独自の創意工夫で移住、定住を推進し、成果をあげている境町(茨城県)は4月5日、フードデリバリー大手の株式会社出前館(東京)、ドローン技術開発の株式会社エアロネクスト(東京)と連携協定を締結した。この日は出前館のサイト上に、境町の商店が扱う食品、日用品などの商品を集約できるバーチャルショップ「SkyHub Delivery境町店」が開店し、配達エリアにいる利用者がアプリや電話で注文すると、ドローンやトラックを使い分けて効率よく注文の品物が届けられるサービスを受けられるようになった。この日は協定式と出発式が行われ境町の橋本正裕町長が最初の注文を実演し、出前館のロゴがついたエアロネクストの物流ドローン、AirTruckが地元で焼かれたピザを乗せて離陸した。境町にとっては町民生活の利便性向上を期待する取り組みで、境町は地元の商工会と連携して商店に加盟や商品登録を呼び掛けるほか、クーポンの活用など利用促進を図る方針だ。ITツールやドローンに不慣れな利用者が注文をしぶる“注文ハードル”の引き下げへの効果にも期待が寄せられている。
協定式と出発式が行われた境町は、鉄道の駅がないことによる利便性の不足を、子育て補助、英語教育支援、自動運転バス運航など独自の創意工夫で補う意欲的な政策を打ち出していることで全国的に知られる。買い物に不便を感じる買い物弱者の増加を抑えるため、ドローンを使った配送の導入にも早くから前向きで、この日の協定で、その具体化の第一歩に踏み切った。
デジタルツールには初心者や高齢者が敬遠しがちと言われがちなことから、いわゆる「注文ハードル」を乗り越える期待も寄せられる。その中で今回の協定式と出発式は関係者が多く出席するなどにぎわいが演出され、初めての利用者が興味をひくとみられる。
境町役場内で行われた協定式では境町の橋本正裕町長、出前館の藤井英雄代表取締役社長、エアロネクストCEOで同社の物流子会社、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)代表取締役を兼ねる田路圭輔氏が協定書に署名した。この様子を、境町幹部職員、町議会、境町商工会、昨年(2022年)10月3日に境町、エアロネクストとともに「ドローン、自動運転バスを含む次世代高度技術の活用に関する協定」に署名したセイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)の河合秀治執行役員、BOLDLY株式会社(東京)の星野達哉氏、株式会社セネック(東京)の和歌良幸副社長も見守るなど、会場には関係者が集結した。
協定式後の出発式は、境町役場から約2キロの道のりの旧ゲートボール場で行われ、協定式参加者に加え、来賓、地域関係者を含め100人を超える参加者が新サービスの門出を祝った。会場には式典用のテント、ランディングパット、神事用の八本足などの神具も設営された。式典では橋本町長をはじめ関係者のあいさつのほか、永岡桂子文部科学相、若宮健嗣前万博相の祝電が披露され彩を添えた。ドローンの安全祈願の神事が地元香取神社の神職も執り行われ、参加者の期待を高めた。
橋本町長は式典の最中、促されて着席のままタブレット操作して出前館での注文を実演すると、これを合図に地元のピザ店で焼かれたピザがトラックで運ばれ、容器ごとドローンに積まれた。離陸準備が整ったところで、協定式に調印した橋本町長、出前館の藤井代表、エアロネクストの田路CEOがボタンを押すセレモニーを行い、出前館のロゴの入ったドローン、AirTruskが離陸した。
境町の橋本町長は式典で「協定は、ドローンを使った配送サービスを取り入れることで、日々の生活に困らないようにするためです。かつて栄えていた場所で人口が減り、高齢化が進み、不便だから移ると言って他の自治体へ引っ越してしまう状況も出ています。今回の協定で、さまざまな物が届くようになります。課題を少しずつ解決し、住み続けたい町づくりを目指していきます」と述べた。子育て、給食費補助、英語教育、自動運転バス、効果的なふるさと納税など独創的な政策を次々と牛出してきた橋本町長の発言で、この事業は「住み続けたい町」の一端を担うことになった。
エアロネクストの田路CEOは、「今回の取り組みのコンセプトは“町まるごと出前館”で、このような取り組みは今回が日本で初めてです。これまで出前館の配送サービスは大都市中心でしたが、これからは校外の社会課題解決のサービスにもなります。今回の取り組みで地域の課題解決に役に立つとともに、出前館のサービス空白地域の解消に進んで参ります。境町が運航している自動運転バスとの連携も検討しています。ドローンの飛行も現在のレベル3ですが、レベル4への準備も進めています」と述べた。
