飛行中も荷室が傾かない技術を搭載したドローンが2月11日、千葉・勝浦のご当地グルメ「勝浦タンタンメン」のスープ、具材、麺のセットを、配送拠点から1.7㎞離れた配送先の別荘地「ミレーニア勝浦」まで運んだ。勝浦タンタンメンはスープがこぼれることなどなく届けられ、口に運んだ子供が「アツっ」と声をあげたことで、あつあつのまま届いたことも伝わった。関係者は今後、実装に向けた課題を洗い出し、検証する。
勝浦タンタンメン配送は、千葉・勝浦エリアの買い物難民の解消、商店街の活性化などを目的とした実証実験の一環だ。実験は2月9~11日に、運輸大手西濃運輸グループの持株会社、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、ドローンの機体技術開発と製造、運用を手掛ける株式会社エアロネクスト(東京)、エアロネクストの物流子会社株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)が、住友商事株式会社(東京)、勝浦市商工会の協力を受けて実施した。11日の実験が公開され、この日は勝浦市の土屋元市長も駆けつけた。
公開ルートは、平成29年3月に閉校した旧興津中学校の校舎を転用した興津集会所から、分譲別荘地「ミレーニア勝浦」までの約1.7㎞。当初は別ルートを想定していたが、想定ルート上に風速24m/秒を観測したことなどを考慮して変更した。興津集会所では機体にコメ、ミソ、カツオ節などの食料品約2㎏を積んだ箱を機体の屋根をあけて格納。荷物を機体の裏側に潜り込むことなく詰める様子に、見学者が「あれなら簡単ですね」と話し合う様子が見見られた。コンピューターで設定したルートを機体に転送したのちに離陸させると、安定して浮上し、目的地に向けて進路を変えた。
公開の参加者一行は、離陸場面の見学後に、着陸側の別荘地「ミレーニア勝浦」に移動。ミレーニア興津集会所でのスタッフから無線で「離陸」の連絡が入ると、関係者や、あらかじめドローンの飛来を聞かされていた別荘地の人々が上空を見上げ、数分でドローンが上空に表れた。機体が所定の場所に着陸すると住民から拍手が上がった。機体は荷物を自動で切り離すと、すぐに浮上し帰還した。
ドローンが届けた箱は子供たちが待つガーデンテーブルに運ばれた。スタッフが中から、テイクアウト用のどんぶり容器に入ったスープ、具材、麺を取り出すと子供たちから「わあ」と歓声が上がった。スープの容器をあけると湯気が立ち上った。それぞれをあわせて、一口目を運んだ子供は思わず「アツっ」と声をあげ、周囲の大人たちが「やっぱりあつあつのまま届くんだ」と言葉を交わし合っていた。
なお運ばれたタンタンメンは、ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で2015年に優勝にあたる「ゴールドグランプリ」獲得に導いた地元企業組合が組織するチーム「熱血!!勝浦タンタンメン船団」の正会員として勝浦タンタンメンを提供している「まんまる亭」のメニュー。子供がすする姿を見ていた大人から「食べたくなってきちゃった」の声が漏れ、笑いを誘った。
ドローンの飛行中は、住民や関係者が着陸場所付近への立ち入りを制限したり、道路上空を飛行するさいには安全管理者が道路を走る車の往来などを確認したりと安全対策がとられた。離陸から着陸、帰還までの間、関係者や住民がドローンに対して違和感を唱える声などはあがらず、利用してみることで違和感が減らせる可能性も示した。
実験を見ていた別荘地の住民の1人は、「勝浦タンタンメンを食べるとなると、クルマでお店に出掛ける必要があります。配達してもらう方法もありますが、きょうのようにドローンで安全に自動であつあつを運んでもらえるのであれば、無人なので運転手さんに運んで頂かなくてよいので気兼ねせずにすみますし、とてもいいと思います」と期待を膨らませた。
実験の様子を見守っていた勝浦市商工会の小高伸太会長は「これから非常に楽しみです。これが進んで、もっと細かく配送ができるようになると、商店街の活性化にもつながると思います。夢がありますよね。これが第一歩だと思います」と目を細めていた。
エアロネクスト、セイノーHD、NEXT DELIVERYは、ドローンを既存物流に組み込むスマート物流事業「SkyHub」を展開していて、配送インフラとして配送拠点「ドローンデポ」、配送先の離発着地「ドローンスタンド」の整備を進めるなどして、実装に向けた取り組みを山梨県小菅村などで進めている。勝浦の実験では、ドローンデポを3カ所、ドローンスタンド8カ所を仮に設定し、3日間の実験に臨んだ。
