国の天然記念物「入水鍾乳洞」を初めて水中ドローンで探索 “見えない水の中を見る”ことの可能性を確認

2019.07.19

  水中を見る難しさを、水中ドローンが解決できるのではないかー。水中ドローンGLADIUS MINI(グラディウスミニ)を製造する中国CHASING社(深圳)の代理店で、ドローンの運用も手掛けるIT企業、株式会社スペースワン(福島県)は7月13日、国の点記念物の鍾乳洞「入水(いりみず)鍾乳洞」に、GLADIUS MINIを持ち込み、洞内を流れる水の中の撮影を試みた。入水鍾乳洞は足元を川のように水が流れていて、観光コースの終点地点から先は水深が増すため、肉眼での水中の様子を確認することは難しい。今回、GLADIUS MINIは観光コースの終点からさらに先にある水の中を、ライトで照らしながら、4Kで撮影することに成功した。鍾乳洞内の水中を水中ドローンで撮影した前例はおそらくなく、肉眼で見えない水の中の確認手段のひとつとして、大きな可能性があることを改めて確認した。

8000万年もの時間をかけて形成された鍾乳洞 人が入れない場所もドローンで

人の手の加わっていない鍾乳洞の中の“池”の中も水中ドローンGLADIUS MINIでくっきり映し出された

  撮影チームは、スペースワンの小林康宏社長をはじめ、女性社員を含め5人。スペースワンは、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)認定の「福島ドローンスクール」を運営するほか、一般社団法人日本水中ドローン協会の事務局も担う、空と水のドローンを事業の柱のひとつにしている専門家集団だ。

 チーム一行は管理担当者に案内されて洞内に入った。公開されているのは入口から900メートルまで。そのうち入口から150メートルまでは、足場や照明が整備されているが、それでもところどころ狭くなり、周囲に手をついたり、足元が水に濡れたりする。うっかりすると頭をぶつけるし、狭いところで体をひねる必要もある。この入口から150メートルまでは「Aコース」と呼ばれ、入水鍾乳洞の中では難易度が最も低いが、ちょっとした覚悟と冒険心が必要だ。

  Aコースから先がBコースだ。さらに先にはCコースが待つ。ここから先は、足場はなく照明も限られる。足元に流れる水温9度の水に足をつっこみ沢登りの要領で進む必要がある。途中、洞内の天井から鍾乳石がふさがり、くぐらないと向こう側に抜けられない「胎内くぐり」「第二胎内くぐり」を這うようにくぐる。周囲の鍾乳石に手をかけたり、足をかけたりして、また、ごつごつと垂れ下がる鍾乳石に頭がぶつからないようによけながら、まともな歩行姿勢をとれないまま450メートル進む。人が歩くことを想定していない隙間ほどの道を、態勢を考えながら進む必要もある。手持ち機材の受け渡しにも工夫が必要だ。機材を後続者に託してまずスタッフが通り、難所を突破したのちに、荷物を受け取る。

  そこから先のCコースは、さらに狭く、照明はなくなり、ルートも複雑になる。Bコースまでは小学生も入れるが、Cコースからは大人向けだ。終点までの300メートルは隙間との格闘で、はいつくばったり、体をよじったりで、全身が水浸しになる。入水鍾乳洞を紹介している田村市のHPには、「本格的なケイビングの醍醐味が味わえる」と記述がある。8000万年かけて形成された鍾乳石のトンネルを進む経験は、「本格的なケイビング」の経験を持たない人にも、ケイビングとはこういうものか、と想像をめぐらせたり、太古の時代に触れる喜びを感じさせたりする。

  Cコースまでを通じて、水深は足首までのところがほとんどだ。深いところでもひざ下だ。水も澄んでいて、中を見通すのに水中ドローンを使うまでもない。しかしCコースの終点につくと、そこから先が一気に狭くなる様子が確認できる。入りにくいうえ、水深が増す。GLADIUS MINIの出番だ。

  Cコースの終点で機材を広げ、GLADIUS MINIをセット。スタッフが奥まではいり適した場所に置き、いよいよ操作を開始する。コントローラーで制御すると、手元のタブレットには、4K Ultra HDカメラがとらえた映像がリアルタイムで届けられる。水が澄んでいることや、水深が増して“池”のようになっていることが確認できた。5つのスラスターフレームが搭載され、流れている水の中でも姿勢が制御できるため、安定した映像が届く。機体の向きを水底にチルトダウンすると、、水底の岩の模様がきれいに映し出された。

  今回撮影に使ったGLADIUS MINIは、ドローンの大規模展示会JAPAN DRONE 2019の「Best of Japan Drone Award 2019」でハードウェア部門最優秀賞、オーディエンスアワード受賞の2部門受賞で話題をさらった機体だ。今回の撮影でも、光源が少ない中でも、きれいな映像を撮影できることが改めて確認できた。日本は海に囲まれ、水資源が豊かな国で、定置網は漁船の底の確認、海洋プラントの足場など、水中の確認需要は他領域にまたがる。一方、多くのケースでダイバー頼みになっていて、ダイバー人口が減る中、その対応が問題になっている。水中ドローンはダイバーの負担軽減、役割の保管のほか、今後増える新たな需要に対応するためにも、さらに大きな期待を担うことになりそうだ。

入水鍾乳洞のCコース終点。ここから先はGLADIUS MINI頼みだ
GLADIUS MINIから届けられた映像をチェックするスペースワンの小林康宏社長(手前)
洞内の狭いところでは機材など荷物の受け渡しにも工夫が必要だ
入水鍾乳洞の前には、あぶくま洞にもGLADIUS MINIを持ち込んだ。ここにも水がたまっているところはあるが、水深は浅く照明もあるため肉眼で水中の様子を確認できる
いいね!と思ったらシェア!
関連するタグ
関連する記事