いわゆる空飛ぶクルマや物流用ドローンを開発する株式会社SkyDrive(愛知県豊田市)は2022年12月27日、千葉県木更津市で、株式会社ダイヤサービス(千葉市)、株式会社ロックガレッジ(茨城県古河市)、合同会社房総山業(千葉県木更津市)、木更津猟友会と、害獣のAI検知や罠の運搬にドローンを活用するなどの実験を実施した。実験ではロックガレッジが開発したAI 検知システム「3rd-EYE Drone」やマッピング&モニタリングシステム「3rd-EYE Center」、SkyDriveの「SkyLift」の有効性を確認した。2023年度にかけてドローンやAIなどを活用した効率的な狩猟モデルを策定に取り組む方針だ。
実験はドローン運航事業を展開するダイヤサービスがプロジェクトオーナーとして推進する、千葉県の革新的デジタル技術開発、実証事業である「先進的デジタル技術活用実証プロジェクト」に採択されたプロジェクトの一環だ。SkyDriveのほか、AIを活用したドローンを開発する株式会社ロックガレッジ、有害鳥獣の捕獲、防護コンサルティングや資器材開発を手掛ける合同会社房総山業、狩猟教育・訓練の木更津猟友会が強みを持ち寄り、地域の効率的な害獣対策の実現を目指す。発表は以下の通りだ。
「空飛ぶクルマ」(※1)および「物流ドローン」を開発する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO福澤知浩、以下「当社」)は、株式会社ダイヤサービス、株式会社ロックガレッジ、合同会社房総山業、木更津猟友会と、「先進的デジタル技術活用実証プロジェクト」(※2)として、ドローンやAIといった先端技術を活用した効率的な狩猟モデルを策定、千葉県の害獣駆除の推進に取り組むことをお知らせいたします。
■ プロジェクト推進の背景
日本の農林水産業は、国民の食料を安定に提供し、地域経済を支える重要な役割を担っています。しかしながら、鳥獣による農作物の被害が、農林業者の生産意欲を低下させる深刻な問題となっています。そのため、環境省・農林水産省は 2013 年に「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を共同で取りまとめ(※3)、「シカ・イノシシの生息頭数を 2023 年までに半減させる」ことを目標に掲げ、さまざまな活動をおこなってきました。この結果、農作物被害額は減少傾向にありますが、被害を受ける地域が広がる傾向となり、また狩猟者の高齢化が進んでいることもあり、目標未達の可能性がある状況です。
千葉県においても、高齢化による狩猟者の減少が進む中、相反するように捕獲頭数は増加傾向にあります。また、イノシシが県内を北上し、人口の多い地域へと増殖を続けていて、農作物被害に加えて人の危害の可能性も出てきて、狩猟者の負担が増すばかりの現状です。
このような中、ドローン運航会社の株式会社ダイヤサービス、AI を活用したドローンを開発する株式会社ロックガレッジ、有害鳥獣の捕獲、防護方法のコンサルティング、資器材の開発を行う合同会社房総山業、狩猟に関する教育・訓練を行う木更津猟友会と物流ドローンを開発する当社がそれぞれの強みを活かし、プロジェクトを推進することで、千葉県の害獣駆除の課題を解決できると考え、「先進的デジタル技術活用実証プロジェクト」を推進することとなりました。
■ プロジェクトの全体スケジュール
<2022 年度>
赤外線搭載ドローン自立飛行、AI によるイノシシの自動検知
検知できた場所へ大型ドローンによる「くくり罠」「遠隔通報機」を搬送
設置場所のシステムへのマッピング
<2023 年度>
仕留めたイノシシの大型ドローンによる麓への搬送
AI システムと大型ドローンの連携による自動飛行の実現
害獣 DX 千葉モデルの確立
<実証実験の流れ>
1.市販ドローンによる害獣のAI検知
2.物流ドローン「SkyLift」によるくくり罠・遠隔通報装置の搬送
3.狩猟者によるくくり罠・遠隔通報装置の設置
4.マッピングシステムによるくくり罠設置場所の監視
■実証実験に使用した物流ドローン『SkyLift』の基本仕様
全長:全長2.5m×全幅1.9m×全高1.0m(プロペラ展開時)
全長1.9m×全幅1.2m×全高1.0m(プロペラ折畳時)
機体重量:35kg (バッテリー20kgを除く)
最大ペイロード:30kg
20kg(ホイスト機構利用時)
飛行速度:36km/h
飛行可能距離:2km(最大積載時)
飛行時間:9~15分(積載重量による)
運搬方法:機体固定式ボックス・着陸せず荷物を昇降するホイスト機構
