衛星ブロードバンド「Starlink」を活用したモバイル通信のドローン配送が1月26日、埼玉県秩父市で始まった。場所はモバイル通信が困難な奥秩父・中津川のエリア。昨年(2022年)9月の土砂崩れ以降、通れなくなっている埼玉県道210号線の崩落現場を挟んで中津川の上流側に住む6世帯に、日用品などを毎週1回、Starlinkで通信環境を確保してドローンで定期配送する。ドローンは崩落場所の手前から向こう側の着陸地点まで2.8㎞を5~7分で飛ぶ。初日のこの日は7分で飛び、荷物をおろして帰還した。生活に不便をきたした住民を支える災害対応の重要なモデルケースになる。秩父市の北堀篤市長は「通信環境に恵まれない山間地域のみなさんに希望を与える日本初のハードル高きミッションに取り組んでいただいきました。期待大です」と述べた。当面う回路の凍結リスクがなくなる3月末まで行う予定だ。
取り組みは秩父市、株式会社ゼンリン(福岡県北九州市)が2022年10月25日に締結した「緊急物資輸送に関する連携協定」を軸に、KDDI株式会社(東京)、KDDIスマートドローン株式会社(東京)、株式会社エアロネクスト(東京)、生活協同組合コープみらい(埼玉県さいたま市)、株式会社ちちぶ観光機構(埼玉県秩父市)、ウエルシア薬局株式会社(東京)の6社が参加して「&(あんど)プロジェクト」を発足させ、遂行している。プロジェクト名には「地域に安堵を届ける」の願いを込めた。ほかにドローンへの電源供給などでサンセイ磯田建設株式会社(秩父市)が協力企業として名を連ね、秩父市大滝国民健康保険診療所(秩父市)も、オンライン診療や服薬指導に対応する。
ドローンは、現在通行止めになっている埼玉県道210号線の崩落場所の近くから離陸する。道路を落石から守る半トンネル状の覆い「大滑(おおなめ)ロックシェッド」の手前に離発着点と、Starlinkを通信網のバックホール回線として利用するau基地局を設置して環境を整えた。機体には重心制御技術を持つ株式会社エアロネクスト(東京)が自律ドローン開発の株式会社ACSL(東京)と共同開発し、日本各地で配送の実用に使われているAirtruckを採用。機体にKDDIスマートドローンが開発したドローン専用のノイズ耐性運航の高い通信モジュール「Corewing01」を搭載し、機体制御にKDDIスマートドローンの運航管理システムを用いることにした。
KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長は「林道が閉鎖の可能性もあり飛行先に作業員を配置しない前提で、離発着、荷下ろしを遠隔で行える機体、システムを使う必要がありました。またStarlink導入のau基地局設置で、山間部でも島嶼部でもモバイル通信の提供が可能な環境も整えました。被災地域に導入する初の事例です。被災地のみなさまの生活に安堵を届けたいという関係者のみなさまの思いにこたえる貢献したいという思いです」とあいさつした。
プロジェクトを先導してきたゼンリンの古屋貴雄執行役員も「秩父市とは2018年から協定を結んで取り組んできました。ドローン配送はそのひとつです。9月13日に崩落が起き、住民の日常生活の支援、安全対応として通信確保、安全に飛べるドローンの確保のために各社の参画を頂いた経緯があります。社会的意義の高い取り組みでもあると思います。社会に貢献すべく、しっかり進めて参ります」と述べた。
土砂が崩落した現場は、国道140号線から埼玉県道210号に分岐して約3.5㎞進んだ場所だ。中津川と急峻な斜面との間を縫うように走る道路だが、中津峡にさしかかる手前で土砂崩落があり、道路を約20mにわたってふさいだ。2022年9月13日に崩落が見つかって以降、県道は通行止めとなっている。通行止めの向こう側にいまも住み続けている6世帯の必需品は、大回りする林道が頼りだが「片道2時間半から3時間かかる」うえ、冬季は凍結し閉鎖される可能性がある。
冬になるまでは、地元の宅配業者など事業者が各社個別に大回りをして届けてきた。頭の下がる努力だが、冬の凍結期を乗り越え、さらに持続可能性を高めるために、代案の構築が急務だった事情がある。今回の取り組みでは、地元商店の配達品をひとまとめにする、という工程をはさむ。これにより各事業者がそれぞれで配送していた手間を軽減することができ、持続可能性が高まる。これは配送の枠を超え、注文を受けてから、注文者の手元に届くまでの一連の流れを集約、整理、最適化した取り組みでもあり、被災地の生活支援の側面と、それを支える側である事業者の支援との両面がある。
