作ることです。昔からあったところなら、それを少しおしゃれにして、必要で欲しい情報がそこに行き届くようにして、その土地を訪れた方も気兼ねなくは入れて交流ができるようにして。海外の方も入れるようにして。そこでは地域同士の交流の場でもあり、別の地域の人からの交流も気兼ねなくできる。訪れると地元の人から地域の名産の農作物の話や見どころの話が聞ける。豚汁をふるまってもらうこともあるかもしれません。そこが楽しいと、それまで新しい刺激はいらない、と思っていた人の中にも、楽しんでくださる方が出てくるのではないかと思うのです。そこで重要になるのが、そういうことを仕掛けるコーディネートする方です。それまで東京に造っていたアンテナショップを地元につくることで地元に訪れる方を増やしたり、定住者を増やすための医療、教育、仕事の確保をしたり。それができる機能的な設備もあればよいと思います。そうなると、買い物サービスや肉体労働の手段としてドローンは不可欠になりそうです。
――ところで若宮大臣は未来のドローンとか空飛ぶクルマといったら、どんなものを想像しますか?
『007/私を愛したスパイ』という映画で水中にもぐるクルマを思い出します。普段は道路を走り、必要なときに海や川を潜る潜水艦仕様になって、いざとなれば空も飛ぶ、みたいなものにあこがれますね。あれば映画の中ですが、普段の生活にも使えて、災害のときには別の姿で活躍できる機体があればいいなと思いますね。
――ありがとうございました。
■わかみや・けんじ
国際博覧会担当大臣、共生社会担当大臣、デジタル田園都市国家構想担当大臣、内閣府特命担当大臣。
1961年9月2日、東京都千代田区生まれ。永田町小学校(現麹町小学校)、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学商学部卒業。大学卒業後セゾングループに入社。グループ代表の堤清二氏の秘書等を務めたのち、2005年9月の衆院選に自由民主党公認で出馬し初当選。これまでに外務副大臣、防衛副大臣兼内閣府副大臣、防衛大臣政務官、衆議院外務委員長、衆議院安全保障委員長などを歴任。60歳。
万博相就任時以来、消費者を取り巻く環境の変化に対応できる制度の構築、食品安全の確保、日本の産業競争力の強化や新型コロナにより打撃を受けたクールジャパン関連産業の存続と発展に努めること、万博相として日本の魅力を世界に発信し、日本の子供に夢、希望、驚きを与える取り組みを掲げている。担務が多いが「所管する担務が多岐に及んでおりますが、すべての課題にスピード感を持って対応してまいります」と話す。
安全保障政策に強く、「日本の、経済だけ仲良くしてほしい、というスタイルは、安全保障の連携の面では限界があった」と断言する。関係各国との多面的な信頼関係の構築が、新型コロナウイルス感染症対策ワクチン確保にもつながった。
政策では、「安心した暮らし、安全な生活を守る」「次世代教育と豊かな働き方による、経済発展」「現場を重視した効率的な予算を」「自然災害への備えと環境保全」「自由で開かれたインド太平洋地域の安定と発展へ」などを掲げる。
株式会社エアロネクスト(東京)は8月15日、ドローンでフードデリバリーの試験飛行を 実施したと発表した。6品、約2.5㎏を有人地帯での補助者なし目視外飛行(日本ではレベル4に該当)で、地元モンゴルの有力企業と連携して実施した。
エアロネクストのモンゴル国でのフードデリバリは7月25日に行われた。同社の「モンゴル展開パートナー」である モンゴルを代表する投資会社Newcom Group(ウランバートル市)、同社の子会社、Mongolian Smart Drone Delivery LLC(ウランバートル市)、モンゴル国フードデリバリー最大手、Tok Tok LLC(ウランバートル市)と組んで実施した。エアロネクストの調べでは、7月時点でモンゴル国内では初めての取り組みという。
試験飛行では、アプリ「TOK TOK」を通じて注文を受けたレストラン KIBO の料理6品、2,420gを、ウランバートル市内からウランバートル郊外の研修・保養施設まで片道約 16.5km、株式会社ACSL(東京)製の「PF4」で運んだ。動画にはTOK TOKのロゴの入ったデリバリボックスをPF-4が運ぶ様子や、都心部を飛行する様子、受け渡しの様子がおさめられている。
エアロネクストはすでにウランバートル市内で定常運航として血液製剤の配送を実施しており、6月には郵便輸送も実施している。フードデリバリは第3のユースケースとなる。
(モンゴル郵便とのドローン配送試験運航の実績についてはこちら