出前館の藤井社長は「市街地以外もカバーすることで、高齢者や買い物難民に生活必需品を届けていきたいと考えています」と述べた。藤井社長は、機体価格が下がれば、郊外型ビジネスでも採算性が展墓できる可能性があると見込む。一方で、初心者や高齢者がIT機器を敬遠することなどが理由で利用をしぶる「注文ハードル」を課題にあげ、今後、引き下げへの対応を模索する考えだ。一問一答は以下の通り。
Q 今回は校外での事業となるが、境町での事業の意義は
藤井社長 「コストの中では機体金額が占める比率が大きいので、電気自動車が出たころのリチウム電池に似ている状況かと思います。当初は高かったものが下がってきました。機体の金額も下がれば運航コストが下がります。そこはエアロネウストさんが試算しています。現状では配送は人海戦術です。自転車やバイクで運んで頂き、お1人あたる500円とか600円とかをお支払いしているのが現状ですが、ドローンだと機体の金額を含めても100円とか200円とかになることが見込めます。時代が進めばコスト効率は良くなると思います。それ以外に規制緩和も含めて、われわれとして取り組まないといけないことは多くあります。市街地では自動配送ロボットの利用などが検討要素になるかと考えています」
Q 幅広い選択肢から選ぶ基準は
藤井社長 「まずは安全性。あとは考えられるハードルが低いものをテストして決めて行くことになると思います」
Q 定着には利用者が実際に注文するかどうかが重要と聞きます
藤井社長 「これも今回を含めてテストしてみていくことになります。今回、配送時間帯を一日に2回に設定している理由には、そういった意味もあります。今後クーポンを使って利用者が使いやすくなるかどうかも見ていきたい。スマートフォンに慣れていない地域もあって、最初の注文ハードルさえ下げていけば、その後も注文して頂けるのではないかということは、いままでの実験で実証できている部分があります」
Q 境町の取り組みの印象は
藤井社長 「橋本町長のリーダーシップで、商工会も含め幅広い団体の方にご参加頂けました。加盟店リストにある地元の名店は、自治体が入っていなければなかったでしょう。私たちの営業だけでは難しかったと思います。つながりの強い地域では特に自治体と連携する強みを感じます。今回も橋本町長がきっかけを作ってくれたと聞いています。境町での取り組みは、ここでスタートさせたことをある程度パッケージ化して、他の地域にも展開していければよいかなと考えております。他地域に導入するさいのスピードもあがると思います」
Q 出前館のサービスとしてラインナップに入る可能性もある?
藤井社長 「そうですね。私たちがこれまでサービスエリアにできなかったところをエリアにできる、ということが、ビジネスの観点ではあります。コロナをこえて一過性のサービスではダメだです。わたしたちのサービスが継続的に拡大できるようにするには、ユーザー、自治体、事業者のみなさまに、選ばれて愛されるサービスでないといけないと本質的には思っています。その中で社会課題解決にわれわれのサービスが寄与することはすごく重要だと思います。とくに自治体さまとは、その地域の課題解決になるソリューションの一部として、われわれのパッケージをお届けできたらいいなと考えています」
ドローン配送をトラックや鉄道など既存交通手段と組み合わせて、効率性、利便性の向上と環境負荷の低減を図る「新スマート物流」の実証実験が、群馬県安中市で行われた。市内の3カ所にドローンの離着陸地点を設置し、ドローンが3地点を巡回し、荷物を届けては受け取り、次の目的地に届けた。野菜を届けた先では医薬品を積み込むなど空荷にならない配送の効果を検証した。あわせて群馬県外の漁港で水揚げされたアンコウをタクシー、新幹線とリレーして、調理施設のある拠点に運び、調理した弁当をドローンで届ける配送も試した。ひとつの実験としては多くの要素をぎゅっと詰め込んでおり、関係者は「目標としていたことをすべて遂行できた」と話した。今後、成果や課題を洗い出す。
実験は安中市、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、株式会社エアロネクスト(東京)が実施。実験の拠点会場となった旧九十九小学校の講堂には「安中市ドローン配送実証実験出発式~10 年後、 20 年後の未来の為に」と書かれた横断幕が掲げられ、あいさつに立った安中市の岩井均市長らが実験の趣旨を強調した。3者は2022年 10 月 4 日にドローンを含む次世代高度技術活用で地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた包括連携協定を結んでいる。この実験は協定に基づく取り組みの第一弾だ。国土交通省の「CO2 削減に資する無人航空機等を活用した配送実用化推進調査事業」を活用した。
