株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)と、大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ、大阪市)は大阪エリアで空の移動革命を社会実装させるために共同で取り組む業務提携を結んだ。また大阪メトロがSkyDriveに出資した。大阪メトロによるSkyDriveへの出資は8月23日付。今回の出資の金額は非公表だが、SkyDriveの資金調達は2022年9月のシリーズCラウンド以降の3回で累計約80億円となり、またこれを含めた調達総額は350億円超となった。大阪メトロは2025年の大阪・関西万博でVポート(離発着場)の整備を担うことになっている。これをきっかけにエアモビリティ事業に本格的に参入する方針で、10月1日には社内に専門の部署を発足させる。万博閉幕後の2028年に大阪市内の大阪城東部の開発エリアに新設を計画しているメトロ新駅にVポートの設置を目指しており、大阪メトロの河井英明社長は新駅の開業にあわせ、Vポートを活用した空のサービスを開始することを目指すことに「願わくば、そうなれば望ましいと期待しています」と意欲を示した。
提携は8月26日に発表された。大阪市内の大阪メトロ本社では、大阪メトロの河井英明代表取締役社長、SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOらが会見した。
河井社長は「大阪全域での格段に便利で快適な移動サービスを構築するモビリティのベストミックスカンパニーに取り組んでおります。空飛ぶクルマが加えることで地下、地上、空が一体となったあらゆる移動サービスにこたえる交通インフラの確立を目指します」と空クル事業への参入の意義を説明。「当社がVポートの整備や運営を手掛けます。ストレスフリーな、多様なモビリティの結節点として、今後開発する中規模から大規模の乗り継ぎハブとして、必要に応じて(ビルの)屋上などにも設置して、都市機能のさらなる強化を図りたいと思っています」と述べた。
業務提携について、河井社長は「空飛ぶクルマの社会実装、都市内の輸送などでの両者の目指す姿が一致したことと、大阪メトロのVポート事業、SkyDriveの機体製造、運航事業の補完関係が極めて明確で、SkyDriveは私どもにとってベストパートナー。当社はこれから空飛ぶクルマ事業に本格的に参入していく所存ですが、現時点では知見が不足しており、事業かに必要な各種調査、人材交流、事業化後の協力体制までを盛り込んだ提携を結びました」と提携締結の経緯を説明。「(大阪城東部に計画している)『森之宮新駅』のVポート設置をはじめ、当社の空クル事業を加速させ、大阪における空飛ぶクルマの社会実装につなげたいと考えています」と意欲を示した。
大阪メトロからSkyDriveへの出資について、河井社長は「空飛ぶクルマ事業は先行事例もなく両者とも相当のリソース、エネルギーを投入する必要があり、出資することでSkyDriveの財務面をサポートし、強固なパートナーシップを築くことにしました」と説明。関連して「また空飛ぶクルマに関わる専属の組織をたちあげることを決めました」と10月1日付で新部署を設置する方針を示した。後世メンバーは今後調整するが、この時点では中期的に10人規模をめざし、社内の人材のほか、外部の有識者の登用も検討する見込みだ。
SkyDriveは、自社開発のエアモビリティを、自動車を日常的に使うように運転の延長線上で空を移動できる乗り物を作りたいという思いから創業時から「空飛ぶクルマ」と呼び、英語表記として「FLYING CAR」を使っている。現在開発中の機体は操縦士1人と同乗者2人までの3人乗りの12基のローターを搭載するバッテリー駆動のエアモビリティで、陸上を走る機能は持たないが、創業時の思いは自動車の延長線上で日常使いできる空の乗り物だった。現在も将来的な空と陸の両用機の開発を排除していない。
この日の会見では福澤CEOが自社開発中、製造中の「空飛ぶクルマ」の特徴や開発にかける思い、エアモビリティのある社会の利便性などを説明したあと、大阪メトロとの関係について言及した。その中で、大阪メトロの河井社長らがSkyDriveの施設を見学に訪れて熱心に見学したことや、意見交換でモビリティ革命について意気投合したことなどを紹介した。
福澤CEOは「大阪における多くの方々の日常的な移動の向上に起用したいと思っています。新しいものを生み出す観点からは、機体開発だけではなく、効率のいいオペレーション、利用者にとっての使いやすさも同時に満たす必要があります。両者一眼となってプロジェクトに取り組んで参ります」と抱負を述べた。
