精密切削加工の株式会社共和製作所(碧南市<愛知県>)は、モーターの振動を吸収する新開発の複合材サンドイッチプレート試作部品を、6月5~7日に千葉・幕張メッセで開かれるドローンの大規模展示会「Japan Drone 2024」で展示すると発表した。複合材サンドイッチプレートはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の間にNFRP(天然繊維強化プラスチック)をはさんで成形した素材で、ドローンに搭載することで振動がフライトコントローラー(FC)やアンテナに与える影響を抑える。
複合材サンドイッチプレートのほか、CFRPやNFRPの部品も展示する。株式会社リベラウェア(千葉市)の超狭小空間点検ドローン「IBIS2」のCFRP製サイドフレームをNFRPに換装したモデルも展示する。NFRPそのものが高い振動減衰性を持っているため、静音性や安定性の向上も期待されるという。
共和製作所の発表は以下の通り
・振動吸収に特化した新素材「複合材サンドイッチプレート」の試作部品を開発 ドローン展示会「Japan Drone 2024」にて初公開
株式会社共和製作所(本社:愛知県碧南市、代表取締役社長 河口 治也 以下、共和製作所)は、2024年6月5日(水)~7日(金)に幕張メッセで開催されるドローン展示会「Japan Drone 2024」に出展いたします。
本展示会では、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やNFRP(天然繊維強化プラスチック)の空飛ぶクルマやドローンの部品を展示いたします。また、新たに複合材サンドイッチプレートの試作部品も展示予定です。
ドローンモーター専用のNFRPスペーサー
CFRPのフレームにドローンモーターを設置すると、機体が共振を起こすことがあります。そこで、このNFRPのスペーサーを間に挟むことにより、NFRPが異なる共振周波数を持つため、共振の発生を抑制します。また、NFRP自体が高い振動減衰性を持つため、フライトコントローラー(FC)やアンテナへの振動による影響を大幅に低減します。
NFRP(天然繊維強化プラスチック)とは、植物由来の繊維でプラスチックを強化した素材です。軽量で強度があり、CFRPよりも振動減衰性が高いのが特徴です。また、環境負荷が少なく、CO2排出量削減にも貢献するエコな素材です。
小型ドローンのNFRP試作部品
リベラウェア社製の超狭小空間点検ドローン「IBIS2」に使用されているCFRPサイドフレーム部品をNFRPで製作しました。NFRPにすることで、従来のCFRPよりも振動減衰性と静音性に優れ、機体の安定性と操縦性を向上させる効果が見込まれます。
クローラーの複合材サンドイッチプレート試作部品
災害用遠隔操作クローラーのメインプレートをCFRPから複合材サンドイッチプレートに換装しました。 これにより、荒れ地を走行するタフさを維持しつつ、メインプレート上部に設置されているCPUや通信機、カメラなどの精密機器への振動を大幅に低減します。
複合材サンドイッチプレートとは、2層のCFRPの間にNFRPを挟み込んで成形した特殊な多層複合材です。表面はCFRP、中間層はNFRPという形状で、CFRPの持つ高強度高弾性に加えて、NFRPの高い振動減衰性を併せることで、従来の材料をはるかに超える性能を発揮します。
空飛ぶクルマ・ドローンへの取り組み
共和製作所は、1962年創業の精密切削加工会社です。2016年にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の切削加工を開始したのを機に、2017年からはCFRPと相性の良いドローン分野に参入。以降、CFRPの空飛ぶクルマやドローンの部品を多数製作してきました。
現在はCFRPだけでなく、NFRP(天然繊維強化プラスチック)や複合材サンドイッチプレートなどを用いた部品の試作も進行中です。これらの複合材は、従来の金属部品よりも軽量かつ高強度であり、空飛ぶクルマやドローンの性能向上に貢献します。
共和製作所の強み
共和製作所の空飛ぶクルマ・ドローン事業における強みは、以下の3つになります。
1. 複合材の精密・微細切削加工技術
共和製作所は、CFRPをはじめとする複合材の精密切削加工と微細切削加工を得意としています。特に小型ドローンやマイクロドローン向けの精密小型部品の製作において、高い技術力と豊富な経験を有しています。
