米国シアトルで開催された Microsoft Build 2019でマイクロソフトは、救命措置を支援するロボット、遠隔地の施設を点検してくれるドローン、工場の機器を自律的に調整してくれるシステムなど、自律型システムの構築を容易にするための新プラットフォームを発表した。このコンポーネントの最初のバージョンは、現在、限定的プレビュープログラムとして利用可能だ。

Microsoft Build開発者カンファレンスでマイクロソフトは、自律型システムの構築を容易にするプラットフォームの最初のコンポーネントを発表した。開発者が専門家と協力してMicrosoft AIとAzureツールを使い、物理システムを自律的に実行できるインテリジェントエージェントを構築する限定プレビュープログラムになる。
開発者が自律システムを作成するのを支援するマイクロソフトのプラットフォームは、以下になる。
・データサイエンスのスキルがなくても、ドメインエキスパートが自分の知識を使ってAIシステムを構築できるようにする独自の機械教育ツール
・MicrosoftのAirSimや業界のシミュレータなど、安全でありながら非常に現実的な環境で機械の学習を可能にするシミュレーションテクノロジ
また、マイクロソフトの多様なIoT(Internet of Things)サービス、使いやすい深層強化学習プラットフォームやその他のAIソリューション、および開発者がインテリジェントなロボットシステムを構築できるようにするROS for Windowsなどのツールも利用できる。そして、デバイス上でもクラウド内でも、安全なプラットフォームを構築できる。
限定プレビュープログラムに参加する初期の開発者は、マイクロソフトと協力してインテリジェントで自律型のフォークリフトを開発しているToyota Material Handlingのような企業と同じ自律システムツールを使用する方法を学べる。
Sarcosのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高マーケティング責任者であるKristi Martindaleは、次のように述べている。
「今日、商用のGuardian Sロボットを制御している人は、狭いスペースやさまざまな地形でそれを導くためにジョイスティックのボタンやレバーを押すことに注意を向けなければなりません。階段のような共通のランドスケープ上でヘビの各セグメントを適切に操作するには、いくつかのステップが必要です。マイクロソフトのツールチェーンの要素を使用して、エンジニアは、蛇型ロボットが障害物を回避し、階段を移動し、金属製の壁を独力で登ることを可能にする自律制御システムを開発することができました。現実のシナリオでは、オペレーターはロボットを誘導する役割を果たします。しかし、Guardian Sロボットが周囲の状況を感知して、階段を横切るためにすべての中間動作を実行できる場合、オペレーターはシーンの評価とより重要な判断の呼びかけに集中することができます」
マイクロソフトが公開したブログによれば、マイクロソフトのAI開発者プラットフォームは、自動化システムから自律システムへの加速を目指している。対象となるロボットは、ドローンを含むあらゆる遠隔制御機器となる。
例えば、地震の余波の中で、がれきや狭い空間を通って這う蛇のようなロボットは、救助隊員などが行くことができない、あるいは調査できない場所にアクセスできる。また、小さなロボットのカメラを通した目視検査プラットフォームは、工業用パイプラインの亀裂を探したり、不安定な建物の中に閉じ込められた人を見つけたり、事故現場での有害ガスの有無など、最初の対応者への安全上のリスクを検出できる。
しかし、現在のロボットの多くは、安全な距離で作業している誰かによって制御されている。誰かがカメラを通してシーンを見て、ビデオゲームのジョイスティックのようなコントローラーで遠隔操作している。現在、MicrosoftとSarcos社は、Guardian Sにインテリジェント機能を追加して自律的にナビゲートできるようにすることで、オペレーターがより重要な決定に集中できるようにしている。
自動化された産業用アプリケーションとロボットを使用するという考えは新しいものではない。ロボットアームは、製品を組立ラインに沿って移動させ、工作機械は金属の塊を部品に変える。車は運転者の操作なしでギアをシフトする。
しかし、それは実際に自律的なシステム、つまり周囲の状況を感知し、なじみのない状況に直面したときの対処方法を知っているシステムからはかけ離れている。特定のタスクを変更せずに繰り返し実行する代わりに、これらの自律システムは、困難な問題を解決するために変化する環境に動的に対応できる。自律システムによって稼働するロボットは、人々の仕事の方法を変革し、人々にとって危険か費用がかかる仕事を解決するための大きな可能性を有する。

マイクロソフトは、すべての開発者や組織に向けて、ロボットやドローンなどが簡単に自律化できるように、エンドツーエンドのツールチェーンを構築し、各自のシナリオに合った自律システムの開発を支援する。そして、生命を脅かす状況で救難者を救助することができるロボットや、リモート機器を検査することができるドローン、自律的に機器を調整して工場のダウンタイムを減らすシステムなどの開発を可能にする。
マイクロソフトのビジネスAI担当副社長、Gurdeep Pallは、「私たちは、顧客にAIの専門家チームを持つことなく、その目的を達成する一助になりたいと思っています」と話している。