株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市<石川県>)は、8月16日、奥能登のやなぎだ植物公園(能登町柳田植物公園、能登町上町)で、能登半島地震からの復興を応援するドローンショー「Charge & Go!能登復興応援スペシャルバージョン」を開催する。2011年に男女混合のパフォーマンスグループAAA (トリプル・エー) の楽曲としてリリースされた『Charge & Go!』の特別バージョンをモチーフにした光のショーで、この曲の作詞を担当したKenn Kato氏とのコラボレーションで実現することになった。作品は三部作で8月16日はその第1回となる。
8月16日のドローンショーは、やなぎだ植物公園で開かれる「2025年 ござれ祭り」の目玉行事のひとつとして午後8時から行われる。ドローンショー・ジャパンが主催し、同社が開発したドローンショー専用機体「DSJ MODEL-X」500機を使う。作詞家Kenn Kato氏が代表を務めるドローンショービジネスのアゲハライド株式会社(東京)が企画協力し、ドローンショー企画などを手掛けるルーカスドローン株式会社(うるま市<沖縄県>)が制作協力する。
今回は「Charge & Go!能登復興応援スペシャルバージョン」全3部作の第1回で、第2回で、その後第2回を9月7日(日)、 宇出津港いやさか広場(能登町)、第3回を10月25日にやなぎだ植物公園で開催する予定だ。各回で演出と表現が異なり、復興への願いを段階的に描くという。
コラボレーションの相手となったKenn Kato氏は、AAAのほか青山テルマ、EXILE、三代目J Soul Brothers、東方神起ら多くの著名アーティストに楽曲を提供しているクリエイターとして知られる。また8月16日のショーが開催されるやなぎだ植物公園の「ござれ祭り」には、キャンドルアーティストCANDLE JUNE氏がキャンドルアートで、歌手の渡辺真知子さんがステージで参加し会場を盛り上げる。入場は無料。
ドローンショー・ジャパンは「ドローンが夜空に描く幻想的な光景が、見上げる人々の心に少しでも勇気と感動をもたらすことができれば幸いです。このドローンショーが単なるエンターテイメントの枠に留まらず、能登の復興を全国に発信するきっかけとなり、被災地の皆様の心の支えとなることを心より願っております」「本ドローンショーを通じて、被災された皆様に少しでも癒しと勇気を感じていただけることを願っています。14年の時を経て楽曲『Charge&Go!』が光のダンスとして蘇り、復興への新たな歩みを力強く踏み出すきっかけとなれば幸いです」とコメントしている。
会場への公共交通機関としては北陸鉄道バス「立ケ谷内」が最寄り。北陸鉄道バス路線図はこちら
東日本旅客鉄道株式会社(東京、JR東日本)は、高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)一体型の都市開発エリア、TAKANAWA GATEWAY CITYで8月23日、300機のドローンを使った「ドローンショー in Summer」を開催する。人が多く空港に近いうえ電波干渉対策も要するなど、都心開催につきまとう条件をひとつひとつクリアし、今回の実現にこぎつけた。観覧できるのは先着200人で、JR東日本が観覧希望者をTAKANAWA GATEWAY CITYアプリで受け付けすぐに満席となった。現在は予約の受付は修了している。
ドローンショーは、TAKANAWA GATEWAY CITYが目指す姿を周知する目的で開催される。ショーは午後7時、午後8時半の2回、行われる計画で、TAKANAWA GATEWAY CITY内のTHE LINKPILLAR 1 SOUTHに「特別観覧エリア」を設け、予約した200人を招待する。開始前には屋内ドローンショーも予定している。天候要因などにより中止になりうることを説明している。
JR東日本は、グループ経営方針「勇翔 2034」でエアモビリティを活用したビジネスの創造を掲げていて、TAKANAWA GATEWAY CITY ではその方針に基づき新たな移動・物流・エンターテインメントの可能性を探っている。すでに米ASKA社のAAMのモックアップ展示や、点検用ドローンを使ったドローンレースの開催などを進めていて、ドローンショーの実施もその一環としての取り組みだ。
JR東日本は「今後も新たなドローンの活用方法を模索してまいります」とコメントし、「ドローンが当たり前に飛ぶ未来」の創造を目指す。
