一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は2月21日、認定スクールの秋葉原ドローンスクール(運営は田中電気株式会社)が4人の「一等無人航空機操縦士技能証明書」取得者を輩出したと発表した。国交省航空局は2月14日14時に一等の初交付を発表している。航空局によると2月14日午前中時点での一等取得者は4人で、その後随時、更新しているという。JUIDAの発表は以下の通りだ。
一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(所在地:東京都文京区、理事長:鈴木真二 以下
JUIDA)は、2022 年 12 月に施行された改正航空法に基づき、ドローンの「レベル 4」飛行(有人地帯での目視外飛行)で必要となる「一等無人航空機操縦士技能証明書」取得者が、
JUIDA 認定スクール・国の登録講習機関である秋葉原ドローンスクール(運営:田中電気株式会社、所在地:東京都千代田区、代表取締役社長 田中良一 以下、秋葉原ドローンスクール)から輩出したことをご報告いたします。
1.国土交通省 我が国初の「一等無人航空機操縦士技能証明書」の交付
国土交通省は 2023 年 2 月 14 日付で、無人航空機のレベル 4 飛行を行うために必要な知識及び能力を有することについて学科試験、実地試験等により確認を行い、一等無人航空機操縦士の技能証明書を初めて交付したことを発表しました。
(国土交通省 我が国初の「一等無人航空機操縦士技能証明書」の交付:国土交通省ホームページ 報道発表 https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku10_hh_000229.html)
「一等無人航空機操縦技能証明書」は、秋葉原ドローンスクールで実施された修了審査に合格した 4 名に対して国土交通省から交付されました。
2.JUIDA の取組
①JUIDA 認定スクール向け「JUIDA 国家ライセンススクール運営支援プラン」
JUIDA は、国が発行する無人航空機操縦技能証明(以下、「国家ライセンス」)の講習を行うJUIDA 認定スクールに対して「JUIDA 国家ライセンススクール運営支援プラン(以下、「サポートプラン」)」(図 1)の提供を行っています。
国土交通省の「ドローン情報基盤システム」(通称:DIPS)上にて公表されている登録講習機関数 352 校(2023 年 2 月 20 日時点)のうち、66 校が、サポートプランを利用した JUIDA認定スクールになります。(JUIDA 認定スクール登録講習機関リスト:https://uas-japan.org/rta/)
②JUIDA 特別講師によるサポート
JUIDA では、JUIDA 認定スクール向けに、JUIDA 特別講師(国や自治体の要請による測量・点検業務、TV ドラマや映画の空撮など、多数の経験を有する業界の一線で活躍するベテラン講師を JUIDA が認定。国家ライセンス対応「講師養成講座」の指導員として、実践に基づいた質の高い安全教育を行っています。)による高品質な講師養成講座を実施し、独自の質の高い支援を提供しています。
(航空局の2月14日の発表は以下の通り)
無人航空機のレベル4飛行(有人地帯(第三者上空)における補助者なし目視外飛行)を行うために必要な一等無人航空機操縦士の技能証明書を本日(編集注:令和5年2月14日)初めて交付しました。
航空法等の一部を改正する法律(令和3年法律第 65 号)による航空法(昭和 27 年法律第 231 号。)の改正により、令和4年 12 月5日から無人航空機操縦者技能証明制度が開始されました。改正後の航空法に基づき、無人航空機のレベル 4 飛行を行うために必要な知
識及び能力を有することについて学科試験、実地試験等により確認を行い、本日、一等無人航空機操縦士の技能証明書を初めて交付しました。
なお、令和4年 12 月5日以降、指定試験機関((一財)日本海事協会)への受験申請や登録講習機関への受講申請が行われており、14 日(9:00 時点)で、458 件の一等無人航空機操縦士の学科試験申請を受け付けています。
国土交通省では、指定試験機関や登録講習機関と連携し、無人航空機の操縦ライセンスの普及を進めることで、無人航空機の安全な社会実装を促進していきます。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は11月1日、認定スクール相互の交流を深め、活動を称える「JUIDA認定スクールフェスタ2022」を東京・元赤坂の明治記念館で開催した。内閣官房、経産省、国交省の担当者が近況を報告したほか。表彰では人材育成実績の高かったスクールをゴールド、シルバー、ブロンズの各賞で表彰したほか、総合的に優れた活動したスクールに理事長賞を授けた。ゴールドは秋葉原ドローンスクールが、理事長賞はNEXAIRS DRONE ACADEMYがそれぞれ受賞した。
鈴木真二理事長は冒頭、JUIDAの認定スクールが307、会員が2万3643人になったことにふれ、「レベル4が12月に解禁されることになり、高い操縦技術を備える人材を輩出してきた認定スクールが、さらにその知見を広めていただけることを期待しています」と述べた。内閣官房小型無人機等対策推進室(ドローン室)参事官の小熊弘明氏、経済産業省製造産業局次世代空モビリティ政策室室長の宇田香織氏、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課課長の梅澤大輔氏は、JUIDAの認定スクール制度の運用7周年に祝辞を述べ、それぞれの取り組みを報告した。