地域自主組織や地元事業者と連携し、地元の課題を解決することが特徴で、採算性の検討を軸に、貨客混載、オンライン診療の有効性を検証した。
実施したのは2月8日、安中市内の廃校となった旧・九十九(つくも)小学校、碓氷病院、ゴルフ場THE RAYSUMを結ぶルートを設定して行われた。旧九十九小学校を配送拠点みたて、周辺で収穫された野菜を積み、ゴルフ場に配送。野菜を届けて空いた荷物室にゴルフ場のクラブハウスにあるキッチンで調理した弁当を積んで、碓氷病院に届けた。碓氷病院では届けられた弁当を自転車で近所のスーパーに運んだ。また碓氷病院で弁当をおろして空いた荷室に、病院が院内薬局で処方した医薬品を乗せ、遠隔診療をした患者の待つ旧九十九小まで届けた。
なお、ゴルフ場THE RAISUMには、九十九小学校から運ばれた野菜とは別に、新潟県糸魚川市から、地元特産のアンコウも届いた。アンコウは糸魚川で水揚げされ鮮魚店で並んでいたもので、スタッフが地元のタクシーを使ってJR糸魚川駅までお運び、そこから安中榛名駅まで新幹線で運び、駅からゴルフ場まではセイノーグループが運んだ。ゴルフ場に届いたアンコウは、ゴルフ場内のクラブハウスのシェフがキッチンで調理して唐揚げにして、弁当おかずに加わった。
また、ゴルフ場では、クラブハウス前から、場内のあずまやまでできたてのラーメンを運ぶ実験も実施した。ラーメンはラップをかけて容器にいれて、ドローンに納められた。あずまやに届けられたラーメンは安中市の岩井均市長が試食し、「ラーメンはあんかけのサンマーメンで、あたたかくできたてそのものでした」と感想を述べた。
エアロネクストの田路圭輔CEOは「住民の利便性向上にどの程度貢献できるのかをこれからも注視していきたい。また地域の活性化には、CO2削減など環境負荷の低減を伴うことが重要だと思っていて、こちらも地道に取り組みたい」と話した。
セイノーホールディングスの河合秀治執行役員は、ドローンが到着する様子を幼稚園児たちが見物していたときの様子について「あの子たちが大きくなったときに、ドローン配送が職業として成り立っている可能性があり、それを選ぶ子もいるかもしれないと想像していた。実際に見ることも、実証実験を行う意味のひとつだと思う」と目を細めた。
ドローン配送と陸上輸送を融合させた「新スマート物流Skyhub」と呼ばれる物流サービスの運用が千葉県勝浦市でも始まった。1月18日、JR外房線上総興津(かずさおきつ)駅前に、SkyHub(スカイハブ)の拠点となる「ドローンデポ勝浦市興津」がオープンし、地元商店関係者、事業者らがかけつけた。当面はカタログに載せた商品の注文を受け、環境配慮型のEVバンで配送するサービスを周辺住民に提供する。準備中のECサイトや、ドローン配送の寛容が整えば、早ければ2月にもSkyHubの融合サービスがはじまる。勝浦でのSkyhubには地元商店街組織が積極的に関わった経緯があり、地元商店街のにぎわいの創出に期待が寄せられる。Skyhubの運用は、山梨・小菅村、北海道・上士幌町、福井・敦賀市に続き4例目となる。
Skyhubは、株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)が中心となって構築し、実装を進めてきた、ドローン配送と陸上輸送を融合させ、物流の諸課題の解決を図る取り組みだ。導入地域の特性や事情にあわせて地域に役立つよう調整されている特徴がある。勝浦市での取り組みは、勝浦市商店街活性化推進協議会の「新たな配送サービス構築による商店街等にぎわい創出事業」から、エアロネクストの子会社、NEXT DELIVERY(山梨県)が受託して進められた経緯があり、勝浦市商店街活性化推進協議会の目指す「商店街等ECモールサイト構築・運営」がベースになっている。ECサイトは現在構築中で、サービス開始は印刷したカタログの商品を選ぶ形でスタートした。
取り扱い商品は初日時点500品目。コンビニ、文具店、飲食店など地元商店街に参加する7店が参加し、Skyhubを通じた商品提供に賛同した。商品の一覧を掲載したカタログが対象エリアに配布されていて、注文が入ると加盟店に連絡をするとともに、待機していたEVバンでピックアップし、注文主に届ける。構築中のサイトが完成すると、参加店舗や掲載商品の拡大が期待される。利用者にはタブレット経由での注文が期待されるが、当面は電話、LINEなどの注文も併用する。タブレット利用促進のため、地域住民に使い方を教える教室を開く構想もある。