2017年から様々な空飛ぶクルマやドローンの部品を製作してきた実績を持ち、生産体制も構築しています。また、複合材に関する深い知見を活かして、協力会社と共同で「ドローン専用の電源ケーブル入り強化アラミド繊維ロープ」の開発にも成功しています。
部品製作にとどまらず、操縦技術や関連する知識の習得、機体の構造まで幅広く学ぶことで、空飛ぶクルマ・ドローンへの深い理解を培ってきました。さらに、深圳で開催される世界最大のドローン展示会視察や新スポーツ「ドローンサッカー」への参加など、常に最新技術と市場動向を把握し、情熱を持って事業に取り組んでいます。
[空飛ぶクルマ・ドローンに関連する保有資格]第1級陸上特殊無線技士
第2級海上特殊無線技士
無人航空従事者試験1級
DPAドローン操縦士回転翼3級
第3種電気主任技術者(電験3種)
第2種電気工事士
■株式会社共和製作所について
共和製作所では 「“技術力”と“行動力”でモノづくりに貢献する」 の理念を元に、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やNFRP(天然繊維強化プラスチック)などの複合材の切削加工を行っております。
また、複合材の可能性に着目し、様々な工業製品(部品)を製作・導入することで、日本全体の労働生産性を向上し、世界に負けない日本の製造業と成れるよう尽力して参ります。
株式会社共和製作所(キョウワセイサクショ)
代表取締役社長:河口 治也
所在地:〒447-0857 愛知県碧南市大浜上町二丁目35番地2
電話番号:0566-70-8481
創業:1962年1月
設立:1973年12月
資本金:1000万円
従業員数:4名
事業概要:カーボン(CFRP)商品の製造・加工・販売
会社ホームページ: https://www.kyowa-tokai.com/
材料販売サイト : https://cfrp-plate.com/
節目としての2025年
2025年は日本の次世代エアモビリティ産業(空飛ぶクルマ、ドローン)にとって重要な節目の年になる。
大阪・関西万博では、空飛ぶクルマのデモンストレーションが行われる。空の移動革命に向けたロードマップでも、万博は重要なマイルストーンとして位置付けられている。
今年は、航空法で無人航空機が定義されてから10年を迎える。民生用マルチコプターの普及や首相官邸無人機落下事件(2015年4月)などを背景に、小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会の設立や改正航空法の施行など、日本でドローンのルール形成が本格化した。日本のドローン関連の団体は、この時期に創立したところが多い。
次世代エアモビリティが産業として発展するためには、次の10年に向けたビジョン・世界観を共有していくことが重要である。次の10年間はAIなどのテクノロジーが私たちの経済活動、社会活動に溶け込むことになる。
日本は、人口減少やインフラ老朽化、気候変動、大規模災害などのリスクに直面しているが、新しいテクノロジーの実装は持続的な経済成長の実現に貢献できる可能性がある。石破政権は地方創生2.0の中で新しい技術の活用を進める方針を示している。
次世代エアモビリティは地域社会を支える新しいインフラや産業として、分散型ネットワーク社会の実現に貢献できる可能性がある。持続可能なエコシステムを形成するためには、(1)産業構造の構築や、(2)重要技術の研究開発、(3)グローバルとローカルでの事業展開、(4)制度設計・ルール形成の推進、(5)専門的な人材育成を進めることが柱として重要になる。
(1)産業構造の設計
業務用の次世代エアモビリティの産業構造として、セクターと提供する機能をベースに設計する方法が考えられる。
セクターは、民間・学術・公共・防衛の四つに分類する。
・民間:事業者による活動(ドローンの利活用の例:点検、建設・土木、物流、農林水産業、警備、空撮、エンターテイメント、空飛ぶクルマの利活用の例:輸送)
・学術:教育機関による活動(例:実習・訓練、学術研究)
・公共:政府機関や自治体の活動(例:警察、消防、海上警備)
・防衛:自衛隊の活動(例:各種事態への対応、災害派遣)
提供する機能は、サービス、アプリケーション、機体・ハードウェア、管制・通信・地上インフラ、周辺領域などのレイヤーで分類する。
近年、日本でもデュアルユース技術への関心が高まっており、ドローンも重点分野の一つとして注目されている。そうした中で、具体的に市場を開拓していくためには、産業全体の構造を示した上で、各企業が強みとなる分野を成長させていくことが重要になる。
(2)重要技術の研究開発
