探求教育に力を入れる日本大学豊山女子高等学校(東京都板橋区)は8月10日、探求教育の一環でドローンを学ぶ生徒がドローンの操作に初挑戦する様子をメディアに公開した。講習はドローンの指導やソリューション開発を手掛けるブルーイノベーション株式会社(東京)が担い、指導役オペレーター6人を含む10人以上のスタッフがサポートした。講習に臨んだ生徒たちはゲームのジョイスティックの操作性との違いを短時間でのみこみ、「楽しい」、「もっと飛ばしたい」を連発。2時間ほどの実践で機体先頭のカメラを円の中心に向けたまま周回させるノーズインサークルのコツをつかむ生徒もいた。生徒たちは今後、課題の解決に結びつけるなど実践の局面に進む。
ドローン操作に臨んだのは、ドローン部に所属する25人のうち、夏休みでも参加ができた18人。生徒たちが3人ずつ6班に分かれると、各班に配属されたブルーイノベーションの講師の指導に耳を傾け、電源を入れ、ひとりずつ操縦に挑戦した。
スティックの動かし方を学び、浮上、ホバリング、着陸を一巡したのち、前進と後退、左右移動、左右回転などをおりまぜて、四角形の4辺を進行方向に機体のアタマを向けながら移動させた。エルロンではゲームのコントローラーの勢いで舵を切り、機体が急に動くことを実感し「そっと、そっと動かさないといけないんですね」と目を輝かせた。
1年生のはまじんさん、たいにーさん、れんさんは、ドローンに触れたのは今回が初めてだったがみるみるコツをマスター。最初に操作をしたはまじんさんがいち早く四角形の周回をこなすと、それを見ていたたいにーさんが「もっとゆっくり動かしたほうがなめらかに動くかなと思って」とさらになめらかな動きを実践。すると、ふだんゲームでスティック操作に慣れているれんさんは「ぴったり90度に曲がることが簡単ではなくて、もっと練習が必要だと思いました」と精度を高める意欲を見せた。
ひととおりの課題をこなすと、3人とも「もっと飛ばしたい」と残り時間も積極的に操作。たいにーさんは、横移動と回転を同時にかけて、機体の鼻先を円の中心に向けたまま移動させるノーズインサークルの方法についててほどきを受けてさっそく実践すると、講師や関係者も「素質ありすぎじゃない」と驚くほどの初心者離れした操作をみせた。
操作の様子は、柳澤一恵校長や、探求教育の導入に尽力した黛俊行教頭も視察。柳澤校長は「生徒たちにはいろいろな経験をしてほしいと思ってこの取り組みをしました。経験が気づきを生み、社会にも還元できると思いますし、自身の人生を豊かにするとも思います。ドローンは社会に欠かせないものになると思います。社会に出る前にこの経験をしたことが、どんなふうに生きるか楽しみです」と目を細めた。
ドローン部はすでにドローンの特性や、地元である板橋区の社会課題などを学んでおり、今後、防災、防犯、地域の魅力化などのテーマごとに、ドローンの活用を検討する。
学校現場ではドローンの導入が広がっている。福島県立船引高校(福島県田村市)では、2016年12月以降、ドローン研究に力を入れる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)によるドローン講習が続けられている。今年度は「プログラミング×AI×ドローン」が展開されている。湘南白百合学園中学・高等学校(神奈川県藤沢市)、聖光学院中学校・高等学校(横浜市)は、著名アーティストのライブの映像撮影実績を持つ船津宏樹氏がCEOとして率いるfly株式会社(東京)のてほどきで、STEAM教育の一環としてドローン講習を行った。徳島県立那賀高等学校も森林クリエイト科で2017年度からドローンのカリキュラムを取り入れており、学校でのドローン導入が加速しそうだ。
地元主導でドローンの利活用を進めている多業種活動体、ドローンコンソーシアムたむら(福島県田村市)は9月14日、田村市役所で講演会と総会を開いた。慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの古谷知之代表と、橋本綾子研究所員が講演した。下田亮研究所員も、質疑応答のさいに回答に応じた。古谷代表は講演の中で、「ヒトができないことをロボットで代替する発想だけでは限界がある」と、バックキャスト思考への発想の転換を促した。総会では役員案や事業案、予算案などを全員一致で承認した。
慶應の古谷氏は、「自律移動ロボットの社会実装に向けて」をテーマに講演した。飛行するUAVのほか、水上、水中、陸上など活動場所を問わず自律的に移動する機体をドローンと表現する考え方が広がる中、古谷代表はそれらをまとめて「自律移動ロボット」と表現し、自律移動ロボットの社会実装に向けた取り組みの重要性を説いた。
