ドローンの研究、社会実装に力を入れる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)は9月23日、静岡県御殿場市の御殿場市総合体育施設で「富士山ドローンデモンストレーション」を開催した。荒天のため飛行展示は中止となったが、体育館での展示、操縦体験会などが賑わいを見せ、ラトビア製、オランダ製などの珍しい機体に来場者が目を輝かせたほか、地面を走る自動走行車両に子供たちが歓声をあげた。ドローンを使った芸で知られるお笑いタレント、谷+1。(たにプラスワン)さんが、会場の一角で出展企業への公開インタビューを行ったり、DRONE FUND最高公共政策責任者の高橋伸太郎氏がフィギュアスケートソチ五輪日本代表の高橋成美さんとともに、ブース訪問取材を行ったりと会場を盛り上げた。コンソーシアムの古谷代表は「飛行展示が中止となったことは残念ですが、ご出展、ご来場のみなさまには充実した時間を過ごせるよう主催者が総力を結集します」などとあいさつした。
富士山ドローンデモンストレーションは、慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムドローンデモンストレーション実行委員会が主催し、御殿場市が共催、駐日ラトビア共和国大使館、一般財団法人防衛技術協会、防衛省南関東防衛局が後援して開催された。
開会式では主催者の古谷知之代表、共催した御殿場市の勝又正美市長が、出展者や来場者への感謝や、当日の抱負、今後の展望を織り込んだあいさつをした。来賓として参加した渡辺秀明・元(初代)防衛装備庁長官、佐藤丙午・拓殖大学海外事情研究所副所長が登壇してメッセージを寄せた。いくつか寄せられた電報のうち、新しい資本主義担当大臣の山際大志郎氏の文面が読み上げられた。進行は、フィギュアスケートソチ五輪日本代表で公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)理事の高橋成美さんが務めた。開会式の終了時には、勝又市長が谷+1。さんに促され、開会を祝うくす玉を割り、来館者から拍手があがった。
今回のドローンデモンストレーションは、前年までの「UAVデモンストレーション」から改称して開催された。対象が陸海空全体に広がったことに伴う改称で、会場には飛行技術以外の展示も並んだ。
制御技術のスタートアップ、炎重工株式会社(岩手県滝沢市)は、自動運転船舶ロボット「Marine Drone」の技術や取組をパネルで紹介し、操縦用のコントローラーを展示した。来場者が目を丸くしたのは、炎重工の操縦体験だ。展示会場の御殿場市から500㎞離れた岩手県大船渡市の海では、展示会にあわせて自動操船ロボットを浮かべて待機させていて、御殿場市の会場のコントローラーで操作する体験会を催した。体験者はブースのコントローラー前に座り、担当者の助言に従ってレバーを操作すると、岩手県に停泊する船舶ロボットが動く様子が、モニターに映し出した。
水中ドローンの運用に積極的な株式会社スペースワン(福島県郡山市)もノルウェイのBlueye Robotics社のたてがたに進む水中ドローン「blueye X3」や、日本で水中ドローン市場を構築するきっかけとなった中国CHASING社のフラッグシップ機、CHASING M2 PRO MAXなどを展示した。
海外製の機体が並んだことも特徴だ。ラトビアのアトラスダイナミクス社が開発した3本アームのトライコプター「Atlas PRO」(株式会社クリアパルス=東京=が出展)や、同じラトビアのエッジオートノミー社が開発した、カタパルトから射出する固定翼機「Penguin C」(株式会社JDRONE=東京=が出展)、オランダのエースコア社が開発したマルチコプター「ZOE」(ゾーイ)にSLAMレーザーHovermapを搭載した機体(株式会社みるくる=東京=が出展)、ドイツのクオンタム・シズテムズ社のeVTOL「Trinity F90 Plus」(みるくるが主展)、スイスのウィントラ社が開発したテールシッター型VTOL「Wintra One」(有限会社森山環境科学研究所=名古屋市=が出展)などが目をひいた。