現地では土砂崩落の復旧作業が続いていた。道路に積もった土砂を取り除けばよいのだが、実は積もった土砂の上にさらに土砂が積み重なっている。現時点ではざっと1万8000立方メートルの土砂が積もっているとみられている。狭い場所での作業で選択肢も限られる。現在は、斜面の土砂崩落やその可能性のありそうな場所に網をかける作業が進んでいる。そのための工事用モノレールが建設され、作業員が昇っていく様子も見られた。網をかけ、落石被害の危険を減らす。その後、路面に近い土砂を撤去する。上から流れ落ちてくる土砂も撤去する。当面、片側一車線の開通を目指しており、完全復旧のめどはたっていない。
準備に奔走したゼンリンの深田雅之スマートシティ推進部長も「昨年9月13日の朝に秩父市から土砂崩落の連絡があり、その日の午後に現地に入りました。それからドローン配送の検討を進めてきました。当初12月に開始の目標をたてていましたが実際には想定していたより過酷な状況で、今日まで検討を続け、やっと先週、今週になって可能な状況ができました。私たちは2018年に秩父市と提携してドローン配送の取り組みをしてまいりました。2019年には国内2例目のレベル3と呼ばれる飛行も実現し、その後も経験を重ねてきました。今回の取り組みはこれまでの経験で蓄積したノウハウを毛州させました。『&プロジェクト』は『地域に安堵を』がコンセプト。あきらめずに中津川のドローン配送実現を推進し、安堵に貢献したい。安堵とは、安全、安全がすべて確保し終えたあとにたどり着くものだと思っています。冬を乗り越え、林道閉鎖のリスクがなくなる春が来るまでやりきります」と宣言した。
秩父市産業観光部産業支援課の笠井知洋主席主幹は「(中津川の)みなさんが寂しい思いをされてきました。ところが(中津川の)みなさんにドローン配送がはじまると説明をしてから明るい気持ちになっています。この『&プロジェクト』をほかの地域にも展開できるよう願っています」と切望した。関係者によると、中津川の人々に説明を開いたさい、ドローン配送が可能になった場合に注文したいものは何か、という話題をふると、はじめのうちは買い置きでだいぶ我慢できる、という様子だったみなさんが、そのうち「たばこはほしいかな」「ビールもいいのかな」などと嗜好品をあげるようになり、表情がやわらかくなったという。
発表会や登壇の様子を見守っていたエアロネクストの田路圭輔代表取締役CEOは「このプロジェクトに参加しているみなさんはあたたかくて本気のいい人ばかり。取り組むみなさんの思いが結実し、多くのみなさんに届けば素晴らしいと思っています。われわれも全力で貢献したいと思っています」と話した。
発表は以下の通り
秩父市、株式会社ゼンリン(以下、ゼンリン)、KDDI株式会社(以下、KDDI)、KDDIスマートドローン株式会社(以下、KDDIスマートドローン)は、株式会社エアロネクスト(以下、エアロネクスト)、生活協同組合コープみらい(以下、コープみらい)、株式会社ちちぶ観光機構(以下、ちちぶ観光機構)、ウエルシア薬局株式会社(以下、ウエルシア)らとともに、2023年1月26日から、土砂崩落の影響が続く秩父市中津川地内で、Starlinkを活用したモバイル通信のもと、ドローンによる物資の定期配送(以下、本取り組み)を開始します。
本取り組みは、2022年9月に土砂崩落が発生し、物流が寸断された秩父市中津川地内の地域住民への冬季期間の生活支援を目的としています。2022年10月25日に秩父市とゼンリンが締結した「緊急物資輸送に関する連携協定」をもとに、賛同企業6社が加わり「&(アンド)プロジェクト」として連携・実施します。 ドローン定期配送の実現により、中津川地内へ食品や日用品、医薬品などを短時間で配送することが可能となります。
現在、ドローンによる物資の配送先となる中津川地内へアクセスするには、一部の緊急車両などの通行のみ許可されている森林管理道金山志賀坂線(※1)を通行する必要がありますが、冬季は降雪や凍結のため通行が非常に困難となります。また、当該地域の地形の特性上、モバイル通信が不安定な環境であるため、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」を活用してauのモバイル通信環境を確保し、ドローンの遠隔自律飛行による物資の配送を実施します。食品や日用品など最大約5kgの物資をドローンで複数回配送し、中津川地内の住民のみなさまの冬季期間の暮らしに貢献します。
■ドローン定期配送の概要
■関係者・体制図