使った機体はエアロネクストが開発した、荷室が傾かない同社独自の重心制御技術「4D GRAVITY」を搭載した物流専用機。田路圭輔CEOは「進むときの前掲姿勢による空気抵抗を計算したデザインで、空気抵抗が少ないためエネルギーの消費効率がよく、より早く、より遠くに、より重い物を、安定して運べます。あらかじめ設定した経路を自動で離陸、飛行、着陸、切り離し、帰還できますので無人化、省人化の側面から地域課題の解決につなげたいと思って取り組んでいます。洗い出すべき課題、取り組むべきことは多くありますが、着実に実装に向けて進んでいきます」と話していた。
株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーラストワンマイル株式会社(東京)など4社は、ドローン配送と既存の陸上配送などを融合させた新スマート物流の長野県全域への拡大と地域課題解決、地域経済活性化に向けて業務提携を締結した。
提携したのは、エアロネクスト、セイノーラストワンマイルのほか、交通、観光事業が柱のアルピコホールディングス株式会社(松本市<長野県>)、エアロネクストの物流子会社、株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)の4社。平常時の物流ネットワーク強化、買い物弱者対策、災害時の被災地への迅速な物資輸送をともに可能とするフェーズフリーな地域物流インフラの構築を目指す。
プレスリリースで提携内容を発表している。
内容は以下の通り。
アルピコホールディングス株式会社(本社:長野県松本市、代表取締役社長:佐藤裕一、以下アルピコホールディングス)とセイノーラストワンマイル株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:河合秀治、以下セイノーラストワンマイル)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路圭輔、以下エアロネクスト)および株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路圭輔、以下NEXT DELIVERY)は、2025 年1月31日に、新スマート物流の長野県全域への拡大と、新スマート物流を通した地域課題の解決や地域経済の活性化に向けた業務提携を締結しました。
アルピコグループは、長野県を中心に交通、観光、流通等広く事業を展開しており、2023年9月に新規事業としてドローン事業を立ち上げ、既存事業とのシナジー創出により、地域課題の解決や豊かな地域社会の実現に貢献しています。
エアロネクストとセイノーラストワンマイルの親会社のセイノーホールディングス株式会社(以下セイノーHD)は、トラックや軽バン等の陸上配送にドローン輸送を組み合わせ、独自の輸配送管理システムをベースに、物流を効率化する新スマート物流SkyHub®を、山梨県小菅村、北海道上士幌町など、全国9ヶ所で展開しています。
エアロネクストとNEXT DELIVERY は、2024年1月に起きた能登半島地震において、孤立集落・避難所へのドローンによる医薬品の物資輸送を国内で初めて実施した経験を踏まえ、平時、有事を問わず、ドローンを活用したフェーズフリー型統合ソリューションの構築が必須であり、そのためには新スマート物流 SkyHub®が基盤になると考え、国や自治体と前向きな会話を進めています。
2023年9月には、アルピコグループとNEXT DELIVERYは、茅野市蓼科地区の別荘地エリアにおいて、新しい食品・日用品配送サービスの構築を目指し、ネットスーパーと連携したドローン配送の実証実験を実施しました。
今回、4者が相互の連携・協力により、長野県における 2024年問題など平常時の地域の物流ネットワークの強化や買い物弱者対策、並びに災害時の被災地への迅速な物資輸送を可能とするフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、県民生活や地域経済基盤の強靱化を図ってまいります。
1.締結日 2025年1月31日
(1) 長野県全域における新スマート物流の導入、推進
(2) 長野県全域における新スマート物流(お買物支援、共同配送、ドローン配送を含む)の拠点および体制整備
(3) SkyHub® Emergency Packageの構築と運用
(1)4 者共通の役割
・長野県庁、長野県内の基礎自治体との関係構築全般
(2)アルピコホールディングスの役割
・長野県全域における買物支援、夕食難民対策等、SkyHub®TMS を活用した新スマート物流の実装
・グループのアセットを活用した共同配送の拠点づくり、インフラ、防災目的の支援物資等の提供
・グループのアセットを活用した新スマート物流における新サービス開発
(3)セイノーラストワンマイルの役割
・長野県全域における物流事業者の取りまとめ、荷物の集約
・長野県全域における共同配送の体制づくり
・SkyHub® Emergency Package 構築