一般財団法人運輸総合研究所(東京)は11月28日「物流分野におけるドローンの社会実装」をテーマに、「第87回運輸政策セミナー」を開催する。国土交通省航空局の梅澤大輔安全部無人航空機安全課長のほか、楽天グループ株式会社の谷真斗氏、株式会社スカイピーク代表取締役の高野耀氏、一般財団法人運輸総合研究所ワシントン国際問題研究所主任研究員の藤巻吉博氏らが登壇し、ドローン物流に期待される効果や社会実装のための課題の整理、普及に向けた今後の取り組みを考察する。参加は無料。
セミナーの概要と式次第は以下の通り。
・日時:2022年11月28日(月)15:00~17:30
・会場:運輸総合研究所 2 階会議室およびオンライン配信(Zoom ウェビナー)
・テーマ:「物流分野におけるドローンの社会実装」~ドローン物流が当たり前になる時代に向けて~
式次第
1.開会挨拶
宿利正史 一般財団法人運輸総合研究所 会長
2.講演
テーマ:「ドローンのレベル4飛行に係る環境整備」
講師:梅澤大輔・国土交通省航空局安全部無人航空機安全課長
テーマ:「ドローン物流実証の現状と課題」
講師:谷真斗・楽天グループ株式会社ドローン・UGV事業部ドローン事業課シニアマネージャー
テーマ:「ドローン活用を支える人材育成の現状と課題」
講師:高野耀株式会社スカイピーク代表取締役
テーマ:「ドローン物流の普及に向けた世界の潮流」
講師:藤巻吉博・一般財団法人運輸総合研究所・ワシントン国際問題研究所主任研究員
3.パネルディスカッション
コーディネーター:根本 敏則 敬愛大学経済学部教授、一橋大学名誉教授
パネリスト:講演登壇者、平澤崇裕・国土交通省総合政策局物流政策課長
4.閉会挨拶
佐藤善信・一般財団法人運輸総合研究所理事長
参加費:無料
申込:専用URLから(申込は11 月 24 日まで)
※11月25日(金)午後に視聴用URLを送付
福井県敦賀市で10月8日、ドローンを組み入れた新スマート物流「SkyHub」の住民向け配送サービスが始まった。敦賀市、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県)、KDDIスマートドローン株式会社(東京)、株式会社エアロネクスト(東京)、株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)が、一帯の配送拠点となる「ドローンデポ」を置く愛発(あらち)公民館で出発式を行い、第一便が飛んだ。エアロネクストなどによるSkyHubサービス提供は、山梨県小菅村、北海道上士幌町に続き3例目となる。
敦賀市でのサービスは、JR敦賀駅から東南の一帯に広がる中山間地、愛発(あらち)地区で始まった。11ある集落のうち、「疋田」、「奥野」、「曽々木」、「杉箸」の4集落が対象だ。3集落にはドローンの停留所「ドローンスタンド」が整備されている。利用者は専用の電話番号に電話で注文をする。早ければ注文から30分で、最寄りのドローンスタンドに注文の品物が届く。トラックで自宅に届けるサービスも併用する。注文できるのは、ドローンデポに在庫のある食品を詰め合わせた「おかしセット」、「朝食セット」、「洋風朝食セット」で、商品群は順次拡大する。デポはSkyHub Storeとして地域のコンビニに育てる計画で、今後、配送拠点にとどまらず、立ち寄ればその場で買えるようにもする。
注文方法も不慣れな初心者も使いやすいアプリを開発したうえで、タブレットから注文できるようにする。サービスは、対象地域にいれば住民でなくても利用できる。配送料は1回あたり300円で、祝日をのぞき、原則火、水、木、金曜日の午前9時~午後5時が営業時間だ。
この日の出発式では、敦賀市の渕上隆信市長が「便利になるととても喜んでいます。ゆくゆくは地域の防災にも活用できないか考えたい」と期待を表明した。セイノーHD事業推進部新スマート物流推進プロジェクト課の須貝栄一郎課長は「愛発モデルとして今後展開させたい」と明言。KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長は「このサービスでは遠隔物流のシステムと物流専用ドローンの統合を図りました。今後、地域配送のひとつの形になると考えています。われわれは『叶えるために、飛ぶ』を掲げており、このサービスを全国に広めていきたい」と抱負を述べた。
エアロネクスト代表取締役CEOで、NEXT DELIVERY代表取締役でもある田路圭輔氏は、「この地域では2年前にコンビニが撤退してから買い物に不便を感じる住民が多いと伺いました。アンケートでも8割の方が不便を感じていると回答しています。このサービスを導入することでその不便の解消につなげて参ります」などと決意を表明した。
