ドローンやロボットの実演展示イベント「ロボテスEXPO 2021」が3月18日、ロボット開発実証拠点、福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市、浪江町)で始まった。リモートIDの実演、ドローンを離発着させることのできる特装車、ドローンからの消火活動など、37の企業、研究機関、自治体などの団体による展示、実演が行われている。開催は19日まで。
ロボテスEXPO2021は、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構(福島県福島市)が主催。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が後援で、またJapanDrone運営委員会が特別協力でそれぞれ運営に名を連ねている。日刊工業新聞社が事務局を務めている。事前登録した参加者が初日の午前中から各展示を見て回っていた。
会場ではそれぞれの取り組みが展示されている。自動車の特装や生産設備の設計開発を手がける新明工業株式会社(愛知県豊田市)は、車体のルーフにドローンが離発着できる昇降機能を持つポートを備えたワゴン車「Mobile Drone Station」のコンセプトモデルを出展、実演した。ドローン出発時にはルーフが開き、車内に格納されたドローンポートがせりあがり、待機していたドローンが離陸する。デモンストレーションでは20メートルほど飛んだあと着陸した。着陸もほぼ元の位置に着陸。ポートに備えたセンタリング機構で、機体をポートの中央に寄せると、ポートがルーフの中に納まっていった。一連の動きはよどみなくスムーズだった。
ドローンを格納した車内は、ドローンが待機したポートがあるほかは、ドローンの整備のための作業台、ポートを昇降させるための機構がコンパクトに整然まとめられていて、それ以外のスペースは作業にあてることも、荷物を積載させたりすることもできるなど、空間を有効活用するのに向いている。
新明工業自動車事業本部技術部の森野冨喜雄主査は、「特別に最先端のテクノロジーを使っているクルマというわけではありませんが、すでにある技術を組み合わせるとこんなことができるというご提案をしてみました。特装車を手がけてきたので、コンパクトにまとめることには力を入れました。これからユーザーさまのご意見も伺い、使い勝手のよいものにしてていきたいと考えています」と話す。
また、ポートから離陸したドローンはイームズロボティクス株式会社(福島県福島市)製。ドローンはポートにプリントされた二次元バーコードを識別する機能を備え、上空から二次元バーコードを読み取り高い精度で自動着陸できる。
このほかブルーイノベーション株式会社は、石油化学プラントを再現した試験用プラントで球体ガードに覆われた屋内用ドローン「ELIOS2」で暗く狭い場所でドローンを飛行させながら、壁面の傷の有無、ボルトのゆるみの有無、計器の読み取りなどを確認する点検作業を実演した。
株式会社J DRONE(東京)は、ラトビアのUAV Factory社製固定翼機「ペンギンC」の実機を専用カタパルト(発射台)などとともに展示。飛行時間は最大20時間であることや、飛行距離が100kmに及ぶことなどを説明した。捜索救助活動に役立つ光学カメラとナイトビジョンカメラの搭載が可能だ。災害対策や警備に役立てるよう今後、国や自治体に働きかける活動を本格化させるという。
東光鉄工株式会社は、風洞実験を行う「風洞棟」で、レスキュー機「TSVーRQ1」の台風実験を公開した。「TSVーRQ1」は災害対策を念頭に開発された耐風・防水・気密を追求した多目的ドローン。この日は公開することを優先させて風速5m/秒で空中静止をした。性能としては18m/秒に耐えられる設計になっており、同社UAV事業部セールスグループの高橋成典課長が「過酷な環境で使えるように試験を繰り返して開発した機体なので、防災や減災のお役に立ちたいと思っています」と話した。
屋内水槽塔では、株式会社スペースワン(福島県郡山市)が屋内水槽試験棟で水中ドローン「CHASING M2プロ」のデモンストレーション体験を実施した。注目の水中ドローンには多くの来場者がデモの様子を見守った。このほか株式会社テラ・ラボ(愛知県春日井市)が翼幅4メートルの固定翼機の飛行デモ、株式会社ロボデックス(横浜市)が住緯度ドローンの長時間飛行デモ、株式会社デンソー(愛知県刈谷市)がドローンを使った橋梁点検での不具合検知のデモなどを実施している。
ロボテスEXPO2021は19日まで開催している。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
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株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
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