Bonsai社の元CEOで、マイクロソフトのビジネスAI担当ゼネラルマネジャーを務めるMark Hammond氏は、「自律システムについて考えると、後部座席に座って本を読んでいる間に自律走行する完全自律走行車のビジョンを直視する人が多い」と指摘する。
しかし、自動車メーカーは、何年もの間、運転手が湿った滑りやすい路面で危険に遭遇したときに何をしようとしているのかを感知するクルーズコントロールやアンチロックブレーキシステムなど、自律機能を自動車に組み込んできた。運転手が車輪をロックするような方法でブレーキをかけた場合、その制御システムが引き継ぎ、自動車がけん引力を失うのを防ぐ。
マイクロソフトのビジョンは、スマートビルディングやエネルギー企業から産業メーカーまで、他の種類の企業が自社の産業における自律性に向けてこれらの段階的なステップを達成するのを支援すること。
Hammond氏によると、サルコス社のロボットの例が示すように、多くの人が現状のテクノロジーで最大の価値を見つけようとしている。それに対して、「物理的な世界と相互作用する機械的システムを持っているあらゆる種類の操作において、おそらくよりスマートにより自律的にすることができます。しかし、人々を特定の運用周期の中にとどめることは依然として非常に望ましいことであり、目標は本当にそれらの人間ができることの能力を向上させることです」(Hammond氏)
強化学習はAIの一分野であり、アルゴリズムは一連の決定を実行することによって学習し、どのアクションが最終目標に近づくかに基づいて報酬またはペナルティを課している。それは、地質が塊であるか砂であるか岩であるかに応じて地下ドリルを操縦する方法やトラクターブレードを傾ける方法を決定するなど、機械が自律制御タスクを行う方法を学ぶのを助けるのに適している。
しかし、徹底的な強化学習アルゴリズムがビデオゲームのプレイヤを凌駕する一方で、現実世界のタスク習得は、より困難になっている。物理的な世界では、自律システムが遭遇する可能性のある動的な環境(人や物が予測不可能な方法で移動したり、気温や天候が少しずつ変化したり)は、はるかに複雑になる可能性がある。システムが長い一連のステップのどこでうまくいかなかったかを正確に特定することは、困難な計算作業だ。
マイクロソフトの自律システムプラットフォームは、マシンティーチングと呼ばれる独自のアプローチを使用して、これらの課題のいくつかを克服する。それは開発者または専門家の知識(AIの背景は持っていないがドリルを操縦する方法や安全なレベルでオフィスビルの気流を保つ方法を理解している人)に頼るものだ。
強化学習アルゴリズムを使って問題をランダムまたは素朴に解決する方法を探る代わりに、Inklingというプログラミング言語を使用して、より単純な問題を最初に解決する方法を示し、重要な問題についての手がかりを提供する。これにより、学習プロセスが短縮され、アルゴリズムがはるかに早く解を見つけられるようになる。
マイクロソフトのプラットフォームは、非AI専門家が報酬システムを確立し調整することを可能にする。それは本当にうまくいく解決策に到達するための鍵となる。そしてタスクに取り組むためのアルゴリズムを選択して設定し、機械学習の専門家がカスタムビルドソリューションを作成する必要性を排除する。
一例として、住宅、建物、産業のエネルギー管理をデジタル化する世界的企業であるSchneider Electricと協力して、大型商業ビルの冷暖房に使用されるHVACシステムの二酸化炭素排出量削減に役立つかどうかをテストした。
Schneider ElectricのEco Buildings Division担当シニアバイスプレジデント兼最高技術責任者であるBarry Coflanは、次のように述べている。
「Schneider Electricは持続可能社会に焦点を当てています。大きな建物は炭素排出の最大の原因です。長年の関係を中心に、マイクロソフトのツールチェーンとシュナイダーが提供するシミュレーションを使用して概念実証テストを実施し、AIシステムをトレーニングして、会議室の換気と暖房を制御するHVACシステムを自律的に実行しました。それは、省エネと他の目標、例えば室内の温度を快適に保つこと、二酸化炭素レベルが上がらないようにするのに十分な新鮮な空気があることを確認してバランスをとる必要がありました」
MicrosoftのHammond氏によると、これらすべての要因(異なる物理システムによって制御される要素)を最適化するには、単純なサーモスタットよりもはるかに高いインテリジェンスが必要になるという。システムは常に変化している環境変数を考慮する必要があり、一日を通して変動するエネルギーコスト、部屋から出入りする人々、外の天気がしていること、空気がどのように流れるかの物理学も求められる。
そこで、機械学習のアプローチを使用して、Schneider Electricとマイクロソフトの専門家は最初に温度をうまく制御するための強化学習システムをトレーニングした。その後、AIシステムは、空気の質を健全なレベルに保つために空気の流れを制御する方法を学習した。それからは部屋の占有がそれらの結果にどのように影響したかを考えることを学んだ。
これらすべての要因を考慮すると、MicrosoftのAIシステムは、快適さと空気の質を維持しながら、室内のエネルギー消費量を約20%削減することができた。チームは現在、さまざまなタイプの部屋にまたがってシミュレーションを拡張し、さらに省エネを促進するための共同作業の第2段階に着手している。
Coflan氏によると、段階的なアプローチとさまざまな評価を重ねることで、AIシステムがどのように学習しているかを理解し、最大の要因を追跡できたという。