全国各地でドローン物流の実証・サービス実装を行うゼンリンが、プロジェクトの全体統括を担当し、技術面・配送面のノウハウを持つ各社と共に、体制を構築しました。
■配送フロー
(1)住民は、電話などで事前に商品を注文。
(2)コープみらい・ウエルシア秩父影森店、ファミリーマート道の駅大滝温泉店が、注文商品をピックアップ。
(3)各社トラックで道の駅大滝温泉まで配送。
(4)ちちぶ観光機構が、各社の注文品を個人ボックスごとに箱詰め。
(5)注文商品をドローン離陸地点まで配送。
(6)注文商品をドローンで配送。
(7)中津川地内の区長が注文商品を受け取り、各世帯まで商品を配送。
■「&プロジェクト」の命名に込めた想い
プロジェクト名には、“決して(A)あきらめずに、(N)中津川地内の(D)ドローン配送の実現を推進し、住民生活の安全・安心の確保を支援し、地域の安堵(AND)に貢献する”という想いを込めています。今回、このビジョンに賛同する8者が連携し取り組みをスタートすることになりました。
■Starlinkを活用したモバイル通信とドローン配送のシステム構成
中津川地内のドローン離発着地点には、操作者などの作業者を配置できず、また、崩落地手前の地点からは中津川地内の離発着地点を目視で確認することが出来ません。そのため、中津川地内までの飛行、機体の離発着、荷下ろしのすべてを遠隔操作で実施する必要があります。
そこで、本取り組みでは、以下の製品・サービスを組み合わせたシステムの構築を行いました。
1.Starlinkの活用
衛星ブロードバンドの「Starlink」を活用した、「どこでも、素早く、広い範囲」にauエリアを構築するソリューション「Satellite Mobile Link」により、映像を用いたドローンの遠隔制御も可能にするauのモバイル通信環境を確保しました。
2.スマートドローンツールズとAirTruckの活用
「スマートドローンツールズ」の運航管理システムと物流専用ドローン「AirTruck」を組み合わせることにより、遠隔制御による機体の飛行、離発着、荷下ろしを可能としました。
・スマートドローンツールズ
KDDIスマートドローンが開発した、ドローンの遠隔制御や自律飛行、映像のリアルタイム共有を可能とするシステム。
・AirTruck
エアロネクストがACSL社と共同開発し、ペイロード5kgに対応した日本発の量産型物流専用ドローン。物流用途に特化してゼロから開発した「より速く、より遠く、より安定した」機体。エアロネクストの空力特性を最適化する独自の機体構造設計技術4D GRAVITY®により、荷物の揺れを抑え安定した飛行を実現。遠隔操作による荷物の切り離し、荷物の上入れ下置きの機構など、オペレーション性にも優れる。日本経済新聞社主催の「2022年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞」を受賞。
■今後の展望
通信不感地域におけるドローン定期配送の運用ノウハウを蓄積し、中山間地域や災害時などの通信環境が不安定な状況においても、ドローン配送を実現可能とするソリューション構築を検討していきます。これにより、全国の様々な地域・環境下でのドローン配送の社会実装を目指します。
DJIは9月17日(日本時間)、小型ドローン「DJI Mini 5 Pro」を発表した。これに伴い日本国内でもセキド、システムファイブなどの代理店が発売を発表した。Miniシリーズで初めて1インチセンサーを搭載したほか、LiDARを活用した夜間・低照度環境での全方向障害物検知、225度のジンバル回転機構などの性能を備え愛好家の間でプロフェッショナル向けの映像制作機としても通用すると話題になっている。
DJI Mini 5 Pro最大の特徴は、1インチCMOSセンサーを採用した点だ。前モデルのMini 4 Proが1/1.3インチセンサーを搭載しており、新モデルで大幅にセンサーサイズを拡大したことになる。これにより暗所撮影や夜景撮影でのノイズ耐性が向上し、低照度環境下でもよりクリアな映像が撮影できる。有効画素数は50MPで、静止画撮影でより高精細な記録が可能となり、絞り値はf/1.8と明るくなった。
動画性能も強化された。4K/60fps HDRのほか、スローモーション撮影では4K/120fps、色表現では10ビット記録(H.265)、D-Log MやHLG撮影に対応する。しダイナミックレンジは最大14ストップで、映画のような映像表現の可能性が高まった。
LiDAR搭載の全方向障害物検知