またドローンの発着場「ドローンスタンド」も整備中だ。現在、域内の「大沢地区」に届け先となるドローンスタンドを1か所確保している。離発着上の拡大で航路を整備できれば、小菅村のようなドローンの配送の組み合わせも可能になる。
1月18日には、集会所でサービス開始の記念式典とドローンの離陸場面のお披露目が行われた。商店街の活性化に取り組み、今回のSkyhub実装の旗を振った勝浦市商店街活性化推進協議会の小髙伸太会長(勝浦市商工会会長)や、照川由美子勝浦市長、セイノーHD執行役員、NEXT DELIVERY取締役の河合秀治氏、エアロネクスト執行役員でNEXT DELIVERY取締役の伊東奈津子氏、ドローンの運航管理システムなどを提供するKDDIスマートドローン株式会社代表取締役社長の博野雅文氏、EVバンや住友商事航空事業開発部長の多々良一郎氏ら関係者が謝辞、祝辞、抱負を述べた。概要説明ではオンデマンド配送、買物代行、フードデリバリーなどのサービスを展開、拡大しつつ、健康、防犯・防災などへの転用を見据え、商店街のにぎわい創出、域内物流の効率化・最適化、地域のカーボンユートラル推進などを図る展望が披露された。
勝浦市では昨年(2022年)2月11日、ご当地グルメ「勝浦タンタンメン」を集会所から1.7㎞離れた市内の別荘地「ミレーニア勝浦」まで運ぶ実証実験を行って以降、関係者と地元で実装に向けた課題の洗い出しや検証を進めてきた。
地元商店関係者は「できるテクノロジーがあり、それを使える機会がある。デジタルが苦手だといった声もあるし、不安や課題もあるが、やってみて経験を積むことに価値があると思うし、地元ではそういう声が高まっている。せっかく取り組む以上、より多くの賛同を得て、取り組みの輪を広げたい」と話している。
昨年(2022年)の勝浦でのタンタンメン配送の様子はこちら
自動運転バスを運航させている茨城県境町が、自動運転バス、自動航行の性能を備えるドローン、トラックなど既存の物流手段を組み合わせて、使い勝手のいい物流サービスを実現する取り組みが11月にも始まることになった。取り組みを進める境町、株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、BOLDLY株式会社(東京)、株式会社セネック(東京)は10月3日、境町役場で連携協定を結んだ。境町の橋本正裕町長は締結式の中で、「公共交通が脆弱でも住み続けられる町をつくりたい」と意気込みを語った。式典後は焼き立てパンを自動運転バスとドローンでリレー輸送して役場まで運んだり、小学生の待つ学校に町の名産のせんべいを運んだりするなど配送を実演した。今後、実証を重ね、11月にサービスを開始する。サービス開始にあたっては、対象エリアの住民から希望者を募り、利用体験のフィードバックをサービスの品質向上に生かす。2023年度中にもいわゆる「レベル4」の飛行を含めた配送サービスの実現を目指す。
境町では2020年以降、自動運転バスの定時運行を導入し町民の移動手段として定着している。この自動運転バスを支えている遠隔管理システム「Dispatcher」に、ドローンの管理も加えることで、無人運転バス、ドローンの両方の遠隔管理を可能にする。さらにトラックなど既存の物流手段も有効に組み合わせて最適化し、無人バス、ドローン、トラックの連携させた境町版の新スマート物流構築を目指す。
利用の対象は町内全域の住民で、複数の町内の商店が参加を表明している。利用者はスマートフォンなどで対象の食料、日用品などを注文をすると早ければ30分以内で届くことも可能になる。政府の進める「デジタル田園都市国家構想」対象事業だ。
連携協定は、次世代高度技術の活用を通じて、観光や産業振興、物流課題の解決、地域防災への貢献、地域の雇用拡大の実現を図ることにしている。荷物を集積し、ドローンが集荷する「ドローンデポ」は整備をはじめている。
境町に導入している自動運転バスは貨客混載を実施し、町内の住民向けの商品を2か所の連携拠点まで運ぶ。ドローンは、自動運転バスから積み替えられた荷物を載せて届け先まで飛行する。なお市街地への届け出は従来通りトラックが担い、市街地の周辺の農村部への配送をドローンが担うなどの役割分担を想定している。
連携協定の締結式で境町の橋本正裕町長は、「境町は公共交通が脆弱なため、動けるうちに嫁いだ娘の近くに引っ越す、といった人口減少が起きています。そんな困りごとをなくしたいというのがこの連携協定の目的です。一人暮らしでも生活に困らない町にしたい。困っている人を助けて、住み続けられる町にしたい。好きな町に住み続け環境を提供したい」と述べた。