航空工学の研究で知られる東京大学工学研究科土屋研究室は、NIST(米国標準技術研究所)が開発した小型無人航空機(sUAV, ドローン)の標準性能試験法(STM)であるNIST sUAV-STMで使うバケツを並べ、機体の性能評価や人材育成のユースケースを展示した。
会場では、株式会社バンダイナムコエンターテインメントのフライトシューティングゲーム「エースコンバット7」の体験会や、株式会社Kanatta(東京)が運営するドローンコミュニティ「ドローンジョプラス」の女性パイロットによる操縦体験会も、順番待ちの列をつくった。「災害ドローン救援隊 DRONEBIRD」の隊長でチームを運営する特定非営利活動法人クライシスマッパーズ・ジャパンの古橋大地理事長(青山学院大学教授)は、会場内で講演し、ドローンの災害利用の有効性や、ドローンの団体、組織に地域との連携を呼びかけた。この中で古橋氏は「日本全国で100以上の災害協定と、数万人のドローン操縦者がポテンシャルとして存在します。地域と連携協定を結んでおくことで発災時に自治体からの指示や要請を待たず、初動に乗り出せますし、情報を公開することもできます」などと述べ、災害時のドローン活用の再確認を促した。
さらに会場の一角では、ドローン芸人、谷+1。さんがインタビューコーナーを設置。デモフライトを計画していた出展者を中心に、展示の企画趣旨やプロダクトなどについて聞き出し、来場者が輪をつくる様子が見られた。
観光名所などでドローン空撮を楽しめるツアーを企画し、運営しているJMTドローンツアー株式会社の遠山雅夫代表は、谷さんとのインタビューの中でウクライナからの避難者が参加して笑顔を見せたさいのエピソードや、ドローンの経験が浅い参加者でもバディ制を活用することで気軽に飛ばせる工夫を凝らしていることなどを説明し、観覧車が感心したりうなずいたりしていた。同社は今後、改めてウクライナ避難者のためのツアーを企画する計画で、近く、クラウドファンディングで資金を募る計画だ。
またエアロセンスの今井清貴さんも谷さんとのインタビューに応じ、エアロセンスの企業の成り立ちや取り組み、当日展示した国産VTOL機「エアロボウィング」の性能などを分かりやすく説明。「年内に新たなペイロードに対応できるよう準備中です」と近い将来の“ニュース”を予告した。
来館者の1人は、「台風14号が通り過ぎたあとも天候が悪いことが予想されていたので、デモンストレーションの開催が難しいことは予想していました。それでも展示会を開催してくれた主催者には感謝しています。多くの技術、機体をまとめてみることができ、関係者と意見交換ができるのは貴重な機会で、とても充実した時間がすごせました」と話していた。
出展者の1人は「来館者とのコミュニケーションの質が濃いと感じています。飛行展示があればもっと華やかではあったのでしょうけれども、今回は今回として有意義です」と感想を述べた。
出展した事業者は以下の通り。
東京大学工学研究科土屋研究室、炎重工株式会社、エアロセンス株式会社、加賀市、株式会社ANA総合研究所、株式会社スペースワン、株式会社JDRONE、株式会社みるくる、クリアパルス株式会社、JMTドローンツアー株式会社Phase One Japan株式会社、株式会社Image One、有限会社森山環境科学研究所、小野塚精機株式会社、フジ・インバック株式会社、明治大学POLARIS、日本DMC株式会社。(順不同)
地元主導でドローンの利活用を進めている多業種活動体、ドローンコンソーシアムたむら(福島県田村市)は9月14日、田村市役所で講演会と総会を開いた。慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの古谷知之代表と、橋本綾子研究所員が講演した。下田亮研究所員も、質疑応答のさいに回答に応じた。古谷代表は講演の中で、「ヒトができないことをロボットで代替する発想だけでは限界がある」と、バックキャスト思考への発想の転換を促した。総会では役員案や事業案、予算案などを全員一致で承認した。