施設に不正にもぐりこみ置いてある端末からネットワークに侵入するリスクが高まる中、施設への実際の物理的な侵入とサイバー攻撃の両方のリスクを確認する診断サービスを、サイバーセキュリティ事業者と警備大手が手を組んで実施する。実施するのはドローンとつながりの深いGMOサイバーセキュリティbyイエラエ株式会社(東京)とALSOK株式会社(東京)。すでに重要インフラ企業、防衛産業などに提案活動を進めており、9月にサービスを開始する計画だ。
GMOインターネットグループでサイバー攻撃対策事業を展開するGMOサイバーセキュリティbyイエラエとALSOKは7月29日、物理空間からサイバー空間まで一気通貫で不正侵入リスクを可視化するセキュリティ診断サービス「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」を開発したと発表した。発表時には東京・用賀のGMOインターネットTOWERに関係者が集まり報道陣向けに説明会を開いた。
「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」は、巧妙化、複雑化するサイバー攻撃への備えのためのサービス。サイバー攻撃では攻撃者が企業や組織などの外からメールなどを通じてネットワークに侵入して重要データの漏洩などを仕掛けるが、サイバー攻撃への防御が進むにつれ、施設そのものに攻撃者が侵入し、施設内の端末を使ってネットワークに侵入する手口が増え始め、金融庁などが警鐘を鳴らしている。このため、物理的に施設に入り込まれるリスクがどの程度あるか、そのうえでサイバー攻撃がしかけられるリスクがどの程度あるか、を同時に診断するサービスを開発した。
テストでは、企業や団体などの依頼に応じて、指定された拠点に侵入するための方法を攻撃者の視点で検討する。拠点には許可された人が開錠したさいに続けて入り込む共連れやICカードの偽装して侵入を試み、侵入に成功したら、不正端末の接続などサイバー攻撃の足掛かりを探索し、ネットワークに入り込んで情報搾取を試みる。攻撃者の視点でテストすることで、防御の脆弱な個所を浮き彫りにする。侵入後には脆弱性や改善策をまとめたレポートを依頼主に提出することで、攻撃への備えに役立てる。
このテストでは、拠点への物理的な侵入の部分をALSOKが担い、サイバー攻撃部分をGMOイエラエが担った。ALSOKは新サービス開発にあたり、物理侵入を足掛かりとしたサイバー攻撃に焦点を当てた、新たなセキュリティ診断サービス「ALSOK物理ペネトレーションテスト」を開発し、GMOの診断と連結させサイバー空間まで一気通貫で不正侵入リスクを可視化する「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」を仕上げた。なお物理ペネトレーションテストの専門ベンダーBarrierCrack合同会社(東京)も開発に参画し技術提供を受けた。
GMOインターネットグループ株式会社の西山裕之取締役グループ副社長執行役員は「GMOグループは創業以来『すべての人にインターネット』のキャッチフレーズをかかげインターネット社会の発展に邁進し、現在1700万件以上のご活用を頂いています。しかしながら昨今、インターネットを悪用した犯罪が蔓延しており、その手法がますます高度化、頻発化しています。このため今年度より『ネットのセキュリティもGMO』をかかげ、さまざまな施策を進めすことにしました。インターネット社会の発展のために、サイバーセキュリティの課題に真摯に取り組んでいきたい。いまやリアルとネットは切り離せません。交通、物流、金融、医療、行政、あらゆるインフラはネットワークが前提です。ALSOKさまとの取り組みを通じて、リアルとネットの両面で安全、安心の社会の実現に貢献したいと願っています」と述べた。
ALSOKの佐藤将史執行役員は、2025年7月16日に創立60周年を迎えた機会に社名を綜合警備保障株式会社からALSOK株式会社に変更し、ブランドスローガンとして「ALwayS OK」を掲げたことを紹介し「警報を受信したら現場に駆け付けるインフラを使いひと、もの、かねを軸にセキュリティを提供し、2000年初頭の法改正以降、情報も含め物理的側面から守ることを続けてきました。今後は確かな現場対応力を武器にサイバー領域の業容を拡大したい。そこでGMOさんとタッグを組んで開発した商材が『ALSOK & GMOサイバー物理ペネトレーションテスト』です。われわれの60年の守りのノウハウを攻撃者の視点に活用することで物理侵入を足掛かりにしたサイバーセキュリティにフォーカスした新しいチャレンジです」と述べた。