次世代エアモビリティの事業化を進めるためには、安全性・経済性・環境性を満たすことが求められる。機体開発や運航管理などが技術開発の対象となる。
航空産業は統合的なイノベーション産業としての側面があり、開発した技術は他の分野でも応用できる可能性がある。経済安全保障戦略としても重要性が高い分野である。
日本で次世代エアモビリティ分野で研究開発するためには、航空やロボット分野の人材を中心に、製造業や社会インフラなど日本が強い分野の知見を活かすことや、グローバルな開発チームを編成することなどが考えられる。
(3)グローバルとローカルでの事業展開
日本の次世代エアモビリティ産業が成長するためには、グローバルとローカルでの事業戦略を考えていく必要がある。
具体的な例として、エアロネクストは、モンゴルのウランバートル市内で、ドローンや次世代輸送配送管理システムを活用したスマート物流の都市型モデルの実装を進めている。国内では戦略子会社のNEXT DELIVERYが、小菅村モデルの普及に向け、ドローン配送の事業化を進めている。小菅村では、ドローンの活用や、物流倉庫への荷物の集約など、山間部における新しい物流の取り組みが行われている。
新興国におけるインフラの構築と、人口減少社会における国内のインフラの再構築をセットで進めることは、日本の成長戦略として有力な選択肢になる。事業展開として、機体・システム事業者と、各地の社会インフラ事業者が連携し、サービス展開する方法がある。
(4)制度設計・ルール形成の推進
日本では次世代エアモビリティ分野の制度設計は、ロードマップに基づき進められている。空飛ぶクルマは「空の移動革命に向けたロードマップ」、ドローンは「空の産業革命に向けたロードマップ」が公開されている。
空飛ぶクルマは万博に向けた準備、ドローンはレベル4(有人地帯における目視外飛行)の導入などが進められてきた。岸田政権ではデジタル技術の実装に向けた規制改革が行われた。
次のステップとして、空飛ぶクルマについては商用運航に向けた制度(例:機体、技能証明、空域・運航管理、離着陸場)の具体化が重要になる。ドローンについては利活用の拡大に向けて、運航管理システム(UTM)の導入、ドローン航路の整備、機体・型式認証制度の運用改善、災害時における運用などが重要なテーマとなる。
(5)専門的な人材の育成
先端的な技術の開発や実装をするためには、人材育成を重点的に行なっていくことが求められる。21世紀に入り、デジタル技術の発展が進んでいるが、産業活動や社会活動においてどのように活用するかは人間が判断することが求められる。
大学や高専などの高等教育機関は、学生向けの教育、企業との共同研究、社会人向けのリカレント教育、海外の教育機関との共同プログラムの展開をセットで行い、地方創生の拠点として発展を目指す方法がある。
地域の産業活動を担う人材を育成するためには、専門高校(例:農業高校、工業高校、水産・海洋高校、商業高校)で、現場作業におけるフィールドロボットの利活用について実習を行うことも施策の候補になる。
今回の記事では、日本の次世代エアモビリティ産業にとって2025年が重要な節目であることを示した上で、次の10年に向けたビジョン・世界観を共有することの重要性について提案を行った。
次世代エアモビリティを産業として持続的に発展させるためには、産業構造の設計や、重要技術の研究開発、グローバルとローカルでの事業展開、制度設計・ルール形成の推進、専門的な人材の育成を行っていくことが重要になる。
福島県立船引高校(田村市)のドローン科学探求部は1月18日、慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)が実施してきた特別講座の成果を市民や関係者に披露した。慶大は2016年12月に田村市と締結した連携協定に基づき、市内の船引高校に特別講座を提供している。この日は3班に分かれこの1年間の取り組みの成果として空と水のドローンの連携、FPV、AI物体検知、プログラム飛行などを披露した。発表会は白石高司田村市長も見守り、高い賛辞を送った。また慶應ドロコンの古谷代表は発表した高校生らに特別講座の終了証を手渡した。
発表会は田村市役所3階会議室で行われた。ここは2016年12月21日に、田村市と慶應による連携協定締結会場となった場所で、大学が自治体による初めてのドローン連携協定として話題となった。慶應は連携協定に基づき、市内にある県立高校である船引高校に特別講座を提供してきた。この特別講座が現在の船引高校ドローン科学探求部につながる。