慶應の古谷氏は、「自律移動ロボットの社会実装に向けて」をテーマに講演した。飛行するUAVのほか、水上、水中、陸上など活動場所を問わず自律的に移動する機体をドローンと表現する考え方が広がる中、古谷代表はそれらをまとめて「自律移動ロボット」と表現し、自律移動ロボットの社会実装に向けた取り組みの重要性を説いた。
講演ではUAVや水中ドローンの活用が産業、防災など多方面に広がっていることを、海外の取組やコンソーシアムの実例などをあげて説明。水中ドローンについては環境対策への活用も進んでいることを紹介し「空に限らず、陸、海とも活用はさらに広がっていきます」と展望した。
また、社会実装を進めるうえでは「人にできないことをロボットやドローンに代替させる、という範囲での発想、考え方だけでは可能性が限定的になるおそれがある」と指摘。「ドローンやロボットをどのように使うのか、妄想を働かせて、未来起点で逆算するバックキャスト思考で活用を進めることが重要だと提案しています」と発想の転換を提唱した。
さらに、ロボットやドローンを意識的に活用を拡大することについても重要性を指摘。「海外がロボット前提社会になる中、日本がそうなっていなければ、産業競争力で日本は海外に負けてしまいかねません」と述べた。
そのうえで「それを打開するためにも、みなさん自身がぜひ、プラットフォーマーになっていただければ」と積極的な活動を呼び掛けた。
リモートで講演した橋本綾子研究所員は、田村市内にある福島県立船引高校で取り組んでいる活動を「ドローンを活用した高度人材育成について~船引高校の事例紹介」という演題で講演した。
この中で橋本研究所員は、「人材育成というと、操縦技能に特化したカリキュラムになりがちですが、自分たちで課題を特定してその解決を模索したり、市販のドローンでは不可能なときにそのドローンにひと手間加えて、不可能だと思っていたことを可能にするドローンを自分で制作してみたりと、自分たちで考えることを重視しています」と紹介した。
活動では1年次、2年次、3年次と体系化したカリキュラムを作り、それに沿って取り組んでいることや、地域課題の解決にも取り組んでいることを紹介。鳥獣害対策をテーマに活動で、地元の猟友会の経験談を間近で聞く機会を作ったことも報告すると、参加者が大きく場面もあった。
ほかにも、田村市役所の屋上にRTK基地局を設置したり、それを活用して固定翼を飛行させたり、あるいは、物件投下に挑戦したりと、幅広く活動してきたことも伝えた。
今後は、12月に運用がはじまる国家資格としての操縦ライセンスを想定したより高度な知識の修得を目指すほか、最近急増している行方不明者問題の対応としてドローンを活用した捜索活動にも取り組む。橋本研究所員は「高校生には楽しんで答えを見つける過程を大切にしてほしいと思っています。ドローンを活用した業務につきたい人材の母数を増やしたいと考えていますが、そのためには、ドローン関連の会社に就職するだけでなく、そうではない業種の企業に就職したうえで、そこで新たな手法としてドローンを取り入れるような挑戦ができる高度人材を育成したい」と抱負を述べた。
講演後の質疑応答では、イノシシなどの鳥獣害対策へのドローン活用の展望について質問があがった。オンラインで参加した下田亮研究所員が、「イノシシについてドローンの取組は各地で行われてる一方で、イノシシが苦手とする周波数などはつきとめられておらず、まだ決め手がない。現在、取り組みが増えているので、やがて弱点がつきとめられれば、ロボットやドローンを使った有効な手立てが作れると考えています」などと回答した。
ドローン研究と社会実装に力を入れている慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)は、静岡県御殿場市の総合体育施設で9月23日(金)にドローンの実演展示会「富士山ドローンデモンストレーション」を開催する。会場の体育施設のうち陸上競技場では、一般市民が出展者によるドローンの飛行を見学できる。デモンストレーションを前に、デモンストレーションの意義や展望について、御殿場市の勝又正美市長と、慶應ドロコンの古谷知之代表が対談した。DroneTribune編集長の村山繁が進行した。
――御殿場市にとって「富士山ドローンデモンストレーション」の開催の意義とは?