(4)エアロネクストおよび NEXT DELIVERY の役割
・ドローン運航体制(物流専用ドローンの提供を含む)の構築
・全国展開している新スマート物流の運営ノウハウの提供
・アルピコホールディングスに対する SkyHub® Provider Licenseの提供
<アルピコホールディングス 代表取締役社長 佐藤 裕一のコメント>
アルピコグループは、長年にわたり地域社会に根ざしたサービスを提供してまいりました。また昨年からアルピコドローンアカデミーを開校し、ドローン事業にも参入いたしました。一方、セイノーラストワンマイル・エアロネクスト様は、ドローンを活用した先進的な技術やノウハウを持つ企業として、業界をリードしています。この提携により、私たちは新たな価値を創造し、地域社会とお客様にさらなる貢献ができると考えております。
<セイノーラストワンマイル代表取締役社長 河合 秀治のコメント>
今後、ラストワンマイルに求められる機能やご期待はさらに大きく、幅広くなることが予想されます。顧客ならびに様々なパートナーとの連携を強化し、チーム一丸となって社会課題を解決しつつ、未来のインフラ構築として、ラストワンマイル領域にて新たなチャレンジを続けていきます。
<エアロネクスト代表取締役 CEO/NEXT DELIVERY 代表取締役 田路 圭輔のコメント>
新スマート物流の長野県全域展開のパートナーとして、アルピコグループ様とタッグが組めることを本当に嬉しく、心強く思います。長野県の地域資源とアルピコグループ様の様々なアセットやネットワークと我々のこれまでの経験、システム、サービスを統合して、長野県全域の地域生活インフラを持続可能にしていくための活動にしっかり取り組んでいきたいと思います。
1 新スマート物流
物流業界が共通に抱える人手不足、環境・エネルギー問題、DX 化対応、等の課題を、デジタルやテクノロジーを活用しながら解を探究し、人々の生活に欠かせない生活基盤である物流を将来にわたって持続可能にするための取り組みで、特に地域物流の効率化と地域社会の課題解決を推進する。地域の状況やニーズに応じて、ラストワンマイルの共同配送、車による陸送・ドローンによる空送のベストミックス、災害対応も含むフェーズフリー型物流、貨客混載、自動化技術等を官民、業界内外の壁を越えたオープンパブリックプラットフォーム( O.P.P.)による共創で検討し、実現を目指すものである。
2 新スマート物流 SkyHub®
エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存の陸上輸送とドローン物流を繋ぎこみ、地上と空のインフラが接続されることで、いつでもどこでもモノが届く新スマート物流のしくみ。ドローン配送が組み込まれた、オープンかつ標準化したプラットフォームで、ドローンデポ®を拠点に、車とドローンを配送手段として、SkyHub®TMS をベースに、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送、SkyHub®Delivery(買物代行)、SkyHub®Eats(フードデリバリー)、SkyHub®Medical(医薬品配送)など、地域の課題やニーズに合わせたサービスを展開、提供する。SkyHub®の導入は、無人化、無在庫化を促進し、ラストワンマイルの配送効率の改善という物流面でのメリットだけでなく、新たな物流インフラの導入であり、物流 2024 年問題に直面する物流業界において、物流改革という側面から人口減少、少子高齢化による労働者不足、特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対、物流弱者対策等、地域における社会課題の解決に貢献するとともに、住民の利便性や生活クオリティの向上による住民やコミュニティの満足度を引き上げることが可能になり、地域活性化を推進するうえでも有意義なものといえる。
3 SkyHub® Emergency Package
平時はもとより、災害時にも物流ドローンなどを活用して緊急物資配送をスムーズに実現することができるフェーズフリー型の SkyHub®のこと。
4 SkyHub® TMS
地域物流を効率化する新スマート物流のベースとなる輸配送管理システム。
5 SkyHub® Provider License
新スマート物流 SkyHub®のノウハウやツール、オペレーションの一部を第三者にライセンス提供する仕組み。
【アルピコグループとは】
アルピコグループは、長野県を中心に事業を展開している企業グループで、主に流通(スーパーマーケット)、交通(バス・鉄道・タクシー)、観光(ホテル・旅館・旅行)等を手掛けているコングロマリットグループです。2024 年 1 月に新規事業としてアルピコドローンアカデミーを開校し、既存事業とのシナジー創出により、地域課題の解決や豊かな地域社会の実現に貢献することに努めています。
