航続時間の長さが特徴のハイブリッドドローンを開発する株式会社エアロジーラボ(AGL、大阪府箕面市)と鉄道やバスなどに使う機器の設計、開発、製造を手掛ける株式会社交通電業社(大阪市)は3月1日、交通電業社がAGLの量産型機体の製造を請け負う製造委託契約を締結したと発表した。これによりAGLの量産体制の整備が進むことになり、長時間飛行の需要を引き受ける役割を担うことになりそうだ。両者の発表文は以下の通り。
株式会社交通電業社(本社:大阪市平野区、代表取締役社長:相薗岳生、以下「交通電業社」)と株式会社エアロジーラボ(本社:大阪府箕面市、代表取締役:谷紳一、以下「AGL」)は、ハイブリッド型ドローンの機体製造に関わる製造委託契約を締結いたしました。
AGL は、既存のバッテリー式ドローンの最大の課題であった航続時間・距離の更なる延長にむけて試作・改良、飛行試験をかさね、主な動力源である汎用燃料とバッテリーを組み合わせたハイブリッド型ドローンの開発に成功しました。プロトタイプから量産型のドローン設計・製作のフェーズへの移行にむけた課題解決に取り組む過程で、今後の量産・生産体制をどのように構築していくかが喫緊の課題となっておりました。
一方、交通電業社は鉄道・バスなどの公共交通機関向け製品を 75 年以上の長きにわたって開発しており、高い品質と信頼性のあるものづくりには定評があります。公共交通機関において最も重要な「安全」の視点に基づく高品質な製品製造が可能な交通電業社と、空を飛行する機体に欠かすことができない「安全」に対する AGL の製品設計へのこだわりが融合することにより、最善の機体開発体制になるとの合意により、本契約の締結に至りました。
国内では改正航空法の施行に伴い、長距離・長時間飛行ができるドローンに対するニーズが日増しに高まっています。また国外に目を向けると国土が広く、道路の整備もその途上である地域が数多く存在します。加えて、電源設備の整っていない地域も多く、ガソリンを燃料として飛行できるドローンに大きな期待が寄せられています。これらのニーズに応えるため、当社ハイブリッド型ドローンの更なる普及・技術の発展に努めてまいります。
両社は単なる機体製造の受委託という関係性だけではなく、安全な飛行に不可欠な設計においても交通電業社が公共交通機関向け製品の開発で積み重ねてきた技術ノウハウを新たなモビリティー分野で生かすことにより、お客様が安全に長く使い続けられるハイブリッド型ドローンのご提供を実現してまいります。
【株式会社交通電業社】
株式会社交通電業社は、1947 年に創業して以来、一貫して鉄道・バスなどの公共交通機関向けの製品開発に取り組んできました。行先表示器、案内表示器、モニタ装置などの表示装置、防犯カメラシステムや非常通報装置などの安全装置、ドアチャイム装置や扉開閉予告灯などのバリアフリー装置を始めとした多くの製品を開発・販売しております。最近では、次世代表示器である「彩 Vision」の製品化、鉄道分野におけるIT技術の普及に伴い、AI技術やIoT技術といった最先端の技術開発にも取り組んでおります。今後は、鉄道・バス分野以外に、航空分野、船舶分野などにも事業領域を拡大してまいります。
Web サイト:https://www.parasign.co.jp/
お問い合わせ:info@parasign.co.jp
【株式会社エアロジーラボ】
株式会社エアロジーラボは、大阪府箕面市に拠点を置き、マルチローター型 UAV(無人航空機)の開発、設計、製造、販売等を行っています。国内で初めて、ガソリンエンジンジェネレータを用いたハイブリッド型ドローンを開発し、最大飛行時間は 2 時間を超えます。2020 年度には AeroRange PRO、AeroRangeQuad の2機種を相次いで開発し、市場に投入いたしました。目視外飛行の運用が解禁された今、ドローンの社会実装に向けて、実用的な機体の開発、製造を加速させてまいります。さらには、本契約を契機に点検、測量、災害対応の分野への展開に一層注力していきます。
Web サイト:https://aerog-lab.com/
お問い合わせ:support@aerog-lab.com
ハイブリッドドローンの開発、製造を手掛ける株式会社エアロジーラボ(AGL、大阪府)は5月14日、モジュール、パーツを日本製でそろえる純国産ハイブリッド機「エアロレンジプロ(AeroRangePRO)」の開発にめどがつき、量産体制を整備したことを発表した。6月1日に受注の受付を始める。
AeroRangePROは、同社が得意とするジェネレーターとバッテリーを組み合わせたハイブリッドドローンで、パーツのひとつひとつを専用に設計、開発した。飛行を制御するフライトコントローラーには株式会社自律制御システム研究所(ACSL、千葉市)を採用した。年度内には独自のパワーユニットも完成する予定で、それにより純国産のハイブリッドドローンとなる。