勝又市長 とても楽しみにしています。昨年もこのデモンストレーション(※2021年は「富士山UAVデモンストレーション」として開催)に立ち会わせて頂きました。富士山の麓の高原都市でドローンが飛ぶ姿は素晴らしく、とても絵になります。慶應義塾大学のみなさまが、この御殿場の地で研究開発、人材育成などを通じてドローンの進化に取り組んでおられることが、御殿場のまちづくりの支えにもなっていて、とても感謝しております。その意味でデモンストレーションの開催は広く、大きな意義があると理解しておりますし、大変うれしく思っています。
――慶應ドロコンにとって御殿場市で開催する意義は?
古谷代表 今年もドローンデモンストレーションを御殿場市で開催させて頂くことになり、市の皆様のご協力、ご尽力に感謝申し上げます。御殿場市とわれわれ慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムとは2019年に、ドローンを中心とする先端技術活用と地域活性化に関する包括連携協定を締結させて頂き、それ以来、ドローン、自動運転などをテーマに、さまざまなロボティクス技術の実用化に関する研究をさせて頂いております。今回のドローンデモンストレーションもその一環です。勝又市長のお話のように、富士山を背景に飛ぶドローンは非常に絵になります。加えて御殿場市は、首都圏に地理的に近いうえ、近隣各都県とも高速道路でつながるアクセスのよさも備え、多くの企業が立地しています。このため産業界のみなさまに声をかけることができ、ロボティクス技術のマッチングを生み出しうる絶好の環境です。デモンストレーションは、実際にマッチングを生み出すきっかけとなるイベントとして、御殿場で開催する意義を強く感じています。
――今回のデモンストレーションへの期待とは
勝又市長 御殿場市では民間企業のドローン活用が増えています。教育面では小学生、中学生がプログラミングをはじめ科学に触れる機会があり、それもデモンストレーションが刺激になっています。総合防災訓練ではドローンをいかした取り組みも行っています。そこで感じるのは、ドローンの進歩の速度が目覚ましいことです。毎年、形も中身も進化し、活用法も広がっています。今回のデモンストレーションでその進歩を見ることと、市民のみなさま、全国のみなさまにも御覧頂きたいと思っています。それが、地域産業の活性化、持続可能なまちづくりに生きることを期待しております。子供たちが技術の進歩を目の当たりにすることで、教育効果が高まることも期待しております。
古谷代表 今回、タイトルを「UAVデモンストレーション」から「ドローンデモンストレーション」に一新しました。今後、空を飛ぶドローンに加え、水中、地上など陸海空のドローンをご覧いただける機会となります。幅広い可能性を感じて頂きたいと期待しております。そのうえで、ドローンをまちづくりや課題解決につなげるために、自治体と地場産業、研究機関と企業とのマッチングが成立すればいいと感じています。是非、地元の皆様、産業会の皆様、多くの皆様にお越し頂き、きっかけとなることを期待しております。
――古谷代表がマッチングへの期待を表明しましたが、御殿場市にとってよい効果はありそうですか?
勝又市長 マッチングは地元経済の活性化を考えるうえで私が一番期待しているところです。農林業にも防災にも幅広く活躍しますので、それを市民や企業、研究者など多くのみなさまにご覧いただき、マッチングが成立すれば、経済効果は高まります。大いに期待したいところです。
――熱意の高い地域でデモンストレーションが開催されることは、主催として開催効果を考えるうえでも好ましいのでは?
古谷代表 その通りです。御殿場市は私どものキャンパス(神奈川県藤沢市)から近いこともありますが、いつ相談に寄っても、市長をはじめみなさまに親身になって頂けることを実感しています。ご相談をもちかけるたびに「御殿場市内にはこういう場所があります」「こういう施設が使えます」とご紹介、ご提案を頂けることもありがたいです。そういった機会も活用させていただきながら、今後も御殿場市で活動を展開させていただきたいなと常々、頃考えております。
――御殿場市にとって慶應義塾大学と手を携えることへの今後の期待は?