*会社概要は https://holdings.alpico.co.jp/company/をご覧下さい。
【株式会社エアロネクストとは】
IP 経営を実践する次世代ドローンの研究開発型テクノロジースタートアップ、エアロネクストは、「新しい空域の経済化」をビジョンに、空が社会インフラとなり、経済化されて、ドローンで社会課題を解決する世界を生み出すために、産業用ドローンの技術開発と特許化、ライセンスビジネスを行っています。コアテクノロジーは、重心、空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させる、独自の構造設計技術 4D GRAVITY®。この 4DGRAVITY®を産業用ドローンに標準搭載するため強固な特許ポートフォリオを構築し、4D GRAVITY®ライセンスに基づくパートナーシップ型のプラットフォームビジネスをグローバルに展開しています。また、ドローンを活用した新スマート物流 SkyHub®の実現のために戦略子会社 NEXT DELIVERY を設立し、ドローン配送サービスの社会実装、事業化にも主体的に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
【株式会社 NEXT DELIVERY とは】
エアロネクストグループのミッション「人生 100 年時代の新しい社会インフラで、豊かさが隅々まで行き渡る世界へ」に基づき、2021 年に山梨県小菅村に設立されたドローン配送を主事業とするエアロネクストの戦略子会社。エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存物流とドローン物流を繋ぎこんだ新しい社会インフラとなる新スマート物流の仕組み SkyHub®の企画運営、全国展開を推進しており、共同配送とドローン配送に関わるハード及びソフトウェアの開発、販売、運用及び保守事業等の周辺事業も展開しています。山梨県小菅村を皮切りに、北海道上士幌町、福井県敦賀市等、全国各地で地域物流の効率化と地域社会の課題解決に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
【セイノーラストワンマイル株式会社とは】
セイノーラストワンマイル株式会社は 2024 年 4 月にセイノーホールディングスの子会社として誕生しました。「ラストワンマイル」と言われる”お客様にとって物流サービスの最後の接点”となる領域は今後もさらに拡大すると予測されており、「お客様のご要望に柔軟にお応えできるように」と新たに設立する運びとなりました。現代の日本における物流課題は多岐にわたり、具体的には買い物弱者問題、過疎地域問題、荷物再配達の問題、宅配クライシス問題などが挙げられます。セイノーラストワンマイル株式会社は、それらの
社会課題に対してビジネスの手法を使ってアプローチしていく「社会課題解決型ラストワンマイル」を担っています。
*会社概要は https://slo.co.jp/company/をご覧下さい。
株式会社エアロネクスト(東京)、株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)は長野県南西部の木曽エリア3町村でドローン配送を実演した。エアロネクストなどは3町村を含む木曽郡でドローン配送ルートの策定や離着陸座標設定などのドローンインフラ整備を進めていて、今回もその一環として大規模災害への備えに向けて行われた。
フライトは1月28日、木曽郡内の上松町、大桑村、南木曽町(木曽郡はこのほか木祖村、王滝村、木曽町の6町村で構成)で行われ、長野県木曽地域振興局、木曽広域連合も参加した。大規模災害対応を念頭に、災害時に孤立集落となる可能性のある地域に災害支援物資を配送した。
実施後にプレスリリースが公表され、その様子を報告している。発表は以下の通り。
上松町(町長:大屋 誠)、大桑村(村長:坂家 重吉)、南木曽町(町長:向井 裕明)、長野県木曽地域振興局(局長:渡邉 卓志)、木曽広域連合(連合長:原 久仁男)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路 圭輔、以下エアロネクスト)、株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下NEXT DELIVERY)、は、2025年1月28日(火)に、上松町、大桑村、南木曽町において 木曽郡における災害時対応を想定したドローン配送 お披露目フライトを実施し、報道関係者に公開しました。