また福澤CEOは、記者会見の質疑応答に答える形で自社製品について触れ「(大阪関西万博では)デモフライトを実施すべく動いております。そのタイミングで(世界の)いろんな会社が飛行を目指しています。その一番進んでいる会社とあまり大きな差はないレベルだと思っております。ほかのプレイヤーと一緒に万博でデモフライトができればいいと思っています」と自信をのぞかせた。
また大阪メトロからの出資については、「とっても助かります。大変ありがたい」と感謝した。そのうえで「モノができたあとには、利用者が実際にどう使い、うまくワークするのかどうかが大事になります。ぼくらは飛ばすことについてはできますが、利用者にとって移動ニーズがあるのか、コストと価格が見合うのか、地下鉄やオンデマンドバスと組み合わせたときの結節点のありかたはこれでいいのか、といった需要側のことがわからない面があります。そうしたところをワンチームで勧めたいと考えています」と付け加えた。
空クル事業のサービスについて、大阪メトロの河井社長は「最初は遊覧飛行ぐらいかもしれません」などと展望。日本で最初の商用運航でありたいか問われた質問に対して、「できることでありましたらそういうことも目指したい」と応じた。
商用運航のスタートの時期について河井社長は「万博が終わって数年以内にはスタートしたいと思っています」と述べたあと、2028年に開設を目指す森之宮新駅との関連について追加で質問をされ、「新駅にVポートをつくれないか検討を進めていきたいと思っています。(森之宮では)新しい駅ビルもつくります。再開発も行いますのでそこにVポートをつくりたい。タイミングがあえば(2028年のサービス開始が)望ましいかな、と期待しているところです。私どもだけでできるわけではないですが、私どもとしてはそう願っています」と2028年のサービス開始に期待を寄せた。福澤CEOも「われわれも目指します」と同調した。
大阪メトロとSkyDriveは提携についてプレスリリースを発表している。SkyDriveのプレスリリースは以下の通り。
~併せて、Osaka MetroからSkyDriveに出資いただきました~
(※編集部注:大阪メトロもほぼ同じ内容のリリースを公表している。会社名の場所や上記の「出資いただきました」が「出資しました」になるなど文章上の係り結びが整理されている)
「空飛ぶクルマ」(※1)の開発およびドローン関連サービスを提供する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO 福澤知浩、以下「SkyDrive」)は、空飛ぶクルマの社会実装を目指し、2025年日本国際博覧会(以下「大阪・関西万博」)後の大阪エリアでの空飛ぶクルマを用いた事業化に向けた検討を行うことを目的に、大阪市高速電気軌道株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長 河井英明、以下「Osaka Metro」)と業務提携契約を締結したことをお知らせします。併せて、Osaka MetroからSkyDriveに出資いただきました。
SkyDriveは「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに、「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく、「空飛ぶクルマ」の開発をしています。大阪・関西万博においては、「空飛ぶクルマ」の2地点間での運航事業者に選定されています(※2)。
Osaka Metroは、地下鉄およびニュートラムを9路線運営しており、1日の乗降客数は平均約240万人にのぼります。大阪を各段に便利で快適なまちにしていくことを目的に都市型MaaS構想「e METRO」を推進しており、パーソナルな移動を実現するための新たな選択肢として「空飛ぶクルマ」も視野に入れています。2024年2月には大阪市の「空飛ぶクルマ」会場外ポート事業者として選定され、バーティポートの整備を進めていきます。
両社は、Osaka Metroが「空飛ぶクルマ」会場外ポート事業者として選定されて以来、協議を進めてきました。議論を進める中で、Osaka Metroが都市型MaaS構想で目指す「あらゆる移動ニーズに応える交通インフラの確立」と、SkyDriveが実現を目指している、「空飛ぶクルマ」によって日常の移動に空を活用する世界に親和性があると考え、この度、業務提携契約の締結に至りました。
今回の提携により、両社はビジネスモデルの策定・精緻化、オペレーション内容の設定・確定など、「空飛ぶクルマ」の事業化に必要な検討を進めてまいります。
(以下にSkyDriveのシリーズCについてのリリースがあります)
~「空飛ぶクルマ」の機体開発および製造を加速~