「私たちがしていることの多くには安全上の問題があるので、AIシステムがどのように意思決定を下しているのかを本当に理解する必要があります。このアプローチにより、システムの賢さが増し、安全性と再現性に欠かせない監査証跡が得られます。私たちの顧客もそれを望んでいるでしょう。」とCoflanは話している。
実際の工場や風力発電所や高速道路では、学習中にロボットやインテリジェント制御システムが何百万ものミスを犯すことは許されない。そのため、強化学習アルゴリズムは何千ものシミュレーション環境で再現する必要がある。例えば、自律ドローンの実現には、遭遇するかもしれない何百万もの実世界のシナリオが求められる。
マイクロソフトのツールチェーンには、AirSimも含まれている。これは、もともとマイクロソフトの研究者がAIを使用してドローン、自動運転車、またはロボットを忠実度の高いシミュレーション環境で学習するために開発したオープンソースシミュレーションプラットフォーム。開発チームは、顧客と協力して既存の業界固有のシミュレータを使用して自律システムをトレーニングできる。
トレーニング環境では、Azureクラウドでこれらのデータを大量に消費するシミュレーションを実行し、システムは何千もの異なる意思決定シーケンスを並行してテストできる。
マイクロソフトの主任研究マネージャであるAshish Kapoor氏は「一度に何千ものシミュレーションを生成することができ、それぞれで通りを横断する歩行者が異なり、道路のカーブが異なる場合、AIシステムは短時間でより多様な経験を集めることができます。Azureはこれらのシミュレーションを大規模に実行する機能を提供します。これは非常に重要です」と話している。
AirSimは、開発者がより複雑な問題のさまざまな部分を解決するために、さまざまなAIおよび制御ツールを訓練することを可能にする。公開された動画のように、トヨタのマテリアルハンドリングのための自律型フォークリフトの開発を支援する際に、研究者は課題を学習とデバッグがより簡単なサブコンセプトに分割している。
「複雑なシナリオでは、パレットを拾うなどの基本的な制御作業についてフォークリフトを訓練するために強化学習を使用することが合理的であるかも知れません。機械教育は、リフトを水平に調整してから適切な角度を見つけるなど、システムが段々と困難なステップで学習するのに役立ちます」(Kapoor氏)
しかし、問題の他の部分は、障害物の検出と回避のアルゴリズム、ロボット工学の経路計画、または古典的な制御技術など、まったく異なるツールによってよりよく解決される可能性がある。大きなタスクを小さなタスクに分解することで、開発者はその特定の仕事に最適なツールを選択して展開できる。
Hammond氏は、「開発、運用、そしてエンドツーエンドのライフサイクル管理をカバーするインテリジェントな自律システムを構築したい開発者のための包括的なプラットフォームの提供に取り組んでいます」と述べている。
仙台市は11月5日午前、津波避難広報訓練を行う。訓練では仙台市の津波情報伝達システム(屋外拡声装置)、緊急速報メール、広報車両に加え、ブルーイノベーション株式会社(東京)の「BEPポート|防災システム」を活用した仙台市津波避難広報ドローンなどを使い避難を呼びかける。訓電時間に指定エリアにいる市民や勤務者は、一時避難するなどして万が一に備え、避難行動の定着を図る。
ブルーイノベーションの「BEPポート|防災システム」は、仙台市が2022年、一宮町(千葉県)が今年(2025年)5月、沿岸防災を目的に導入し、運用を始めた。津波警報や津波注意報が出されると自動でドローンが離陸し、沿岸地域にアラート音を流し周辺にいる人々に避難を呼びかけるシステムで、職員が津波に遭遇する危険のある沿岸部に近寄ることなく避難を呼び掛けられることを目指している。今年7月30日午前8時24分のカムチャッカ半島付近で発生した地震に伴う気象庁の津波注意報で、仙台市、一宮町それぞれのドローンが出動し沿岸上空で避難を呼びかけるなど役割を果たした。11月の訓練ではこのシステムを訓練として活用する。
11月の訓練は仙台市が主催し、宮城県警察本部、仙台東警察署、若林警察署、宮城海上保安部、公益財団法人日本道路交通情報センター、東日本高速道路株式会社、民間協定津波避難施設などが協力機関として参画する。
訓練は「東北地方太平洋沖を震源とする地震が発生し、地震発生の3分後に宮城県に大津波警報が発表された。そのため、津波避難エリア1・2内(編集部注:仙台市が指定したエリア)の居住者等は、津波の到達予定時刻までに、津波避難エリアより内陸側への避難、または津波避難施設・場所への緊急一時避難が必要となった」と想定して行われる。
当日の午前9時48分から、津波情報伝達システム(屋外拡声装置)の避難広報を3階行い、緊急速報メールを午前9時48分に送り、消防車両・区広報車による避難広報は午前9時48分から10時30分にかけて行う。津波避難広報ドローンによる避難広報は午前10時00分から10時30分ごろに行われる計画だ。また巡視艇(宮城海上保安部)の避難広報も午前9時48分から10時30分ごろに行われる。
ドローンは初動対応として沿岸部で空から避難広報を行い、同じ時刻に出動する消防車両は内陸部をめぐるなど活動するエリアを分担するという。