出発式のあと、第一便が注文の品を積んだドローンがデポを飛び立ち、5.2キロ離れた杉箸集会所に置かれたドローンスタンドに向かった。ドローンは10分ほどで杉箸のドローンスタンドに到着し、注文者や近所の住民が見守る中で荷物を下ろすと、周囲から拍手が起きた。注文者は「このあたりはコンビニがなくなってから買い物が不便になっていました。ドローンのサービスはこの地域をもう一度便利にしてくれるのではないかと期待しています。荷物もほら、ぜんぜん傾いたり傷んだりしていません。今後、クスリなんかも運んでもらえるとうれしいです」と喜びをかみしめていた。
ドローンが荷物を届ける様子を見ていた敦賀市の渕上市長は「便利ですね。冬には雪が降る地域ですが、実証実験のときに雪が降る中を飛んだこともありまして可能なこともあるのかなと期待しているところです。それと、キャンプ場に注文した食材をドローンで運んでくれるとなると、それを楽しみに足を運んでくれる観光客が増えくれるかもしれないですね。期待は高まるばかりです」と話した。
3例目となった敦賀市での新スマート物流のサービス開始は、KDDIスマートドローンにとっては、運航管理システムを統合させて初のサービス提供となった。エアロネクストがセイノーHDなどと開発、提供を進める新スマート物流は、今後需要も広がりに応じて事業規模が拡大する見通しで、管理業務のシステム化を進めていて、敦賀市でのサービスは、運航管理システムを組み込んだことで、新スマート物流にとって新しい一歩を踏み出した節目の船出となった。
KDDIスマートドローンとエアロネクストは9月20日、ドローン配送サービスの社会実装に向けた業務提携契約を締結している。KDDI株式会社(東京)も、新事業共創を目的とした、「KDDI Open Innovation Fund 3号」(運営者:グローバル・ブレイン株式会社)を通じてエアロネクストに出資するなど関係が緊密化している。
エアロネクストとKDDIスマートドローンの業務提携の内容は、第一が、ドローン配送サービスの自治体導入と導入のための実証実験の共同実施、第二が、ドローン物流に必要な機体・モバイル通信・運航管理システムの販売・導入での連携強化だ。すでに2022年3月に新潟県阿賀町でドローン配送の実証実験を実施し、2022年6月にエアロネクストがACSLと開発した物流専用機「AirTrack」とKDDIスマートドローンが開発した運航管理システムなどツールをセットにした「スマートドローンツールズ」を組み合わせたドローン配送パッケージ「AirTrack Starter Pack」の提供を始めている。
敦賀でこのシステムと統合したサービスを提供することで自治体での運用例ができたことになり、今後地方での導入にはずみがつくことが予想される。
また、敦賀市のSkyHubサービスは順次、拡充する。当面はデポのストック商品を電話注文で届ける。専用アプリの開発も進めている。11月には、デポにない商品も、提携先スーパーから取り寄せて届ける買い物代行サービス「SkyHub Delivery」を始める。株式会社出前館(東京)が運営する、宅配ポータルサイト「出前館」のアプリを活用し、提携先の飲食店の食べ物をドローンスタンドか自宅に届ける「SkyHub Eats」も追加する。閉校して商品ラインアップの拡充も進める。
11月にも始めるアプリ注文に対応し、スマホ操作に不慣れな高齢者を想定して、スマホ講習会も実施する。講習は11月以降も随時実施する計画で、利用者からの意見をサービスの改善につなげる仕組みもつくる。このころには愛発地区にある11の集落すべてにドローンスタンドが整う見通しだ。
田路エアロネクストの田路圭輔代表は「SkyHub Store」愛発は、地域のコンビニとして機能することを目指します」と宣言し、ひとつひとつ着実に積み重ねていく。
防災技術の見本市、「第10回ライフガードTEC 2022」が10月4日、名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)で開幕し、ドローンの展示コーナーでは機体のほか、架線用ソリューションや、アラミド繊維ケプラーで電源をまいたロープなどの技術が人目を引いた。株式会社プロドローンの長時間飛行対応機、SkyDriveの物流機「SkyLift」なども会場に彩りを添えた。防災活用に関するパネルデフィスカッションも盛会で、パネリストとし登壇したクオールホールディングス株式会社の樫尾浩幸DX・AI推進室長が、災害時の備えや経験談、課題などについて説明すると来場者が身を乗り出していた。パネルディスカッションにはDroneTribubeの編集長、村山繁がファシリテーターで参加した。
