起業支援、投資などを通じてイノベーションの促進を手がける東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(=東大IPC、東京都文京区)は11月14日、同社の運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(AOI1号ファンド)による、VTOL機「エアロボウイング」の開発などを手掛けるエアロセンス株式会社(東京都文京区)への出資を発表した。エアロセンスも同日、AOI1号ファンドをリードインベスターとする第三者割当増資による資金調達を実施したと発表した。東大IPCによると、今回のエアロセンスへの投資は、イノベーションエンジン株式会社(東京都港区)、日本無線株式会社(東京都中野区)との共同出資という。東大IPCの発表は以下の通り。
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(本社:東京都文京区本郷、代表取締役社長:大泉克彦、以下「東大IPC」)が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(以下「AOI1号ファンド」)は、自社開発の国産産業用ドローンとクラウドサービスを組み合わせ、企業や自治体などにソリューションを提供するエアロセンス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:佐部浩太郎、以下「エアロセンス」)に対して出資を行うことを決定しました。
今回エアロセンス社への投資は、イノベーションエンジン株式会社(本社:東京都港区、代表:佐野睦典)、業務資本提携を結ぶ日本無線株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:小洗健、以下「日本無線」)との共同出資となります。
■ソフトウェアとハードウェアの一気通貫による開発体制で現場の課題に対応
建設・土木、物流、漁業、農業などの産業や、点検や測量などの分野における人手不足は大きな課題となっており、業務の効率化による課題解決ニーズの増加にともない、産業用ドローン市場は今後急拡大することが予想されています。日本国内のドローンビジネスの市場規模は2022年度には前年度比34.3%増の3,099億円に拡大し、2027年度には7,933億円に達することが見込まれる中、エアロセンスは自社の高い技術力による製品の社会実装力を強化し、社会の課題解決に貢献し成長を続けています。
エアロセンスは「ドローン技術で変革をもたらし、社会に貢献する」をビジョンに掲げ、2015年8月にソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社(当時。現在はソニーグループ株式会社が持ち分を保有)、株式会社ZMPの共同出資により設立。国産ドローンのハードウェアからソフトウェアまで自社内で一気通貫の開発体制を持つことで、さまざまな分野の現場で使いやすい産業用ソリューションを提供しています。
エアロセンスの VTOL型ドローン「エアロボウイング」は、国内のドローン業界初となる垂直離着陸型固定翼ドローンとして2020年10月に発売し、航続距離は最長50kmを誇ります。同機は既に広域・長距離の監視業務などに活用され、遠隔地での災害や遭難といった緊急事態時に現場をモニタリングすることが可能です。また、2022年5月に発売を開始した、標定点を設置せずに i-Construction 基準の測量制度に準じた測量ができるドローン「エアロボPPK」は、一般のドローンによる測量業務を約1/3に削減することを可能にするなど、高い開発力を生かし社会課題解決に役立つ商品ラインアップを充実させています。
■製品供給体制と経営を強化し、ドローンのさらなる社会実装を目指す
この度、エアロセンスは日本無線とも資本業務提携を締結し、長距離、長時間の飛行が可能なエアロセンスのVTOL(垂直離着陸型固定翼)型ドローン「エアロボウイング」の性能の向上を図り、日本無線が同機を活用することで国の行政機関の防災、点検の支援体制の強化および拡充を図ります。