モビリティ産業のテクノロジー見本市、JAPAN MOBILITY SHOW2025(ジャパンモビリティショー2025)は10月31日に東京ビッグサイトで一般公開が始まる。TOYOTA、HONDAなど自動車大手をはじめ、モビリティ事業者や関連企業などが最新の開発情報や技術、デザインを持ち寄る。大阪・関西万博で話題をさらったSkyDriveが搭乗体験を提供するほか、KDDIは全国に1000機配備する計画の機体と格納庫を展示する。2年前の開催時にAAM(いわゆる空飛ぶクルマ)を展示したHONDAはロケットを展示。前回、サプライズでAAMを展示したSUBARUは今回はAAMの展示は見送る。
Japan Mobility Show 2025は日本自動車工業会が主催するモビリティ産業のテクノロジー見本市で、東京モーターショーが前回2023年開催から現在のスタイルに衣替えした。展示には企業展示に加えテーマブースが用意され、10年後の人とモビリティの生活を表現する「Tokyo Future Tour 2035」、キャンピングカー、スーパーカーなど多様なモビリティを描く「Mobility Culture Program」など、自動車を超えた幅広い移動に関わる展示に触れることができる。
企業ブースでは各社の最新技術に触れることができる。Hondaは、前回2023年のショーでHONDA EVTOLを展示したが今回は見送ることになった。展示の中心は自動車で、「移動体を0から考え直す」のコンセプトをベース「Thin, Light, and Wise.(薄い、軽い、賢い)」を開発アプローチとして位置付け(編集部注:編集長の「しゃべる、すべる、しげる」とはもちろん別物である)、EVの厚くて重いイメージから脱却するコンセプトシリーズ、「Honda 0シリーズ」を公開した。CES 2025で発表した「Honda 0 SALOON」、「Honda 0 SUV」に加え新世代EV「Honda 0 α(ホンダ ゼロ アルファ)」のプロトタイプも世界初公開し、プレスデーでは世界各国の報道陣が取り巻き、説明に聞き入った。ブースにはAAMはないが、ロケットやHONDA JETなどが空のモビリティとしてブースに賑わいを添えている。なおHonda 0 αの量産モデルは2027年から日本やインドを中心に発売を予定しているという。
AAMでは大阪・関西万博でデモフライトを披露した株式会社SkyDriveがテーマ展示「Tokyo Future Tour 2035」に「SKYDRIVE(SkyDrive式SD-05型)」のフルスケールモックを出展し、搭乗体験を提供する。ブースは鉄道の駅のようなしつらえで、自動改札機で電車に乗る感覚の手軽な搭乗体験を提案する。また座席正面には大型スクリーンを備え、窓越しの風景を見ながら疑似飛行体験が味わえる。搭乗には専用アプリでの予約が必要になる。
公式アプリ:https://www.japan-mobility-show.com/program/app/
ドローンではKDDI株式会社が、米国Skydio社製の自律航行をするAIドローン「Skydio X10」と離発着基地となる格納庫「Skydio Dock for X10」を設置し、来場者の要望に応じ「Dock for X10」のフードが開く様子を見せる。同社は日本各地に合計1000機のドローンを配備し災害の発生時に10分で現場にかけつけられる体制を整える方針を発表しており、配備するセットを再現する形だ。10月には1000台配備の第一歩を能登で踏み出したことを発表している。来場者はアンケートに答えると、森永製菓株式会社のチューイングキャンディ「ハイチュウ」のオリジナルハイチュウ「MU-CHEW –ムチュウ-夢中-」がもらえる。
モビリティの多様性も目を引く。スポーツ用品開発のミズノ株式会社は、競技用義足の技術を応用し、一般にも移動用に使うことが想定されているシューズ型移動ギアを展示している。移動ギアはコンセプトモデル「MOBILLARIA β(モビラリアベータ)」でCFRP(炭素繊維強化プラスチック)のブレードをアッパー部と一体化させたシューズ型だ。いわばバネがついたシューズで、着用者の脚の力を効率的に伝える。タイヤがついているわけでも電力など動力で動くものでもない。
会場では試し履きが可能だ。かかとにあたる部分がないなど日常使いのシューズとの違いはあるが、移動のために脚を動かすとギアが力の入れ具合に敏感に反応することがわかる。おそらく軽く走ると効率的に脚力が伝わることをより実感できるだろう。試し履きのサイズは、取材時のギアは足のサイズが27㎝だったなど環境が限られる。サイズがあえば体重が80㎏までなどの制約の範囲内で試し履きが可能になり、脚力がMobilityになる可能性を体感できる。
AI時代に需要が高まることが見込まれる可搬型エッジデータセンター開発のQuantum Mesh株式会社(クオンタムメッシュ、東京)は、ブースに映画『トロン:アレス』(ウォルト·ディズニー·ジャパン配給)に登場するトロンバイク「ライトサイクル」を展示する。関心を寄せて立ち寄ると同社の取り組みであるサーバーを冷却液にまるごと浸す液浸サーバー冷却システム『KAMUI』を目にすることになる。大都市の大規模データセンターと異なるトレーラーなどで運べることを特徴のひとつに掲げている。2024年にこの分散エッジAIデータセンターを稼働させ、Japan Mobility Show一般公開前には、パートナー企業とともに、AIoT時代のデジタルインフラ整備のコンセプト「AIデータステーション構想」を発表した。ブースではその構想を「8M Aliance」として紹介している。




