講演ではUAVや水中ドローンの活用が産業、防災など多方面に広がっていることを、海外の取組やコンソーシアムの実例などをあげて説明。水中ドローンについては環境対策への活用も進んでいることを紹介し「空に限らず、陸、海とも活用はさらに広がっていきます」と展望した。
また、社会実装を進めるうえでは「人にできないことをロボットやドローンに代替させる、という範囲での発想、考え方だけでは可能性が限定的になるおそれがある」と指摘。「ドローンやロボットをどのように使うのか、妄想を働かせて、未来起点で逆算するバックキャスト思考で活用を進めることが重要だと提案しています」と発想の転換を提唱した。
さらに、ロボットやドローンを意識的に活用を拡大することについても重要性を指摘。「海外がロボット前提社会になる中、日本がそうなっていなければ、産業競争力で日本は海外に負けてしまいかねません」と述べた。
そのうえで「それを打開するためにも、みなさん自身がぜひ、プラットフォーマーになっていただければ」と積極的な活動を呼び掛けた。
リモートで講演した橋本綾子研究所員は、田村市内にある福島県立船引高校で取り組んでいる活動を「ドローンを活用した高度人材育成について~船引高校の事例紹介」という演題で講演した。
この中で橋本研究所員は、「人材育成というと、操縦技能に特化したカリキュラムになりがちですが、自分たちで課題を特定してその解決を模索したり、市販のドローンでは不可能なときにそのドローンにひと手間加えて、不可能だと思っていたことを可能にするドローンを自分で制作してみたりと、自分たちで考えることを重視しています」と紹介した。
活動では1年次、2年次、3年次と体系化したカリキュラムを作り、それに沿って取り組んでいることや、地域課題の解決にも取り組んでいることを紹介。鳥獣害対策をテーマに活動で、地元の猟友会の経験談を間近で聞く機会を作ったことも報告すると、参加者が大きく場面もあった。
ほかにも、田村市役所の屋上にRTK基地局を設置したり、それを活用して固定翼を飛行させたり、あるいは、物件投下に挑戦したりと、幅広く活動してきたことも伝えた。
今後は、12月に運用がはじまる国家資格としての操縦ライセンスを想定したより高度な知識の修得を目指すほか、最近急増している行方不明者問題の対応としてドローンを活用した捜索活動にも取り組む。橋本研究所員は「高校生には楽しんで答えを見つける過程を大切にしてほしいと思っています。ドローンを活用した業務につきたい人材の母数を増やしたいと考えていますが、そのためには、ドローン関連の会社に就職するだけでなく、そうではない業種の企業に就職したうえで、そこで新たな手法としてドローンを取り入れるような挑戦ができる高度人材を育成したい」と抱負を述べた。
講演後の質疑応答では、イノシシなどの鳥獣害対策へのドローン活用の展望について質問があがった。オンラインで参加した下田亮研究所員が、「イノシシについてドローンの取組は各地で行われてる一方で、イノシシが苦手とする周波数などはつきとめられておらず、まだ決め手がない。現在、取り組みが増えているので、やがて弱点がつきとめられれば、ロボットやドローンを使った有効な手立てが作れると考えています」などと回答した。
福島県田村市の福島県立船引高等学校(猪狩良一校長)ドローン科学探求部が、地域の農作物に深刻な影響を与えているクマ、イノシシなど鳥獣による農作物被害などについて、ドローンを活用した対策を講じる取り組みを進めている。12月11日には、地元の猟友会(福島県猟友会田村支部、同小野支部)を中心に構成する田村市鳥獣被害対策実施隊が部員に取り組みについて説明した。部員も鳥獣被害対策ドローンについての構成を発表した。船引高校ドローン科学探求部は今後、田村市と包括連携協定を結んでいる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)の支援、助言を受けて、鳥獣害対策に適したドローンの開発も視野に活動を進める。この日の取り組みは田村市の白石高司市長も視察し、「高校生が地域の課題に正面から向き合い大変心強いです」と目を細めていた。
船引高校ドローン科学探求部が鳥獣害対策に取り組むのは、ドローンを地域の課題に役立てることができる期待が高まっているためだ。田村市では今年5月、市内でツキノワグマが捕獲されるなど鳥獣被害不安が深刻化している。また対策にあたる鳥獣被害対策実施隊の高齢化が進み、捕獲の効率化を必要だ。一方、船引高校では2016年12月以降、田村市と包括連携協定を結んだ慶應義塾大学の教員、研究所員が定期的にドローンの担い手育成に力を入れており、すでに防災、観光振興などドローンを活用した取り組みに実績がある。