慶應特別講座は2023年度から「AI×ドローン×プログラミング」がテーマで、2024年度は同じテーマを応用編として展開された。具体的には2023年度はプログラミング言語「Python」を使ったドローン操作、AI物体検出アルゴリズム「YORO」を使った独自の物体検出モデル構築と運用を実施、2024年度は3Dプリンター製の水上・水中ドローンと飛行するドローンを組み合わせた運用、FPVドローンの閉所運用、AIドローンの自律飛行と3Dマッピングなどが含まれた。講座は慶應が田村市と連携し、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構が実施している復興知事業(大学等の「復興知」を活用した人材育成基盤構築事業)の一環として実施している。
2016年から続く特別講座について、慶應ドロコンの古谷代表は「今年で9期目となり、年々内容が成熟し高度化しています。水上と水中のドローンという新しい取り組みも行いました」と説明した。また白石高司・田村市長は発表を前に「この田村の地、福島県の空を多くのドローンが飛んで生活が豊かに、便利になることを祈念しています」などとあいさつした。
発表では部員が3班に分かれ、各班は「水中、水上ドローンについて」「FPVドローンについて」「プログラミングについて」をテーマに発表した。
水上・水中班は、有線の水中ドローン、無線の水上ドローンを説明したうえで、釣り用の水中ドローン「FishingRoid」の操縦体験や、飛行ドローンで撮影した映像をモニターで共有し、映像を見ながら水上ドローンを操縦することに挑戦したことなどを報告した。利点は難しさを分析し、災害や点検、生き物調査での活用への展望を述べた。
FPV班はFPVを自分がドローンに乗っているように見える特徴を持つ技術であると説明し、DJIのAVATA2の操縦体験を報告した。物体検知のAIと組み合わせで、遭難者捜索に活用できる可能性を感じたことも発表した。米SkidioのAIドローン「X10」が短時間で3Dモデルを作成したことも伝えた。観光やインフラ点検、災害現場での捜索などへの応用などにも言及した。
プログラミング班は小型ドローンのプログラム飛行を実演。会場内で自動離着陸する様子を見せたが、プログラムでは別の動作も予定していたため、プログラミングで何ができるのかなどについて映像と口頭発表で伝えた。発表の中ではPythonでTELLOに指示してプログラム飛行させたことや、プログラミング飛行の難しさのひとつとして電波干渉を取り上げ、対策として電波を測定し、干渉の少ない場所で飛行をさせたことを伝えた。プグラミング飛行で農薬散布や植生判断などへの活用が有望との見解も発表した。
意見交換の場面では、見学していた市民からは「素晴らしい発表。ドローンを取り扱う高校は全国的には珍しいと思う」などと感心するコメントがあったほか、高校生から「ドローンに触れたことのない市民も参加できるサークルのようなものがあると親しみやすくなるのでは」と提案があがる場面があった。
さらに、隣接する郡山市の防水加工事業者、福島防水株式会社に就職した船引高校卒業生が、防水加工作業のうち、現地調査、工程写真撮影にドローンを役立てていることを紹介し、高校生に対し「部活動で学んでいることが使えるかもしれないので、たとえばホームページの広告を新しくするなどのときに提案をしてみるなどをしてもよいかもしれないと思います」と、学んだ知見の活用を呼び掛けた。
白石市長は「発表は素晴らしく、予想以上にびっくりしました。この技術は応用の余地が大きく、会社をつくることもできそうだと感じました。空飛ぶクルマにつながる知見でもあり、みなさんには今学んでいる知見がものすごく可能性があるものだと感じて、学んでほしいしいろんな方に伝えていってほしいと思います」と感想を述べた。
慶應ドロコンの古谷代表は「社会にはドローンが関われる多くの課題とニーズがあります。地域のニーズと生徒さんたちの技術シーズをマッチングさせて、たとえばビジネス創出につなげて経済をまわすことなど、科学技術と社会課題解決とをつなぐことも考えてみたいと思っています」と述べた。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は阪神・淡路大震災が発生した1月17日、ドローンによる災害対応の調整力や現場の統括力を養成する新講座、「ドローン防災スペシャリスト教育講座」を発表した。能登半島地震でドローンの運用を調整、統括した実践経験もふまえ、どこで災害がおきても現場で調整、統括できる人材の要請を目指す。避操縦にも受講を呼び掛ける。