内閣官房の小熊氏は、環境整備、技術開発、社会実装の3つの側面から取り組みを言及。この中で「環境整備では操縦ライセンスに続き運航管理に、技術開発では機体開発と運航管理技術とに力を入れます」などと紹介したうえで、社会実装では物流を取り上げガイドライン改訂や防災計画に位置付けることなどに言及した。9月に神戸で開催したドローンサミットは「これからも年に1回、開催して参ります」と話した。
経産省の宇田氏は、いわゆる空飛ぶクルマを含めて社会実装を進める「ReAMoプロジェクト」(次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト)の概要を紹介し、「黎明期から支えて頂いているJUIDAさま、認定スクールのみなさまに敬意を表し、今後も大きな一翼を担って頂くことを期待しております」と話した。
国交省の梅澤氏は、国庫省として災害復旧、平時の施設点検に導入する取り組みを紹介したうえで、6月に開始した機体登録が現時点で32万機になっていることや、12月5日のレベル4解禁にあわせて始まる操縦ライセンス制度について「現在、細かい通達を準備しています」と準備状況を報告した。操縦ライセンス制度についても、講習を担う登録講習機関の申請が現時点で「三百数十の申請を頂いている」状況であると伝え、申請の結果については「もう少しお待ちください」と述べた。
またフェスタでは、レベル4時代のJUIDAと認定スクールの方向性についても話題になった。JUIDAの熊田知之事務局長は現行の「無人航空機操縦技能証明証」「無人航空機安全運航管理者証明証」の民間資格制度は今後も維持すると明言し、民間資格所有者は、国家資格取得時に優遇措置が適用されると言及した。
登録講習機関となった認定スクールへの対応として、国家資格に対応するテキスト、国家資格対応の登録機関としての管理システム、登録機関の監査支援サービス、講師養成、ひながた提供、管理者養成などのサービスを準備し、希望する講習機関に提供する選択肢を導入すると説明した。このうち「ひながた提供」については、今後増えることが見込まれる届け出業務に不安を抱えるスクール対し、必要な要件を満たすことを確認した書式を準備し、提供するものだと解説を加えた。
さらに現場業務向けの技能養成を目指してシリーズ化している専門教育について、既存のプラント点検などに加え、建築外壁点検、ノンテクニカルスキルであるCRMなどを導入する方針を明らかにした。あわせて今後、作成が必須となる「飛行日誌」のシステムも提供に向けて準備中であることを表明、近く、その内容を公表すると報告した。
表彰式では、最高賞であるゴールドが「秋葉原ドローンスクール」(東京都千代田区)に、シルバーが「拝島ドローンスクール」(東京都福生市)に、ブロンズが「ドローンスクール&コミュニティ空ごこち大阪校」(大阪市)に贈られた。2年連続で1位だった「ドローンキャンプ北陸の空」には「殿堂入り」の称号が送られた。また、スクール独自の活動を含めた活動全体を表彰する理事長賞には、NEXAIRS DRONE ACADEMY(東京)が選ばれた。このほか、OceanOneDroneSchool(徳島県小松島市)、星翔高校ドローンスクール(大阪府摂津市)に特別賞が贈られた。
理事長賞に選ばれたNEXAIRS DRONE ACADEMYは、現役国際線のパイロットでもある大原大氏が代表を務める航空スクールで、インターナショナルスクールを含めて7歳以上の子供に、国籍を問わずに参加できる体験会を各地で提供してきた。大原氏は「教えてほどなくGPSなしで自由に飛ばせるようになる子供たちがいて驚きます」とその可能性を絶賛。一方で、保護者からはドローンに対する不安の声も届き、安全確保の考え方や方法、ドローンの可能性などの基礎知識を伝えることにも尽力した。教習のためにオーバーライド可能な独自機体を開発したほか、操縦技能のほかノンテクニカルスキルである「CRM(クルー・リソース・マネジメント)」にも力を入れている。
特別賞のOceanOneDroneSchoolは、地域での防災活動への貢献が特筆に値すると認められた。星翔高校ドローンスクールは、JUIDA初の高校として認められたスクールで、現在、500時間以上のカリキュラムでドローン専科の専門学校設立を目指す取り組みが評価された。
理事長賞には全国から27件の申請があり、JUIDAは「すべての取組に目を見張る価値がありました」と話しており、受賞に漏れた申請校にも感謝状を送ることを決めた。このほか設立から1年を迎えたスクールも表彰した。表彰式のあと、参加者は会館内の別室に移動し立食で懇親を深めた。
建築業界でのドローン利用促進を図る一般社団法人日本建築ドローン協会(JADA東京都千代田区)と一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA、東京都文京区)は6月9日、高層ビルを含む建築物の外壁点検・調査にドローンを運用できる技能者を育てるため、新たに民間資格として「ドローン建築物調査安全飛行技能者」を創設すると発表した。両者はこの事業の推進に取り組むためこの日、東京都奈のJUIDAのオフィスで覚書に署名した。建築基準法は2022年4月に一定の条件を満たせば赤外線搭載ドローンを点検に活用できることを明記した。JUIDAとJADAはこの条件を満たす技能者の育成を目指す。JUIDAにとっては「プラント点検」、「森林測量」に続く“応用教育事業”の第三弾となる。今後、カリキュラムや講習の提供体制を整備し、2022年中の体制整備を目指す。