ドローンはエアロネクストが株式会社ACSL(東京)などと共同開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」を使う。荷物を機体内部に格納するため飛行時に荷物が空気抵抗の障害にならない設計を採用するなど、物流に特化した工夫や機構を搭載している。ドローンと自動運転バスの運行管理はBOLDLYが開発したシステム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を使う。自動運転バス用の遠隔管理システムとしてスタートしたシステムで、9月にドローンの監視もする「Dispatcher for Drone」を開発したことで一元管理が可能になった。
またサービス開始にあたって、利用を想定している農村部の住民に参加してもらう会員制度をつくる。利用体験をフィードバックしてもらい、より利便性の高いサービスに品質を向上させていく仕組みにする計画だ。
締結式後には、デモンストレーションを実施。役場に近い町立境町小学校では、全校児童が見守る中、ドローンが飛来。自動は上空にドローンが姿を表すと、立ち上がって指をさすなど「すごい、すごい」と笑顔で歓迎した。また、自動運転バスとドローンとの連携の実演も実施。自動運転バスとドローンとが荷物をリレーするランデブーポイントとなる「道の駅さかい」で、自動運転バスが運んできたパンを、係員がドローンに搭載した。ドローンは道の駅から境町役場に隣接する水害避難タワーまで届けると、待機していた橋本町長がそれを受け取り、味を満喫した。
同日発表されたプレスリリースは次の通り
茨城県の境町(町長:橋本正裕)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路圭輔、以下「エアロネクスト」)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下「セイノーHD」)、BOLDLY 株式会社(ボードリー、本社:東京都港区、代表取締役社⻑兼CEO:佐治友基、以下「BOLDLY」)および株式会社セネック(本社:東京都新宿区、代表取締役:三浦義幸、以下「セネック」)は、2022 年 10 月に、ドローンや境町で定常運行する自動運転バスを、トラックなどの既存物流と組み合わせて物流を最適化する「新スマート物流」の実用化に向けた実証を開始し、2023 年度中をめどに、日本初となる市街地でのレベル4のドローン配送サービスの実装を目指します。5者は、この取り組みを進めるため、2022年10月3日に連携協定を締結しました。
今回の取り組みでは、境町の住民がスマホアプリで注文したスーパーの日用品や飲食店の料理などを、自律飛行するドローンや自動運転バス、トラックなどを組み合わせて効率的に配送する物流システムの構築を目指し、法制度に沿ってドローンの飛行区域を段階的に拡大しながら実証を進めます。まずは、2022年10月以降に、境町でドローンを2台導入し、充電などが可能なドローンスタンド®(3カ所・予定)および荷物の集約拠点となるドローンデポ®(1カ所)を整備した上で、無人地帯での目視外飛行や市街地での目視内飛行の実証を行い、住民の理解促進やルートの検討を進めます。
2022 年末に予定されているドローンのレベル 4 飛行解禁以降は、無人地帯と市街地でドローンの目視外飛行の実用化に向けた実証を行います。ドローンが飛行できないエリアでは、自動運転バスやトラックを活用して配送を行います。テクノロジーを活用して物流を最適化することで、将来的には、注文から30分以内に商品を受け取れる物流システムの構築を目指します。
日本では、過疎化や地方における公共交通の維持、物流業界の人手不足などが課題となっています。境町は、地方が抱える社会課題の解決に向けて、住民や観光客が移動手段として活用できる自動運転バスを導入して公共交通の維持や地域経済の活性化を推進するなど、積極的な取り組みを進めており、2022年度の補正予算において、ドローンの研究開発およびオーダーメードを行う拠点施設の建設(約4億円)を決定しました。このたび 5者が連携することで、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムを構築し、物流業界の課題解決やCO2削減を図るとともに住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指します。
