AIドローン開発の米Skydoの日本法人、Skydio 合同会社は5月1日付で日本オフィスを移転した。事業拡大に伴う人員増加や、日本の顧客やパートナー企業へのサポート強化に伴う移転で今後、米国本社からのエンジニア派遣も強化する。
新オフィスは、東京メトロ銀座線外苑前駅に近いビルの6階に構えた。Skydioは日本を注力市場と位置付けており今後、米国本社からエンジニアを日本に派遣する「ローテーション・プログラム」を本格化させる予定だ。このプログラムは、顧客やパートナー企業の技術支援をオンサイトで行うもので、ドローン技術の普及と発展に力を入れる。
Skydioは、2020年10月に日本法人を設立し、日本国内の建設、土木、電力、通信、自動車などの産業を主な対象に自律飛行型ドローンの導入を進めてきた。建設・電力業界では、インフラの老朽化対策や保守点検業務の生産性向上を果たすため、SkydioのGPSが届かない場所や障害物の多い場所でも安全に飛行できるドローンに高い需要がある。
Skydio社日本で「Skydio 2+」や「Skydio X2」などの製品やサービスの提供を進めているほか、「Skydio Dock and Remote Ops.」などのソリューションで人手不足やコスト削減などの課題対応を提案している。
人が操縦せずに自動で障害物を避けながらターゲットを追尾できるAIドローンを開発した米Skydio社のトム・モス(Tom Moss)COOが12月20日、大分市で開幕したOITAドローンフェスタに登壇し、AIドローンの登場でドローンが新時代に入ったと述べた。モス氏はAIドローンを「スマートドローン」と呼び、スマホで指示をすればドローンが人の代わりに作業をしてくれるようになると説明した。
トム・モス氏はグーグル社で、スマートフォンやタブレットなどのモバイルオペレーティングシステム「アンドロイド」の開発や普及に関与してきた。日本初のアンドロイドスマホ「HT-03A」の発売にこぎつけた経験も持つ。日本滞在経験があるため講演も日本語で行われた。スマホで携帯電話の新時代を切り開いた経験を持つモス氏は、SkydioのAIドローンも、「携帯電話がスマホに移り変わったように、ドローンもスマートドローンに」変化をもたらしつつあると指摘した。
森林の中を疾走する自転車を頭上から設営した映像を見せて「この動画、パイロットはいません。AIとマシンラーニングで自動飛行をします」と説明を始めた。ドローンがぶつからずに自動飛行ができるために、まず、自分のまわりの世界を360度、映像として把握している。「周囲を360度、映像でとらえています。また、ひとつの方向を複数のカメラでとらえ、自分と周囲との距離を、リアルタイムで理解します。このドローンのおもしろいところはリアルタイムで距離情報を理解し、自分がどこにいて、ターゲットがどこにいるかをドローン自身が判断して動けることです」
ただし、自動追尾にはまだ足りないものがある。「ターゲットが動くので、ドローが自分のフライトパスを割り出すには、プラスアルファでしないといけないことがあります。それは、将来を予想すること。数秒後にターゲットがどこにいるか。それができて、そのターゲットを追うために、適切な場所に移動できます」
続けて投影した動画では、人物の軌道を青い線で表現しつつ、もう一本、赤い線が生まれる様子が映った。「この赤い線は、この人物が次にどう動くかという予想です。これは、この人物の姿勢や、それまでの動きから判断しています」(モス氏)。動画では動き回る人物をとらえ続ける様子が映し出され、モス氏が「ごらんのとおり、逃げられません」と言うと、会場から笑いが上がった。
モス氏は、「携帯電話がフィーチャーフォンからスマホになったように、ドローンにも変化が起きています」と説明する。「これまでのマニュアルドローンでは、少なくとも1人のドローンがついていないといけない状況がありました。これからは、人が必要でなくなるスマートドローンになります」
また、スマホはアプリを使って具体的な作業ができるようになることについても言及。「スマホと同じように、スマートドローンも自動飛行をするだけでは意味がなくて、実際に役立つためにはアプリが大切です。スマホは掌にのるコンピューターですが、スマートドローンもコンピューターが空を飛ぶもの。空飛ぶロボットです。ホビーや遊びだけでなく、現場の業務にも役立ちます。ただしそれを役立たせるようにするために大切なのは、ベースのドローンに加えて、人手に頼っている作業をドローンにしてもらうためのミッションをアプリとして開発することになります」と指摘した。
そのうえでスマートドローンの特徴を「より安全、より速い、より安い、よりスケーラブル」と整理。
「より安全」については、「人が行うとあぶない作業をドローンでしてもらえることにより人の安全が確保されます。アメリカでは屋根点検のアプリを出します。これで人が屋根から落ちることはありません。われわれのパートナーには米国の警察もあります。彼らは危険がありそうな場所について、入る前にドローンで安全性を確認できます」と説明した。
「より速い」についても警察のケースを紹介。「アメリカの治安が悪い地域では、音を拾うマイクを設置して警察でモニターしています。銃声が聞こえたら警察官が駆け付けるのですが、時間がかかるし、道路が渋滞しているかもしれない。かけつけたところでそこに立ち入って大丈夫かどうかという不安もあります。ドローンで早く駆け付けることができ、安全かどうか確認できます」
「より安い」は、点検を引き合いにだし、「橋の点検は、人が作業をすると5,6人がかりで、終わるまでに1週間かかりますが、ドローンなら1回ですみ安上がりです」と説明した。