東大IPCはエアロセンスの強みであるVTOL型をはじめとする多様なドローン各機種の製造・販売体制の強化に加え、強固な事業運営体制の構築を目指し、この度の投資実行に至りました。今後は更なるオープンイノベーションの推進に加え、東京大学の知見を活用して法制度への対応強化など事業戦略の策定/実行の支援も目指します。
■エアロセンス株式会社 代表取締役社長 佐部浩太郎 コメント
当社は設立8年目を迎え、今後さらなる成長に向けて、この度東大IPCから支援をいただくことになりました。調達資金を活用し、これまでの開発フェーズで培ったユニークな製品群の製造・販売など、供給能力を強化していきます。また、東大IPCのベンチャーキャピタルとしてのノウハウを取り入れることで、経営の強化、企業価値の向上にも取り組んでまいります。
■東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 代表取締役社長:大泉克彦 コメント
産業用ドローンは、建設・土木、物流、漁業、農業などの幅広い産業で今後、運用・インフラを支える必須のツールになっていくものと考えられています。エアロセンス社はその社会課題、何より現場と向き合い対応するべく、ハード・ソフト双方の開発体制をもつことで業界唯一、国内初のソリューションや技術を多数持ち得る企業です。当社は事業会社やアカデミアとの連携などを通じて最先端のドローン・AI・クラウドで変革をもたらし、現実世界の様々な作業を自動・効率化することで社会への貢献をともに目指してまいります。
■日本のオープンイノベーション活動の発展寄与を目指すAOI1号ファンド
AOI1号ファンドは、東京大学周辺でのオープンイノベーション活動の推進を目的とし、「企業とアカデミアとの連携によるベンチャーの育成・投資」というコンセプトで2020年に組成されました。本ファンドでは、各業界のリーディングカンパニーと連携した新会社設立やカーブアウトベンチャー、および彼らのアセットを有効活用するベンチャーへの投資を通じ、新たな分野におけるオープンイノベーションの成功事例創出を目指します。
東大IPCは、今後も東京大学周辺のイノベーション・エコシステムの発展およびそれを通じた世界のイノベーションを加速するため、ベンチャーキャピタルやオープンイノベーションを推進する企業との様々な連携を通じ、アカデミアの生み出す学術・研究成果を活用するベンチャーの創出、育成および投資を進めていきます。
■エアロセンス株式会社について
・概要 自律型無人航空機の開発、製造、販売とサービス提供
・自律型無人航空機によるセンシング等とクラウドによるデータ処理・管理。それらを組み合わせた建設、物流、点検・監視、農林水産、災害対応等の産業用分野におけるソリューション提供。
・設立 2015年8月
・所在地 東京都文京区小石川五丁目41番10号 住友不動産小石川ビル
・代表者 代表取締役社長 佐部 浩太郎
・URL https://www.aerosense.co.jp
■東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)について
・概要 東京大学周辺のイノベーション・エコシステムの発展を目指す投資事業会社
・設立 2016年1月
・株主 国立大学法人東京大学(100%)
・所在地 東京都文京区本郷7丁目3−1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ261
・代表者 代表取締役社長 大泉克彦
・URL https://www.utokyo-ipc.co.jp/
風況観測技術の開発を手掛けるメトロウェザー株式会社(京都府宇治市、古本淳一代表取締役)は4月11日、海運、鉄道、物流、金融など12社から約7億円を調達したと発表した。調達先は既存株主のリアルテックファンド、DRONE FUNDのほかヤマトホールディングス系やJR東日本系のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などが名を連ねる。調達した資金を体制の構築や開発にあてるほか、事業の現場も抱える出資企業と連携を深め、海外も含めた事業展開の加速化を図る。