Oasisの来日公演が話題だが、開催の10月25、26を前にした10月24日、東京・外苑前の夜空にOasisのバンドロゴがドローンショーで浮かび上がった。ドローンショーによるロゴ投影は今年7月、ワールドツアーがスタートしたウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムでも行われていて、7月4日の初日公演を翌々日に控える7月2日に、巨大ロゴで再結成を祝った。来日公演では代表曲「Don’t Look Back In Anger」のパフォーマンスでは会場である東京ドームでは、客席とともに音漏れを期待して駆けつけた会場の外のファンも含めた大合唱が起こる盛り上がりとなった。
Oasisロゴのドローンショーは、ライブ参加者が会場に足を踏み入れる前から“再結成の物語”にひきこみ、熱気をさらに高める役割を担った。前回の来日公演は2009年でその年に主要メンバーであるNoel Gallagher、Liam Gallagher兄弟の仲たがいなどを背景に解散している。2024年に再結成が発表されると世界中のロック愛好家が沸き立ち、今回の日本での16年ぶりの公演では2日間にわたり10万人以上の幅広い世代を熱狂させた。
ドローンショーがライブを盛り上げる重要なツールとして活用されるケースは日本国内だけでも増えている。
7月には、ドローンショー運営や機体開発を手掛ける株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市<石川県>)が、7月26、27日に横浜市の山下ふ頭特設会場で開催されたMrs. GREEN APPLEの野外ライブで、1200機のドローンでバンドのロゴやメッセージを浮かび上がらせた。同社は8月5日にも音楽ユニットYOASOBIメンバーからライブを終えて帰路に就く参加者に向けて「ありがとう I♡石川 いくら」「石川ありがとう YOASOBI あやせ」のメッセージを浮かび上がらせて来場者に感動の余韻を残した。
また音楽にあわせて夜空に歌詞を投影させたのは、大阪・関西万博でギネス世界記録を樹立した株式会社レッドクリフ(東京)だ。花火大会にあわせて約1300機のドローンで夜空にシンガーソングライター、KANさんの代表曲『愛は勝つ』の歌詞と楽譜を投影した。参加者はドローンショーの歌詞をカラオケのテロップとして、会場に流れる音楽にあわせて合唱した。この取り組みは大塚製薬株式会社(東京)の炭酸栄養ドリンク「オロナミンCドリンク」発売60周年記念特別プロジェクト「元気ハツラツ!大空大合唱」の一環で8月30日の秋田県大仙市で開催された第97回全国花火競技大会「大曲の花火」など全国3カ所で会場を盛り上げた。
音楽とドローンの組み合わせについては、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の熊田知之事務局長も10月17日の認定スクールフェスタ2025の中で軽く触れている。音楽の演出効果としての役割は続々と実証されていることもあり、今後も活用は増えそうだ。
なおOasisが東京ドームで来日公演を開催した10月25、26日は日本のロックバンドHEY-SMITHが主催し、ELLEGARDEN、THE ORAL CIGARETTES、SiM、coldrain、など20組以上の人気ロックバンドが集結するロックフェス、「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」(ハジマザ)が開催され、さらにロックバンドL’Arc〜en〜Ciel(ラルクアンシエル)での活動で知られるhydeも10月25、26日、千葉・幕張メッセでライブ「HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR -JAPAN FINAL」を開催しており、参加するライブの決断に迷うロック愛好家が続出した。ドローンショーがその差別化の役割を担う可能性もある。

一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は10月17日に毎年恒例の系列ドローンスクール向けの会合「JUIDA認定スクールフェスタ2025」を開催し事業報告や案内、関連表彰、懇親会などを行った。熊田知之事務局長がJUIDAとして今後、市場開拓に力を入れる方針を表明した。スクール表彰では「理事長賞」に株式会社Dアカデミー関東本部を選出した。鈴木真二理事長のあいさつ、関係省庁からの代表による来賓あいさつや、埼玉県での八潮陥没事故対応、大阪市での大阪・万博対応などのJUIDAとしての活動報告を2時間10分行い、その後懇親会が催された。
鈴木理事長 「会員数2万5555組」
スクールフェスタはJUIDAが毎年一度開催しているJUIDAに加盟するドローンスクール向けの会合で、前半にJUIDAの基本方針や重点施策の説明、JUIDAや会員の活動報告、加盟スクールの活動を顕彰する表彰式が行われる。後半に立食式の懇親会が用意されている。催事名が「フェスタ」で司会も「最後までお楽しみください」と案内するが、祭り要素はなく、あいさつと発表と報告と表彰が前半の2時間を占める。新方針の表明が行われることもあり、例年、報道機関が取材する対象にもなっている。
会場は前年に続き東京大学本郷キャンパス内の学術交流拠点「山上会館」で、前半の第一部は2階大会議室で、後半の第二部は1階ホールで行われた。大会議室は机と椅子が演台に向かって並べられるスクール形式で、後半は立食パーティーだ。
なお会場となった山上会館は国立西洋美術館新館などの設計で知られる建築家、前川國男氏が設計した建物で、「山上会館」の名は、かつてこの場所にあった「山上御殿」に由来する。山上御殿は富山藩の表御殿でこの場所に移築され1923年の関東大震災で焼失したが、1986年に東京大学創設100周年記念事業として会館が建てられ「山上会館」と名付けられたと言われる。