第10回ライフガードTEC 2022は、愛知県、名古屋市などが構成する「名古屋市国際見本市委員会」が主催し、「南海トラフ地震対策中部圏戦略会議」の共催で開催する見本市。内閣府政策統括官(防災担当)など中央府省庁が後援している。設置されたドローンの展示コーナーでは、愛知県に拠点を構える企業を中心にブースの出展やパネルの展示が行われた。
プロドローンは120ccエンジンを搭載した無人ヘリコプターや、同社のフラッグシップ機で6本のアームを持つマルチコプター「PD6B-Type3」、水中ドローンを水面に運ぶことを想定した水空機「PD4-AW-AQ」などを展示した。空飛ぶクルマの開発で知られるSkyDriveは30㎏の荷物を運ぶ物流機「SkyLift」の実機を紹介した。愛知縁春日井市を拠点とする株式会社テラ・ラボも、開発施設のある福島県南相馬市から固定翼機を出品。株式会社DSAは20㎏まで持ち上げられるマルチコプター「CarryMD1」や、警察、消防などの用途を想定した折り畳み可能なクアッドコプター「DS10」などを展示した。空撮、人材育成などを手掛ける株式会社FREIHEIT(フライハイト)は災害発生時の飛行方法についてパネル展示をした。
各社ブースに展示されたソリューションも注目された。FREIHEITのブースには、岐阜県各務原市を拠点に活動するサクラボテクノロジーズ合同会社の架線用安全装置などが展示され、関心を寄せる専門業務従事者などの足を止めた。DSAのブースでは、株式会社共和製作所(愛知県碧南市)が、同社のカーボン加工品ブランド「蕨山CARBON」の技術で加工したアタッチメントや、アラミド繊維ケプラーにリード線をまいて1本のロープに仕立てた「ドローンウィンチ用の電源コード入りアラミドロープ」が展示され、来場者から説明を求められていた。
パネルディスカッションではクオールHDの樫尾浩幸DX・AI推進室長が、災害時に被災地から要請の多い薬剤や、その運搬に関する課題のほか、「お薬手帳」の重要性と近くはじまる薬局でのデジタル化などの説明が参加者の興味をひいた。樫尾氏は社名の由来が「クオリティ・オブ・ライフ」にあることを伝え、「ドローンやその他の技術で、あんしんを追求する取り組みを今後も続けていく」と抱負を述べると、参加者の表情がいっせいにほころんだ。
パネルディスカッションには、樫尾氏のほか、愛知県次世代産業室の浅野公輔主事、名古屋鉄道株式会社の岩田知倫課長、プロドローンの戸谷俊介社長が登壇し「災害時におけるドローンの活用最前線」をテーマにそれぞれの取組を披露したうえで意見交換を展開した。
愛知県の浅野主事は、災害時のドローン運用の体制について、ドローン配備した団体が自身で運用するケースや、民間のドローンを扱う団体などと連携協定を締結したうえで運用を依頼、要請するケースなど複数の方法があることなどを説明。「発災時の災害状況や対応体制に応じて選択肢を使い分けていきたい」と話した。
名鉄の岩田氏は、名鉄として歴史的に空の事業に関わっている経緯や、鉄道インフラの点検にドローンを活用していること、ドローンを操縦するパイロット人材の育成に力を入れていることなどを説明した。プロドローンの戸谷社長尾は、緊急時のドローンの使い方として無線基地局として活用する方法が注目点であると指摘し、社内で関連の開発を進めていることを明らかにした。
来場者からは、空の渋滞不安、ドローン操縦の国家資格化導入に伴う影響などに質問が寄せられ、パネリストがそれぞれの考えを披露した、参加が「勉強になりました」とコメントする場面もあった。
第10回ライフガードTEC2022は10月5日まで名古屋市の名古屋国際展示場(ポートメッセ)第3展示館で開催されている。
自動運転バスを運航させている茨城県境町が、自動運転バス、自動航行の性能を備えるドローン、トラックなど既存の物流手段を組み合わせて、使い勝手のいい物流サービスを実現する取り組みが11月にも始まることになった。取り組みを進める境町、株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、BOLDLY株式会社(東京)、株式会社セネック(東京)は10月3日、境町役場で連携協定を結んだ。境町の橋本正裕町長は締結式の中で、「公共交通が脆弱でも住み続けられる町をつくりたい」と意気込みを語った。式典後は焼き立てパンを自動運転バスとドローンでリレー輸送して役場まで運んだり、小学生の待つ学校に町の名産のせんべいを運んだりするなど配送を実演した。今後、実証を重ね、11月にサービスを開始する。サービス開始にあたっては、対象エリアの住民から希望者を募り、利用体験のフィードバックをサービスの品質向上に生かす。2023年度中にもいわゆる「レベル4」の飛行を含めた配送サービスの実現を目指す。