新しいビル外壁点検資格「ドローン建築物調査安全飛行技能者」は、JADAとJUIDAが連携して新設する専用の講習「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」で、基本的なドローンの知識、技能の保有者が、建築基準法や航空法の内容や現場で必要となる技量などを座学、実技で学んだうえ考査を受けて合格することで取得できる。コースの実技ではドローンをロープなどに係留した飛行、等間隔での撮影、飛行計画書の作成など、外壁点検の実務で必要な技能を身に着ける。受講できるのはJUIDAの「無人航空機操縦技能証明証」「無人航空機安全運航管理者証明証」を取得し、JADAの「建築ドローン安全教育講習」を修了していることが条件。コースは3日間を想定している。
この事業を推進するため、JADA、JUIDAは6月9日、都内で覚書に署名した。この席でJADAの本橋健司会長は「今回の告示改正に無人航空機員搭載された赤外線装置の明記や、係留ドローンの許可・申請の不要にする規制緩和は業界にとっての追い風で、建築分野でのドローンの活用は本格化することになります」と活用の拡大に期待を寄せた。またJUIDAの鈴木真二理事長も「会員が2万人を超えたのも多方面でドローンが利用されているからだと考えています。JUDAの2022年のスローガンは人口集中地区での目視外飛行が可能となるレベル4の解禁を見据えて『ドローン社会実装元年』としております。今回の覚書も大きな柱になると思っています」と述べた。
新資格を創設した背景には、建築分野でのドローン操縦者の幾瀬が急務になっていることと、ドローンの活用を建築基準法に基づく告知に明記された事情がある。
国土交通省は2021年9月、ドローンを係留するなど一定の条件を満たした場合、人口集中地域で飛行させる場合に必要となる国交省航空局への許可・承認を不要とすることを、航空法施行規則の一部改正で盛り込んだ。
また2022年4月には国交省は、建築基準法第12条第1項の定期報告制度の告示改正を施行し、赤外線装置を搭載したドローンによる外壁調査を認めた。定期報告が義務化されている建築調査のうち、タイル、石貼り、モルタルなどの劣化や損傷については、調査方法が「打診等」と指定されている。これについて従来は「打診等」の「等」の中に、赤外線カメラの調査が含まれると解釈してきた。今回の告示改正ではここが「テストハンマーによる打診等(無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものを含む)」となり、「テストハンマーによる打診と同等以上の精度」の条件がつくものの、ドローンの活用が明記された。
「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」では、「テストハンマーによる打診と同等以上の精度」を身に着けることで、告示の条件を満たすことを目指す。
なおコースの終了で取得できる「ドローン建築物調査安全飛行技能者」は、この資格を持たなければ業務ができない業務独占の資格ではなく、あくまでも民間として技能を備える講習を修了したことをさす資格だ。
告示改正をうけて、一部のドローンスクールや民間事業者が独自に条件を満たすカリキュラムを組み講習を実施するなど、今後見込まれる外壁点検の需要拡大に対応している。JADA、JUIDAは講習開始に向けて週明け以降、ドローンスクールへの概要説明、募集などの作業を進めることになる。早ければこの冬にも開講する「ドローン建築物調査安全飛行技能者」が具体的に動き出せば、赤外線ドローンによる外壁点検の取組がさらに加速することになりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、産業向け専門ライセンスの第2弾として林業従事者向けに「JUIDA森林測量スペシャリスト」を創設すると表明した。森林整備業務を担う林業従事者を対象に想定し、実務や申請など一連の作業で負担の大きい測量実務や提出書類作成用のデータ管理を、ドローンとクラウドで処理する技能を身に着けていることを証明する。すでにモニタリングを進めており4月から本格的に提供を始める。ライセンス導入を林業へのドローン普及につなげ、林業の効率化を進めたい考えだ。
「森林測量スペシャリスト」はJUIDAが監修し、一般社団法人日本森林技術協会、ブルーイノベーション株式会社がカリキュラムを組み立てた。林野庁の「先進的造林技術推進事業」のうち「低コスト造林モデル普及促進事業」を、JUIDAと日本森林技術協会の提案が採択された。2021年3月まで森林整備事業へのドローン講習の試行と、全国を対象とした研修にあたっている。4月以降、本格的に運用する。
森林測量スペシャリストを取得するための講習は2日間で、JUIDA操縦技能証明証、JUIDA安全運航管理者証明証の基盤となる2つのライセンスを持っていることを前提として行われる。2日間の間に、自動飛行による航空写真測量、オルソ画像の作成、SfM解析、GIS活用などを身に着ける内容だ。
森林整備事業は現在、1ヘクタールの整備に1日あたり6.5人がかりで当たっている。ドローンを活用することで1日あたり4人に、クラウド管理も取り入れると2.5人にまで減らせると試算されている。今後、JUIDA認定校を対象にブルーイノベーションなどが講習方法やカリキュラムを広め、4月以降、全国の認定校が森林組合、自治体担当者向けに講習を本格的に進める計画だ。
森林整備は、植付、下刈り、保育間伐など森林内で複数の作業が必要となる。整備により災害対策、貯水、鳥獣害対策になることから、林野庁が補助事業にしている。一方林業事業者は、実務のあとに補助金の申請書類の作成と都道府県の担当窓口への提出が必要となるため、実務から書類作成、提出までの一連の作業が必要となる。
林業事業者に必要な作業のうち、申請書類は書面で作成が求められている。その中に、作業を実施した形が分かる施業図、施行位置が分かる位置図、完了を証明する写真などの提出が含まれ、作業効率を高めるうえで阻害要因のひとつとなっていた。林野庁は2020年4月、ドローンの活用し、形や面積などの申請に活用できるよう通知を変更。ファイルを提出すれば申請できるよう改めた。今後、ドローンやクラウド管理の普及が林業を効率化させることに期待が高まっている。
