千葉・幕張で開催中のドローンの大規模展示会JapanDrone2022が賑わいをみせている。主催者は6月21日の開幕初日に6497人、翌22日に5671人が登録入場したと発表し、最終日も午前から正午過ぎにかけて入場口で行列ができた。展示会場を従来の2倍に広げ、GMOインターネットグループ、テラ・ラボ、KDDIスマートドローン、ブルーイノベーショ、ソフトバンク、NTTドコモなどが大きなブースを広げ、客足を止めている。
開場前では午前10時の入場を前に行列ができはじめ、正午を過ぎても当日券を求める列が入口にできた。入場口前では係員が列を整理し、「最後尾」の札を持ったスタッフが列の後ろに誘導していた。
会場内のブースでもひとだかりができた。
GMOはサイバー攻撃に対する備えの必要性を重点的にアピール。ブース内でドローンがハッキングされる様子を実演したり、経済産業省商務情報政策局の奥田修司サイバーセキュリティ課長を招き、GMOサイバーセキュリティbyイエラエ株式会社の伊藤章博氏とサイバーセキュリティ診断の有効性について対談をしたりして、ブースの前に人垣を作った。DRONE FUNDの千葉功太郎共同代表を招き、攻撃する側の視点と手口を開設するセッションも開催した。
高高度飛行の防災対策ドローンを開発するテラ・ラボは翼長8m機。ジェットエンジン機、VTOL機などを、広いスペースにずらりと並べ来場者を圧倒した。
ブルーイノベーションはスイスFlyability社のELIOS3をJapanDrone2022にあわせて初公開したほか、トヨタ自動車が開発したドローンとほかのモビリティの連携を想定したドローンポートを実演したり、同社のAPI連携技術「BEP」とクラウド録画サービスのセーフィー株式貨車との連携技術のデモンストレーションを公開したりして、各回とも来場者が撮影のためにスマホを掲げた。
大きなブースのほか、初出展の合同会社VPMSsがドローンの快適な飛行を脅かす要素をセンサーで集めて予知する予知保全技術を展示して客足が絶えず、ハイブリッドドローン開発の株式会社エアロジーラボが、主力機QUADや、A.L.I.Technologiesの運航関連システムC.O.S.M.O.Sとの連家などについて発表した。エアロセンスは広域点検、防災・警備、測量などの分野ごとにゾーニングして展示。セブントゥーワンは新開発の2機をお披露目しつつ、これまでの知見を出しある仲間、パートナーへの候補者をよびかけていた。
京都、大阪、奈良の京阪奈地域でドローンの普及を目指す有志団体「京阪奈ドローンプロジェクト実行委員会」(事務局・奈良市)は5月24日、奈良県庁で会見し、プロジェクトの具体的な活動の第一弾として「第一回京阪奈ドローンフォーラム」を7月22日に、奈良市の大型ホール、奈良県コンベンションセンターで開催すると発表した。ドローンや空飛ぶクルマの実装をめぐっては、大阪を中心に関西圏で催事、事業、実証実験など利用拡大や社会実装に向けた取組が急増している。奈良でも大型フォーラムが開催されることで、関西圏でのドローン実装論議に足並みをそろえることになり、活躍が展望される大阪・関西万博の機運醸成も進みそうだ。
京阪奈ドローンフォーラムはドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリティに詳しい有識者の講演やパネルディスカッションと、技術、機体、取組の展示などで構成する。実行委員会の増尾朗実行委員長(マスオグループ代表)は「ドローンや空飛ぶクルマは、大阪・関西万博が開催される2025年をマイルストーンとして本格的な展開が期待されています。私たちもこのフォーラムをキックオフとして、万博開催の時期をめどに、京阪奈エリアでのドローン前提社会、デジタル田園都市国家構想の構築に向けて、意識の醸成と社会実装の進展を目指します」と抱負を述べた。
フォーラムの後援には5月24日現在、奈良県、奈良市のほか、一般社団法人奈良県ビジターズビューロー、公益財団法人大阪産業局、一般社団法人DPCA(ドローン撮影クリエイターズ協会)、JR西日本イノベーションズなどが名を連ねている。今後さらに加わる見込みという。フォーラム後に展開するプロジェクトを通じ、京阪奈エリアでのドローン産業の振興や社会課題解決を目指す。
フォーラムの講演には内閣官房の小熊弘明参事官、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長、慶應義塾大学の古谷知之教授(SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム代表)、空撮を通じた地方創生事業を展開する株式会社ドローンエモーションの田口厚代表取締役、ドローンを含め幅広い技術を活用するスマート物流で牛丼やラーメンを運ぶ実証で知られる株式会社エアロネクストの田路圭輔CEOらが登壇する。「いまのドローン、空飛ぶクルマの流れをリードする“主役級”」(実行委員)の顔ぶれだ。