GMOサイバーセキュリティbyイエラエの牧田誠代表取締役CEOは、「われわれはサイバーセキュリティの会社で、ホワイトハッカーが日本で一番多く所属していることが特徴です。ハッキングコンテストでも優勝、世界一などを受賞しています。そんなわれわれがしていることは脆弱性診断、侵入テスト、ペネトレーションテストです。1万2600件ほど実施しています。ゼロデイも研究していて、年間100件ぐらい見つけ報告しています。これは研究なので商売ではなく見つけたらボランティアで報告しています。ペネトレーションテストをするときには、攻撃者の視点を模します。WEBサイトがあれば、脆弱性を試します。スマホアプリならそこからの侵入ができないか探します。攻撃者は弱いところを狙います。資産を持つ側はインターネットでアクセスできないところに大事な資産をおこうということが進み、どんどん堅牢になっています。そうすると、攻撃者は次に弱いところを狙います。証券会社が侵入されて株価操縦されたという話は、銀行がセキュアになったことで次の標的になったとみられています。そちらがセキュアになると次にどうなるか。次の課題が物理の侵入です。日本は遅れている状況がありますので、そこが狙われるのではないかという懸念があります。ここをALSOKさまといっしょにテストをしてまいりたい。GMOでも物理セキュリティが大事ということで試してみたところ、3年前の実験では熊谷正寿グループ代表の部屋にカードキーを複製して侵入できてしまったことがあります。物理もサイバーも一気通貫で試すことが大事だと考えており、今回のサービスはそこに意義があると考えています」と述べた。
ALSOK商品サービス戦略部情報セキュリティサービス推進室長の小野浩司氏は、「国内における営業秘密の情報漏洩におけるダントツの1位は中途退職者によるものだそうです。金銭目的でUSBなどにより情報を持ち出して転職先や競合会社に提供するといったことです。サイバーセキュリティについては金融庁のガイドラインや、それを反映した金融情報システムセンターのリスクのコンピューターシステムの安全対策基準に物理セキュリティの言及がなされたこともあり、われわれも人材、管理意識、鍵を渡す人への信頼などを含めた「ALSOK物理ペネトレーションテスト」を開発しました。ビジネス拠点の物理 進入のリスク、侵入後に拠点内部からを行われるサイバー攻撃のリスクを探索し、その結果と解決策を提出するサービスです。ダークウェブでお客様のアカウント情報が漏れていないか、現地で外から入れそうなところはないかも調査します。拠点への進入経路や手段を調査し、建物に入ったら共連れで中に入れないか、清掃業者になりすまして内部に入れないか、ICカード偽装、社員証偽造、スキミングにより入れないかなどを調査します。さらにサイバー攻撃の足掛かりとして侵入後のサイバー攻撃の経路と手段の調査としてWi-Fiを通じた社内無線LAN無線へのアクセス、LANケーブルへの不正な端末の接続も試みたりします。調査内容は事前に主催者と調整しますが、攻撃活動を交えることでリスク対応を強化してまいります。物理の方はネットワークに侵入するまで、サイバーの方は侵入した後のリスクを評価します。実施後は施報告書を提出し 多面的な評価と効果的な改善提案をします。報告書の内容はエグゼクティブサマリー、実施概要、テスト実施結果 リスクと対策。これらを示し実効性の高い資料として対策の検討にご活用いただきたい。セキュリティレベルをさらに強化のため高度なセキュリティテストを継続的にご活用頂きたいと考えております」
さらに、先行的に6月に診断サービスをうけた株式会社あおぞら銀行の萩尾崇執行役員は「たくさんの気づきがありました。親切のつもりで行っていることが侵入者にとって重要な情報になることにも気づきました。不審物を仕掛けられて気づかないこともありました。整理整頓ができていない場所ではそういうことがある、ということも気づきでした。われわれは、社内に知らない人がいたときの声掛けを徹底していますが、さらに浸透させる必要性を感じました。また、(得意先に)ストラップ、名札、シャツなどの『あおぞらグッズ』を配っていましたが、こうしたものを身に付けている人を社員と誤認するリスクもあるので、配布の制限も検討することになり意識がかわりました」と経験談を話した。