調達は12社を引受先とした第三者割当増資等でシリーズAラウンドとして実施し。メトロウェザーは京都大学発スタートアップで、風向きや風速を三次元でとらえリアルタイムで可視化する小型・高性能ドップラー・ライダー・システムを持つ。風況観測はドローンや空飛ぶクルマの自律飛行の実装に欠かせない技術で、出資企業と連携し実証実験を重ねる。
発表は以下の通り(以下、引用)
風を3次元に可視化する小型・高性能ドップラー・ライダー・システムを擁するメトロウェザー株式会社(本社:京都府宇治市、代表取締役 古本淳一、以下「メトロウェザー」)は、このたび 既存株主であるリアルテックファンド、DRONE FUND 及び新たにグローバル・ブレインが運営するCVCファンドをはじめとした、VC及び事業会社計12社を引受先とした第三者割当増資等により、シリーズAラウンドにおいて総額約7億円の資金調達を実施したことをお知らせします。
メトロウェザーは、小型高性能ドップラー・ライダーにより空の風況を立体的に把握し、可視化することで「風」の課題を解決し、「エアモビリティー社会」と「安全安心な都市生活」の実現に貢献することを目指しております。シリーズAラウンドの資金調達により、各株主企業様との連携をより一層深め、国内のみならず海外展開を視野に入れた組織体制の構築と、さらなる事業展開を加速させてまいります。
メトロウェザーは、ドップラー・ライダーの活用により、ドローンの運行に必要不可欠となるリアルタイムでの高精細風況情報の提供を実現します。これによりレベル4飛行の大きなハードルとなっている「高度な安全性の確保」を達成し、ドローン前提社会における必須のインフラとなることを目指します。
さらに、独自の気象予測シミュレーションを組み合わせることで、都市防災・風力発電・航空・海運・鉄道領域等、ドローン関連のみならず弊社技術に関連する幅広い分野の市場への参入を進めてまいります。
■ シリーズA資金調達先 計12社
(既存先)
・リアルテックファンド
・DRONE FUND
・株式会社日本政策金融公庫(資本性ローン等)
(新規先)
・JGC MIRAI Innovation Fund(運営:グローバル・ブレイン株式会社)
・KURONEKO Innovation Fund(運営:グローバル・ブレイン株式会社)
・株式会社MOL PLUS(株式会社商船三井100%出資CVC)
・JR東日本スタートアップ株式会社
・ACSL1号有限責任事業組合
・鐘通株式会社
・三菱UFJキャピタル株式会社
・SMBCベンチャーキャピタル株式会社
・京銀リース・キャピタル株式会社
<各社のコメント>
■リアルテックホールディングス株式会社 永田暁彦代表取締役
言語の壁を超えて全世界70億人にイノベーションを提供する、これを実現できるのがリアルテックの価値です。メトロウェザーはこの実現に大きく近づきました。同社のドップラーライダーを活用したユースケースの拡大、そして空のインフラ構築を、今回参画頂いた事業会社等の力強い仲間と共に、今後もリード投資家として全力で支援して参ります。
■DRONE FUND 大前創希共同代表パートナー
ドローン・エアモビリティの社会実装の機運を受け、メトロウェザーの存在感が高まっており、大変頼もしく感じます。人々の頭の上をドローンやエアモビリティが飛び交うレベル4の実現には、メトロウェザーの技術は不可欠なものになっていくと確信しています。本ラウンドでは新たに参画頂いた日本を代表する事業会社の方々と事業を一層加速できるよう、 DRONE FUNDとして全力で支援していきます!
■グローバル・ブレイン株式会社(JGC MIRAI Innovation Fund・KURONEKO Innovation Fundを運営) 百合本安彦代表取締役社長
メトロウェザー社のドップラーライダーは、海外含めた競合他社と比較して高スペックであり、また圧倒的な小型サイズと低製造コストを実現しています。風力発電量予測等いくつかの用途での活用が期待されておりますが、特にドローン自動運行への風況予測データ提供において高いポテンシャルを見ています。ドローン自動運行で不可欠となる高い時空間解像度のデータを提供する上で、メトロウェザー社の技術が唯一無二のソリューションとなりうると考えています。グローバル市場を取れるポテンシャルを持つ当社の今後の事業成長に貢献すべく、弊社としてもしっかり支援してまいります。