勝又市長 大いに期待しております。御殿場市は国策にもなっておりますデジタル田園都市国家構想への取り組みを進めており、先行モデル地域となることを目指しております。また、まちづくりに対し科学の進歩やドローンが生かせるところが多くあるとも思っています。まさに慶應義塾大学との連携がいかせるところであると思っております。ドローンを使った取り組みも各方面にアピールしていきたいと考えています。実際、ドローンを使った活動をされる方が市内でも増えてきたことを実感しておりますし、市役所の中にも資格を持つ者が出てまいりました。市内に立地する企業の中にも興味を持っていただくところが増えていて、防災訓練に参加して頂いたところもあります。空からみた渋滞情報は実際に使って訓練をしております。自衛隊にも協力させて頂いております。新しい試みが色々と出てきたと実感しております。
――慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムはドローンをはじめ自律移動ロボットの社会実装を目指して活動しておりますが、御殿場の取り組みは社会実装やまちづくりへの生かし方について、モデルケースになる可能性があるように思えます
古谷代表 その通りだと思います。特にロボティクス産業を御殿場市と一緒に展開させることで、モデルケースとなりそうです。たとえば御殿場市は、産業立地に強みがあり、それを実際に活かしておられます。私どもが申し上げるまでもなく、さまざまな企業が立地していることからがそれを証明しています。ロボティクス、AI、データ産業など含めてデジタルという観点からも新たな産業誘致を一緒に進め、ロボティクス産業を盛り上げるモデルケースができるのではないかと考えています。物を作り、実験をする取組に参加する自治体は増えてきました。これからは、地域の産業を活性化させ、地域の課題を具体亭に解決する社会実装に局面が移り変わる段階です。社会実装を加速していくエリアとして御殿場市は魅力あるエリアです。また今回のデモンストレーションを開催するにあたり、多くの学生からボランティアとして参加表明がありました。御殿場という場所が魅力的であることもあり、我々の教育の研究拠点としても、新型コロナの感染状況などを横目で見ながら、御殿場市 と取組を進めたいと思っています。
――古谷代表は、講演やセミナーなどでドローンを実証実験から社会実装に移すカギとなる要素として、人材育成とインフラ投資を上げています。御殿場市は人材育成とインフラ投資の対象として魅力的だと感じますか?
古谷代表 とても魅力的です。まず無人機を持ち込んで人材育成をしたい、と話を持ち掛けたときに、御殿場市はきちん共通言語で会話が成立する自治体です。我々にとってとてもありがたい環境です。御殿場市は市長をはじめ市の皆さんが熱意をもっていることの表れと受け止めています。学生に学んでもらうにも適した環境ですし、インフラの整備についても市の皆さんと検討することができたらいいと思います。
――御殿場市が慶應と手を携えるうえでの、今後の抱負をお聞かせください
勝又市長 まず今の古谷代表の言葉は大変ありがたく受け止めました。実はコロナが2年以上続く中で、社会の閉塞感について大変気になっております。特に若者が元気になってこそ街の活性化が進みます。大学生が御殿場で科学技術に取り組む姿を、小、中学生、高校生が目の当たりにすると、閉塞感を打破して元気になるのではないかと期待します。また御殿場市は「御殿場市エコガーデンシティ構想」を策定し、環境をキーワードとした循環社会の実現を目指しています。1/3が山林の高原都市ですので、山林整備が重要で、そこにドローンの技術への期待は高まってまいります。まちづくり、地域活性化、教育の面でも、環境の面でも精力的に取り組んで、古谷代表との枠組みで培った経験を生かして参りたいと思っております。
――古谷代表にも、今後、御殿場市との取り組みでの抱負を
古谷代表 我々だけですべての課題の解決できるわけではありませんので、市長をはじめ市のみなさま、そのほかの研究機関、大学のみなさまにも広くお声掛けができたらいいと思っています。ある意味で日本の知の集積地として、御殿場市という地域をうまく使わせていただき、いろんな研究者が集うアカデミアの交流の場にしてなればありがたいと思っております。我々も技術開発も含めて努力して参ります。