フェスタはJUIDAの鈴木真二理事長のあいさつで始まった。鈴木理事長は「毎年掲げているスローガンですが2025年は『ドローン新世紀』の意識のもと『JUIDA未来創生元年』を掲げています。新たなドローン産業の発展に向けて取り組むつもりです」と抱負を述べた。JUIDAの勢力についても、会員数が9月末時点で個人・法人をあわせて2万5555組、操縦技能証明取得者が累計で9月末時33304人、認定スクールの数が10月1日時点で189校と紹介した。自衛隊、自治体などとの連携拡大や国際機関とのMOU締結かっく台などこれまでの活動も概観した。
経産省古市氏「国産機開発を支援」 ACSLに軽量化、飛行時間拡大で26億円
鈴木理事長のあいさつに続き、経産省製造産業局航空機武器産業課次世代空モビリティ政策室の古市茂室長と、国土交通省航空局安全部無人機航空安全課の江口真課長が来賓としてあいさつにたち、それぞれの取り組みに言及した。
この中で、経産省の古市氏は、JUIDAの創立10周年に祝意を述べたあと、国産ドローンの開発を支援していることに触れ「中小企業イノベーション創出推進事業のフレームで、ACSLの軽量化、飛行時間拡大などのレベルアップに26億円を支援しました。飛行時間はできれば40分とか45分にしたいと考えています。ほかにもイームズロボティクスには30億円、テラドローンにも支援しています」など企業名をあげ、開発の方向性にも触れながら紹介した。
国交省江口氏事故増加に言及 「受講確認できないのに終了証」と不適切例も紹介
国交省の江口氏は、フェスタへの招待に対する謝意を述べたあと、ドローンの制度の運用状況を概観した。それによると「許可承認件数は年間7万件ほど、機体数は現在35万機程度、登録講習機関は9月末時点で835スクール」だ。また今後段階的にUTM導入を図る方針や、レベル4の飛行に必要な第一種の認証機体について促進する方針も表明した。
江口氏は一方で、ドローンに関わる事故が増えていることに警鐘を鳴らした。「令和5年、6年と残念ながら増えている状況で、より安全な運航を実現するには操縦者の安全リテラシー醸成、運航技術の向上はかかせないと考えており、登録講習機関のみなさまにサポートをお願いできればと思っております」と協力を要請した。また「終了証明書の発行に、学科講習の終了が確認できない事例があるなど不適切な事例があった」と言及し、スクールに対し適切な運用を促した。登録講習機関の登録がはじまって期限の3年を迎えることから、適切な更新手続きも呼び掛けた。
熊田事務局長、「ひとづくりから市場づくりに移行」
来賓あいさつに続き、JUIDAの熊田知之事務局長が重点施策について説明した。
この中で熊田事務局長は「ドローン産業の健全な発展をミッションとして、これまで人材育成をメインに活動してきましたが、10年たってまいりますと世の中の変化も大きく、ひとづくりからいわゆる働く場所、市場づくりに焦点を移してきています」と報告。マンション外壁点検の業務に求められる技術を伝える「ドローン点検スペシャリスト育成コース」がその一環だと説明した。このコースはJUIDA、株式会社東急コミュニティー(東京)、株式会社ハミングバード(東京)が構築したカリキュラムだ。
なお、この日の会場である山上会館も、東急コミュニティが管理している。
このスペシャリスト教育は、認定スクールを通じて販売していて、取り扱いスクールが現在30校になっていることも紹介し「多くのスクールに取り扱って頂けると嬉しく思います」と話している。
熊田事務局長は「東急コミュニティさまは全国で8万8000棟のマンションを管理しておられ、これだけでも大きなマーケットであることが分かります。またマンションだけでなく、これからそれ以外の、たとえばスポーツ分野、または音楽、あるいは建築、公共インフラなど水面下でいろいろと話をしております」と、市場開拓を多方面で仕掛ける方針を表明した。
さらに、災害対策のための発災と共に活動に入る専門組織D³(ディーキューブ)を組織していることや、ドローンに関するISO(国際標準化機構)制定の国際規格について、日本国内の意見をまとめる国内委員会の事務局をJUIDAが担っていることなどを紹介し、「さらにみなさまと(ドローン産業を)発展させていきたいと思っております」と述べた。
Dアカ、固定翼機の講習開発で理事長賞
認定スクールの活動を顕彰する表彰も行われた。
最高賞にあたる理事長賞には、固定翼機(飛行機型)の国家資格取得を目指す講習を初めて開始したDアカデミー株式会社が運営するドローンスクール、「Dアカデミー関東本部が、応募8スクールの中から選ばれた。Dアカデミーは2023年のスクールフェスタで、ザンビア共和国からの研修生に対する橋梁点検講習が評価されて理事長賞を受賞していて、今回はそれに続く2度目の受賞となった。
また特別賞として、現場対応力に着目した人材育成に力をいれているアスキムドローンスクール(アスキム株式会社)、広島・神石高原町の防災事業に取り組むドローンファーム仙養校(株式会社DroneScenery)、大阪・関西万博の世界こども未来会議に出展したドローンテクノポート神戸(株式会社ミラテクドローン)の3校が選ばれた。
また、PASドローンスクール大阪(パシフィックエアサービス株式会社)、トンガレコクド/未来アカデミー(日本国土開発株式会社)、FALCON DRONE SCHOOL(株式会社FALCON)、IDS池上ドローンスクール(株式会社IDS)に感謝状が贈られた。
Dアカデミーの依田健一代表は、理事長賞を鈴木真二JUIDA理事長から受け取り、写真撮影やあいさつをし、一度着席して一連の表彰を見守ったあと、再び司会に招かれて登壇し、授賞理由となった固定翼機の国家資格講習創設について説明した。