「空飛ぶクルマ」の開発およびドローン関連サービスを提供する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO福澤知浩、以下「当社」)は、新たに4社を引受先とした第三者割当増資により追加調達を完了しました。2022年9月に実施したシリーズCラウンド以降、3回に渡り追加調達した金額は累計約80億円となります。
<本ラウンドの引受先>(五十音順)
<これまでの追加調達のプレスリリース>
2024 年 1 月:https://skydrive2020.com/archives/41403
2023 年 4 月:https://skydrive2020.com/archives/21778
■ 資金調達の背景・目的
当社は、「100 年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに 2018 年に設立し、「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく、空飛ぶクルマの開発を行っています。社会実装する上で不可欠な認可の1つが型式証明です。当社の製品『SKYDRIVE(SD05型)』は、2021年に日本の国土交通省により、型式証明申請が受理され、2022年には審査適用基準の方針を合意しました。現在は、次の段階である適合性証明計画の合意に向け、開発と並行して証明活動を行っております。そして、証明計画合意後は、その計画に沿って地上試験、飛行試験等を行います。
今回の資金調達を通して、前述の地上試験、飛行試験等の環境や体制を強化し、開発・証明活動を加速していく所存です。加えて、量産に向けた品質保証部門等の増員・強化にも着手してまいります。
また、当社の『SKYDRIVE(SD-05型)』は、4カ国(日本、アメリカ、韓国、ベトナム)から、合計263機のプレオーダーをいただいております。お客様に納入後も機体のコンディションが管理できるよう、設計から製造そして納入後まで、一貫して機体データを管理するデジタルプラットフォームの構築を進めてまいります。
■株式会社SkyDrive代表取締役CEO福澤知浩コメント
2022年9月のシリーズCの資金調達時以降、多くのグローバルトップクラスの航空機エンジニアがチームに加わり、当社の機体開発は大きく前進する事が出来ました。また、株主でもあり強力なパートナーであるスズキ株式会社のご協力の元、2024年3月、スズキグループの静岡県磐田市の工場で『SKYDRIVE(SD-05型)』の製造を開始することが出来ました。
事業開発においても、スズキのサポートの元、インドでの市場開拓を進め、グジャラート州政府と戦略パートナーシップを締結しております。
アメリカにおいては、2023年11月にSkyDrive America, Inc.を設立、サウスカロライナ州やジョージア州等の各空港を起点とした航路検討が進んでおります。
この度、投資家の皆さま、事業会社の皆さまに、当社の進捗を評価していただき、強力なサポートをいただくことができました。感謝するとともに、皆様のご期待に応えるべく全力で開発と事業を進めてまいります。
節目としての2025年
2025年は日本の次世代エアモビリティ産業(空飛ぶクルマ、ドローン)にとって重要な節目の年になる。
大阪・関西万博では、空飛ぶクルマのデモンストレーションが行われる。空の移動革命に向けたロードマップでも、万博は重要なマイルストーンとして位置付けられている。
今年は、航空法で無人航空機が定義されてから10年を迎える。民生用マルチコプターの普及や首相官邸無人機落下事件(2015年4月)などを背景に、小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会の設立や改正航空法の施行など、日本でドローンのルール形成が本格化した。日本のドローン関連の団体は、この時期に創立したところが多い。
次世代エアモビリティが産業として発展するためには、次の10年に向けたビジョン・世界観を共有していくことが重要である。次の10年間はAIなどのテクノロジーが私たちの経済活動、社会活動に溶け込むことになる。
日本は、人口減少やインフラ老朽化、気候変動、大規模災害などのリスクに直面しているが、新しいテクノロジーの実装は持続的な経済成長の実現に貢献できる可能性がある。石破政権は地方創生2.0の中で新しい技術の活用を進める方針を示している。
次世代エアモビリティは地域社会を支える新しいインフラや産業として、分散型ネットワーク社会の実現に貢献できる可能性がある。持続可能なエコシステムを形成するためには、(1)産業構造の構築や、(2)重要技術の研究開発、(3)グローバルとローカルでの事業展開、(4)制度設計・ルール形成の推進、(5)専門的な人材育成を進めることが柱として重要になる。
(1)産業構造の設計
業務用の次世代エアモビリティの産業構造として、セクターと提供する機能をベースに設計する方法が考えられる。