――9月23日にはドローンデモンストレーションが御殿場市総合体育施設の陸上競技場と体育館で開催されます。ドローンが飛行する様子を一般市民が見学できる珍しいイベントだと認識しております。開催に向けたメッセージをお願いします。
勝又市長 これまでもデモンストレーションを開催頂いておりますが、回を重ねるたびに関心が高まっていると感じます。新型コロナに向き合わなければいけない時代になり、その関心の高まりはますます強まっているようにも思えます。市民の間でもドローンのデモンストレーションへの期待が高くなっていることを実感しています、特に若い世代の方、ドローンに関係する企業のみなさま、幅広い層のみなさまに、ドローンの可能性、科学の進歩、 将来性を感じて頂きたいと思っています。ぜひ高原都市、御殿場に足を運んでください。
古谷代表 ドローンが飛ぶところをぜひ、多くの方に直接ご覧頂きたいと思っています。我々のデモンストレーションは、展示するほかに、実際に動いているところを見られるところが大きな特徴です。体験会もご用意しておりますので、ご家族お誘い合わせのうえお越しください。企業、経済界、産業界のみなさまで、これまでドローンと接してこられなかったみなさまにも、どう使えるのか、どう使ったらいいのかなどご相談いただける環境も準備しておりますので、ご関心を持たれた方はぜひお気軽にご来場頂ければありがたく存じます。大勢の方にご来場頂けることを願っております。勝又市長、当日はよろしくお願いします。
勝又市長 こちらこそよろしくお願いします。
――ありがとうございました。
ドローン研究に力を入れている慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムと、自動車学校が運営するドローンスクール団体、一般社団法人全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)と共同で、2020年1月27日、「空飛ぶ車×自動運転×自動車学校 〜 目前に迫るエアモビリティ前提社会に向けて新たな交通秩序を共創する〜」を開催する。Uberも参加し、講演やパネルデフィスカッションに参加する予定だ。入場は無料。
シンポジウムは慶應義塾大学三田キャンパスのホールで開催される。
慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの古谷知之代表、エアモビリティを活用したサービスの開発を進めているUberの代表者、内閣官房小型無人機等対策推進室の長崎敏志内閣参事官、東京大学生産技術研究所の伊藤昌毅特任講師らが講演するほか、ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表がファシリテーターを務め、講演登壇者やサンインテルネット株式会社の三田竜平代表取締役社長らによるパネルディスカッションでさらに意見を深める予定だ。
講演、パネルディスカッション終了後には、懇親会も予定されている。懇親会参加費は5500円(税込み)
概要は以下の通り
・日時:2020年1月27日(月)13:00-17:00 (受付12:30)
・参加費:無料
・場所慶應義塾大学 北館ホール
・地図:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html
・申込 : https://bit.ly/2RkGuAx
予定コンテンツ
・主催者挨拶:一般社団法人 全国自動車学校ドローンコンソーシアム理事長 朽木聖好氏
・講演①「先端モビリティ前提社会」 (慶應義塾大学総合政策学部教授 古谷知之氏)
・講演②「UberにおけるFlying Carビジネスの取り組み」
・講演③「空と陸の交通安全行政」(内閣官房小型無人機等対策推進室 長崎敏志内閣参事官)
・講演④「低空飛行の地方公共交通に救いはあるか?空を飛ぶ前に考えること」(東京大学生産技術研究所 伊藤昌毅特任講師)
・パネルディスカッション
ファシリテーター 慶應義塾大学 南政樹氏
・終了後に懇親会を予定
問合せ先:
慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム事務局
最新鋭機の飛行姿を鑑賞できる「富士山UAVデモンストレーション2019」が9月22日、静岡県御殿場市の御殿場市馬術・スポーツセンターで開催され、富士山を背景に種類の異なる3種の機体のフライトが披露された。ドローン研究に力を入れている大学や機体、レンズ、バッテリー、運用など必要な技術を備える専門事業者が知見を持ち寄って製作した機体「キングフィッシャー」が初めて一般公開された。パラシュートを備えたセスナ型の機体や、条件次第では1回のフライトで80分間飛び続けることもできるバッテリー機が御殿場の空を彩った。