このため田村市は、船引高校ドローン科学探求部、慶応SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム、鳥獣被害対策実施隊と連携し、ドローンを活用した鳥獣被害対策に中長期的に取り組む方針を決め、12月に公表した。
12月11日の活動では、慶応による特別講座を開催。講座の中で田村市鳥獣被害対策実施隊が、獣害駆除の方法を駆除に使う猟銃の実弾を見せながら説明した。説明の中では、駆除活動がいくつもの法令に従って行われていること、狩猟捕獲と有害鳥獣捕獲との違い、地域での捕獲実績のほか、実施隊の高齢化の実態などについて説明を受けた。
この中で「どこにいるか分からないクマの所在が分かる、どこに向かって移動しているかが分かることは駆除にとって大切」などの話があると、聞き入っていたドローン科学探求部員がメモを取るなどしていた。
ドローン科学探求部員は説明を受けたあと、ドローンを活用する場合の、「最善の方法」について班ごとに考えを発表。えさでおびき寄せて捕獲したり動物園に引き渡したりする案や、害獣の苦手な音や光を発して近寄らせないようにする案などと、そのために考えられるドローンの案を示した。
中には、クマのエサとなるサカナをつりさげ、クマを誘導する水空両用ドローンを提案するユニークなアイデアもあった。提案した部員は「クマの走る速度より速く移動できる性能を持たせたい」などと説明し、見学していた市の担当者らものぞき込んでいた。
発表を受けて、この日の講座の指導を担当した慶應の下田亮研究所員が「みなさんが考えたアイデアを具体的に形にするため、ドローンを開発していきましょう」と述べ、今後、中長期的にドローンの開発も含めた対策に取り組む方針を示した。
この日の特別講座では、ドローンでカプセルを運ぶデモンストレーションも実施。3月の法改正で認められることになった、地上から1メートル以内の高さから積み荷であるカプセルを切り離す様子を示した。下田研究所員は「この方法は、ルールがかわるまではできませんでした。ルールはかわります。いまできないことでも、必要なことであればルールを変えることができます。ドローンがなかった時代のルールを、ドローンがある時代のルールに変えられる可能性も含めて考えていきましょう」と呼びかけた。
この日の取り組みを見ていた田村市の白石高司市長は「大変心強い」と述べ、「ドローンには大きな期待を寄せています。空を使うことで解決できる課題や、叶えられる望みは多いと思うので、田村で進められることは進めていきたいと考えています」と話していた。
慶應義塾大学と包括連携協定を結んでいる福島県田村市の県立船引高校で10月24日、ドローン特別講座が開かれ、ドローン科学探求部のメンバーがアメリカ国立標準技術研究所(NIST)の技能評価手法にチャレンジしました。初挑戦のメンバーもゲーム感覚で楽しみながら、上手な生徒をはやしたてたり、自分の操縦の課題を発見したりしていました。この日も指導役の慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が、チャレンジの内容や目的をていねいに伝え、生徒たちのいきいきとした表情を引き出していました。
NISTの評価手法は、文字が書かれたバケツ型の被写体を取り付けたツリーを使うところが特徴です。バケツは内側の底に円が縁どられ、その中にアルファベットが描かれています。正面からのぞきこむと円と文字が読み取れますが、のぞき込む位置がずれたり、距離を取り誤ったりすると、文字が読み取れなかったり、縁取りの円の一部が欠けたりします。バケツの大きさや向き、高さ、角度は予め決められています。技能評価では、時間や飛行方法の条件が与えられ、ドローンを飛ばし、カメラでバケツ内の文字や円をとらえられるかどうかを判定することになります。
船引高校には昨年秋、この評価のためのツリーが1セット導入されました。この評価はドローンの技能の評価として世界に広まりつつあります。船引高校は、これに沿った練習ができるきわめて珍しい高校といえます。ただ導入後には、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策の一環で活動休止が余儀なくされていました。今年秋以降、感染状況をにらみながら、活動を少しずつ再開したところで、この日は2020年度にはいって初めて、ツリーを使った練習となりました。