なお、ドローンおよび自動運転バスの運行管理は、BOLDLYが開発した運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」で行います。BOLDLYが2022年9月に開発した「Dispatcher」のドローン向け機能(「Dispatcher for Drone」)により、「Dispatcher」を自動運転バスとドローンの両方に接続して一元的に管理することが可能になります。これにより、運行管理業務の効率化やコスト削減が実現できる他、将来的には、関連するデータ活用なども期待できます。「Dispatcher」は、2020年11月の境町の自動運転バス導入時から利用されており、境町には自動運転バスの運行に必要なシステムおよびオペレーション体制が整っています。これを土台に、スムーズにレベル4のドローン配送サービスを実装することを目指します。また、今後は、全国の他の自治体と連携して、境町以外の地域を飛行するドローンの遠隔監視を行うことも視野に入れ、取り組みを推進します。
この取り組みは、内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)の事業に採択されています。
■各者の役割
・境町:新スマート物流を含むデジタル田園都市国家構想事業の事業主体、企画統括
・エアロネクスト:境町での新スマート物流実装に向けた各種取り組みの全体統括、物流専用ドローン「AirTruck」の提供
・セイノーホールディングス:共同配送モデルの構築、自治体や各事業者との調整、配送ノウハウの提供
・BOLDLY:「Dispatcher」の提供、境町におけるデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)事業の全体統括
・セネック:境町に設置した遠隔監視センターでの自動運転バスおよびドローンの運行管理
■使用するドローンについて
エアロネクストが物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量(ペイロード)5kg、最大飛行距離 20kmの物流専用ドローン「AirTruck」*を使用します。
物流専用ドローン「AirTruck」エアロネクストが株式会社 ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY®により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティー、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機です。試作機は日本各地の実証実験で飛行し日本 No.1(エアロネクスト調べ、2022 年9月時点)の飛行実績を持ちます。
北海道東川町で8月末、カレーや野菜を空送と陸送とを融合させて目的地に届ける実証実験が行われた。東川町で将来見込まれる買い物困難者対策が目的で、東川町、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、株式会社電通北海道(北海道札幌市)、株式会社エアロネクスト(東京都)、エアロネクストの子会社である株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)が実施した。東川町、セイノーHD、電通北海道、エアロネクストの4社は8月23日に、「オフィシャルパートナー協定」を締結しており、今回の実験はその第1弾だ。
実証実験は8月29日、8月30日に行われた。東川町の4カ所のコミュニティセンターと2件の個人宅のあわせて6カ所が届け先。仮設のドローンデポを町内の「いきいき農園管理棟」設置し、品物をいったん集めたうえ、そこから目的地に届けた。西部地区コミュニティセンターの仮設ドローンスタンドへは、地元の朝に採った野菜の詰め合わせが運ばれたほか、を第1地区コミュニティセンターには地域のカレー屋さんの人気メニューであるカレーとチャイを届けた。
発表は以下の通り
東川町(町長:松岡市郎)と、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下セイノーHD)、株式会社電通北海道(本社:北海道札幌市、代表取締役 社長執行役員:沖津充男、以下電通北海道)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路圭輔、以下エアロネクスト) 、株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路圭輔、以下NEXT DELIVERY)は、8月29日(月)~30日(火)に東川町内において、将来的な「買い物困難者問題」を解決に向けた「ドローンを活用した買い物配送」実証実験を実施し、8月30日(火)に報道関係者に公開しました。