セクターは、民間・学術・公共・防衛の四つに分類する。
・民間:事業者による活動(ドローンの利活用の例:点検、建設・土木、物流、農林水産業、警備、空撮、エンターテイメント、空飛ぶクルマの利活用の例:輸送)
・学術:教育機関による活動(例:実習・訓練、学術研究)
・公共:政府機関や自治体の活動(例:警察、消防、海上警備)
・防衛:自衛隊の活動(例:各種事態への対応、災害派遣)
提供する機能は、サービス、アプリケーション、機体・ハードウェア、管制・通信・地上インフラ、周辺領域などのレイヤーで分類する。
近年、日本でもデュアルユース技術への関心が高まっており、ドローンも重点分野の一つとして注目されている。そうした中で、具体的に市場を開拓していくためには、産業全体の構造を示した上で、各企業が強みとなる分野を成長させていくことが重要になる。
(2)重要技術の研究開発
次世代エアモビリティの事業化を進めるためには、安全性・経済性・環境性を満たすことが求められる。機体開発や運航管理などが技術開発の対象となる。
航空産業は統合的なイノベーション産業としての側面があり、開発した技術は他の分野でも応用できる可能性がある。経済安全保障戦略としても重要性が高い分野である。
日本で次世代エアモビリティ分野で研究開発するためには、航空やロボット分野の人材を中心に、製造業や社会インフラなど日本が強い分野の知見を活かすことや、グローバルな開発チームを編成することなどが考えられる。
(3)グローバルとローカルでの事業展開
日本の次世代エアモビリティ産業が成長するためには、グローバルとローカルでの事業戦略を考えていく必要がある。
具体的な例として、エアロネクストは、モンゴルのウランバートル市内で、ドローンや次世代輸送配送管理システムを活用したスマート物流の都市型モデルの実装を進めている。国内では戦略子会社のNEXT DELIVERYが、小菅村モデルの普及に向け、ドローン配送の事業化を進めている。小菅村では、ドローンの活用や、物流倉庫への荷物の集約など、山間部における新しい物流の取り組みが行われている。
新興国におけるインフラの構築と、人口減少社会における国内のインフラの再構築をセットで進めることは、日本の成長戦略として有力な選択肢になる。事業展開として、機体・システム事業者と、各地の社会インフラ事業者が連携し、サービス展開する方法がある。
(4)制度設計・ルール形成の推進
日本では次世代エアモビリティ分野の制度設計は、ロードマップに基づき進められている。空飛ぶクルマは「空の移動革命に向けたロードマップ」、ドローンは「空の産業革命に向けたロードマップ」が公開されている。
空飛ぶクルマは万博に向けた準備、ドローンはレベル4(有人地帯における目視外飛行)の導入などが進められてきた。岸田政権ではデジタル技術の実装に向けた規制改革が行われた。
次のステップとして、空飛ぶクルマについては商用運航に向けた制度(例:機体、技能証明、空域・運航管理、離着陸場)の具体化が重要になる。ドローンについては利活用の拡大に向けて、運航管理システム(UTM)の導入、ドローン航路の整備、機体・型式認証制度の運用改善、災害時における運用などが重要なテーマとなる。
(5)専門的な人材の育成
先端的な技術の開発や実装をするためには、人材育成を重点的に行なっていくことが求められる。21世紀に入り、デジタル技術の発展が進んでいるが、産業活動や社会活動においてどのように活用するかは人間が判断することが求められる。
大学や高専などの高等教育機関は、学生向けの教育、企業との共同研究、社会人向けのリカレント教育、海外の教育機関との共同プログラムの展開をセットで行い、地方創生の拠点として発展を目指す方法がある。
地域の産業活動を担う人材を育成するためには、専門高校(例:農業高校、工業高校、水産・海洋高校、商業高校)で、現場作業におけるフィールドロボットの利活用について実習を行うことも施策の候補になる。
今回の記事では、日本の次世代エアモビリティ産業にとって2025年が重要な節目であることを示した上で、次の10年に向けたビジョン・世界観を共有することの重要性について提案を行った。
次世代エアモビリティを産業として持続的に発展させるためには、産業構造の設計や、重要技術の研究開発、グローバルとローカルでの事業展開、制度設計・ルール形成の推進、専門的な人材の育成を行っていくことが重要になる。
福島県立船引高校(田村市)のドローン科学探求部は1月18日、慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)が実施してきた特別講座の成果を市民や関係者に披露した。慶大は2016年12月に田村市と締結した連携協定に基づき、市内の船引高校に特別講座を提供している。この日は3班に分かれこの1年間の取り組みの成果として空と水のドローンの連携、FPV、AI物体検知、プログラム飛行などを披露した。発表会は白石高司田村市長も見守り、高い賛辞を送った。また慶應ドロコンの古谷代表は発表した高校生らに特別講座の終了証を手渡した。