境町では2020年以降、自動運転バスの定時運行を導入し町民の移動手段として定着している。この自動運転バスを支えている遠隔管理システム「Dispatcher」に、ドローンの管理も加えることで、無人運転バス、ドローンの両方の遠隔管理を可能にする。さらにトラックなど既存の物流手段も有効に組み合わせて最適化し、無人バス、ドローン、トラックの連携させた境町版の新スマート物流構築を目指す。
利用の対象は町内全域の住民で、複数の町内の商店が参加を表明している。利用者はスマートフォンなどで対象の食料、日用品などを注文をすると早ければ30分以内で届くことも可能になる。政府の進める「デジタル田園都市国家構想」対象事業だ。
連携協定は、次世代高度技術の活用を通じて、観光や産業振興、物流課題の解決、地域防災への貢献、地域の雇用拡大の実現を図ることにしている。荷物を集積し、ドローンが集荷する「ドローンデポ」は整備をはじめている。
境町に導入している自動運転バスは貨客混載を実施し、町内の住民向けの商品を2か所の連携拠点まで運ぶ。ドローンは、自動運転バスから積み替えられた荷物を載せて届け先まで飛行する。なお市街地への届け出は従来通りトラックが担い、市街地の周辺の農村部への配送をドローンが担うなどの役割分担を想定している。
連携協定の締結式で境町の橋本正裕町長は、「境町は公共交通が脆弱なため、動けるうちに嫁いだ娘の近くに引っ越す、といった人口減少が起きています。そんな困りごとをなくしたいというのがこの連携協定の目的です。一人暮らしでも生活に困らない町にしたい。困っている人を助けて、住み続けられる町にしたい。好きな町に住み続け環境を提供したい」と述べた。
ドローンはエアロネクストが株式会社ACSL(東京)などと共同開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」を使う。荷物を機体内部に格納するため飛行時に荷物が空気抵抗の障害にならない設計を採用するなど、物流に特化した工夫や機構を搭載している。ドローンと自動運転バスの運行管理はBOLDLYが開発したシステム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を使う。自動運転バス用の遠隔管理システムとしてスタートしたシステムで、9月にドローンの監視もする「Dispatcher for Drone」を開発したことで一元管理が可能になった。
またサービス開始にあたって、利用を想定している農村部の住民に参加してもらう会員制度をつくる。利用体験をフィードバックしてもらい、より利便性の高いサービスに品質を向上させていく仕組みにする計画だ。
締結式後には、デモンストレーションを実施。役場に近い町立境町小学校では、全校児童が見守る中、ドローンが飛来。自動は上空にドローンが姿を表すと、立ち上がって指をさすなど「すごい、すごい」と笑顔で歓迎した。また、自動運転バスとドローンとの連携の実演も実施。自動運転バスとドローンとが荷物をリレーするランデブーポイントとなる「道の駅さかい」で、自動運転バスが運んできたパンを、係員がドローンに搭載した。ドローンは道の駅から境町役場に隣接する水害避難タワーまで届けると、待機していた橋本町長がそれを受け取り、味を満喫した。
同日発表されたプレスリリースは次の通り
茨城県の境町(町長:橋本正裕)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路圭輔、以下「エアロネクスト」)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下「セイノーHD」)、BOLDLY 株式会社(ボードリー、本社:東京都港区、代表取締役社⻑兼CEO:佐治友基、以下「BOLDLY」)および株式会社セネック(本社:東京都新宿区、代表取締役:三浦義幸、以下「セネック」)は、2022 年 10 月に、ドローンや境町で定常運行する自動運転バスを、トラックなどの既存物流と組み合わせて物流を最適化する「新スマート物流」の実用化に向けた実証を開始し、2023 年度中をめどに、日本初となる市街地でのレベル4のドローン配送サービスの実装を目指します。5者は、この取り組みを進めるため、2022年10月3日に連携協定を締結しました。