「ドローン防災スペシャリスト教育講座」は、パソコン、スマートフォンなどを使うオンライン学習(eラーニング)形式で提供する。価格は税込み44000円で、JUIDA会員であれば38500円になる。テキストがないかわりに、3年間は繰り返し視聴できる。収録時間は4時間程度で、早送り再生での視聴に慣れていれば短縮も可能だ。終了すればJUIDAから終了証が発行される。
JUIDAが能登半島地震でドローンの運用現場を統括したさい、自衛隊や自治体、民間事業者、被災者など関係各方面との意見や都合の調整と、統括して災害対応の成果をあげることの重要性を痛感し、現場で調整役、当活役を担える人材を養成する講座をつくった。
受講対象に操縦者である必要がないことも特徴で、ドローンを用いた防災活動への関心層を広く対象としている。この中には、自治体職員、自衛隊、消防、自衛隊、DMATなどを含み、ドローン事業者も入る。
講座には、災害時のドローン運用調整、役割分担、各方面との連携を円滑に運ぶスキル、連携各方面との共通の目標設定、災害時の法令、体制構築スキル、事前準備、意思決定、最適な活用方法を判断するスキル、などが含まれている。
JUIDAの発表はこちら:https://uas-japan.org/information/information-34732/
昨年末に破産を申請したドイツのAAMメーカー、ヴォロコプターはJCAB(日本の国交省航空局)に申請している型式認証の申請について取り下げない方針だ。同社がDroneTribuneの取材に回答した。これまでに2年以上当局と良好な関係を構築しており、「今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もない」という。テスト飛行など必要な作業を続けながら、立て直しに注力し、弁護士をまじえて立て直しの方向を模索するとともに、昨年末から投資家とも接触している。
ヴォロコプターはDroneTribuneの質問に回答し、国交省航空局が申請を受理して手続きを進めている同社の2人乗りeVTOL型AAM「VoloCity(ヴォロシティ)」の型式認証(TC)取得について、申請を取り下げない方針を明確にした。航空局も受理した申請について手続きを継続する姿勢を示しており、当面は従来通り、TC取得手続きが進行む。
ヴォロコプターのTC申請については、国土交通省航空局(JCAB)、欧州航空安全機関(EASA)と日欧それぞれの航空当局が受理し、これに基づいて手続きを進めている。当局が受理したのは2023年2月21日だが、ヴォロコプターが申請したのはその前年(2022年)の末だ。これをふまえ、ヴォロコプターは「2年以上EASA&JCABと良好な関係を築いているうえで、技術説明、テスト飛行、書類の整理などを行なっております。昨年、大阪・関西万博での飛行が商用運航からデモ飛行に切り替わったことに伴い(TC取得を)急ぐ必要性が薄まり、プロセスを一時保留しておりますが、今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もありません」と話している。
一方、再建にも注力する。現時点で具体策はまとまっていない中、もともとコスト管理を徹底して対応を進めており、立て直す箇所の特定を弁護士とともにすすめている。「他社と比較し認証費用を半分以下に抑えている」ケースもある中で、EASA監査の75%を完了していて、当面は投資家との連絡も図りながら再建策構築に注力する方針だ。
ヴォロコプターがTC取得を目指しているヴォロシティは2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。海外製AAMの中では日本でなじみの深い機体のひとつで、2023年3月には、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開され、居合わせた来場者や通行人の搭乗体験を受け入れていた。もともと、大阪・関西万博で飛行を披露する機体に含まれていたが、2024年9月に飛行を担う4グループのひとつ、日本航空、住友商事グループが、運用機体をヴォロコプターのヴォロシティから、米国 アーチャー社(Archer Aviation, Inc. )のMidnight(ミッドナイト)に変更することが公表された。なお、運用機体変更のタイミングで、万博での運航チームそのものも日本航空、住友商事から両者が出資する株式会社Soracle(ソラクル、東京)に引き継がれている。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は会員向けに株式会社ウェザーニューズ社が登壇するWEBセミナーを案内している。テーマは気象リスクでJUIDA会員は無料で受講できる。登録方法などはJUIDA会員に直接連絡している。
