ドローンの運用やドローンポート開発を手掛けるブルーイノベーション株式会社(東京)は3月20日、国土交通省と共同開発した災害用ドローンポートシステムを活用した物資輸送実験を実施したと発表した。実験では荒川に停泊している船舶からドローンを自動飛行させ、避難所に設置したドローンポートまで支援物資を届けた。2022 年度中の実用化を目指す。
実証実験は、関東地方整備局、東京都、江東区豊洲スマートシティ推進協議会などが実施した荒川決壊を想定した避難実証訓練の中で、東京大学羽藤研究室、清水建設株式会社とともに実施した。地震、洪水など災害が発生時の物資輸送のありかたや、国、自治体、民間企業、住民など関係先との連携方法のありかたを明らかにすることが目的で、災害時の体制構築に貢献する。
ブルーイノベーションは、2016 年から国交省や東大と、ドローンの正確な着陸を支援するドローンポートシステムの開発を進め、現時点で目標に対し誤差数十センチ以内の精度で着陸させることできる。また、ポートに人が立ち入ったり、ポート周辺で強風が吹いたりしている場合には、離着陸を禁止させる機能を備える。次世代モビリティ活用による公共交通の見直しを提言する東大、東京都江東区を対象とした交通防災まちづくりで各種モビリティを活用した社会実験を行っている清水建設と連携し、船舶を起点としたドローンによるラストワンマイル輸送の課題解決を目指すことにした。
実証では、周辺道路が水没し避難先への支援物資輸送が困難になった場合を想定し、避難先の近くまで海上輸送された支援物資を、避難先までドローンで届ける場合に、ドローンポートがどの程度有効かを確認した。ドローンは約500mを自動飛行しドローンポートに着陸した。
ドローンポートシステムはブルーイノベーションの独自のAPI連携技術でデバイスを統合するプラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」で運用している。情報発信、共有、ドローンポート周辺の危険感知と安全確保、ドローンの自動運航支援の一連のオペレーションを一元的に管理する。今後も実験を重ね、2022 年度中の実用化を目指す。
ドローンポートをめぐっては、ブルーイノベーションは国際標準化機構(ISO)にISO規格化を提言。2020年9月にISO内に設置された空港インフラを検討するサブコミッティ「SC17」のISO規格化を進めるワーキンググループで議長を務め、検討を進めている。ワーキンググループ内のプロジェクト「Infrastructure and equipment for vertiports(垂直離着陸用飛行場のインフラと設備の標準化)のプロジェクトリーダーも務め、2023年中のドローンポートのISO規格発行を目指している。
国土交通省は3月7日、物資輸送にドローンを活用する実証を、東京・荒川下流の臨海緊急用船着場(東京都江戸川区)などで実施した。行政用途向けドローンの標準的性能を規定化する国交省の取り組みの一環で、民間のドローン2機がそれぞれ、首都高速道路の高架下をくぐるルートを自動飛行し、近隣の中学校の校庭に飲料水を運んだ。実証の様子は渡辺猛之国土交通副大臣も視察した。渡辺副大臣は、国交省幹部が「国交省は港湾、道路など多くのインフラがありますので総動員して参ります」と説明したのに対し、「これからも大いにやりましょう」などと応じた。
実証の会場となった臨海緊急用船着場は、災害が発生した時に周辺地域の復旧活動に必要な資機材や救援物資の積み下ろしなどの活動拠点とするために国交省が整備している緊急用船着場のひとつ。荒川の下流の中洲の南端にある。関東地方整備局荒川下流河川事務所が管理している。
実証は災害の発生を想定し、緊急船着場に船で届けられた飲料水を、直線距離で530m離れた江戸川区立清新第一中学校まで届けるシナリオで実施された。清新第一中学校は江戸川区の一次避難所に位置付けられている。周辺は、東京メトロ西葛西駅から直線距離580mの場所にあり、集合住宅が立ち並び賑わいのある商店街もあり、人通りも住民も多い地域。江戸川区も防災に力を入れている。