本実証実験は、8 月23 日に東川町、セイノーHD、電通北海道、エアロネクストの4者が締結した東川町オフィシャルパートナー協定による第一弾の取組みとして、東川町の将来の課題である「買い物困難者問題」の解決を目指して、セイノーHDとエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流”SkyHubのしくみと技術を活用し、ドローン配送サービス事業を主体とするエアロネクストの子会社、NEXT DELIVERYが行いました。
【実証実験概要】
1.背景と目的
東川町は総人口8,520人(2022年7月28日現在)で、過疎ではない「“適疎”な暮らし」を推進し、1950年の10,754 人をピークに年々減少し、1994年に一時7,000 人を切っていた人口が、2016年に40年振りに 8,000人を回復するなど、人口減少の時代において、全国的にも珍しい人口が増え続けている町です。
そんな東川町も、この10年で高齢化率が約5ポイント増加し、現在は32.8%となって おり、日本全国の平均である 28.1%を上回っている状況にあります。高齢者によって今後、町として 課題となってくる「買い物困難者問題」を解決すべく、町内の流通店舗、道の駅、飲食事業者と連携し、東川町の「適疎な暮らし」をより豊かにする可能性を秘めた、新スマート物流 SkyHubのしくみと技術を活用した「買い物配送実証実験」を、今後検討していくサービス実装に向けた課題の洗い出し等を目的として実施いたしました。
2.実施内容
中心部から少し離れた流通店舗や飲食店のあまり無いエリアに住む方への買物支援を想定し、住民が注文した地元スーパーの地元農家の朝採れ新鮮野菜の詰め合わせセットを、仮設のドローンデポ(いきいき農園管理棟)から西部地区コミュニティセンターの仮設ドローンスタンドまでエアロネクストが開発した物流専用ドローンAirTruckでお届けしました。(往復飛行 距離約6.9km、約23分)
また、フードデリバリーサービスの無い東川町において、注文した飲食物がドローンによって注文者のもとまですぐ届く、という新しいフードデリバリーサービスを想定し、地元カレー屋さんの人気カレーとチャイを第1地区コミュニティセンターでヨガ教室を受講していた生徒の皆さんに、物流専用ドローン AirTruck でお届けしました。(片道飛行距離約11.1㎞、約20分)
また、上記以外にも、町民個宅2箇所、第2地区コミュニティセンター、第3地区コミュニティセンターの合計6箇所の複数ルートに同一拠点からのドローン配送を二日間で実施いたしました。これは “日本初”(自社調べ)の取組みとなります。
(本動画と一部の写真 撮影・提供 写真家 井上浩輝)
今後も、東川町オフィシャルパートナー協定に基づき、4 者が相互に連携、協力し、東川町の課題や 町民のニーズに沿って、ドローンを含む次世代高度技術の活用による、持続可能な地域交通・物流の確 保と住みやすい環境づくり、地域防災や地域の脱炭素化への貢献および新しい社会インフラの整備を推 進することで、東川町における「適疎なまち」づくりに貢献してまいります。
ドローンを使った個人宅への食料配送の実験が10月6日、北海道上士幌町で行われた。参加住民がタブレットのアプリで注文して2分後に、自宅の敷地にドローンが注文の品を届けた。山梨県小菅村でのドローン配送に関わる株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)などが実検に名を連ねた。個人宅への配送に加え、グランピング施設への料理のドローン配送サービスを軸とする観光商品開発、牛の検体配送などスマート物流に関わる配送実験が行われた。
実験を実施したのは、エアロネクスト、セイノーホールディングスのほか、イノベーションチャレンジ実行委員会(実行委員長:竹中貢上士幌町長)、株式会社karch(上士幌町)、経済産業省北海道経済産業局だ。
個人宅への配送では、町内上士幌地区の住民が、町から貸与されているタブレットで、食料品の詰め合わせを注文できるアプリで「ごはんセット」を注文する方法で行われた。廃校となった小学校には、あらかじめ地元スーパーの荷物を一時的に集めておき、注文が入るとそこからドローンで注文者まで直接、ドローンで配送する。山梨県小菅村ではエアロネクストとセイノーHDが、ドローン配送と陸上輸送を組み合わせたスマート物流「Skyhub」の実験を実施しており、上士幌町での実験はその取り組みを社会実装するための取り組みとして行われた。
実験について公表されたプレスリリースの内容は以下の通りだ。