JUIDAは認定校を対象に動画配信した「スクールフェスタ」の中で森林測量スペシャリストの創設を表明した。「スクールフェスタ」には林野庁森林整備部整備課造林間伐対策室の諏訪実室長が登壇し、森林整備事業でのドローン活用について説明したほか、ブルーイノベーション株式会社経営戦略室の酒井和也氏が講習内容などについて説明した。林野庁の諏訪室長は、林業事業者の課題として、ドローンの傾斜地の飛行の難しさ、ORSO化ソフトの購入費、ソフトでの処理時間、苗木の判別、レーザーなど先端機材価格の購入費などをあげ「ドローンの価格もあり現在はまだごく一部で運用されている状況ですが。今後増えてくると期待しています」と新ライセンスの効果に期待を寄せた。
なお「スクールフェスタ」ではブルーイノベーションの熊田貴之社長が昨年12月に創設された「JUIDAプラント点検スペシャリスト」について概要や講習内容を説明した。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、有人地帯での目視外飛行(いわゆる「レベル4」)を実現させるための制度のイメージについて、鈴木真二理事長が解説する動画を「オンラインセミナー」として専用サイトで公開しました。JUIDAは制度設計を検討し方向性を示す「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」の構成員で、鈴木理事長が官民協議会での議論を解説し、JUIDAとしての考えも述べています。動画にはDroneTribuneの村山繁が質問役で参加し、鈴木理事長に回答頂いております。
公開した動画は「JUIDA会員限定オンラインセミナー『2022年度 レベル4実現に向けた政府の方針-官民協議会での議論を踏まえて-』」で、全体で3部、4回で構成されています。各回とも20分前後でまとめられています。
内容は
・第1回「小型無人機の有人地帯でのレベル4実現に向けた制度設計」
・第2回「操縦ライセンス制度の基本方針について」
・第3回「ドローントリュビューン村山編集長によるJUIDA鈴木理事長インタビュー(前・後編)」
です。
ドローンの運用をめぐっては、2022年度をめどに、「レベル4」と言われる有人地帯での目視外飛行を実現するための環境整備について、官民が一体となって4つのワーキンググループを設置したうえで検討が進められています。JUIDAも主要な構成員として議論に参加しています。3月31日午後、東京の合同庁舎4号館で開催された「第13回小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」では、それまでの検討をふまえて制度設計のイメージが公表されました。
動画の第1回では、官民協議会で示された新しい制度の全体像について、検討の様子を踏まえて鈴木理事長が解説しています。また第2回では、全体像のうち、多くの関心が寄せられている「ライセンス」について掘り下げて解説をしています。第3回では、第1回、第2回をふまえた質疑応答を、2回に分けて公開しています。
今回示された全体像についてJUIDAの鈴木理事長は動画の中で、「JUIDAとしても、個人としても免許制度を制定してほしいと思っていました。一律での制定は難しいので、リスクに応じた制度設計をしていこう、という中で、官民が一緒になって作れたことは素晴らしいことだと思います」と話しています。
また、今後、法改正を視野にいれた具体的な制度設計に入っていきますが、鈴木理事長は、「(制度)自分たちでつくっていくという意識をもって頂き意見がありましたらぜひJUIDAにお寄せ頂きたいと思います。(必要に応じて)意見を反映させるよう働きかけて参ります」と協力を仰いでいます。
「レベル4の実現に向けた制度設計」(資料)
「レベル4の実現に向けた制度設計の基本方針」(資料)
JUIDAの公式サイトはこちら
「ドローン前提社会」の実現を目指す慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの副代表として、人材育成、研究、開発、社会実装など幅広い活動をこなす南政樹氏が、いま気になるキーパーソンを迎えて気の向くままに、自粛、忖度ほぼ抜きでしゃべりつくすヒヤヒヤものの企画「みなみの部屋」をスタートさせることにしました。今回のゲストは、ドローンレーサー元日本代表で、株式会社ドローンエンタテインメントの代表、横田淳さん。全国の桜を空撮し日本の素晴らしさを世界に発信する「桜ドローンプロジェクト」の活動にも精力的です。好奇心の塊のような2人による、縦横無尽、自由奔放なエンタメ論議をお届けします。(対談は外出自粛要請前に行われました)。
南氏 本日はよろしくお願いします。ドローンのエンタメとしての可能性を考えるときに、日本のドローンレースをけん引してきた横田さんにお話をしたいと思っておりました。一番知りたいのは、ぶっちゃけ、ドローンレースってどうなんですか?というところです。
横田氏 こちらこそよろしくお願いします。
ぼくが感じるのは、世界の事情はほぼ一緒である、ということです。よく日本では収益になっていない、と言われますけど、どの国でもほぼ同じです。日本に限らず世界の多くで収益にはなっていないし、収益を生む市場も形成されていないと思っています。どのレースも開催は協賛頼みで、そこが主催者やオーガイナーザーの悩みです。ぼくはレーサーとしてレースに参加したり、最近までJDRA(一般社団法人日本ドローンレース協会)に参画したりしていて、世界の団体と交流し、ディスカッションをしてきましたが、途中で退場した団体もありますし、課題はどこでも山盛りです。
南氏 競技人口が増えない要因としては何が考えられますか?