「UAVデモンストレーション」は、ドローンが最も真価を発揮する飛行風景の一般公開が目的で、2018年6月に湘南海岸で開催されたのに続き、今回が2回目だ。慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムが組織する無人航空機デモンストレーション実行委員会が主催し、御殿場市が共催したほか、防衛省南関東防衛局が後援した。冒頭に慶大ドローン社会共創コンソーシアムの古谷知之代表が「目新しい機体や、これから開発に使われる最先端の機体が飛びます」とアナウンス。また会場に足を運んでいた御殿場市の若林洋平市長も「きょうご来場のみなさんはこの日の証人。新しい世界を目に焼き付けてどんどん発信してほしい。今後さらに便利で安心な社会に導き、夢を運んでくれる。応援していきたい」とあいさつした。
フライトに参加したのは、フジ・インバック株式会社(横浜市)、株式会社トラジェクトリー(東京)、キングフィッシャープロジェクトなど3チームだ。3チームの機体はいずれも個性が強く、来場者は日常生活の中ではなかなか目にしない機体のフライトを目の当たりにした。
最初に登場したフジ・インバックはコントロール可能なパラシュートを備えたセスナ型のエンジン機「W-T3型機」で参加した。スタッフが機体を運びこむと、緑の芝に、白とオレンジ色の機体が映え会場の期待を高めた。フライト前のチェックを済ませ、風向や強さを確認するなど準備を整え、エンジンを始動させると会場に小気味よい音が響いた。スタートの合図とともに機体が滑走するとすぐにふわりと浮き上がり、ゆったりと上昇。来場者はその様子を目で追い、機体が会場を旋回した。
同社の田辺誠治代表が「この機体はセスナのような固定翼機とマルチローター型の機の両方の長所を兼ね備えた機体。パラシュートで浮力を得ているので墜落のおそれが限りなく低い。物資輸送、イノシシ観測にも使われたこともあり、街の上を飛んだこともあるなど用途はさまざまだ。最大の特徴は、ほぼ自社製である、ということ。全自動で運用できる」などと機体の特徴を説明した。
二番目に登場したトラジェクトリーが持ち込んだ機体は、丸みを帯びたスタイルと、周囲の溶け込みそうなグレーの色が特徴の、バッテリーで飛ぶ4ローターのマルチコプター。イスラエルのドローンメーカー、エアロセンティネル社製の「G2」だ。スタッフがランディングパットで準備をして離陸させると、マルチコプターに特有のプロペラが風を切る音を軽やかに放ち、そのまま浮上した。上空から、機体に搭載したカメラで来場者を映して、会場のモニターに映し出すと、来場者が機体に手を振って応じた。
同社の小関賢次代表は「G2という機体は、イスラエルのメーカーが軍からの委託で作ったもの。音が静かだと気づいた思うが悟られにくい工夫でもある。空力設計、軽量デザインなど工夫をこらしていて長時間飛べることが最大の特徴。一般に使われるものと同じバッテリーを使っても80分飛ばすことができる。われわれの会社は本来、こういった機体などのハードウェアを扱うことが事業の中心ではない。ドローン向けの航空管制が中心。システムの検証には長時間飛行できる機体がよいため、適切な機体を探しているときにこの機体と出会った。もともと軍用だが東日本大震災のときには救援にかけつけてくれた機体でもある。災害の多い日本では防災などに活用できるのではないか、ということでわれわれで預かることになった。日本とイスラエルの友好の証としてしっかり平和利用したい」などと説明した。
最後に登場したキングフィッシャーは、慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム、徳島大学、下田商会無人航空機開発班、Dアカデミー、D-eyes、マクセル、クイック、ドローンかまくら、シアンなど、研究開発や、機体製造、運用などそれぞれのドローンに関わる専門分野を持つ企業、団体の枠をこえて集まった専門集団の機体開発プロジェクトが作り上げた機体だ。6つのローターを持つマルチコプターで、機体をのぞくと参加各社、団体のロゴが見当たる。