木曽郡では、郡内でのドローン活用、災害時の迅速な支援につながる取組として、木曽町、上松町、南木曽町、木祖村、王滝村、大桑村、長野県、木曽広域連合、エアロネクスト、NEXT DELIVERYが共同し、郡内6町村を対象に、ドローンインフラ整備(ドローン配送ルート及び離着陸座標設定)を進めています。
今回のお披露目フライトは、その一環として大規模災害への備えに向けて行われたもので、具体的には、上松町、大桑村、南木曽町の災害時に孤立集落となり得る地域に災害支援物資を配送いたしました。
4人その3:写真向かって左より木曽広域連合 楯憲吾、長野県木曽地域振興局 局長 渡邉卓志、南木曽町副町長 向井 庄司、NEXT DELIVERY 取締役 運航統括責任者 青木孝人(南木曽町)
飛行:物流専用ドローンAirTruckによる災害支援物資を搭載した飛行を見守る住民(南木曽町 大野正兼集会所)
大桑村:災害支援物資を搭載して着陸する物流専用ドローン”AirTruck”(大桑村 野尻向分館)
大桑受け取り:物流専用ドローンAirTruckにより置き配された災害支援物資を受け取る住民(大桑村 野尻向分館)
1.背景と目的
木曽郡は総人口 23,781 人(2025 年 1 月 1 日現在)。長野県の南西部に位置し、美しい木曽川を中心に豊かな森林や山々に囲まれた自然環境が広がっています。木曽川の支流や山間部からの湧水は、地域の農業や生活用水として利用されるだけでなく、周辺の生態系を支えています。一方で、自然災害の
リスクが高く、大雨や土砂災害、地震による道路寸断など、有事の際には集落が孤立する可能性が指摘されています。特に中山間地域では、地理的条件からアクセスが制限される場合が多く、緊急時の物資輸送や医療支援が大きな課題となっています。また、木曽郡内では、地域住民の高齢化が進む中、災害発生時の迅速な支援体制の構築や、孤立集落の発生を防ぐための新たな取り組みが求められています。こうした状況に対応するため、ドローン技術の活用が注目されており、地域住民の利便性向上や有事の際の迅速な対応を目指し、DX 技術を活用したドローンの導入が模索されています。
このような背景を踏まえ木曽郡では、災害発生時に孤立地域へ迅速に物資を届ける仕組みとしてドローンを活用した防災インフラの構築を実施しました。
2.実施内容
災害時に孤立集落となり得る地点に向け、災害時を想定した物資輸送の実証実験を実施しました。事業概要やドローン機体の説明後、以下3つのドローン配送のデモフライトを実施しました。
1上松町 よろまいか駐車場⇒台生活改善センター/
2大桑村 大桑村役場駐車場⇒野尻向分館 /
3南木曽町 渡島総合グラウンド⇒大野正兼集会所 ※計 3 ルート
【1ルート】上松町で孤立が想定される台生活改善センターに向けて災害物資輸送を想定したドローン配送を実施します。飛行距離約 4.6 kmを約 12 分かけて配送。
【2ルート】 大桑村で孤立が想定される野尻向分館に向けて、災害物資輸送を想定したドローン配送を実施します。 飛行距離約 4.1 kmを約 10 分かけて 配送。
【3ルート】 南木曽町で孤立が想定される大野正兼集会所に向けて、災害物資輸送を想定したドローン配送を実施します。飛行距離約 6.1 kmを約 15 分かけて配送。
機体はエアロネクストが開発した物流専用ドローンAirTruckを使用しました。上松町では、よろまいか駐車場から台生活改善センターまでの片道約4.6 km・約 12 分を、災害支援物資を搭載してドローン配送しました。ドローン配送で災害支援物資を受け取った田中秀子さんは、「素晴らしい。置いて行ってもらえれば、非常に楽。もしもの時にはとても助かる」とコメントしています。今後も災害時対応用のドローン配送ルートの構築及び座標設定を拡大していき、ドローン配送用のインフラ整備・構築をさらに進め、災害時の迅速な対応ができる地域づくりを進めてまいります。
※本実証実験は「令和6年度 木曽郡におけるドローンを活用した災害対策インフラ整備業務委託」として採択されています。
※本事業は「令和 6 年度長野県地域発 元気づくり支援金」を活用した事業です。
1 物流専用ドローン AirTruck
次世代ドローンのテクノロジースタートアップ、株式会社エアロネクストが ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY® により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機です。日本では各地の実証地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高 1300m、外気温-15°Cという環境下の飛行実績をもつ(2023 年 11 月)。最大飛行距離 20km、ペイロード(最大可搬重量)5kg.