■日揮株式会社 未来戦略室 / JGC MIRAI Innovation Fund CVCフロントチームリーダー 坂本惇氏
日揮グループは安全・安心で持続可能な社会システムの実現に向けて、革新的な技術やビジネスモデルを有するスタートアップ企業への投資を行っています。今回の出資に際して、メトロウェザーが目指すビジョンに強く共感し、また、下支えとなる優れた信号処理、風況観測・予測シミュレーション技術を高く評価致しました。今後、日揮グループが培ってきたエンジニアリング技術や各領域の知見を融合させる事で、産業プラント、風力発電領域に加え、新たな社会インフラ構築に向けたイノベーションを起こす事を期待しています。
■ヤマトホールディングス株式会社イノベーション推進機能/KURONEKO Innovation Fundシニアマネージャー足立崇彰氏
風況計測は、 安全なドローン運行にとって重要な要素です。メトロウェザー社のドップラー・ライダーは、観測技術の高さとコスト面で高い優位性を持っています。ヤマトグループは、ドローンを活用した「新たな空の輸送モード」を現在構築しており、そのなかでドップラー・ライダーは、必要不可欠なテクノロジーです。今後、協業を通じて、両社がより事業成長できるよう取り組んでまいります。
■株式会社MOL PLUS 阪本拓也代表
メトロウェザー社の事業ビジョンに共感し、また直近1年間で多様な産業へのソリューション展開をスピーディーに推進されていることに可能性を感じ、この度他の多くの出資者の皆様とともに、ご一緒させていただくことになりました。MOL PLUS はメトロウェザー社が実現を目指す風況予測ソリューションの各産業への社会実装に貢献します。とりわけ海運や海洋事業領域での社会実装について推進させていただきます。具体事例として、今回の出資に際し商船三井の『ウインドハンタープロジェクト』においてドップラー・ライダーを用いた風況予測の実証実験を共同で取り組みます。今後の取り組みを楽しみにしております。
■JR東日本スタートアップ株式会社 柴田裕代表取締役社長
ドップラーライダーのテクノロジーを応用して、鉄道工事の課題を解決する…。 そんな無謀…否、果敢なチャレンジをいま、メトロウェザー社と一緒に進めています。場所はリアルの鉄道路線(休止線)。そこにドップラー・ライダーを持ち込んで支障物を検知する実証実験は、なんともダイナミックで斬新なものでした。まだ課題は山積ですが、この技術は未来の鉄道現場に広く活用できると思っています。共創パートナーのメトロウェザー社を、私たちはこれからも応援していきます。
■株式会社ACSL 早川研介取締役CFO
株式会社ACSLはドローンメーカーとして、ドローンを活用した社会課題の解決に向けた取り組みを進めております。レベル4の法規制整備やデジタル田園都市国家構想の推進、脱炭素化に向けた動きの加速などによりドローンが活用される場面が増えていくことが想定されるなかで、空の風況を適時かつ正確に把握することは、ドローンが安全に飛行するうえで無くてはならないものであると考えております。今後もメトロウェザー社と連携し、ドローンの社会実装に向けた取り組みを進めてまいります。
■鐘通株式会社 松井宏記代表取締役社長
地球温暖化等による様々な自然災害に対し、現在の技術力をもってしても人類は無力です。そのような得体の知れない巨大な敵に対し立ち向かうメトロウェザー株式会社。様々な視点から自然の可視化に挑む産まれたての企業に無限の可能性を感じ出資させて頂きました。同じ京都の企業という事もありますので弊社としても部材調達や最新の製品情報提供等のサポートを全力でさせて頂きます。共に京都から世界へ、これまでに無かった新たな価値を提供して参りましょう。
■三菱UFJキャピタル株式会社 矢野潤大阪投資部次長
「風を制し空の安全を守る」を企業Visionとして2015年に設立された京都大学発スタートアップ企業です。これまで培ってきた独自のリモートセンシング技術と信号処理技術に気象情報を組み合せ、高精度の風況観測を実現する小型ドップラー・ライダーを開発しました。ドローン運行のための風況情報提供に加え、都市防災、風力発電など、幅広い分野への展開を目指します。当社の技術が、未来社会における大事なインフラになっていく事を期待して、全力で支援してまいります。