発表会は田村市役所3階会議室で行われた。ここは2016年12月21日に、田村市と慶應による連携協定締結会場となった場所で、大学が自治体による初めてのドローン連携協定として話題となった。慶應は連携協定に基づき、市内にある県立高校である船引高校に特別講座を提供してきた。この特別講座が現在の船引高校ドローン科学探求部につながる。
慶應特別講座は2023年度から「AI×ドローン×プログラミング」がテーマで、2024年度は同じテーマを応用編として展開された。具体的には2023年度はプログラミング言語「Python」を使ったドローン操作、AI物体検出アルゴリズム「YORO」を使った独自の物体検出モデル構築と運用を実施、2024年度は3Dプリンター製の水上・水中ドローンと飛行するドローンを組み合わせた運用、FPVドローンの閉所運用、AIドローンの自律飛行と3Dマッピングなどが含まれた。講座は慶應が田村市と連携し、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構が実施している復興知事業(大学等の「復興知」を活用した人材育成基盤構築事業)の一環として実施している。
2016年から続く特別講座について、慶應ドロコンの古谷代表は「今年で9期目となり、年々内容が成熟し高度化しています。水上と水中のドローンという新しい取り組みも行いました」と説明した。また白石高司・田村市長は発表を前に「この田村の地、福島県の空を多くのドローンが飛んで生活が豊かに、便利になることを祈念しています」などとあいさつした。
発表では部員が3班に分かれ、各班は「水中、水上ドローンについて」「FPVドローンについて」「プログラミングについて」をテーマに発表した。
水上・水中班は、有線の水中ドローン、無線の水上ドローンを説明したうえで、釣り用の水中ドローン「FishingRoid」の操縦体験や、飛行ドローンで撮影した映像をモニターで共有し、映像を見ながら水上ドローンを操縦することに挑戦したことなどを報告した。利点は難しさを分析し、災害や点検、生き物調査での活用への展望を述べた。
FPV班はFPVを自分がドローンに乗っているように見える特徴を持つ技術であると説明し、DJIのAVATA2の操縦体験を報告した。物体検知のAIと組み合わせで、遭難者捜索に活用できる可能性を感じたことも発表した。米SkidioのAIドローン「X10」が短時間で3Dモデルを作成したことも伝えた。観光やインフラ点検、災害現場での捜索などへの応用などにも言及した。
プログラミング班は小型ドローンのプログラム飛行を実演。会場内で自動離着陸する様子を見せたが、プログラムでは別の動作も予定していたため、プログラミングで何ができるのかなどについて映像と口頭発表で伝えた。発表の中ではPythonでTELLOに指示してプログラム飛行させたことや、プログラミング飛行の難しさのひとつとして電波干渉を取り上げ、対策として電波を測定し、干渉の少ない場所で飛行をさせたことを伝えた。プグラミング飛行で農薬散布や植生判断などへの活用が有望との見解も発表した。
意見交換の場面では、見学していた市民からは「素晴らしい発表。ドローンを取り扱う高校は全国的には珍しいと思う」などと感心するコメントがあったほか、高校生から「ドローンに触れたことのない市民も参加できるサークルのようなものがあると親しみやすくなるのでは」と提案があがる場面があった。
さらに、隣接する郡山市の防水加工事業者、福島防水株式会社に就職した船引高校卒業生が、防水加工作業のうち、現地調査、工程写真撮影にドローンを役立てていることを紹介し、高校生に対し「部活動で学んでいることが使えるかもしれないので、たとえばホームページの広告を新しくするなどのときに提案をしてみるなどをしてもよいかもしれないと思います」と、学んだ知見の活用を呼び掛けた。
白石市長は「発表は素晴らしく、予想以上にびっくりしました。この技術は応用の余地が大きく、会社をつくることもできそうだと感じました。空飛ぶクルマにつながる知見でもあり、みなさんには今学んでいる知見がものすごく可能性があるものだと感じて、学んでほしいしいろんな方に伝えていってほしいと思います」と感想を述べた。