今回の取り組みでは、境町の住民がスマホアプリで注文したスーパーの日用品や飲食店の料理などを、自律飛行するドローンや自動運転バス、トラックなどを組み合わせて効率的に配送する物流システムの構築を目指し、法制度に沿ってドローンの飛行区域を段階的に拡大しながら実証を進めます。まずは、2022年10月以降に、境町でドローンを2台導入し、充電などが可能なドローンスタンド®(3カ所・予定)および荷物の集約拠点となるドローンデポ®(1カ所)を整備した上で、無人地帯での目視外飛行や市街地での目視内飛行の実証を行い、住民の理解促進やルートの検討を進めます。
2022 年末に予定されているドローンのレベル 4 飛行解禁以降は、無人地帯と市街地でドローンの目視外飛行の実用化に向けた実証を行います。ドローンが飛行できないエリアでは、自動運転バスやトラックを活用して配送を行います。テクノロジーを活用して物流を最適化することで、将来的には、注文から30分以内に商品を受け取れる物流システムの構築を目指します。
日本では、過疎化や地方における公共交通の維持、物流業界の人手不足などが課題となっています。境町は、地方が抱える社会課題の解決に向けて、住民や観光客が移動手段として活用できる自動運転バスを導入して公共交通の維持や地域経済の活性化を推進するなど、積極的な取り組みを進めており、2022年度の補正予算において、ドローンの研究開発およびオーダーメードを行う拠点施設の建設(約4億円)を決定しました。このたび 5者が連携することで、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムを構築し、物流業界の課題解決やCO2削減を図るとともに住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指します。
なお、ドローンおよび自動運転バスの運行管理は、BOLDLYが開発した運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」で行います。BOLDLYが2022年9月に開発した「Dispatcher」のドローン向け機能(「Dispatcher for Drone」)により、「Dispatcher」を自動運転バスとドローンの両方に接続して一元的に管理することが可能になります。これにより、運行管理業務の効率化やコスト削減が実現できる他、将来的には、関連するデータ活用なども期待できます。「Dispatcher」は、2020年11月の境町の自動運転バス導入時から利用されており、境町には自動運転バスの運行に必要なシステムおよびオペレーション体制が整っています。これを土台に、スムーズにレベル4のドローン配送サービスを実装することを目指します。また、今後は、全国の他の自治体と連携して、境町以外の地域を飛行するドローンの遠隔監視を行うことも視野に入れ、取り組みを推進します。
この取り組みは、内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)の事業に採択されています。
■各者の役割
・境町:新スマート物流を含むデジタル田園都市国家構想事業の事業主体、企画統括
・エアロネクスト:境町での新スマート物流実装に向けた各種取り組みの全体統括、物流専用ドローン「AirTruck」の提供
・セイノーホールディングス:共同配送モデルの構築、自治体や各事業者との調整、配送ノウハウの提供
・BOLDLY:「Dispatcher」の提供、境町におけるデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)事業の全体統括
・セネック:境町に設置した遠隔監視センターでの自動運転バスおよびドローンの運行管理
■使用するドローンについて
エアロネクストが物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量(ペイロード)5kg、最大飛行距離 20kmの物流専用ドローン「AirTruck」*を使用します。
物流専用ドローン「AirTruck」エアロネクストが株式会社 ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY®により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティー、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機です。試作機は日本各地の実証実験で飛行し日本 No.1(エアロネクスト調べ、2022 年9月時点)の飛行実績を持ちます。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT=エヌアイシーティー)は4月11日、ドローン同士が直接通信するシステムを開発したと発表した。NICTはこのシシテムをドローンの飛行に応用する実証実験を実施し、先導するドローンに3機のドローンが一定の間隔を保つ追従飛行や編隊飛行、同一の空域で飛行する4機のドローンの自律接近回避に成功した。地上の操縦者やネットワークを経由せずに、ドローン同士の直接通信システムを使った群制御飛行や自律接近回避は世界初という。物流、災害対応など複数機の同時目視外飛行を実装するさいに活用が期待される。