展示では、VTOL機や有線給電型回転翼機をはじめとする国産ドローン開発を手がけるエアロセンス株式会社(東京)、AIドローン開発の米Skydioと提携し運用や認定講習を手がけるほか、ドローンの飛行、撮影、データ解析、レポート作成をWEB上で一元管理するクラウドサービス「docomo sky」を展開する株式会社NTTドコモ、ドローン研究に力を入れる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムがブースを構える。
このほか、スイスsenseFly社の固定翼機eBeeシリーズを運用するジオサーフ株式会社(東京)、おコメ、ワイン用ブドウなど農業のスマート化を推進するドローン・ジャパン株式会社(東京)、壁面にピタっと吸着して作業を助けるドローンなど用途に適した産業用ドローンを製造する菱田技研工業株式会社(大阪府)、業務用ドローンの研究開発や製造を手掛ける株式会社D-wings(大阪府)、陸海空のドローン制御技術開発を手掛けるDig-it works(ディジットワークス)株式会社(千葉市)などが機体、技術、取組を持ち寄るなど、あわせて20件のブースが出展される見込みだ。中にはこのフォーラムで新型機を披露することを計画している事業者もある。
フォーラムが開催される7月22日は、万博開幕1000日前の7月18日に近いことから、事務局は万博機運を京阪奈エリアでの醸成も意識していると説明。空飛ぶクルマ、エアモビリティの社会受容性の浸透を通じ、「2025年には奈良をはじめ京阪奈でドローン前提社会といえるような実装が進んでいる」(増尾実行委員長)ような未来を展望している。
増尾委員長は会見で「ドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリィには限りない可能性があります。観光にも物流にも人の輸送にも密接にかかわりますし、機体だけでなく周辺技術であるITやAIの普及、DXの促進ももたらします。地域を形作る行政、価値を生み出す企業、未来を切り開く学生など多くの層にフォーラムにお越し頂き、プロジェクトを盛り上げて頂きたいと思っております」と述べた。
主催する京阪奈ドローンプロジェクト実行委員会は、増尾実行委員長が代表を務めるマスオグループのほか地元企業、アクセラレーターら有志が集う。この日の会見には、増尾氏のほか、足立靖氏、石見亜紀子氏、中島秀豊氏が同席した。
ドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリティをめぐっては、万博をきっかけに導入機運が高まる大阪を中心に、関西圏は周辺エリアで実装に向けた活動が広がっている。兵庫県では地元発祥の兼松株式会社などと連携し「HYOGO 空飛ぶクルマ研究室」を創設した。9月1日には内閣官房小型無人機等対策推進室と兵庫県とが主催する普及促進イベント「第一回ドローンサミット」を神戸市で開催する。空飛ぶクルマ開発で注目度が高まる株式会社SkyDriveは大阪府、大阪市とすでに連携しているが、近鉄グループホールディングス株式会社(大阪市)が出資を決めるなど活躍の舞台を広げている。近鉄沿線の観光都市、三重県の伊勢・志摩での運用も視野に入る。同様に南海電気鉄道株式会社もSkyDriveとの連携協定を締結し、和歌山県を含む南海沿線での空飛ぶクルマの運用を目指す。奈良でのフォーラム開催はドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリティの関西圏での機運の底上げにつながることになる。
■催事:第一回京阪奈ドローンフォーラム
■日時:7月22日(金)、12:00~17:00(講演:13:00~16:00予定)
■内容:講演、パネルティスカッション、展示
■参加:無料
■申し込み:公式サイトの申し込みフォームから
ドローン開発の株式会社ACSL(東京)は、LTEを通じて全国どこからでもドローンを遠隔操縦で補助者無し目視外飛行ができるLTE対応の「PF2-LTE」をこの春に提供を始めると発表した。操縦者が飛行場所に出向く必要がないうえ、LTEを用いるため混線が生じず複数機の同時飛行が可能なことが特徴。複数の通信キャリアのLTE上空利用が可能なデバイスに対応しているため、たとえば、株式会社NTTドコモの「LTE上空利用プラン」、KDDI株式会社の「スマートドローンツールズ」などを利用できる。機体は代理店を通じて発売する。
「PF2-LTE」は機体、サーバー、通信のセットで機体は目視外飛行に必要な要件を満たしている。機体の大きさはプロペラ含めた全長が1173 mm、高さが654 mm、重さがバッテリ2本を含め7.07 kg。飛行速度:水平の飛行速度はGPS環境下で20 m/sで、最大飛行時間はペイロードがない場合に29分、最大ペイロードで飛行した場合に15分だ。ペイロードは2.75kg。また使用温度範囲は0~40℃で、防塵防水性能はIP54(キャップ装着時)だ。