慶應ドロコンの古谷代表は「社会にはドローンが関われる多くの課題とニーズがあります。地域のニーズと生徒さんたちの技術シーズをマッチングさせて、たとえばビジネス創出につなげて経済をまわすことなど、科学技術と社会課題解決とをつなぐことも考えてみたいと思っています」と述べた。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は阪神・淡路大震災が発生した1月17日、ドローンによる災害対応の調整力や現場の統括力を養成する新講座、「ドローン防災スペシャリスト教育講座」を発表した。能登半島地震でドローンの運用を調整、統括した実践経験もふまえ、どこで災害がおきても現場で調整、統括できる人材の要請を目指す。避操縦にも受講を呼び掛ける。
「ドローン防災スペシャリスト教育講座」は、パソコン、スマートフォンなどを使うオンライン学習(eラーニング)形式で提供する。価格は税込み44000円で、JUIDA会員であれば38500円になる。テキストがないかわりに、3年間は繰り返し視聴できる。収録時間は4時間程度で、早送り再生での視聴に慣れていれば短縮も可能だ。終了すればJUIDAから終了証が発行される。
JUIDAが能登半島地震でドローンの運用現場を統括したさい、自衛隊や自治体、民間事業者、被災者など関係各方面との意見や都合の調整と、統括して災害対応の成果をあげることの重要性を痛感し、現場で調整役、当活役を担える人材を養成する講座をつくった。
受講対象に操縦者である必要がないことも特徴で、ドローンを用いた防災活動への関心層を広く対象としている。この中には、自治体職員、自衛隊、消防、自衛隊、DMATなどを含み、ドローン事業者も入る。
講座には、災害時のドローン運用調整、役割分担、各方面との連携を円滑に運ぶスキル、連携各方面との共通の目標設定、災害時の法令、体制構築スキル、事前準備、意思決定、最適な活用方法を判断するスキル、などが含まれている。
JUIDAの発表はこちら:https://uas-japan.org/information/information-34732/
昨年末に破産を申請したドイツのAAMメーカー、ヴォロコプターはJCAB(日本の国交省航空局)に申請している型式認証の申請について取り下げない方針だ。同社がDroneTribuneの取材に回答した。これまでに2年以上当局と良好な関係を構築しており、「今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もない」という。テスト飛行など必要な作業を続けながら、立て直しに注力し、弁護士をまじえて立て直しの方向を模索するとともに、昨年末から投資家とも接触している。
ヴォロコプターはDroneTribuneの質問に回答し、国交省航空局が申請を受理して手続きを進めている同社の2人乗りeVTOL型AAM「VoloCity(ヴォロシティ)」の型式認証(TC)取得について、申請を取り下げない方針を明確にした。航空局も受理した申請について手続きを継続する姿勢を示しており、当面は従来通り、TC取得手続きが進行む。
ヴォロコプターのTC申請については、国土交通省航空局(JCAB)、欧州航空安全機関(EASA)と日欧それぞれの航空当局が受理し、これに基づいて手続きを進めている。当局が受理したのは2023年2月21日だが、ヴォロコプターが申請したのはその前年(2022年)の末だ。これをふまえ、ヴォロコプターは「2年以上EASA&JCABと良好な関係を築いているうえで、技術説明、テスト飛行、書類の整理などを行なっております。昨年、大阪・関西万博での飛行が商用運航からデモ飛行に切り替わったことに伴い(TC取得を)急ぐ必要性が薄まり、プロセスを一時保留しておりますが、今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もありません」と話している。
一方、再建にも注力する。現時点で具体策はまとまっていない中、もともとコスト管理を徹底して対応を進めており、立て直す箇所の特定を弁護士とともにすすめている。「他社と比較し認証費用を半分以下に抑えている」ケースもある中で、EASA監査の75%を完了していて、当面は投資家との連絡も図りながら再建策構築に注力する方針だ。
ヴォロコプターがTC取得を目指しているヴォロシティは2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。海外製AAMの中では日本でなじみの深い機体のひとつで、2023年3月には、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開され、居合わせた来場者や通行人の搭乗体験を受け入れていた。もともと、大阪・関西万博で飛行を披露する機体に含まれていたが、2024年9月に飛行を担う4グループのひとつ、日本航空、住友商事グループが、運用機体をヴォロコプターのヴォロシティから、米国 アーチャー社(Archer Aviation, Inc. )のMidnight(ミッドナイト)に変更することが公表された。なお、運用機体変更のタイミングで、万博での運航チームそのものも日本航空、住友商事から両者が出資する株式会社Soracle(ソラクル、東京)に引き継がれている。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は会員向けに株式会社ウェザーニューズ社が登壇するWEBセミナーを案内している。テーマは気象リスクでJUIDA会員は無料で受講できる。登録方法などはJUIDA会員に直接連絡している。