またLiDARセンサーも備えた。小型機としては異例な装備だ。周囲を検知するために備えてあるビジョンセンサーの強力な援軍となり、暗所での障害物回避性能も大幅に高まった。特に夜景撮影時や屋内飛行などの低照度環境下での安全性が大幅に向上したといえる。
「Non-GNSS RTH(リターントゥホーム)」機能が備わり、GPS信号が不安定な環境でもカメラとセンサー情報を活用して離陸地点へ帰還できる。
ジンバルと撮影自由度の進化
ジンバルは従来の3軸に加えて最大225度のロール回転が可能となり、縦構図撮影を含む多彩なカメラワークが可能となった。SNSやショート動画で重視される縦動画を、クロップなしのフル解像度で撮影できる点はクリエイターにとって大きなメリットである。
さらに、ジンバルの回転機構を活かした新しいダイナミックショットモードも搭載されており、従来のMiniシリーズでは得られなかったユニークな映像表現を可能にしている。
飛行性能とバッテリーライフ
Mini 5 Proの飛行時間は標準バッテリーで最大36分、オプションの「インテリジェント フライトバッテリー Plus」を使用すると最大52分に伸びる。長時間の空撮が可能となり、フィールドでのバッテリー交換回数を減らせることにつながる。
耐風性能も強化され、最大風速約12m/sに対応する。海岸線や高原などの風の強い環境下での飛行の可能性を広げそうだ。
内蔵ストレージと伝送システム
本体には42GBの内蔵ストレージを備えている。このためmicroSDカードを挿入し忘れても一定量のデータを確実に記録できる。さらに新しいO4+伝送システムにより、最大20kmの映像伝送に対応する。電波干渉の多い都市部でもライブ映像が安定して届くことにつながり、操縦者の安心感を高めそうだ。
Mini 4 ProやAir 3Sとの比較
Mini 4 Proとの比較では、センサーサイズの拡大が最大の進化点である。Mini 4 Proも48MPの高画質を誇っていたが、Mini 5 Proは1インチセンサーにより低照度性能で明確な優位性を持つ。また、LiDARによる夜間障害物検知はMini 4 Proにはない新機能であり、安全性の面でも大きな差をつけた。
Air 3Sとの比較では、Air 3Sが二眼カメラ(広角・中望遠)を搭載するのに対し、Mini 5 Proは単眼ながらセンサーサイズで優位に立つ。重量規制の異なる国や地域での運用において、249g未満クラスを維持しながらハイエンド性能を実現している点はMini 5 Proの独自性だ。プロフェッショナル用途でも「軽量かつ高性能」という唯一無二のポジションを確立したといえる。
国内販売と価格
国内でもセキド、システムファイブが販売を発表した。希望小売価格は106,700円(税込)からで、付属コントローラーやバッテリー構成によって128,700円、150,480円、158,180円などのバリエーションが展開されている。すでに公式オンラインショップや代理店サイトで予約受付が始まっており、プロからホビーユーザーまで幅広い層の関心を集めている。
ドローンの運用と開発、AIによる画像解析技術開発などを手がける株式会社NTT e-Drone Technology(NTTイードローン、朝霞市<埼玉県>)は9月9日、「ELIOS 3活用術まる分かりイベント」をNTT中央研修センタ(東京)で開催し、スイスFlyability社製の球体ドローンELIOS3の性能や事例を紹介した。この中でイードローンは、下水道点検で取得した画像から損傷の進行具合を把握するサービスを2026年にも提供する方針を表明した。イベントでは操縦体験も行い、ELIOSシリーズの代理店であるブルーイノベーション株式会社(東京)も技術協力として参加した。
イードローンは7月23日にブルーイノベーションと販売パートナー契約を締結しており、ブルーイノベーションの扱うELIOS 3がイードローンの取り扱う製品群に並んだ。この日はイードローンが下水道点検に活用できるドローンとして、米Skydio社の産業用AIドローン、Skydio X10と大きさや特徴を比較しながらELIOS 3を紹介した。特定の製品に焦点をあてたイベントの中で、他の製品と具体名を表に出しながら比較するのは珍しく、利用者がメモを走らせていた。狭小空間ドローンとして知られる株式会社Liberaware(千葉市)との比較はなかったが、参加者からの質問に対し多角的な検討を進めていると回答する場面があり、3製品の比較が実現する可能性もある。