ランディングパットに設置された機体は、慶大ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表の操縦で浮き上がると、安定した飛行を披露した。フライトの最中には空を覆っていた雲が薄れ、姿をみせた富士山を背景フライトするシーンも見られた。また、機体に搭載したズームカメラでとらえた映像もモニターに映し出し、来場者が見入っていた。
南副代表は、「開発のきっかけは汎用的に研究開発に使える機体が欲しい、と思ったこと。空撮機、農薬散布機など用途に分かれた目的を限定した機体は、それ以外の用途に使いにくい現実がある。汎用的に使えればドローンを活用したサービスの活発化につながると感じており、それをみなさんの協力を仰ぎながら、自分たちで開発しようと取り組んだ。やがて、パソコンのように、カスタマイズを加えることで自分用に用途を広げられるようになっていけばよいと思う。日本のドローン産業を成長させていく一助になればという思いで、ドローン事業に取り組むみなさんが実験などに簡単に使えるものを目指して作った。今回は映像をズームでとらえてお見せしたが、今後はそれ以外の、たとえばモノを落下させる、画像解析をしながら自律的に飛ぶ、などにも取り組みたい」と述べた。
会場ではこのほか、固定翼機、水中ドローンなどが展示され、来場者は展示されている機体も見入っていた。フライト後は来場者が興味津々で関係者に話しかけ、交流をしていた。参加チーム代表者が参加した公表会にも来場者が参加し、衝突回避策や、日本のドローンの展望などについて意見交換が行われた。
また、慶大SFCでドローンの研究、活用に取り組んでいる学生数人が参加し、体験会を開催。ドローンのフライト未経験の来場者や親子連れなどにトイドローンの操縦を体験してもらい、空間を自在に移動できる楽しさをアピールしていた。
慶應義塾大学でドローン研究に取り組む学生と引率の教員らが、福島県田村市で、地元の見どころを探索し、映像にまとめて発信する取り組みにチャレンジしている。映像にはドローンも活用し、ドローンの利活用に力をいれる田村市らしさが表現される。本稿が公開される9月13日(金)の午前10時から、田村市役所でその成果を発表する。発表の様子は市役所でだれもが見ることができる。
参加しているのは、慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの代表、古谷知之さんのゼミ生、南政樹副代表が率いる自主活動グループ「ドロゼミ」の学生ほか総勢15人。一行は福島県田村市の観光宿泊施設「スカイパレスときわ」を拠点に9月10日から活動している。
初日の10日には田村市役所から、撮影に適しているとみられる珍しい花が咲く畑、地元に伝わる街道沿いの魔除け人形、400メートル続く杉並木、パノラマの絶景地、鍾乳洞、風車などの31のスポットの説明を受けたあと、グループごとにテーマや、取材計画、編集方針などを話し合った。
夕方には、ドローンの初心者、経験者も含めて、南ドロコン副代表から、操作の手ほどきや、撮影技法についての講義が行われた。ひととおりの知識を備えたところで、スカイパレスときわのテラスで、腕試し替わりにドローンをフライトさせ、操作の感触を確かめ、ドローンができることを確認した。
一行は翌11日、12日と、グループごとに立てた計画にそってフィールドワークを実施。現地からの報告だと、とりためた映像の編集作業など、発表の準備は12日の深夜まで続けられたという。成果は本日13日、市役所で公開される。
田村市は2016年12月に、慶大とドローンの利活用に関する連携協力協定に締結した。慶大がドローンの利活用で自治体と連携協定を締結する第1号が田村市だ。締結後は、市内にある県立船引高等学校でドローンの担い手を育成する「特別講座」を開催したり、市で開催された音楽フェスでドローンの腕を磨いた高校生が公式に撮影する活動の場を提供したり、地元の名産品のひとつでビール主原料のひとつであるホップの生育状況確認などの農業利用の実験をしたりと、田村市内でのドローンの取り組みを広げてきた。地元主導でドローンを普及させる「ドローンコンソーシアムたむら」も設立されて活発に活動をしているほか、今回の活動の拠点となっている「スカイパレス」も、株式会社ドローンエモーション(東京)が展開しているドローンのフライトエリア登録サービス「そらチケ」に登録されているなど、田村市はドローン関係者の間では、日本を代表するドローンを歓迎してくれる町として知られ始めている。