依田代表は、自身が小学3年からラジコンに親しんできたことなど自身の経験談をおりまぜながら、「レベル3・5が広く活用される中、VTOLを含む固定翼機の需要が高まることが想定されるため、取得のための講習をゼロから作りました。複雑な講習内容を私自身が理解するため国交省航空局にもおたずねして理解を深めました。それを分かりやすくするため複雑な教習内用をかみくだいて言語化したり、講師の指先の動きが講習生の手元で再現される仕組みを作ったりしました。練習環境も都心から1時間の場所に整えてあります。われわれの講習の利点の一つと言える点は、この会場が試験会場にもなることです。会場受験の難しさは、初めての会場で初めての機体を扱うところにあると言われますが、われわれの講習を受けたら、試験もその会場で行いますし、練習機が試験機になります。試験管は出張して審査して頂いております。このあたりを評価頂けたのかと考えています」と説明した。
このあと、八潮道路陥没の取り組みに協力した事業者として株式会社Liberaware(東京)、ブルーイノベーション株式会社(東京)への感謝状贈呈や、現場指揮者の報告、大阪・関西万博での運航調整業務に携わった事業者への感謝状贈呈や、関係者の報告、開講10周年表彰年、開講1周年記念表彰などが行われた。
JUIDAの公式サイトでは当日の式次第などが「JUIDA認定スクールフェスタ2025開催報告」としてまとめられている。












KDDIスマートドローン株式会社(東京)は10月16日、「AIドローン設置に関する説明会」を東京・高輪の本社で開き、KDDI株式会社(東京)とKDDIスマートドローンが10月15日に能登地域4カ所に米国Skydio社のAIドローン「Skydio X10」と基地となる「Skydio Dock for X10」を配備し、遠隔運航実証を実施したことを、同日の映像をまじえて説明した。また、定期運航させるサービスを10月16日から24時間365日対応に拡充させたことや、必要時にだけ運航に応じる「スポット運航サービス」も11月に始めるなど、遠隔運航サービスの拡充と新機能の追加を発表した。
説明会は7月1日に正式にオープンした高輪ゲートウェイ駅に隣接する新本社内で行われた。会場には運航指揮者が準備し、オペレーションが実演できる態勢を整えていた。実際、石川県に配備している4機のドローンを、報道陣の前で運航する計画をたてていたが、石川県内での荒天で断念した。説明会では現地の雨量が7mmを超えたことが報告された。「雨量7mm」は、1時間に1㎡あたり7ℓの雨が降る強さで、本降りに相当する。このため説明会では、前日の15日に行われた実証の動画をまじえて4機の運用例をまじえて説明した。
説明会では冒頭、KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長が、石川県内の輪島市に2台、七尾市に2台のドローンを配備したことを説明し、日本国内に1000台のAIドローンを配備する計画が具体的に始まったことを説明した。
配備したドローンは通常時に点検や測量など主に空からの情報収集に使われるほか、災害発生時に現地の状況を確認するために急行するなど、平時、平時と災害発生時と両面で活用することを念頭に配備していると説明した。説明会では前日の10月15日に石川県内で実施したドローンの運用実証の様子を動画などを活用しながら説明した。
具体的には輪島市、七尾市の機体をKDDI高輪本社(東京都港区)、KDDIスマートドローンアカデミー新十津川校(北海道樺戸郡)に待機したオペレーターが遠隔運航を実施した様子が説明された。その中ではトンネルの3Dモデリング空撮と橋梁点検を進めているときに地震が発生した想定で、オペレーションが緊急時に移行するシナリオが披露された。博野社長は「平時利用から有事利用への移行オペレーションを通じて、BCP(事業継続計画)を想定したシナリオで実証した」と説明した。なお1人のオペレーターが2機を運航する1対2運航で行われた。
また説明会では遠隔運航サービスの拡充も発表された。事前に設定したスケジュールにそった定期飛行サービスを24時間365日対応するサービスに拡充したほか、災害発生時などのニーズに対応する「スポット運航サービス」も設定した。23時間365日の定期運航サービスは10月16日に導入をはじめた。スポット運航サービスは11月1日の提供開始を予定している。
KDDIスマートドローンの測量士が、点群データの取得・生成、出来形や体積差分の算出・報告書作成までを一貫して行うワンストップサービス「測量パッケージ」も10月16日に開始した。米シリコンバレー初のAI活用型IoTソリューション開発を手掛けるMODE社,の現場特化型AIアプリケーション「BizStack」と連携させ、ドローンが撮影した画像・映像データを遠隔で取得できる「MODE連携機能」を追加することも発表し、2025年内に提供をはじめる計画だ。
博野社長は「ドローン運用の手間をゼロに、の実現のため、今後も邁進したい」と決意を表明した。
能登地域4箇所にAIドローンを常設:https://kddi.smartdrone.co.jp/release/9459/
SkydioとKDDIが資本業務提携:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr_s-4_3362.html
石川県とKDDI、創造的復興へ連携協定:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-302_3559.html