ACSLは主に産業用ドローンを開発しており、飛行を制御するフライトコントローラを自社開発している。実証実験などで採用されている例も多く、その中では山を越える必要のあるドローン配送や、プラント内撮影を目的とした遠隔飛行などの経験も多く、LTE飛行に対する需要は高まっている。このためLTE飛行のための機体の仕様、生産・販売体制、通信料体系の整備を進め、導入を進めやすくした。
最大の特徴はLTE利用。ドローンと地上局(GCS)間の直接通信が不要となりインターネットを通じた遠隔地からの補助者なし目視外飛行(Level3)が可能だ。遠隔運用が可能なため、操縦者は現地にいる必要がない。LTEは複数のキャリアのプランから選べる。機体は代理店を通じて販売する。
なお、2021年12月7日に受注を始めた小型空撮機「SOTEN」はLTEに対応した機体があるため、購入時に選ぶことができる。
・ACSL機体代理店はこちら
・株式会社NTTドコモの「LTE上空利用プラン」はこちら
・KDDI株式会社の「スマートドローンツールズ」はこちら
株式会社大林組(東京都港区)、株式会社NTTドコモ(東京都千代田区)、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(東京都港区)は、屋内建設現場でドローンを自律飛行させて撮影させて進捗を管理する実験を実施した。ドローンは100カ所以上の管理個所を自動撮影した。撮影は日付をあけて3回実施。同一個所の画像を選びだし、最新データと過去データとを照合できることを確認した。「工区」などの手入力が不要で、効率的な進捗管理につながる期待が高まっている。
実験ではAIドローンメーカー米Skydio, Inc の「Skydio 2」を飛行させ、ドコモが技術検証用に開発したドローン飛行プログラム、NTTコムウェアのソフトウエアである「SmartMainTech」シリーズ「KnowledgeMap4D」を使った。
会場は東京・品川の建設現場の約500m²ある屋内空間で、Skydio2が空間内116箇所を記憶して自動飛行を実施した。時間帯や天候などの異なる環境で自律飛行が可能かどうかを見極めるtaため、2021年7月15日から8月3日の期間に、最大10日間あけて飛行させた。その結果、設定ルートを自動・自律飛行することを確認した。
また取得したデータを使って進捗管理ができるかどうかを「KnowledgeMap4D」を使って確認した。「KnowledgeMap4D」は取得画像を取り込んで3Dデータ化し、建設現場を再現した3D空間上にSkydio2の飛行軌跡や撮影点を配置した。これにより撮影時のSkydio2の位置や高度などを正確な把握できることを確認した。撮影した現場写真を3D空間上に反映するため、表示された点群の任意の点を選択すると、撮影場所単位で異なる日付の工事写真を表示させることができることを確認した。関係者は「時系列で容易に比較できることを確認しました」としている。
建設現場の記録や進捗管理では、作業工程ごとの状況写真、経過写真など多くの写真を撮影する。建屋内など写真だけでは位置の特定が難しくなることを想定し、「階」や「工区」などの位置情報を写真管理システムに手入力する作業が伴うことが多い。異なる日付の写真を比較するさいには、日付ごとに管理されたフォルダから同じ位置情報の写真を探す必要があり、入力、比較のそれぞれで手間と時間がかかることが多い。
今回3社が実証実験を実施したドローンを活用した進捗管理では手入力作業は不要で、比較するには3Dデータ上の任意の箇所をクリックすればその場所の写真を閲覧できる。撮影に使ったSkydio2も、機体に搭載している計6個のカメラで取得した映像から周囲の三次元環境と自己位置を推定することが可能で、障害物回避性能の高さが特徴だ。ドコモがSkydio2向けに開発した技術検証用飛行プログラムを使えば、多地点を通過するルートの事前設定もでき、GPSなどの位置情報が取得しづらい環境でも複雑なルートを自動・自律飛行できる。
3社は、今後「ドローンを活用した建設現場におけるさらなる作業の効率化に向けて引き続き連携していきます」と話している。
株式会社NTTドコモは、米SkydioのAIドローン「Skydio 2」向けの飛行支援ソフトウェア「Skydio 3D Scan」の提供を日本で始めた。建物など構造物を撮影するさい、障害物を避けながら、撮影の目的に応じた最適な飛行を自動・自律で可能にする。法人、自治体などへの提供を想定しており、提供を通じ産業へのドローン導入の促進と安全運用への貢献を目指す。ドコモが7月16日(金)~19 日(月)に開催する「docomo 5G DX MEETUP for business」に出展する予定だ。