■SMBCベンチャーキャピタル株式会社 池田一生関西投資営業部副部長
空を見上げれば物を運んだり測量をしたりしているドローンが当たり前に見える未来、メトロウェザー社の風況計測技術はそのような未来を実現する基礎インフラになり得る技術と感じ今回初めて出資をさせて頂きました。新しい未来の実現の一助になればと思い全力で今後も支援させて頂きたいと思います。
■京銀リース・キャピタル株式会社 村田義樹氏
「エアモビリティ―社会」と「安心安全な都市生活」の実現に対し、京都大学発ベンチャーとして非常に高い技術力をもって貢献される当社の取組や姿勢に共感し、今回投資を行いました。京都銀行グループとして、今後の当社の成長と発展を支援してまいります。
■メトロウェザー株式会社 古本淳一代表取締役
この度は既存投資家様をはじめ多くの事業会社様を中心にシリーズAラウンドの資金調達が完了できましたこと皆様に心より御礼申し上げます。弊社のドップラー・ライダーは商用ベースでドローンが安全・安心に飛行するために必要不可欠である3次元の風情報をリアルタイムに提供し、高度なオペレーションが要求されるレベル4運航実現の切り札になるものと考えております。このラウンドを機に事業会社様との連携をさらに深め、 幅広い市場への参入を図るとともに国内はもとより海外展開の礎を構築し、 次のラウンドで本格的な海外展開を果たすことを目指してまいります。
■ メトロウェザー概要 設立 : 2015年5月 代表者 : 代表取締役 古本 淳一 URL : https://www.metroweather.jp 所在地 : 京都府宇治市大久保町西ノ端1-25宇治ベンチャー企業育成工場6号 事業内容 : 弊社は、赤外線を用いて風に舞った大気中の塵や微粒子を散乱体として反射光を受信し、ドップラー効果を利用した解析を実行することで、 風況をリアルタイム・3次元に把握・可視化するドップラー・ライダーの開発・販売及びデータ提供を行っております。京都大学で長年培った大気リモートセンシング技術の開発・解析技術をベースに弊社が開発した小型高性能ドップラー・ライダーは、従来の大型ドップラー・ライダーと同等の性能を維持しつつ、低価格を実現しております。弊社ドップラー・ライダーを活用した社会課題の解決に向け、弊社は国内外で複数の企業様・研究機関様との共同研究や実証を進めており、2021年からはNASAの研究開発プロジェクトにも参画しております。
マレーシアに本社を構えるドローンサービスのエアロダイングループは5月10日、日本国内3社を引受先に第三者割当増資を実施したと発表した。調達したのはエアロダイングループのAerodyne Ventures Sdn Bhdで、引受先3社はリアルテックホールディングス株式会社(東京都)が運営するリアルテックグローバルファンド、KOBASHI HOLDINGS株式会社(岡山市)、株式会社自律制御システム研究所(東京都)。資金は農業進出の加速などに活用する。エアロダイングループが日本勢に限った資金調達を実施するのは今回が初めてで、今後日本との関係強化も加速するとみられ、日本の株式市場への上場も視野に入れる。
今回の資金調達は、エアロダイングループの農業への事業領域拡大を目指す戦略に伴う調達だ。エアロダイングループは東南アジアでの精密農業サービスの構築を目指し、現在、マレーシアで大規模農場を保有する大手を含む企業と実証実験を始めている。2022年以降には範囲をインド、インドネシア、タイに広げる予定で、事業化を進めている。調達した資金は農業領域への事業拡大に活用する見込みだ。。
東南アジアの農業は、コメ、パーム、パイナップルなどを広大な農地で栽培するプランテーション型農業が定着しているものの、環境負荷が高いなどの課題を抱えている。ドローンを使った精密農業にはこうした課題の解決に高い期待が寄せられており、高い市場性も見込まれる。
エアロダイングループは東南アジア一帯でドローンを活用した石油、電力などインフラの点検、モニタリングサービスなどを手がける企業として、日本を含め広く知られている。2018年には日本法人、エアロダインジャパン株式会社(東京)を設立して、日本での事業拡大を開始。点検事業を中心に、国内企業との連携も深めてきた。