2 機体構造設計技術 4D GRAVITY®
飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させるエアロネクストが開発した機体構造設計技術。エアロネクストは、この技術を特許化し 4D GRAVITY®特許ポートフォリオとして管理している。4DGRAVITY®による基本性能の向上により産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がる。
【上松町とは】
上松町は長野県の南西部、木曽郡のほぼ中央部に立地し、東西 24.5km、南北 13km、総面積 168.42km2 の東西に長い地形です。そして、東には木曽駒ヶ岳(2,956m)を主峰とする中央アルプス山系が連なり、西には卒塔婆山(1,541m)、台ヶ峰(1,503m)などの山々が連なっています。町の中央部を北から南へ木曽川が貫流し、それに沿って国道 19 号、木曽川右岸道路、JR 中央本線が並行して走っています。木曽川左岸には木曽駒ヶ岳に源を持つ滑川、十王沢ほか中小河川の急流が木曽川に注ぎ、右岸にも国有林から小川が流入しており、いずれも急峻な地形を呈しています。これらの河川は幽玄な渓谷
を形づくり、木曽五木の森林地帯を流れ、奇勝絶景をなしています。
また、総面積の 95%が森林であり、そのうち 69%と大半を国有林が占めています。耕地や宅地は、合わせてもわずか3%しかありません。この耕地や宅地は主に、河川沿いの台地、標高 550mから 1,100mの地域に集積しています。国内森林浴発祥の地として名をはせる赤沢自然休養林では、施設・エリアが「森林セラピー基地」として認定を受け、赤沢の森林浴が医学的にもリラックスできることが実証されました。
*詳細は https://www.town.agematsu.nagano.jp/をご覧下さい。
【大桑村とは】
長野県の南西部に位置する大桑村は、東西 30km、南北 10km、総面積 234.47 平方 km の山村です。東は南駒ヶ岳をはじめとする中央アルプスの山々、南は南木曽町、北は上松町、西は岐阜県中津川市及び王滝村へ隣接。地形は急峻で、村の総面積の 96%を山林が占めています。中央部を北東から南西に流れる木曽川に沿って国道 19 号、JR 中央線が走っています。集落及び耕地は、木曽川とその支流の伊奈川などの流域(標高 500~800m)に点在しています。
*詳細は https://www.vill.okuwa.lg.jp/をご覧下さい。
【南木曽町とは】
南木曽町は、長野県の南西部・木曽谷の南端に位置し、岐阜県との県境にある町です。総面積は 215.93k m2で東西20km、南北 15km、周囲 70km の山間地であり、木曽川とその支流の与川・柿其川・蘭川・坪川等により形成された狭い段丘上に、与川・北部・三留野・妻籠・蘭・広瀬・田立の7集
落と農用地が細長く点在し、各集落の標高は約 300m から約 950m におよんでいます。また、町の面積の9割は森林で占められており、そのうち約 70%が国有林です。町の中心部を流れる木曽川沿いには南北に JR 中央線と国道 19 号が走り、東西には国道 256 号が伊那谷に通じています。隣県の中津川市中心部まで約 20km、県内近隣市町村の木曽町まで約 35km、飯田市まで約35km の距離にあり、古来より伊那谷、木曽谷を結ぶ交通の要衝でした。急峻な斜面が多く平坦面が少ない地形を作っています。また気候的には温暖ながら雨量が多く、年間降水量は多い年で 2,500mm から 3,000mm に達します。このような地形と気候により、過去より幾多の土石流災
害を引き起こす一方で豊かな森林資源を育み、町は古くから木材生産・木工業を基幹産業としてきました。国選定重要伝統的建造物群保存地区の妻籠宿や、国の近代化遺産に指定された桃介橋をはじめとする恵まれた文化遺産等をはじめとする観光産業が町の主要産業に位置付けられています。
*詳細は https://www.town.nagiso.nagano.jp/をご覧下さい。
【木曽広域連合とは】
長野県木曽地域の特別公共団体です。介護保険・消防・環境・地域振興・森林経営管理・文化教育・ケーブ
ルテレビなど、規約により 31 の広域行政を担っています。
*詳細は https://www.kisoji.com/をご覧ください。
【長野県木曽地域振興局とは】
木曽地域振興局は、長野県が設置する現地機関です。木曽町・上松町・南木曽町・木祖村・王滝村・大桑村の 6 町村で構成される木曽地域で生じている課題やニーズを的確に把握し、関係機関と連携してスピード感を持って主体的・積極的に課題解決に当たる組織です。
*詳細は https://www.pref.nagano.lg.jp/kisochi/somu-kankyo/をご覧ください。
【株式会社エアロネクストとは】