6ローターの回転翼機で大きさは直径180センチ、重さは19キログラム。10キログラムまで積載可能という。飛行時間は180分間、飛行距離は120キロだ。
モーター、躯体、燃料タンクなど、必要な技術を、地域の専門家集団が開発チームを構成して絞り出したことも開発の特徴。産業用機械の設計、製造を手掛ける成光精密株式会社(大阪)と同社と交流のある町工場が開発チームを構成した。また農業用部品製造を手掛ける株式会社小橋工業(岡山市)が今年(2020年)2月に設立した量産支援サービスのKOBASHI ROBOTICS株式会社(岡山市)が量産を支える。こうした生産の環境整備に知識プラットフォームを手がける株式会社リバネス(東京)が関与した。
エアロジーラボは2010年からドローンを作り始めた谷紳一代表らが2012年に設立したメーカーで、長距離、長時間の飛行を可能にするため早くからハイブリッド機の開発に取り組んできた。世界から高性能のパーツを集め、調整したうえで組み立てた従来のハイブリッドドローンAeroRangeは、2018年、岡山県和気町で開催された過疎地での物資配送実験で、40キロをノンストップで飛行する性能を証明している。
谷紳一代表は「マニアの趣味からはじまった会社ですが、今では日本では数少ないドローンの開発を手掛ける会社のひとつとなりました」と語った。
リバネスの丸幸弘代表は「高性能を生み出す技術者がいて、形にするための地域連携があり、町工場が手を取り合うスーパーファクトリーグループが支える。量産の壁を超えるための必要な要素を集めた取り組みになる」と述べた。
岡山県和気町、レイヤーズ・コンサルティング、ファミリーマート、コニカミノルタ、エアロジーラボは9月30日、都内で記者会見し、総務省の「IoTの安心・安全かつ適正な利用環境の構築(IoT利用環境の適正な運用及び整備等に資するガイドライン等策定)」の事業として、和気町内でドローンによる配送実験を実施すると発表した。住民が隣接する自治体のコンビニに注文を出すと、ドローンが翌日に運ぶ。使われるドローンはハイブリッド型で、最長30.3キロ、標高差が380メートルの区間を補助者無し、目視外で航行する計画だ。
事業を取り仕切るレイヤーズ・コンサルティングは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)認定スクールの運営のほか、いくつかのドローン関連事業を運営している。草加好弘事業戦略事業部統括マネージングディレクターは、実証実験を実施する和気町が、高齢化、過疎化、人口減少、産業衰退、インフラ老朽化など地域の課題を抱える典型的な中山間地であり実験地に適していると指摘した。
実験では和気町の中心部から離れた3地区(合計65世帯、146人が定住)を対象に、買い物支援の有効性を確認する。
住民は電話やFAXなどで隣接自治体にあるファミリーマートなどに注文を出し、それを受けてドローンで配送する。配送は11月の火、木、金の週3回実施。和気町の中心部にある和気ドームから、1日1便を運行する。代金は2週間に1度、別途集金する。ファミリーマートの青木実執行役員は「加盟店の収益に寄与するかどうかも検証したい」と話した。
実験に使うドローンは、エアロジーラボが開発したハイブリッドドローン「エアロレンジ」。国内で約40キロをノンストップで飛行させた経験を持ち、今回も全自動、補助者なし、目視外で飛ばす。ドローンに常時映像伝送装置を搭載し、管制センターで遠隔監視する。谷紳一代表は「普通のドローンなら20分しか飛べないが、ハイブリッドなら最大180分の飛行ができる。これは一般的なドローンが8キロ程度の距離しか飛べないところを、場合によっては100キロメートルの飛行も可能な性能を持ってる」と指摘。
実際、中国・北京のハイブリッドドローンメーカー、RICHEN POWERは7時間連続飛行(このときはホバリング)や、山東省煙台市から渤海湾をはさんで対岸の遼寧省大連市まで100キロ超のフライトを成功させている。谷社長は「大きなチャレンジだが成功させたい」と意欲を示した。
買い物以外の時間では、コニカミノルタとヤンマーが出資するファームアイのソリューションを活用し、田畑や森林の生育状況を診断する精密農業や、スマート林業の可能性や、赤外線センサーの搭載で、害獣検知や駆除施策の支援も模索する。実験は、10月1日から2020年1月31日まで。
和気町の草加信義町長は「年間220人から250人逝去され、生まれるのは年間平均60人。自然減が著しいが、都心から移住が増えてもいる。その中にはドローンの取り組みがすばらしいから住みたい、という方もいる。女性の一人暮らしがおおく。行商で生活をたてている。たちゆかなくなったらどうするか。ドローンが勝負。災害発生時の情報収集などの防災や、鳥獣害対策にも活用したい」とドローンへの高い期待を表明した。