「よりスケーラブル」では、これらの特徴から普及しやすくなると説明したうえで「ドローンが完全に自動飛行して、より安全、より速く、より安く、を実現させるためには、100%自動である必要があります。そのためには、もうひとつ必要なものがあります。それはドローンが待機するためのネストです。ネストです。充電もできて、必要なときには人はネストまでいくことなく、スマホから指示を出せば、ドローンが自動的に出動し、作業をして、帰ってきます。たとえば、『毎朝、午後4時にここの写真を撮るように』と指示を出せば、それができます。たとえば建設現場の進捗をこれで確認できます」と説明。ネストの動画はすでに公開されていて、会場でも動画を投影したうえで、モス氏は「現在、最終の準備をしていて、来年3月ぐらいに発売する予定です」と述べた。
モス氏は講演のしめくくりとして、持参した実機のフライトをステージ上で披露。「興味があると思いますので、これから実際に飛ばしてみます」と切り出すと、会場から歓声があがった。スマホで操作すると、手のひらサイズのドローンがモーター音とともに浮き上がり、カメラで会場を見渡すようにとらえた。モス氏が「こんにちはー、手をふってください」とよびかけると、来場者がカメラに向かって手を振った。フライトの途中、「ここで、進め、と指示をしても、ドローンがぶつかる、と判断したら進みません」と解説。ステージを見渡したドローンが、モス氏の手に着陸すると、大きな拍手が上がった。
Skydioの機体は21日も、会場で展示される。
米Skydio社は、最新AIドローンの「Skydio 2」を10月2日にサイトで販売開始を発表すると、翌日には初期ロットを完売したと公表した。Skydio2はどう進化したのか。
Skydio 2は、旧モデルの半値にあたる$999(約11万円)の価格設定。60fpsに対応した4Kカメラを装備した。ジンバルは3軸になり電池の寿命は23分に伸びた。自律飛行の最高速度は36mp/h(約60km/h)になり、飛行範囲は3.5kmに広がった。旧モデルでは、スマートフォンのアプリでしか制御できなかったが、新たにSkydio Beaconと専用コントローラーも用意された。本体のデザインも大きく変わり、プロペラが折りたたみ式のコンパクトな設計になり、バッテリーが本体底に取り付けられるようになった。
Skydio 2は、一般的なドローンと異なり着陸用のアームなどがない。本体底の下部のバッテリー部分で胴体着陸するイメージだ。その分機体はコンパクトになり、専用ケースで持ち運べる。離陸時は、地上からも手からも容易に飛ばせる。
価格が安くなり、カメラの性能も飛行性能も向上したが、最大の特徴はAIを活用した障害物の回避と正確な被写体のトラッキングにある。
サイトに公開されているDJI Mavic 2との比較動画では、森林の中を爆走するバギーを追跡する2台のドローン動画から、Skydio 2がいかに的確に障害物を回避して飛行しているかがうかがえる。
Skydio 2は、6つの4Kカラーカメラにより200度の広角で45メガピクセルの画像をリアルタイムに収集している。その画像を毎秒1.3兆回の演算ができNVIDIA Jetson TX2で処理することで、障害物を的確に認識する。旧モデルでは13個のカメラを使っていたが、6つに減らすことでコスト削減も実現している。
Skydio 2のAIによる自律飛行の性能は、7月のティザー広告から少しずつ公開されていたが、その映像は優秀なドローンパイロットでも難しい撮影を可能にしている。
こうした映像の効果もあり、Skydio 2が10月2日にSkydio社のサイトで注文を開始すると、即日で初期ロットが完売し、翌3日には、追加ロットを増産するとの発表がFacebookに掲載された。
<参考訳:Skydio 2は最初の32時間で信じられないほどの注目を集めました。皆様からの関心とサポートに感謝しています。 最初の生産ロットは完売し、次の予約を開始しました。2020年1月に出荷が開始される予定です。次期ロットも数量が限られているため、入手を待っている場合は、早く予約してください。>
果たしてSkydio 2は、2020年のドローン市場における台風の目玉となるだろうか。日本上陸の予定はないが、発売が望まれる。
AIで自律飛行するドローンを開発している米Skydioが、次世代モデルで撮影したティザー動画を公開した。
Youtubeに公開された動画は、3つのシーンで構成されている。
最初は、ロードバイクが山林を爆走するシーン。ドローンは、木などの障害物を回避しながら巧みにロードバイクを追随する。移動するロードバイクをフォローするだけでなく、前面に回り込むテクニックなどはかなり高度だ。
続くシーンは南の島。水着姿の男性が砂浜を走る姿をドローンが追い、そのままドリーバックして島全体を映し出す。「リモコンを持ったおじさん」の姿はなく、ドローンが自律飛行していることを証明している。
最後のシーンは、丘を疾走するマウンテンバイク。被写体と一定の距離を保ちながら見事なフォロー撮影を行っている。
Skydioによれば「実際に飛行して障害物を回避できるドローンを構築することは、信じられないほどの挑戦です。実際に、私たちはそれを行うことができた唯一の会社です。今、私たちは、自律飛行ドローンができることと、そのビデオがどれほど信じられないほど映画的であるかについて、再びレベルを上げています」と話す。
果たして、これらの映像はどのように撮影されたのだろうか。その点についてSkydioは「まったく新しい画期的な飛行アルゴリズムを開発しました。これにより、ドローンはクラッシュを回避するだけではなく、さらに多くのことができるようになります。これまでは、専門のパイロットのみがキャプチャできたショットでした。でもこれからは、最も美しい映画のようなショットを得るために、どこでどのように飛ぶかを誰でも正確に決定できます」と説明している。
さらに「自律性の向上は、次のドローンSkydio 2を素晴らしいものにする多くの進歩の1つにすぎません。お見せするのが待ち遠しいです」と次世代モデルに言及。いずれ発表するとみられる次期モデルの魅力の一端に触れ、愛好者の期待を高めている。