IP 経営を実践する次世代ドローンの研究開発型テクノロジースタートアップ、エアロネクストは、「新しい空域の経済化」をビジョンに、空が社会インフラとなり、経済化されて、ドローンで社会課題を解決する世界を生み出すために、産業用ドローンの技術開発と特許化、ライセンスビジネスを行っています。コアテクノロジーは、重心、空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させる、独自の構造設計技術 4D GRAVITY®。この 4D GRAVITY®を産業用ドローンに標準搭載するため強固な特許ポートフォリオを構築し、4D GRAVITY®ライセンスに基づくパートナーシップ型のプラットフォームビジネスをグローバルに展開しています。また、ドローンを活用した新スマート物流 SkyHub®の実現のために戦略子会社 NEXT DELIVERY を設立し、ドローン配送サービスの社会実装、事業化にも主体的に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
【株式会社 NEXT DELIVERY とは】
エアロネクストグループのミッション「人生 100 年時代の新しい社会インフラで、豊かさが隅々まで行き渡る世界へ」に基づき、2021 年に山梨県小菅村に設立されたドローン配送を主事業とするエアロネクストの戦略子会社。エアロネクストとセイノーHD が共同で開発し展開する、既存物流とドローン物流を繋ぎこんだ新しい社会インフラとなる新スマート物流の仕組み SkyHub®の企画運営、全国展開を推進しており、共同配送とドローン配送に関わるハード及びソフトウェアの開発、販売、運用及び保守事業等の周辺事業も展開しています。山梨県小菅村を皮切りに、北海道上士幌町、福井県敦賀市等、全国各地で地域物流の効率化と地域社会の課題解決に取り組んでいます。
*会社概要は https://aeronext.co.jp/about/company/をご覧下さい。
*エアロネクストおよびエアロネクストのロゴ、NEXT DELIVERY、並びに「4D GRAVITY(R)」「SkyHub(R)」は、株式会社エアロネクストの商標です。
*その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
株式会社石川エナジーリサーチ(太田市<群馬県>)は農薬散布機「アグリフライヤー」シリーズの新モデル「Newアフリフライヤー(仮称)」を開発した。今春、発売する。機体サイズはアーム展開時のタテ・ヨコが962㎜、折りたたむと655㎜で、折りたたみ時のサイズは同社の「アグリフライヤーtypeR」の690㎜より35㎜コンパクトになる。飛行は手動、自動、アシスト、AB地点飛行に対応する。開発コンセプトは「高性能かつ低価格」で、同社の製品紹介ページから問い合わせができる。関係者向けの実演も計画している。
Newアフリフライヤー(仮称)は4本のアームを備えた農薬散布機だ。4つのノズルを搭載し、液剤は1分間に最大3200 cc(600cc~)が散布できる。
バッテリーは16000 mAh。送信機にはSIYI Technology社(中国)製のSIYI MK15が対応する。開発コンセプトは「高性能かつ低価格」で、関心ある農業事業者からの問い合わせを受け付けている。製品保証が付いていて導入初年度は賠償責任保険を無償付帯とする。
機体サイズはアーム展開時がタテ・ヨコは962mm(高さは530mm)で、折りたたむと655㎜になる。コンパクト性で定評がある株式会社NTT e-Drone Technology (朝霞市<埼玉県>)の「AC101」(展開時タテ・ヨコ935mm×935mm、折り畳み時611mm×560mm)に近づく。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、2025年1月30日、仙台市と「災害時におけるドローンによる支援活動に関する協定書」を締結したと発表した。仙台市での発災時などにドローンでの支援活動を行う。
協定では、仙台市内で災害が発生したさいなどに、JUIDAが支援活動を行うことを盛り込んだ。この中には①ドローンによる調査、情報収集、物資運搬②操縦者派遣、機体提供、手続きや他機関との調整などの事務作業③映像等のデータの提供④そのほか必要な活動などが含まれる。
JUIDAは能登半島地震で災害支援に取り組みで自治体との協定が迅速な対応に有効と判断し、現在、都道府県や広域自治体、政令指定都市などとの連携を進めている。自治体からJUIDAに対する相談や問い合わせも増えている。
航空宇宙大手のエアバス(Airbus SE)は、AAM開発を2025年までで中断する。同社は現在、AAMの「シティエアバス・ネクストジェン」のプロトタイプを開発中だが、開発を主導するエアバス・ヘリコプターズのブルーノ・エヴェンCEOが2024年の業績に関するメディア向け説明の中で中断方針を明かした。プレスリリースや文書は公表していないが、DroneTribuneの取材にエヴェンCEOの発言が同社の正式な見解であることを認めた。エヴェンCEOは開発中断の理由をバッテリーの技術開発が追いついていないためであることを伝えていて、開発の再開にあたる次のプログラムの策定時期は「近い将来ではない」と説明している。