イードローンは会社紹介として、海外製やメーカーの製品を仕入れるだけでなくものづくりの側面も持つと説明。オペレーターを育成するひとづくり、地域活性化に役立たせる地域づくりとともに、事業の3本柱として紹介した。
取り扱っている製品として、農業で作物の生育状況や土壌のばらつきに合わせて、場所ごと肥料をまく量を調整する可変施肥支援機能を搭載した自社開発製品「AC102」や、Skydio、ANAFI、エアロセンスなどの機体を紹介。今後、米アセント社(Ascent Aerosystems)の全天候対応同軸型ドローン「SPIRIT」や250g未満の「Helius」などもラインナップに加える方針であると説明した。
ELIOS3の特徴については1mの幅、高さがあれば点検可能と、実質3mほどの空間で運用しているSkydio X10との使い分けの判断基準のひとつと紹介した。
イードローンのAIサービスについては、ドローンによるインフラ点検で、取得した画像から損傷の有無を検知する「eドローンAI」を今年4月にサービスを始めたと紹介。そのうえで、「コンクリートのひびは場所をマーキングしたうえで、幅、長さを算出します。鋼材のサビは面積を算出します。精度は95%です」と述べたうえで、鋼材のサビ検出で、国交省の技術カタログに掲載された初めての技術であることを紹介した。サービスとして低価格であり、ワンストップで運用できるなどのメリットにも言及した。
とくに、ワンストップについては、AIが検出するために画像に要求する仕様を満たしているかどうかが重要になる点を指摘。イードローンはドローンの撮影もし、その画像をAIで検出もできることを紹介し「安心してまるなげしてほしい」などとアピールした。
AI開発の今後の展開として、ひび、サビの検出パターンを拡大する方針だ。サビについては、面積に加え、深さを検出し鋼材の腐食の進行度を色でわかる技術を開発中だ。サビによる減肉が進めば鋼材の厚さが減って強度が落ちたり、構造物の危険度が高まったりするため、点検現場からは素早く検知できる技術の開発が求められている。イードローンはこの技術を2025年度後半にもリリースする計画だ。
さらにコンクリートでも、サビの幅、長さに加え、剥離、露筋、漏水、遊離石灰の検出技術を開発中だ。
こうしたAI解析の技術を今後、ELIOSとも組み合わせる方針で、下水道管路の壁面の損傷を検知する技術を2026年にもリリースできるよう開発を進めている。管理の壁面に使われているコンクリートは、橋梁のコンクリートと異なるため、橋梁点検で磨いた損傷検知技術が、そのまま下水道現場で転用できるとは言い切れない側面があるため、イードローンは下水道の管理者などに協力を求め、サンプルを集めてAIの再学習を進める方針だ。
イベントではこのあと、ELIOS3についてブルーイノベーションが説明した。機能、性能、特徴に加え、プラントの点検で作業時間を大幅に短縮した実例なども紹介した。また会場内で机の下などの狭い空間を飛ぶ様子を実演したり、参加者に操縦を体験してもらったりとELIOS3への理解を深めた。
イベントは2回行われ、あわせて100人の希望者が参加した。
湘南・茅ヶ崎(神奈川県)の海岸、湘南エリア唯一の海沿いのキャンプ場など、魅力的な見どころを満載した茅ヶ崎・柳島地区の、ドローンで空から撮影した映像をまじえたプロモーション動画が茅ヶ崎市の公式YouTubeチャンネルで公開された。「湘南Girlsコンテスト」の4代目グランプリ、大月海風さんら3人のモデルが地域の魅力を満喫していて、視聴者を誘いそうだ。
動画は2025年7月7日にオープンした道の駅「湘南ちがさき」の周辺の柳島地区の魅力を伝えていて、砂浜と岩場が美しく、江の島や富士山を眺められる柳島海岸、湘南エリア唯一の海沿いのキャンプ場「ちがさき柳島キャンプ場」、はらっぱ、親水池、テニスコートなどが整備された柳島しおさい公園、陸上競技場、ジョギングコース、スタンドなどが整備された柳島スポーツ公園が紹介されている。
動画の中では柳島海岸の砂浜が上空から波打ち際を見下ろしている映像や、ちがさき柳島キャンプ場が海沿いにあることを象徴するように海岸と並んでうつる場面が収録されている。空撮ではDJIのMavic 3 Proが使われた。
動画に登場する3人のうち、2人は湘南地域のPRを目的に開催されている「湘南Girlsコンテスト」の入賞者。大月海風さんはこの夏決定した4代目グランプリで、2024年に決定した3代目特別賞受賞の鈴木桜子さん、さらに「鎌倉きものイメージモデルコンテスト」で特別賞を受賞した嘉山茜さんと3人で動画に彩りを添えている。