24時間365日定期運航などサービス強化:https://kddi.smartdrone.co.jp/release/9429/
新機能の追加詳細:https://kddi.smartdrone.co.jp/solution/monitor/
遠隔運航サービス紹介動画:https://youtu.be/CHLQnKkefOU
MODE連携紹介動画:https://youtu.be/mesewNbiPwQ
大林の事例リリース:https://kddi.smartdrone.co.jp/release/9144/
清水建設の例動画:https://www.youtube.com/watch?v=PP5UPmAmSSc
石川県県警の例リリース:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-552_3833.html
石川県と県警の事例動画:https://www.youtube.com/watch?v=0MqLTdkpIus&feature=youtu.be












ドローン物流と既存物流を融合させた「新スマート物流」を提唱、展開している株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>、田路圭輔代表取締役)は10月8日、足利市<栃木県>、足利市内で燃料小売などのカーライフサポートを手がける両毛丸善株式会社 (河内覚代表取締役)と3者で、足利市内での新スマート物流の実施を見据えて「新スマート物流社会実験に関する覚書」を交わした。ドローン事業専門の部署を持つ両毛丸善がドローンの運航を担う。災害時にも通常時にも物流機能を担う運用を目指し、飛行ルートの検証などの可能性を探る。早ければ来年(2026年)1月にも運航に着手する。
3者による覚書の締結は足利市役所内で行われた。新スマート物流の可能性について研究するため相互に協力する。具体的には足利市内で新スマート物流の拠点整備や災害発生時にも緊急物資輸送に使えるルートを検証したり、中山間地などの物流困難地域への物資輸送をしたりすることなどを盛り込んでいる。
地元の企業、両毛丸善が新スマート物流の社会実験を推進し、足利市が地域コミュニケーションやフィールド調整など行政としてサポートする。これまで新スマート物流はNEXT DELIVERYが中心に運用してきたが、今回は地元企業が中心となる点が特徴で、地元企中心のフェーズフリー型新スマート物流のモデルケースを目指す。
NEXT DELIVERYの田路圭輔代表取締役は「両毛丸善さまという地元企業とパートナーを組むことができました。このように地元主導でしっかり新スマート物流を実装に向けて進めるのは、今回がはじめてのケースになると思います。ドローンの運航というのは機体の操縦だけではなくて、運航、システム、着陸地点の調整などすべきことがいろいろとあります。それをわれわれと同じクオリティで担える地元の事業者を探しておりましたが、両毛丸善さまはすごいチームもありビジョンも持っていて、展開できると確信しています。必ずや成功させたいと思っていますし、そのためにわれわれが持つ技術やノウハウを注ぎ込み、われわれのオペレーションを完全に移植して参ります」とあいさつした。
両毛丸善の河内覚代表取締役は「ドローンの利便性、将来性に着目し4年前にドローン事業の準備に入り、3年前に事業に着手しました。空撮、農薬散布に取り組みながら、究極の目的であった物流への参入が難しかったところで、今回、覚書を締結できることになり嬉しく思っております。ハードルは高いですが、災害時も平時も使えるようドローンを使った物流で地域貢献、地域課題解決にさらに力をいれて参ります」と応じた。
足利市の早川尚秀市長は、「NEXT DELIVERYさまとは2年前に実証実験を共同で行いました。今回は両毛丸善さまに入って頂いたことが大きいです。両毛丸善さまの大きな決断で覚書が買わせました。われわれも全力で支えます。まずは実験を積み重ね、近い将来ドローンも使った物流に向けた大きな一歩になると思っています。足利のような歴史ある町で、ドローンの先端の取り組みが行われ、地域課題の解決につなげることが大切だと思っています。まち全体が実験場というつもりで、市としても実装までしっかり役割を果たし、協力しながら成功に導いていきたいと考えています」と抱負を述べた。
締結式の会場には、足利市の実験に投入される機体「PF4」も持ちこまれた。PF4はNEXT DELIVERYがモンゴルで活用していて、日本国内の連携協定などの提携の会場で公開されたのはこの日が初めてだ。5㎏の荷物を往復40㎞の範囲を自動航行で飛行させることができる。NEXT DELIVERYの田路代表は「それまでのAirTruckという機体より詰める箱が大きくなり飛行速度も速くなりました」と説明した。さらに、「ドローン配送は、定期配送の可否が社会実装のカギだと思っています。たとえば毎日午後4時に必ず1便飛ぶ、と決めてそこに地域の荷物を持ちこんでもらって飛ばす。災害があったときに避難生活を送っている方に届けるようなものを普段からそのルートで運び続けるわけです。一日1便から2便、3便、4便と増え、その地域では両毛丸善さんのドローンが毎日飛ぶようになると、それまでとはまったく違う世界になると思っています」と展望した。
足利市は2021年の山林火災対応をきっかけに、災害時の空のトラブルを防ぐための
「緊急用務空域」の仕組みが創設されるきっかけとなった地域で、ドローンの運用にとって新たな枠組みが生まれた地域として知られている。