実証の現場には、渡辺国土交通副大臣が視察に訪れた。渡辺副大臣は臨海緊急用船着場に到着すると、江戸川区の担当者から地元の防災の取り組みやドローンの活用状況などについて説明を受けたほか、この日の運用を取り仕切る民間事業者の代表から、ドローンの運用計画や、ドローンの防災や物資輸送での活用の可能性、ドローンの安全な自動飛行を支えるドローンポートシステムの概要などについて説明を受けた。その後、この日の実証に使われる機体を間近で確認し、1機目のドローンが、2リットルの飲料水6本を詰めた収納容器を積んで離陸する様子を見届けた。国交省の髙田昌行技術総括審議官、伊藤真澄技術政策課長、斎藤輝彦技術基準企画調整室長が同席したほか、地元江戸川区の担当者や関係機関も参加した。
臨海緊急用船着場を離陸したドローンは、川をまたぎ、首都高中央環状線の高架下をくぐり、送電線、鉄塔、変電設備の影響を受けないルートをたどって、届け先となる中学校の校舎の上空を超え、校庭に設置されたドローンポートに着陸した。飛行ルートは約800m。離陸から着陸まで、オペレーターが手動操作をしない自動飛行で運用された。
渡辺国土交通副大臣は、物資の届け先である中学校の校庭でもドローンが着陸する様子を視察した。渡辺副大臣は同席していた国交省幹部に「災害活動が自動で運用できることは、人手をほかの活動にあてられる意味でも、活動に従事する作業員の安全確保の意味でもとても心強いです。精度の高い自動飛行はさらに重要になると思います。ドローンの防災利用は、陸路が寸断されたり、一帯が水没したりした場合の救命、救難活動に重要だと考えます」などと話した。
実際、緊急船着場から自動車で届け先まで向かう場合は、交通量の多い道路を含めて約2㎞を走行する必要がある。またこの間、いくつかの右折や信号があり、混雑状況次第ではひとつの右折のために、信号の切り替わりを何度かやり過ごす必要が生じる。災害時には混雑が予想されるほか、災害により道路が寸断したり、水没したりすると、陸路が機能不全に陥るリスクがある。陸路以外の選択肢を持つことが防災活動の成果を高める方法として検討されており、ドローンは有効な選択肢となる可能性がある。
また渡辺副大臣は、隣りの髙田技術総括審議官が「ドローンの物資輸送では料金設定も課題になります」と話したのに対し、「民間事業者にとってきちんとビジネスとして成立する仕組みを作ることが大事です。技術開発だけでは民間事業者が事業を継続することができない」と応じ、採算がとれる環境づくりへの問題意識を示した。さらに髙田技術総括審議官が「国交省は港湾、道路など多くのインフラがありますのでドローンの実証に、これらを総動員して参ります」と説明すると、渡辺副大臣は「これからも大いにやりましょう」などと応じた。
国交省は実証で得られた知見を、行政用途向けのドローンの仕様の規定化に役立てる。今後も実証を重ねる方針だ。
国土交通省は3月2日、港湾施設をドローンで点検する業務を想定した実証を川崎港の関東地方整備局首都圏臨海防災センター(川崎市・東扇島)で行った。行政用途向けドローンの標準的性能を規定化する取り組みの一環で、災害時の臨時点検で想定される自動飛行に向けたドローンポートの有効性の検証や、施設の経年劣化を発見するのための接近撮影の検証などを実施した。実証には国内の複数の事業者が技術を持ち寄り、国交省、内閣官房、経済産業省が参加、視察した。国交省の髙田昌行技術総括審議官は「業務効率化のため検討会も立ち上げており、取り組みを加速して参ります」とあいさつした。今後も物資輸送の取り組みなどを実施する計画で、政府が主導するドローンの実証にはずみがつきそうだ。
この日の実証は、防波堤や消波工など港湾施設の点検に役立つドローンや関連技術の性能を確認することを目的に行われた。点検は、災害発生直後などに設備の損傷や異常の有無を確認する臨時点検と、補修が必要な経年劣化の有無を確認する日常点検のそれぞれを想定した。
臨時点検では、自動飛行を支えるドローンポートの有効性確認を中心に実証が行われた。実証では、会場となった臨海防災センター庁舎のテラスに設置されたドローンポートから、ドローンが自動で離陸。2㎞離れた防波堤まで予め設定されたコースを目視外で飛行し、所定の現場を撮影して自動で帰還した。設置されたドローンポートは風況を判断し、運航管理システムを機能させてドローンの飛行を支援し、ドローンが帰還したさいにはポートを機体が認識して、目標地点のほぼ中央に、オペレータが操作することなく自動で着陸した。