湘南Girlsコンテストは、ライブ配信事業の株式会社マシェバラ(東京)のほかJCOM湘南・鎌倉、レディオ湘南(藤沢エフエム放送株式会社、藤沢市)などが2022年にスタートさせた地域の活性化を担うキャラクターの選抜コンテストで、入賞者の中からPR動画に出演することが恒例だ。DroneTribuneも開催に参画している。
また今回、柳島地区のプロモーション動画に出演した3人は「道の駅・湘南ちがさき」のプロモーション動画にも出演している。
AAM(アドヴァンスト・エア・モビリティ)運航事業を手掛け、大阪・関西万博の運航事業者にも名を連ねる株式会社Soracle(ソラクル、東京)が、2027年中にも大阪・関西エリアで旅客運航を目指す計画を明らかにした。9月10日に大阪府、大阪市と連携協定を結んでおり、その席で計画を明らかにした。米Archer Aviation(アーチャー・アヴィエーション)のパイロット1人を含めた5人乗りのeVTOL型AAM、Midnight(ミッドナイト)を使うことを想定しているという。
Soracleは2026年にも大阪府内で実証飛行を実施し、必要な審査をふまえ27年にも大阪ベイエリアでの遊覧飛行などを始める。周回して出発点に戻る運航のほか、離陸地点から別の場所に移動する二地点間飛行も想定する。
大阪府と大阪市との連携協定は、ソラクルの事業環境を整えることや、運航網整備に必要なインフラ整備に向けた調査、制度の整備、関連ビジネスの展開支援などの事業環境整備に向けた取り組みを進める。締結式では太田幸宏CEOが、大阪に来れば全国に先駆けて空飛ぶクルマに乗ることができる未来を実現し、中長期的には関西・瀬戸内海地点を結ぶ観光体験を創ると抱負を述べた。
吉村洋文知事は「さまざまな課題はあろうかと思いますが、Soracleさんと協力し、大阪府・市も全面的に当事者として取り組むことで、2027年に商用運航を、そして大阪に来れば空飛ぶクルマに乗ることができるということをめざしていきたいと思います。大阪・関西から、空の移動革命を実現していきましょう」と述べた。
Soracleの公式発表はこちらにあります
スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
参考:GMO熊谷氏、HEXA搭乗し飛行を公開
参考:GMO熊谷氏にHEXA公開搭乗の理由を聞く
参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始
ドローンショーの株式会社レッドクリフ(東京)が、フィンテックのフリー株式会社(freee株式会社)の活用事例に登場した。レッドクリフが搭乗したのはfreeeが提供しているプロダクト「freee販売」の活用事例で、ビジネスの急拡大に伴う業務管理の効率化に役立てていることが紹介されている。取引先の業務効率化をアピールすることが多いドローン事業者にとって、freeeの活用事例はモデルになりそうだ。またドローン事業者が他の事業者の活用事例に取り上げられることも今後、増えそうだ。
フリーが公表したレッドクリフの活用事例はこちらからみられる。
それによると、事業の急拡大で案件別の収支管理や、全体の把握、属人依存の管理に限界が見えてきた中で、それまでスプレッドシートに頼ってきた業務フローを見直しに着手した。freee販売の導入で、受発注データと原価情報を集約し案件ごとの収支把握が容易になり、部門を越えたデータ共有や、各部門がそれぞれの業務に集中できる態勢が整ったという。チェック漏れリスクの軽減と業務負担の軽減が同時に果たせ、人件費、立替経費、ドローンの減価償却費を案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が実現し、経営判断の精度向上にも繋がっている。
結果として、IPO準備に不可欠な「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」をデータに基づいて説明できる環境ができたという。
ドローンの事業者も、取引先の効率化をソリューションとしてアピールする事例が多く、活用事例でも導入先の作業の時間短縮効果などが掲載されることが多い。一方で、導入先にとっては、その事例が解決したい課題の一部にすぎないことや、導入による新たな負担などが発生するケースもあり、活用事例のアピールの方法について、各者が試行錯誤している。
freee販売の活用事例では、汎用性の高い困りごとを取り上げていて、freee販売の商品性のアピールになるとともに、多くの企業にそのアピールの手法そのものが参考になりそうだ。