NICTが開発したのは、ドローン同士が相互ブロードキャスト通信を行いGNSSで得られた位置情報を共有する「機体間通信システム」。このシステムをドローンに搭載し、各ドローン上で飛行制御装置に接続したうえで、追従飛行や自律的接近回避の飛行制御アルゴリズムを組み込んだ。
NICTの発表は以下の通り。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT=エヌアイシーティー、 理事長:徳田英幸)は、ドローン同士がそれぞれの位置情報などを地上の操縦者やネットワークを経由せずに直接通信するシステムを開発しました。
このシステムを応用して、先導するドローンに3機のドローンが一定の間隔を保って追従し、編隊飛行させる群飛行技術、及び同一の空域に4機のドローンが飛行しても自律的に相互の接近を回避するシステムの実証実験に世界で初めて成功しました。
本技術により、特に目視外まで飛行させる場合にドローン運用の効率化や電波の有効利用、及び空の安全・安心につながり、複数のドローンの同時飛行による物流や広範囲の農薬散布、災害対策など様々な分野への応用が期待されます。
【ポイント】
■ ドローン同士が直接通信して互いの位置を知らせることで、自律して飛行することが可能なシステムを開発
■ 4機のドローンによる、自動追従群飛行と自律接近回避の実証に世界で初めて成功
■ 多数のドローンが飛び交う時代における運用の効率化と空の安全性の向上に貢献
今回の成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、理事長:石塚博昭)が進める「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」の中の「遠隔からの機体識別および有人航空機との空域共有に関する研究開発」において実施しました。
【背景】
近年、農業・測量・警備・物流・災害調査・点検など幅広い分野でドローンを活用する動きが活発化しており、たくさんのドローンが空を飛び交う時代がすぐそこまで来ています。国の規制緩和も進んでおり、今年度中には、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が毎年取りまとめている「空の産業革命に向けたロードマップ」におけるレベル4と言われる有人地帯上空での目視外飛行も可能になります。
【今回の成果】
本研究開発では、ドローン同士が特定小電力無線局である920 MHz帯の電波(出力20mW、上空利用可能、無線局免許不要)を使って相互にブロードキャスト通信を行いGNSSで得られた位置情報を共有する「機体間通信システム」を開発しました。これを各ドローン上で飛行制御装置に接続することにより、ドローン同士が相互に連携することを可能にしました。
このシステムに、「先導するドローンに対して他のドローンが自動で追従する群飛行(離着陸を含む。)」や「自律的な接近回避」のための飛行制御アルゴリズムを組み込むことで、それぞれ4機での群飛行及び接近回避の飛行試験に世界で初めて成功しました。図1左のオレンジ色の線は各ドローンの飛行軌跡を示しており、黄色の先導機に追従して赤色の3機のドローンが編隊を維持しながら飛行できています。また、図2左に示すように、4機が方向を変えて接近を回避した後、図2右に示すように、予定していた経路にそれぞれ復帰することを確認しました。
なお、本システムは、ドローン間だけでなく、ドローンと有人ヘリコプターの間でも利用でき、数kmの距離を隔ててヘリコプターが接近した場合に、ドローンが自律的な接近回避をすることが可能になることも実証しています。
【今後の展望】
これらの技術によって、今後混雑が予想される上空での効率的で安全・安心なドローンの活用が可能となり、物流、農業、点検、防災といった様々なシーンでの利用が期待されます。
また、今回の成果を基に、更に多くのドローンが同一の空域内を飛行する場合に対応した通信制御方式や飛行制御方式についての検討や、飛行する環境に応じた編隊の隊形にするなどの群飛行技術や通信技術の高度化を進め、本方式の実用化を目指していく予定です。