今回の資金調達の引受先とは、日本国内での連携が進んでいる。ACSLとはエアロダインジャパンが2020年11月、有人地帯上空の目視外飛行(Level 4)を見据えた連続飛行試験の実施体制をASEANで構築する連携を開始している。この連携に基づき、12月以降、ACSLの主力機体、「PF2」と「Mini」をマレーシアで、1000時間におよぶ連続飛行試験を実施し、リスクレベル評価や安全性、信頼性を示す基礎データの取得を進めている。
またACSLも開発した機体の販路拡大として海外市場を見据えており、今回の出資がACSLの方針にも合致する。
エアロダインは今回の資金調達相手となった3社を「戦略的パートナー」と位置付けている。日本での事業拡大を見据える中、より幅広く資金を調達するため上場を目指すことになりそうだ。
この日の発表の中で、エアロダイングループのカマルル・A・ムハメドCEOは「新たな戦略的パートナーを歓迎するとともに、これから一緒に歩みを進めることを楽しみにしております。リアルテックファンド、KOBASHI HOLDINGS、そしてACSLの3社との連携により、現在我々が新たに注力している農業分野でのサービスの成長や、日本市場での更なる事業拡大に弾みをつけることが出来ると信じております。また、保連携を通じて、弊社が所有するドローンやソフトウェア、AIのテクノロジー領域の発展を、更に次のステップへと導いてくれると考えております。リアルテックファンドが掲げる、地球や人類の課題解決が出来るイノベーションをサポートするという経営哲学は、弊社の理念と同様であり、これからの協業を楽しみにしております」と話している。
<引受先談話>
■リアルテックホールディングス 藤井昭剛ヴィルヘルム氏
エアロダインはKamarul A. Muhamed CEOの強いビジョンとリーダーシップの下、僅か数年間で業界のリーディングカンパニーまで昇り詰めている、マレーシア期待の星です。同社のドローンソリューションは、より多くの人々に強靭で安価な社会インフラを提供する他、持続可能な農業の普及に寄与するなど、SDGsの目標達成に大きく貢献することを期待しております。また、当社の関係会社であるリバネス社と多方面のプロジェクトにおいて連携するなど、エアロダインはかねてから日本市場への強い興味関心を示しておりました。今回の資金調達は、日本市場進出および将来的な東京証券取引所での上場を検討するための戦略的な調達となっており、当社としてもマレーシアと日本のベンチャーエコシステムを接続する象徴例として、全力で支援して参ります。
■ACSL代表取締役社長 兼 COO鷲谷 聡之氏
エアロダインが築いてきたドローンサービスプロバイダーとしてのグローバルでの確固たる地位は、当社としても大変魅力的です。当社は2020年11月より、エアロダインの日本法人であるエアロダインジャパン社と連携してドローンの飛行試験を実施しており、当社ドローンの開発になくてはならない存在となっております。今回の出資を通して両社の連携をさらに強化することで、ドローンの社会実装がますます進んでいくことを期待します。
■KOBASHI HOLDINGS代表取締役社長 小橋正次郎氏
エアロダインのドローンソリューションが、農作物の収量および品質の向上を図り、環境負荷と農作業者の負担を軽減することで、サステナブルな農業の普及に大きく貢献することを期待しております。当社の農業機械メーカーとして培ってきたリソースによって、同社の新たな農業分野・日本市場への進出を支援することで、アグリテックの次なる未来を牽引し、日本の農業の進化に寄与して参ります。
住友商事株式会社、ダイハツ工業株式会社、三井住友ファイナンス&リース株式会社(東京、SMFL)の3社は1月14日、農業用ドローンの設計・製造・販売を手掛ける株式会社ナイルワークス(東京)の第三者割当増資を引き受けたと発表した。ナイルワークスの第三者割当増資を引き受けるのは住友商事にとっては2017年、2019年に続き3回目、ダイハツ、SMFLは初めてだ。