「Skydio 3D Scan」は、Skydio 2で構造物の撮影をするさいに運用者を支援するアプリケーションで、5月に提供を始めた機能拡張ソフト「Skydio Autonomy Enterprise Foundation」(AEF)と連携させて利用する。3D仮想モデル作成、状況把握など、目的に応じた飛行や撮影の自動運用が可能になる。特にGPSの取得が難しい環境や複雑な構造物でも、機体の6つのカメラが取得したデータをもとに、障害物を回避して自動飛行をするなど本領を発揮し、安全な運用を支える。
Skydio 3D Scanを運用するには、撮影対象の構造物について、上面、下面、幅など領域を指定する。そのうえで機体と構造物との距離や、撮影する写真の重なり具合(ラップ率)などを設定する。デジタル空間上に 3D仮想モデルを作成する場合は、構造物に接近して多くの写真を取得する。迅速な状況把握が目的のときには速やかに網羅する撮影をする。Skydio 3D Scan を使うことで、カメラの角度や機体の向きをドローン自身が自動調節しながら飛行する。また飛行エリアを設定すれば、機体は該当エリアから外に出ないように飛行するため安全な運用を支える。設定もシンプルで、産業へのドローン活用の促進が期待できる。
さらに、ドコモの飛行管理プラットフォーム「docomo sky」の AI解析機能、3D構築ソフト、ビューワーと使うと、飛行軌跡上から詳細画像を確認することもできる。
ドコモは100%子会社である株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(東京)を通じSkydio 社に出資している。Skydio 3D Scan提供に先立ち、2020年から日米で技術検証を繰り返し、改善点を技術開発に還元してきた。今回、日本で最初の Launch Partner として6月28日に取り扱いを始めた。7月7月16日(金)~19 日(月)にはドコモが開催する「docomo 5G DX MEETUP for business」にSkydio 3D Scanを出展する予定だ。
株式会社NTTドコモは5月18日、子会社を通じて出資している米Skydio, Incの自律飛行型AIドローン「Skydio2」について、3つの新しい運用メニューの追加と、機能拡張ソフトウェアAEF(Skydio Autonomy Enterprise Foundation)の取り扱い開始を発表した。利用者の使い勝手の向上を図る。また株式会社A.L.I. Technologies(東京)、「アマナドローンスクール」を運営する株式会社GEOソリューションズ(兵庫県)との連携も発表した。
Skydio2の新たなメニューとAEFの提供は5月18日に開始した。
新メニューは「技術検証メニュー」、「運用検証メニュー」、「1年レンタルメニュー」で、「技術検証メニュー」はSkydio2の有用性の検証向けのメニューで、ドローンの活用方法の提案や飛行計画の作成、撮影など一連のドローン業務を含む。「運用検証メニュー」はユーザー側でドローンを運用できるかの検証するためのメニューでSkydio2の2カ月間レンタル、ドコモのドローン運用プラットフォーム「docomo sky」の活用、ドローンの操作講習を含む。「1年レンタルメニュー」は長期利用向けのメニューだ。
「Skydio 2」は主に事業者向けに、販売ではなくレンタルで提供されている。新メニュー追加は、利用者の多様なニーズへ対応が目的で、利用希望者がより手軽に導入できるようにした。
新メニュー提供にあたり、全国にドローンパイロットネットワークを持つA.L.I. Technologies、「アマナドローンスクール」を運営するGEOソリューションズと連携し、パイロットの体制強化や、初めてSkydio製ドローン初心者向けの講習に対応する。A.L.I.も同日、ドコモとの飛行運用業務での連携開始を発表した。ドコモは今後も、利用者のニーズに合わせてパートナー企業を拡大すると表明している。
また、Skydioの機能拡張ソフト「AEF」の提供も開始した。AEFは、アプリケーションの操作画面にカメラ角度を表示する機能、カメラの画角調整を上向き90度まで可能にする「Vertical View」、障害物を認知するセンサーの検知範囲を設定できる「Close Proximity Obstacle Avoidance」、GPSが取得しづらい環境でドローンを所定の場所へ帰還させることができる「Visual Return-to-Home」などの機能を搭載している。
なお、ドコモの今後のドローンビジネスの展望や、「docomo sky」、「セルラードローン」に関する取り組み、Skydio社のドローン「Skydio 2」や「Skydio X2」、スマートポートである「Skydio Dock」、「Skydio 3D Scan」について、2021年6月14日(月)~2021年6月16日(水)に開催される「Japan Drone 2021」で紹介を予定している。