横田氏 複合的なものだと思います。まずドローンの特性として、物理的に飛ぶ、という点が挙げられます。バーチャルのeスポーツにはない危なさがドローンレースにはあって、それがきっかけとなりにイベントの開催を躊躇する声はよく耳にします。
何よりも大前提となる遊ぶ人が少ない。時間があればタイニーウープで遊ぶ、とか、聞かないじゃないですか。DRL(The Drone Racing League)や、DCL(Drone Champions League)などの大会はあるんですけど、これはドローンレース競技のピラミッドでいえば頂点です。日本のレーシングチーム「RAIDEN」が海外に進出していますが、それも頂点の話です。頂点が先行しているのです。この頂点の層の活発化と並行して進めるべきなのが一般の層の広がりです。実際に、「このままだと裾野が広がらない。」と、いろんな団体が気づきだして、いま教育に力を入れ始めている状況です。なんとか母数を増やそうと取り組んでいます。
南氏 裾野という意味でいうと、田村市(福島県の市。慶応義塾大学SFC研究所は同市と2016年12月にドローン活用に関する連携協力協定を結び、ドローン利活用のために大学と自治体が連携協定を締結する先駆けとなった)で高校生や小中学生にドローンを教えていると、レースをやりたいっていう生徒、児童は多いんですよ。でもアマ4(第4級アマチュア無線技士)を取らなきゃいけないという理由で、ここで離脱が起きる。海外の状況とかを考えると、これは由々しき事態だな、と思っていて、どうにかしたいと常々思ってきました。それと、ピラミッドの頂点ができたのちに、アニメで人気に火がついて裾野が広がるという形もあります。段階的なアプローチもあっていいのかもしれない。
南氏 エンタメを考えるときに、これはドローンレースに限らないのですが、どうしても収益につながらないと運営が難しい面がありますよね。産業利用であれば収益と一体なので分かりやすいのですが。横田さんはXFLAG PARK(ゲーム、音楽、スポーツなど幅広いステージやアトラクションを融合させたLIVEエンターテインメント。2019年は千葉・幕張メッセで開催され、ドローンシューティングが初導入された)にも関わりましたが、そういう発想だったのですか?
横田氏 イベントの関係者とは2015年からレースを一緒に開催してきた間柄です。ドローンレースはどれだけ派手に演出しても、あるいはどれだけ盛り上げるMCを入れても、結局のところ、ルールが理解されないと、オーディエンスは「やりたい」とは思わないし、あの人を応援したい、とも思わないんです。ほかのスポーツのように感情移入しにくいんです。そこでちょっと趣向を変えてみようか、といって、やってみたのがあれです。
南氏 なるほど
横田氏 いったんゼロベースで考えることから始めました。みんながドローンを使った遊びで楽しめるものはなんだろう? というところからスタートして、その中で、操縦してもらおう、とか、どう操縦させるのか、みたいなことを考えて、UFOキャッチャーがいいんじゃないか、とかいろいろなアイディアが出た中で、シューティングバトルにたどり着きました。シンプルにドローンを撃ち落とすゲームです。ゲームのシンプルさがとても重要だなと思ったんです。万人が理解できて、多くの人が「これ、おもしろね」って思ってくれて、その中でドローンレースも盛り込んで、「ドローンレース、ヤバい!」ってなる。そんな順番を考えました。
実際、手ごたえはありました。たとえばバスケットボールは初めて見た人でも、「あのゴールにボールが入れば得点になるんだな」って分かるじゃないですか。ドローンレースにもそのシンプルさがあるといい。はやるものってたいていシンプルですよね。ドローンでも渋谷の道玄坂の上からスクランブル交差点をゴールにして直線だけのスピードレースができたら熱いんじゃないかな、などと考えてます。
南氏 スピードを単純に競う、みたいな?