エアバスが開発している機体はシティエアバス・ネクストジェン(CityAirbus NextGen)のプロトタイプで、全電動(all-electric)の4シーターeVTOL。8つのローターと固定翼で飛ぶリフト・アンド・クルーズ型で、80kmの距離を航続飛行でき、時速120kmで巡航する設計だ。パイロットが搭乗しない自動操縦機を目指している。体として開発が進められている。2024年初頭に一般公開し、同年11月に開発プログラムの一環として試験飛行に着手し、現在も試験中だ。
エヴェンCEOは1月27日のメディアを前にした説明の中で、現在の開発プログラムをレビューした結果として、「バッテリー技術は、就航に必要な最低レベルの性能を満たすにはまだ進化していないという結論に達した」と述べた。
同社は10年ほど前からAAM開発に取り組んでおり、主に4人乗りのシティエアバス、1人乗りのeVTOL型AAM、エアバスヴァハナ(Airbus Vahana)の開発を通じて知見を蓄積してきた。商用や社会実装の段階に入るためには新たな開発プログラムを策定し進めることが必要になるが、エヴァンCEOは、「新しいプログラムの立ち上げは、多くの要因、ビジネスモデルの成熟度、技術の成熟度に左右される」と述べたうえ、プログラムを進めるのに十分なバッテリー技術の進化の時期を問われ「近い将来ではない」と答えた。
シティエアバス・ネクストジェンは2025年まで飛行を続ける予定だ。なお現在開発に関わっている開発陣、研究者、スタッフらの処遇について、「現時点では言及することがない」と話している。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は1月27日、東京・丸の内の東京會館で新年の集いを開催した。来賓や会員、報道関係者など150人が新年のあいさつを交わした。JUIDAの鈴木真二理事長は毎年恒例になっている年間スローガンを「未来創生元年」と発表した。
鈴木理事長はあいさつの中で、海外28か国・地域と41の連携を結ぶなど国際活連携を積極していることなど主な活動や現状を紹介した。
昨年(2024年)12月時点では会員が27875、認定スクールが233校で、今年(2025年)1月15日に加賀(石川県)にドローン用飛行場を新規にオープンさせたほか、ドローン防災スペシャリスト教育講座も開始したことを報告。11月17日には東京でドローンに関わる国際標準を検討する「ISO/TC20/SC16」東京総会が開かれることや、JUIDAがその事務局を担うことも伝えた。ここではフライトシミュレーター規格づくりが進められているという。
さらに4月に開幕する大阪・関西万博でのドローン利用に関わる安全運航ガイドラインづくりを万博のオフィシャルスポンサーとして担っていること、現在3つの自治体と結んでいる防災協定について、7つの広域自治体、2つの政令指定都市と締結準備に入っていることも発表した。
毎年この時期に公表しているスローガンについては、「JUIDAが11年目に入り、新たなスタートを切ったという趣旨で、『JUIDA未来創生元年』と発表させて頂きます」と述べた。
鈴木理事長のあいさつに続き、国会議員、中央省庁の代表らによるあいさつが行われた。自民党の田中和則元復興相は前年までドローン議連(無人航空機普及・利用促進議員連盟)の会長代理としてあいさつしてきたが、今回初めて会長としてあいさつ。「今日、ドローンは各分野で大活躍しています。中国が先行しているといわれますが、日本は日本独自の知恵を絞りメーカーとしても運用としても世界に発信できればいい。ドローンに携わるみなさまがこの仕事を選んでよかったと思えるようになればいいという思いでおります」などと述べた。
山東昭子元参議院議長はドローン議連顧問として登壇し、「10年前には多くの方が知らなかったものが、今はなくてもならないものになりました。平和を前提にビジネスをしたために世界のマーケットへの道が狭くなってしまっている気もします。技術はすばらしいので、軍事、というと語弊があるかもしれませんが、防衛の面でも国益を守る意味で、開発、研究が進むことを期待しています」などと述べた。
このほか鶴保庸介元特命担当相がドローン議連会長代理として登壇しドローン議連が発足した経緯などについて説明した。「環境変化が激しく速い。みなさんの提案を受けて政策に反映させていきたい」とあいさつした。牧島かれん元デジタル相がドローン議連副幹事長として寄せたメッセージを司会が代読した。
このほか、経済産業省製造産業局航空機武器産業課次世代空モビリティ政策室の滝澤 慶典(たきざわやすのり)室長、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の斎藤賢一課長があいさつした。
このあと関係者、来賓、JUIDA幹部らが乾杯し、これを合図に会員同士の懇親が進んだ。