ドローンは地面から30メートルの高さを、毎秒1メートルの速度で飛び、異常の有無の判定に必要な映像を取得した。自然災害発生時には、防波堤に1メートル以上の沈下がないかどうか、消波ブロックの想定を超えた移動がないかどうかなどを確認する必要がある。このため今後、撮影する高さや機体の飛行速度を変えて、判定に必要な情報の取得に適した機体性能や運用方法を探る。
また施設の経年劣化を見つける日常点検を想定し、幅3mmのひび割れを検知するための撮影飛行も実施した。国交省は画像データから劣化をAI診断するシステムを開発中で、システムが判定するのに適切なデータを取得に適した性能、運用方法を確認することが中心的なテーマとなった。対象となる防波堤などの構造物に、どの程度接近して撮影すればよいか、どの程度速度を落とす必要があるか、などが検証のポイントで、実証では飛行速度について、静止、1m/秒、3m/秒の3通り、また、点検する対象物からの離隔距離もいくつか変えながら、手動飛行で適切なデータを取るために必要な性能などの検証を進めた。
さらに港湾施設での点検を想定し、海で起こりがちな強風、まき風、海面反射などの環境下で、ドローンポートが離発着を支援しうるかどうかについてを確認するため、護岸の先端にドローンポートを設置し、ドローンが自動着陸できるかどうかも確認した。実証では自動飛行したドローンが、ポート上空にたどりつくと、小刻みに位置を整えながら、ほぼポートの中央に着陸した。
この日は国内3つの民間事業者が機体やドローンポートなどの技術を持ち寄った。参加者は設置されてドローポートやドローンの動き、ドローンから送られてくるデータなどを見ながら、担当者に質問したり確認したりしていた。
国交省総合政策局技術政策課の斎藤輝彦技術基準企画調整室長は「今回の実証で使われた機体は、構造物に接近する撮影をこなし、耐風性能もあり、ユーザーとして安心して飛ばせるのではないかと感じました。手動で点検したケースについて、今後の検証では自動飛行で対応できるかどうかの検証も進めて参ります。実証を通じて(国内の技術は)リアルな点検現場での利活用に生かせるのではないかと思います。今後は物資輸送などについても実証をして参ります。こうした取り組みを通じて、我々が使う場合にどんなドローンが適切かを見定め、将来的には、国交省が活用するドローンの性能標準の規定化を行っていきたいと思っています」と国内技術への期待を示しながら総括した。
国交省のドローン実証は2月24、25日に行われた講習会に続き2回目で、3月中に物資輸送も含めたさらに4回の現場実証を計画している。
ブルーイノベーション株式会社(東京)は、ドローンポートとクラウドを組み合わせた「災害用ドローンポートシステム」の実証実験を大分県日田市で実施した。被災状況の迅速な共有とドローンによる物資搬送を支援し、災害対策に有効であることを確認した。2022年4月以降の実用化を目指す。
実験は発災から支援までにかかる時間の短縮を目指したもので、システムで有効な支援ができるかどうかを確認するために行われた。ブルーイノベーションが開発したドローンポートは、設置すると位置を災害対策本部に知らせ、設置場所で必要な物資の要請や、物資のドローンによる空送計画の策定、ドローンの飛行に必要なポート周囲の安全確認、風速の把握など一連のオペレーションを、ポートと連携させたシステム上でこなす。
3月23日に行われた実験では、ポート設置位置の確認、共有から、設置場所で必要とされている遠隔診療システムのドローンによる搬送を一元管理できることを確認した。ドローンによる搬送を受けてオンライン診療も行われた。
災害用ドローンポートシステムは、人命救助のタイミリミットと言われる発災後72時間以内の適切な対応を目指して開発が進められている。ブルーイノベーションが2016年から国土交通省、東京大学との共同で開発を進めていて、ポートは、ドローンの正確な離着陸の支援や、ポート周辺の安全が脅かされた場合にドローンの着陸を認めない機能を備える。クラウドと連携させた災害用ドローンポートシステムを実現することで、迅速な災害対策としての技術の確立を目指す。