横田氏 そうそう。最後、ゴールでは壁に激しく爆音でぶつかる前提(笑い)。緊張感も高まるし、そのときの風だとか運が左右するという要素もあるし、声援がプレッシャーになるという要素もある。シンプルで深い。
南氏 エアレースのような最近話題になっているエクストリームスポーツも分かりやすいですよね。
横田氏 その分かりやすさが、大事なんだと思うんです。ぼくはどっぷりドローンレースにつかっているので偏っているかもしれませんけど、新しく始める人や、それまでにまったく関わったことのない人には、ドローンは相当ハードルが高いもののはずなので。ただ、ホントは調べれば分かるんですけどね。「どこで飛ばせばいいんだろう」とか。
南氏 それはそれでありますね。おもちゃのドローンを買って「どこで飛ばしていいですか」という質問はよくぼくも受けますね。許可がないことを気にする人も多い。二極化しているかもしれませんね、やってみる人と。やらずに手っ取り早く答えを知りたがる人と。調べれば分かるんだけど。
横田氏 調べない人、いますよね。一方で彼らは、「おもしろい」とか「いいな」と思えば突き進むんですよ。ということは、ドローンが生み出す魅力は、彼らにとってはまだ小さい、ということかもしれない。ぼく自身は「おもしろい」から突き進んだのですが、ほかの人にはそうでもないということはあり得る。ぼくにはドローンで撮影した映像はすごくおもしろいんですけど、そう思わない人は、その映像をみても「で?」みたいな感じになる(笑)
南氏 「おもしろさ」や「すごさ」の感じ方には差がありますね。
横田氏 ありますね。ぼくはいま、全国の桜を撮影する「桜ドローンプロジェクト2020」という企画を進めているんです。
<桜ドローンプロジェクト2020=日本全国の桜を4Kドローンで撮影し世界に発信するプロジェクト。「桜を鑑賞する」という日本の独自文化をドローンの活用でそれまでにない視点で表現することを通じ日本にある地方の美しさを発信する>
横田氏 幅広い年齢層のクリエイターと一緒に作業をすることがあるのですが、20代前半の方とか15歳の動画クリエイターに動画作ってもらったりするのですが、「桜って別に興味ないっスよ」みたいな(笑)。桜を撮りに「ここ行くよ」って言っても、「ぼくはだいじょぶです」って(笑)。そのギャップを実感しています。
南氏 桜への思い入れの強さは、卒業の回数が影響するかも。年齢が高くなってから思うことが出てくるかもしれない。
横田氏 年齢だったり、それまでの経験だったり。
南氏 そういう層も含めてどうアテンションをとるのか、ですね。たとえば300メートル上空まで一気に上昇させるまでの時間を競うとか。速いと「すごい」と思ってもらいやすくないか。どう測るかは考えないといけませんけど。あと、絶対に自分じゃマネのできない神業を組み合わせないとクリアーできないレースとか。
横田氏 ぼくはドローンについては、大きくゲームチェンジする必要があると思っています。ふたつ軸がありまして、ひとつは、新しいことをやる。もうひとつが、圧倒的に認知数を増やす。特に認知が不足していると感じます。いま手掛けている「桜ドローンプロジェクト」も、そういう思いの中で企画しました。全国各地に関わって頂いて、それを世界に発信して、話題を作りたい。一方、レースはレースでやります。やっぱり、おもしろいから。ただ、ピラミッドの裾野を広げるのは今のドローンレースではない。
南氏 運動会ぐらいシンプルな競技があればいいんですけどね
横田氏 そうそう。
南氏 最近の運動会は、危ない、という理由で競技がなくなっているものもあるんですが、たとえば棒倒しとか騎馬戦とか。でもあれ、シンプルですよね。勝ち負けがはっきりすると、見る人も「がんばれ」とか感情移入をしやすくなる。
スポーツって、見る、する、支えるのキーワードがあるんですけど、「見る」の部分がもうひとつ欠けていることがあるのではないかな、という気がしています。特にドローンレースではドローンが小っちゃいし速いしで、慣れている人や視力のいい人じゃないと何が起きているのか分からない。画面を用意してたくさん工夫を重ねておられることも存じ上げてはおりますが。それとは別に、シンプルに、「よーい、ドン!」で一斉にバーンっとスタートして、100メートル先のゴールに飛び込んで、勝ち!みたいな、そういうシンプルな種目があると違うんじゃないかと。
横田氏 そうですね。それに加えるとすると、「努力すればトップになれるんじゃないか」っと思えればなおいいと思います。ぼくももともとは目視でドローンを飛ばしていて、FPVはやっていなかったんです。やりたいな、と思ってシミュレーターをやりまくったんですね。そしたらある日シミュレーターで「世界ランク1位」みたいなのが出たんです。まだ実機で飛ばしたことがないのに。それで実際のレースに出てみたらそこで4位。その次の大会で1位。そこで「あれ? もしかしたらいけるな」って思えたんです。そのとき、ぼくですら、やったらいけるんだ、と思えたんです。動体視力がいいわけでも、ゲームをやっていたわけでもないですし、ラジコンをやっていたわけでもないぼくですら、という意味です。運動会の棒倒しとか玉投げにしても、工夫したら俺うまいことできるんじゃないか、って思えるじゃないですか。
――レースには「あこがれが足りない」という話を耳にします。ファンがふえるための戦略ってなんでしょう?