JUIDAは会員向けのサービス提供に力を入れていて、ウェザーニューズのセミナーもその一環だ。セミナーはWEB会議ツールを通して行われ、ウェザーニューズの無料アプリを使いながら気象リスクを説明する。
JUIDAの会員向けには1月下旬に、JUIDAの鈴木真二理事長が年間スローガンを公表することで知られる新春パーティーを開催し、会員相互の親睦を図る。例年、ドローン議連を構成する国会議員らがかけつけあいさつをする機会にもなっている。
国交省航空局は1月6日、ドイツのAAM開発事業者、ヴォロコプターから受理している型式証明申請の手続きを当面、継続する方針を明らかにした。ヴォロコプターは昨年(2024年)末、裁判所に暫定的な破産手続きを申請しており、関係機関の対応に関心が寄せられている。航空局は、ヴォロコプターの破産を情報として把握しているものの、ヴォロコプター側から直接の報告や申請の取り下げなどの連絡は1月6日時点ではないという。航空局が申請者の財務状況を確認する決まりはなく、ヴォロコプターも事業継続姿勢を転換していないことから、当面は受理に従って手続きを進める。
航空局はヴォロコプターの破産について、同社による昨年12月30日の公表と、それをもとにした報道ベースで把握している。一方、破産に関する連絡や型式証明の取得申請に関する方針転換などの連絡はないという。航空局は「手続きにはリソース(労働、時間など)を投入しており、関心は持っている」ものの、ヴォロコプター側から方針を転換する意思表示などがないいため、「受理した状況が維持している前提で作業を続けることになる」という。
ただし、「型式証明の手続きは、航空局が一方的に行うものではなく、申請側(この場合はヴォロコプター)とやり取りをしあう」ため、その中で方針に関する意図が表明された場合には、改めて対応を検討する可能性がある。
ヴォロコプターは昨年(2024年)12月30日、4日前の2024年12月26日に、拠点のあるバーデン=ヴュルテンベルク州のカールスルーエ高等裁判所に破産手続きの開始を申請したことを公表した。裁判所は申請の翌日に暫定破産管財手続きを開始し、現在、管財人の下で対応を進めながら、事業を継続している。同社の公表文では「破産」に該当する英語をinsolvencyと表現していて、一般に資産を売却して、負債を返済しきれない債務超過の状態を示す。
日本では2023年2月21日に航空局がヴォロコプターからの型式証明の申請を受理したことを発表している。ヴォロコプターが申請した機体は「VoloCity(ヴォロシティ)」と呼ぶ2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。同社は航空局に申請した翌月の3月8日、大阪・関西万博でエアタクシーとして運航を目指す機体として、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開していた。2024年夏のパリ五輪会場の飛行を計画していたが欧州の航空当局EASA(欧州航空安全機関)から基準を満たさない個所があると指摘を受けたことなどから、ヴェルサイユ宮殿で「VoloCity」 の前のモデル「2X」を飛行させるなど計画変更を余儀なくされていた。その後、大阪・関西万博でVoloCityの飛行することになっていた日本航空、住友商事のチームが2024年9月に運用機体を変更することを表明していて、VoloCityは万博での飛行計画からはずれていた。
一方、市場投入を目指す姿勢は維持し続けていて、万博の飛行計画からはずれたさいも、引き続き商用運航を目指す方針を示していた。破産申請も事業継続をするための選択であったと言われており、同社は管財下で財務基盤の強化を目指しつつ事業継続を模索するとみられる。
<関連>
Volocopter破産申請:https://www.volocopter.com/en/newsroom/volocopter-files-for-insolvency-in-germany
航空局がTC申請受理(2023年):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001588330.pdf
大阪で実物大モデル公開(2023年):https://dronetribune.jp/articles/22336/