ナイルワークスは、「空からの精密農業」を掲げ、自動飛行する農業用ドローンの開発や、ドローンに搭載した専用カメラによる生育診断など農業のデジタル化の推進を手がけている。これらを通じて農作業の負担軽減、工数圧縮を果たすことを通じて、農業従事者の安全を確保し、美味しい作物を低コストで生産出来る環境を整えることを目指す。
今回の増資引き受けを通じ、住友商事はグローバルかつ幅広い業界から蓄積した事業経営ノウハウでナイルワークスのさらなる成長を支援する。ダイハツは農家への軽トラック販売で培った知見・技術を生かし、ナイルワークスを支え、農家に役立つソリューションを提供します。SMFLはリース・ファイナンス機能を生かし、農業生産現場のニーズに適合したリースなどのファイナンスプランの展開で農業用ドローンの普及を支援するとしている。3社とも、他の既存株主とともにナイルワークスを多面的に支援する方針だ。
ブルーイノベーション株式会社(東京)は、株式会社新生銀行など6機関を引受先とする第三者割当増資を実施し、資金調達を行ったと発表した。資金調達により、ドローンやロボットが人に変わって作業をするための基盤プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」の開発を加速し、リモート時代の到来で需要が高まる遠隔関連技術やサービスの開発を強化する。
6機関は新生銀行のほか、五光物流株式会社(茨城県筑西市)、大成温調株式会社 (東京)、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合(三菱UFJキャピタル株式会社、東京)、けいはんな学研都市ATRベンチャーNVCC投資事業有限責任組合(日本ベンチャーキャピタル株式会社、東京)、阪大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合(同)。
けいはんなATRFとはBEP の開発加速で連携するほか、大成温調とは国内外のビル・工場等の施工途中、改修工事の際の点検を自動化する総合点検システムの開発に取り組む。五光物流とは、ブルーイノベーションが手掛けるドローンのスマート離発着ポート「BI ポート」を軸に、国内のスマートシティを念頭に、ドローン物流ソリューションを共同開発する。金融機関、投資事業組合とはBEP普及に取り組み、無人化、省人化による社会課題解決で連携する。
ブルーイノベーションは労働人口減少、地球温暖化に伴う大規模自然災害の増加、インフラの老朽化といった社会課題の解決に、ドローンやロボットをAI、ブロックチェーンなどのテクノロジーと組み合わせる取り組みを進めてきた。
とりわけ関係者の間で関心を集めているのが、人がシンプルなコマンドを出しさえすれば、ドローンやロボットなど複数の機器が、自動で、遠隔で作業を遂行する技術基盤「Blue Earth Platform(BEP)」。新型コロナウイルス感染症の感染対策として人やモノとの距離を保つよう要請が高まる中で、現場作業を代替する技術として開発強化の期待が高まっている。今回の提携をきっかけに体制の充実を図り、リモート時代に求められるサービスの開発を急ぎ、社会実装を目指す。
屋内⽤小型ドローンを開発する株式会社 Liberaware(リベラウェア、千葉県千葉市)は4月27日、DroneFundなど3つのベンチャーファンドを引受先にした第三者割当増資を実施したと発表した。調達額は2.6億円で、累計で5.5億円に達した。
引受先は、みやこ京⼤イノベーション2号投資事業有限責任組合、価値共創ベンチャー2 号有限責任事業組合、DroneFund(千葉道場ドローン部2号投資事業有限責任組合)。調達した資金は、Liberawareのドローン「IBIS(アイビス)」の特徴である⾃律⾶⾏やAI機能などをさらに強化することに充当する。それを通じて、点検・計測・分析の3領域で、効率化とデジタルトランスフォーメーション(データ収集、データ解析、データ活⽤)の⽀援を強化する。
IBISは、Liberawareが狭小空間など狭く、暗く、危ないなど、人が入りにくい環境で人の代わりに作業をすることを目指して開発した、バッテリを含む本体重量が170グラムの小型産業用ドローン。⾼所や地下ピット、配管内などの⼈が作業できない場所での点検、⼯場内の定期チェックや在庫管理、屋内施設巡回警備などで引き合いが増えているという。