GMOサイバーセキュリティbyイエラエの村田学ディフェンシブセキュリティ部副部長は、「一般的なサイバー攻撃でサイバーだけで完結するものはオフィスの外側に攻撃者がいます。データは中にあります。データが欲しい場合は、たとえば攻撃者はインターネット経由でユーザーの方にメールを送り、言葉巧みにマルウェアを開かせます。この場合はPCを中継地点として攻撃を仕掛けデータを取るという流れになると思います。標的型攻撃というところです。それ以外にもVPNの脆弱性、Wi-Fiの脆弱性を狙うこともあります。 wi-fi のアカウントを取って攻撃する形です。ポイントはどうやって中に入るかです。攻撃者が中にいたらどうなるか。ネットワーク内のどこかからコンピューティングリソースにたどり着ければ侵入目標は達成できてしまいます。ネットワークさえつながっていれば本社とは別の事業所でも全く同じ効果が得られます。つまり内部にいれば攻撃者にとっては、一気にショートカットできるのです。LANを構成するプロトコルは古く暗号化や相互認証が基本機能として備わっていません。また内部からの通信は信用しても大丈夫だろうという認証の省略も危険です。インターネットのセキュリティをしっかりやっていても 物理的な接触にはかなり弱い面が存在ありますので、今回の取り組みが活動の一助になればと思っております」などと述べた。
<リリース>
https://group.gmo/news/article/9608/
<参考>
■ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト
https://www.digitalsales.alsok.co.jp/service/cyber-physical-penetration-testing/
■ALSOK 物理ペネトレーションテスト
https://www.digitalsales.alsok.co.jp/service/physical-penetration-testing/
■GMOサイバーセキュリティ byイエラエ
GMOインターネットグループのGMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR、東京)と日本未来科学館(東京・青海)は、8月25日からAI対話型ロボットの実証実験を日本科学未来館5階の常設展示ゾーンで実施する。4か国語を操るロボットが自律移動し、来館者に展示を紹介するなどコミュニケーションを取る。実験は8月31日まで。
GMO AIR などが行う実験は「『対話型AIロボット』」実証実験~ロボットによる未来のコミュニケーションを体験しよう!」がテーマで、8月25日(月)~8月31日(日)の期間中、11:00~13:00、15:00~17:00に日本科学未来館5階常設展示ゾーン「プラネタリー・クライシス」内で行う。
AI対話型ロボットは日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語で来館者とコミュニケーションをとる。来館者に展示物についてきかれると、ロボットが位置情報から展示物を判断し、名称や解説を自然な対話で案内する。
ロボットはアプリケーション実装業務の約80%をAIが自動生成していることも特徴。GMO AIR によると、AIが自動生成したプログラムによるAI対話型ロボットの実証は、国内初の取り組みという。
コメ卸売大手の株式会社ヤマタネ(東京)は、写真コンテスト「棚田フォトコンテスト」の作品の募集を始めた。棚田の魅力と現状を広く伝え、保全への関心を高めることが目的で、美しい風景に限らず、荒廃してしまった現状を直視したものなども募っている。応募は画像データ、単写真で、DroneTribuneが確認したところドローンで撮影した作品も含まれる。応募は1人10点以内で10月31日正午まで応募サイトで受け付ける。
募集テーマは「日本の棚田、およびそこに関わる人々や、生態系などの棚田を取り巻く環境」で美しい風景だけでなく、荒廃してしまった場所の現状など、写真を見た人の棚田保全の関心に訴える作品を募集している。審査員は写真家の今森光彦氏ら。最優秀賞には10万円分の商品券と棚田米が贈られる。
ヤマタネは棚田について「棚田は、日本の原風景として多くの人々に親しまれてきました。昼夜の気温差が大きい中山間地にあることから、棚田で育つお米は甘みと粘りがあり格別の美味しさを誇ります。また、棚田は単なる農地にとどまらず、雨水を一時的に貯留して下流域の洪水を防ぐ“天然のダム”としての機能や、多様な生き物が生息する生態系の保全にも重要な役割を果たしています。しかし近年では、深刻な担い手不足や高齢化により、多くの棚田が耕作放棄地となり、荒廃の危機に直面しています」と伝えている。
またヤマタネと棚田とのかかわりとして「2024年から新潟県十日町市『星峠の棚田』(2.5ha分)の企業オーナーとなり、株主様をご招待した田植え体験を開催するなど、棚田保全に」取り組んできたことを紹介。コンテスト開催の目的を「棚田の魅力と現状を写真の力で広く伝え、保全への関心を高める一助となること」と位置付けている。