横田氏 いまぼく「新日本ドローンレース協会」をたちあげようとしているんです。
南氏 イノキ的な響き・・・(笑)
横田氏 もともとぼくがやりたかったことのひとつに、「ライセンス化」があります。いまのドローンレースでは、トップを目指そう!と声をかけてみても、初心者にとってはトップまでが果てしなく遠くて、目指しにくいな、って感じちゃうんです。集まってくるとしたら、お金や時間に余裕がある人。子供たちが「ぼくもやりたい」って思える環境じゃない。そこで、目標を作ることが重要だと思って、そのためにライセンスがあればいいと思っているわけです。
自動車のモータースポーツでも、国内の競技会やレースに出るにも、世界のレースに出るにも必要です。それがいったん目標点になります。まずは国内のB級を取って競技会に出場して、次に国内Aを取ると国内のレースに出られて、となります。そのあと国際を取ろうとなる人もいるし、海外には興味がないから日本でやりたい、という人もいます。そのまま踏襲するつもりはないけど今の時代にフィットさせた環境をドローンレースでも作りたいとぼくは思っています。
ライセンスは国交省の認定も取れればいいとも考えています。自作機にも、バッテリーの保護カバーや、プロペラガードをつけるなどの安全基準を設ける。自作しようとしても、レギュレーションが任意に設定されているために、特定のパーツや機体を買わないとできないような状況を変えたいんです。マニアにはいいかもしれないですけれど、一般に広げるには国交省認定などを設けたほうが分かりやすい。
裾野を広げるという意味では、アニメがもたらす波及効果も大きいと思っています。ドローンレースはよくミニ4駆に例えられるんですが、ドローンは社会的、産業的、教育的な価値を考えるとそれ以上だと思っています。それに、ミニ4駆がはやったときと今とでは、拡散させる力もテクノロジーも全く違います。
南氏 先ほどもちょっと触れましたが、ぼくもアニメによるdeployの可能性にはずっと注目しています。実際にアニメがきっかけではやったものも、スポーツでは多いですよね。野球、サッカー、バスケも。あらゆるスポーツが通ってきた道だと思います。産業にも結び付けやすいし、パイロットのセカンドライフにもつながる可能性があります。その意味でもやっぱり、分かりやすさは大事だと思うんです。
100メートル競走みたいなものは機会があればぜひいっしょにやりませんか? たとえば、ぼくらが毎年開催している「UAVデモンストレーション」というイベントがあります。屋外で産業機を飛ばすショー仕立てのイベントです。出場チームは、たとえば30分の時間をさしあげて、その時間の使い方について自分たちでシナリオを作ってもらいます。おぼれている人を助ける、というシナリオなら、うち(慶應義塾大学)のライフガードのメンバーの学生を動員して、かれらを水難者にみたてて救命胴衣を適切な場所に落としてみる、といった具合です。そういう場で、やってもらえると本当にありがたい。UAVデモンストレーションの趣旨は「ドローン前提社会に向けた理解と共感」を得ることです。単にビジネスショーとしてメーカーの機体のデモを見るだけじゃなくて、ギネス記録にチャレンジとかメーカーが本気出してスピード競争に挑戦してみるとか、ドローンの可能性を認知してもらうイベントにしたいと思っています。
南氏 ドローンが危ないものであると思われがちなのも、ドローンをよく知らないからということが大きいと考えています。福島県の南相馬でドローン物流の実験が行われたときには、初日こそ地元のおじいちゃんが指をさしてドローンが来た、みたいな反応をしていたんですが、二日目からは反応を示さなくなってきたというんです。当たり前になるから。そうなってくれればいいなと思うんです。そのためにも飛ばす機会を増やしたい。
横田氏 ほかの産業に比べてドローンは認知してもらう機会が極端に少ないですね。
南氏 ドローンで農薬散布をすると今でも毎回、通報されます(笑い)。そのたびに顔なじみのおまわりさんがやってくるので「おれだよ」ってあいさつをさせて頂きます(笑い)。飛ぶ回数が増えれば慣れてくるかな、とは思うんですけど。とにかく目に触れさせるということをやらないといまのまま変わらない。ぼくらは田村市(福島県)ではドローンの体験会をしたり、小学校向けにドローンを使ったプログラムを教えたりしているんですけど、その中では経年変化を追いたいと思っています。今は、「ドローンを見たことがある人?」って言うと、パッと手が挙がる。「触ったことがある人?」って聞くと、それが半分ぐらいになって、「持っている人?」で1人とか2人とかが残る感じです。これがどう変わるのか興味があります。
田村市ではドローンが当たり前になりつつあります。昨年(2019年)10月に各地に大きな災害をもたらした台風19号がありましたが、市の職員が率先して「ちょっとドローン、持ってくわ」って言って、被災状況の調査に出かけたんです。