JUIDAは会員向けのサービス提供に力を入れていて、ウェザーニューズのセミナーもその一環だ。セミナーはWEB会議ツールを通して行われ、ウェザーニューズの無料アプリを使いながら気象リスクを説明する。
JUIDAの会員向けには1月下旬に、JUIDAの鈴木真二理事長が年間スローガンを公表することで知られる新春パーティーを開催し、会員相互の親睦を図る。例年、ドローン議連を構成する国会議員らがかけつけあいさつをする機会にもなっている。
国交省航空局は1月6日、ドイツのAAM開発事業者、ヴォロコプターから受理している型式証明申請の手続きを当面、継続する方針を明らかにした。ヴォロコプターは昨年(2024年)末、裁判所に暫定的な破産手続きを申請しており、関係機関の対応に関心が寄せられている。航空局は、ヴォロコプターの破産を情報として把握しているものの、ヴォロコプター側から直接の報告や申請の取り下げなどの連絡は1月6日時点ではないという。航空局が申請者の財務状況を確認する決まりはなく、ヴォロコプターも事業継続姿勢を転換していないことから、当面は受理に従って手続きを進める。
航空局はヴォロコプターの破産について、同社による昨年12月30日の公表と、それをもとにした報道ベースで把握している。一方、破産に関する連絡や型式証明の取得申請に関する方針転換などの連絡はないという。航空局は「手続きにはリソース(労働、時間など)を投入しており、関心は持っている」ものの、ヴォロコプター側から方針を転換する意思表示などがないいため、「受理した状況が維持している前提で作業を続けることになる」という。
ただし、「型式証明の手続きは、航空局が一方的に行うものではなく、申請側(この場合はヴォロコプター)とやり取りをしあう」ため、その中で方針に関する意図が表明された場合には、改めて対応を検討する可能性がある。
ヴォロコプターは昨年(2024年)12月30日、4日前の2024年12月26日に、拠点のあるバーデン=ヴュルテンベルク州のカールスルーエ高等裁判所に破産手続きの開始を申請したことを公表した。裁判所は申請の翌日に暫定破産管財手続きを開始し、現在、管財人の下で対応を進めながら、事業を継続している。同社の公表文では「破産」に該当する英語をinsolvencyと表現していて、一般に資産を売却して、負債を返済しきれない債務超過の状態を示す。
日本では2023年2月21日に航空局がヴォロコプターからの型式証明の申請を受理したことを発表している。ヴォロコプターが申請した機体は「VoloCity(ヴォロシティ)」と呼ぶ2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。同社は航空局に申請した翌月の3月8日、大阪・関西万博でエアタクシーとして運航を目指す機体として、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開していた。2024年夏のパリ五輪会場の飛行を計画していたが欧州の航空当局EASA(欧州航空安全機関)から基準を満たさない個所があると指摘を受けたことなどから、ヴェルサイユ宮殿で「VoloCity」 の前のモデル「2X」を飛行させるなど計画変更を余儀なくされていた。その後、大阪・関西万博でVoloCityの飛行することになっていた日本航空、住友商事のチームが2024年9月に運用機体を変更することを表明していて、VoloCityは万博での飛行計画からはずれていた。
一方、市場投入を目指す姿勢は維持し続けていて、万博の飛行計画からはずれたさいも、引き続き商用運航を目指す方針を示していた。破産申請も事業継続をするための選択であったと言われており、同社は管財下で財務基盤の強化を目指しつつ事業継続を模索するとみられる。
<関連>
Volocopter破産申請:https://www.volocopter.com/en/newsroom/volocopter-files-for-insolvency-in-germany
航空局がTC申請受理(2023年):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001588330.pdf
大阪で実物大モデル公開(2023年):https://dronetribune.jp/articles/22336/