イノベーションチャレンジ実行委員会(実行委員長:上士幌町長竹中貢)と、株式会社karch(本社:北海道上士幌町、代表取締役 千葉与四郎、以下karch)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下 セイノーHD)、株式会社エアロネクスト (本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路圭輔、以下エアロネクスト)、経済産業省北海道経済産業局(北海道札幌市、以下経産省)は、10 月 6 日(水)~10 日(日)に、上士幌町の各地において、ドローンを活用した複数の先進的な実証実験を実施し、10月6日(水)にはドローン観光商品開発・ドローン宅配の2つの実証実験を報道関係者に公開しました。ドローン宅配の実証実験は日本初となります。
本実証は、本年 8 月に上士幌町、セイノーHD、株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:五十嵐博)、エアロネクストの4者が締結したドローンを含む次世代高度技術の活用による「持続的な未来のまちづくり」に関する包括連携協定の、農業・観光・産業・経済の振興、カーボンニュートラルと利便性が両立した持続可能な地域交通・物流の確保と住みやすい環境づくりに関すること、株式会社 karch と連携した新たな観光コンテンツ開発の「ナイタイテラスにおけるドローンを活用した観光商品開発」に基づくものです。
10 月 6 日(水)に実施し、報道関係者に公開したのは以下の2つの実証実験です。
広さ約 1,700ha、東京ドーム 358 個分の面積を誇る日本一広い公設牧場のナイタイ高原牧場で、ドローンを活用した新たな観光商品開発の実証実験を実施いたしました。コルソ札幌協力監修のもと、ナイタイテラス内にグランピング特設サイトを設え、利用者がオーダーしたドリンクと十勝ナイタイ和牛ステーキを麓からドローンで配送いたしました。上士幌の食や大自然とテクノロジーが融合した他にはない唯一な観光体験、ナイタイ高原牧場での特別な過ごし方を演出する観光商品として将来的に実施を検討してまいります。
町市街地から離れた農村地域に住む交通弱者への買物支援を想定し、食料品をドローンで個宅へ配送する実証実験を実施いたしました。本実験は、廃校となった小学校に地元スーパーの荷物を一時在庫したうえで、その中から注文のあった商品を購入者の自宅の敷地内にドローンで直接配送いたしました。
上音更地区に住む大道さんは、町が ICT 活用による地域住民の生活サポートとして実施している「予約制福祉バス」の実証に参加しており、町が貸与しているタブレットからバスを予約し、サークル活動などで市街地までの足として利用しています。今回は、大道さんご自身がタブレットから、あらかじめ用意された地元スーパーの食料品の詰め合わせを注文できるアプリを活用し、「ごはんセット」を注文しました。約2分後には自宅前にドローンが着陸し、大道さんの手に届けられました。
本実証実験は、セイノーHD とエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub」の社会実装に向けた実証実験で、ドローン宅配(個宅へのドローン配送)は日本初の試みとなります。その後 10 月 7 日(木)~10 日(日)の期間中には2)のドローン宅配を引き続き上音更地区の複数の個宅へ実施するとともに、以下の実証実験を実施予定です。
株式会社ノベルズ(本社:北海道上士幌町)の協力のもと、牛の乳房炎の検体(乳汁)の配送をテーマに、温度管理・振動・ドローン配送と陸上輸送との連携・配送後の検査品質評価等の一連の実証を行い、配送等の課題の多い畜産業界全般におけるスマート物流の実装可能性を検証します。ドローンを活用した牛の検体の一連配送の実証は、日本初の試みです。
※本実証は経済産業省「地域産業デジタル化支援事業」(実施機関:公益財団法人 北海道科学技術総合振興センター)を活用して実施するものです。
今回の複数の実証実験の内容は、実験だけに終わらせることなく、今後実際に上士幌町において実用化を目指した取組みです。実際に 11 月頃より、物流インフラとしての SkyHub導入の第一歩として荷物を集積し一時保管するドローンデポを市街地に設置し、地上配送と将来のドローン配送を想定した買物代行サービスから開始する予定です。
今後も、包括連携協定に基づき、それぞれが有する資源を有効に活用しながら、相互に連携、協力し、町の課題や町民のニーズに沿って、ドローンを含む次世代高度技術の活用による農業・観光・産業・経済の振興、持続可能な地域雇用および人材教育・人材育成・産業基盤整備、持続可能な地域交通・物流の確保と住みやすい環境づくり、地域防災への貢献および新しい社会インフラの整備を推進することで、上士幌町における「持続的な未来のまちづくり」に貢献してまいります。