横田氏 いいですね。
南氏 ぼくも「すごいね、それ」って言ったんですけど、当事者はそのすごさは認識しておられないんです。田村市は「ドローン前提社会」をつくるため、実験的に取り組んでいるところがあるのですけど、そのたむらモデルを大都市、東京とか、神奈川とかでも応用、活用できたらいいな、と思っていまして。
横田氏 ドローンの遊びって全てにおいて「善」なんですよ。
映像作品を作るにしても、ドローンレースをするにしても、子供たちがドローン体験をするとかにしても、やってると勝手に良い事につながる。産業にも、教育にも、レースにもつながります。その意味ではセカンドジョブも作りやすい。だから「あとから良いことが勝手についてくるから絶対にやったほうがいい」っていろんな子供や大人に言ってます。
桜ドローンプロジェクトも最初は「成功したら絶対面白い!」から始まったプロジェクトなのですが、40を超える自治体と協力して魅力を世界に発信しよう!っていつのまにか地方創生・日本文化の世界発信プロジェクトになっているんです。
ドローンレースにしたって、過去にぼくらが開催するマイクロドローンレースにほぼすべて参加してきた小澤諒祐くんは中学生で米津玄師のPVまで撮っちゃって。こういうことが起きるのは当然本人の努力が一番だけど、「楽しい!が仕事になるっていうこと」を体現しているよい例だと思ってます。
――いろんな話が出ましたね。
南氏 まとめ、というわけでもないですけど、ぼくはとにかく、子供たちに、たくさん、飛ばしてもらいたい。ドローンが当たり前社会になると言い続けている以上、子供のころから当たり前にしないとダメだと思っています。これをやりたい。今も小学生向けのプロジェクトを進めているのですが、そういったものを横につなげるようなことを、大学というファンクションがせっかくあるので、やれたらいいかな、と改めて強く思いました。それと、イベントごとはひとつ、ぜひ、お手伝いしたい。ドローンレースをやって頂くことも考えられるし、UAVデモンストレーションで会場となる陸上競技場のトラックをひたすらまわるでもいいですし、一定の高さまでビューンっ!と急浮上するのもいいし、シンプルなものを、産業機の航空ショーと組み合わせることができたらいいな、と思います。
あとエンタメとしては、ドローンレースの楽しみ方には開発余地があることを実感しました。見方、楽しみ方が分かると、愛好者は増えます。ラグビーもそうでした。「ジャッカル」という言葉がこれほど一般に浸透したことは過去にないと思います。ナビゲートをしてくれる優秀な実況役がいるとわかりやすいかもしれませんね。
横田氏 分かりやすいMCって大切ですね。ぼくがやりたいなと思っているのはスポーツベッティング。従来とは異なる応援のインセンティブを生み出せると思っていますし、ドローンレースはテクノロジーを使っているメリットがうまく生かせます。たとえば、加速度とか、スピードとか、進んだ距離は測れるし、そうしたデータを可視化できます。変換すれば会場のイスをゆらすとか、選手の感覚を体験できたり、一体となって応援できたり、選手の心拍数がリアルタイムで伝わるとか仕掛けがあったり。そういうしかけをやりたいですね。
子供って、ほんとにきっかけ次第じゃないですか。なのでそれを大事にしたいなと思っています。以前、子供の前でドローンを飛ばしたときに、関係者がぼくのことをトップドローンレーサーであると紹介してくれたみたいで、それに感動した子供たちが「サインください」って言ってきたことがあったんです。子供たちにとっては、それがあこがれになるかもしれないし、今後の自分の夢を考えるきっかけになるかもしれない。少なくともポジティブな思い出をつくることができる。だからレーサーは、あこがれの存在になる努力をもっとしないといけないと思います。もっとカッコをつけていい。というかカッコつけないと。服装もおじさんクサい人、多いし(笑)。ぼくはもう2~3年で、ドローンレースの時代が来るって思っています。おもしろいし、役に立つし、ドローンの遊びはすべてが善だと思っているので、やったほうが良すぎるぐらい。
南氏 ドローンがインターネットと似てるのは、ひとつきっかけがあるとさっと広がる感覚がある点です。インターネットはWindows95で市民権を得て広がりました。日常的にドローンが使われる場面を見聞きしているとか、操縦機会があるとか、ドローンに置き換えたらこんなに便利になったという体験とか、そういうことが見えてくると、とたんに広がるのではないかと思うんです。デザインの仕方次第かな、とも思っています。タレントが出てくるということかもしれないし、ライセンスの話もありましたけれど、それが話題になることがあってもいいし、そういうことが複合的に効果を発揮すれば、この2年ぐらいで一気に開ける可能性があると感じます。
きょうはありがとうございました。
横田氏 ありがとうございました。ぜひ一緒にやりましょう。(完)