4月に新入部員となった生徒にとっては、ツリーを使った練習は初めてでした。初めてであったり、久しぶりであったりしながら、好奇心も手伝って作業はするすると進み、生徒たちは体育館に機材を持ち込み、ツリーを組み立てるところまで約10分で準備を終わらせました。背の低い株ふたつと、高さ3メートルのツリーひとつを並べたコースができると、まずは小型のカメラ付きドローンで、3チームに分かれて、バケツの中の文字をとらえる練習で腕をならします。あちこちから「読めた!」「円が欠けてる!」と声があがります。「もうちょっと左」などと励ます声も混じり、体育館の中は練習が進むにつれて活気が満ちてきました。
この日のハイライトは、決められたバケツの文字を読み取ったうえで、離陸から着陸までの時間をできるだけ1分に近づける「1分チャレンジ」でした。機体は学校で持っているPhantom4です。このチャレンジでは、初心者であるなど不慣れなチャレンジャーほど、ゴールまで急ぐことに専念しがちですが、実は早ければいいというわけでもないところがキモです。器用に読み取れる操縦者にとっては、着陸までの時間を1分に近づけるためには、同じペースを保てるかどうかが重要になります。
準備が整ったところで順番を決めて、チャレンジをスタートさせると。最初の生徒が離陸からなめらかに操縦し、文字もとらえ、無事に着陸させて、いきなり1分2秒の好タイムをたたきだしました。順番待ちの生徒から「おおっ」「うますぎるっ」などと声があがりました。実際、これが、この日の最高タイムとなりました。ただ、そのほかの生徒も実はかなり手馴れていました。この日の二番手の成績は1分8秒。それに1分10秒台も複数いました。最も時間がかかった生徒でも2分を超えることはなく、練習量が多く確保できない中でも、この先さらに上手になる可能性を実感できました。
練習の最後に南氏は、この日の取り組んだNISTの評価手法が、現在、世界中に広まりつつあることや、飛ばし方にいくつもの種類があることを説明しました。その中で、「世界中に広まりつつある方法であるということは、これで獲得した技能評価は世界中どこにいっても通用するということになる可能性があるということです。またツリーを使う飛ばし方には、オービット、スパイラルなどいろいろありますが、今回チャレンジしてもらったのは、並べられたツリーの外側を周回するトラバースという方法です。時間があればいろいろな方法で練習をしてみると楽しいと思います。最後の1分間チャレンジでは、より速くということよりも、どれだけ滑らかに動かせるか、というところが重要です。そんなことも頭に入れながら練習してみてください」。と伝えました。
また、「学期の終わりあたりで実際に技能レベルを測ってみたいと考えています」と、生徒たちのチャレンジ精神を刺激しました。また田村市の美しい紅葉を撮影してみることや、学校を撮影してみることなども提案しました。
船引高校のドローン活動は2016年12月にスタートして、あと少しで丸4年になります。船引高校の地元である田村市と、慶応義塾大学との連携協定をきっかけに人材育成の一環として始まった活動は、船引高校の大きな特徴のひとつとなり、地元の田村市の人々や、周辺自治体から一目も二目も置かれるようになりました。DroneTribuneは、船引高校をはじめ田村市の取組を折に触れて見て、伝えて参りました。これからも田村市や船引高校の取組に声援を送ってまいります。
慶應義塾大学と包括連携協定を結んでいる福島県田村市にある福島県立船引高校で、9月10日、「ドローン特別講座」が開催され、船引高校でドローンに関連する活動を展開している「ドローン科学探求部」の1~3年生が、ドローンの操縦訓練に励んだ。この日も、慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が直接手ほどきをした。中には南氏の短い助言でコツを飲み込み短時間で上達する生徒もいて、ドローンの取組に積極的な田村市での担い手育成がまた一歩、進み始めた。
この日は同校の体育館を会場に、ドローンの操作に親しんだ。講師の南氏が参加者に与えたテーマは「〇を描く」。体育館の床に描かれたバスケットボールのコートなどを利用して、トイドローンが円を描くように飛ばすことを求めた。初心者は空中に停止させるところから、手元のプロポの左右スティックの倒し方や、スティック操作に応じた機体の反応を理解させていった。
経験者には、「ノーズ・イン・サークル」や「8の字」などの飛行を求め、技量の向上を促した。
講座の途中で、周囲と距離を取る必要性や、その距離の確認方法など、飛行させるために知っておくべき基礎知識もまじえた。
トイドローンのあとには、Phantom4も操作。屋外で撮影をするなどの活動により近い飛ばし方について指導を受けた。この日は、過酷な現場でドローンを運用している専門家も南氏の補佐として学校を訪れ、生徒の指導を手伝った。
福島県立船引高校は、慶大が田村市と2016年12月に協定を締結して以来、ドローン指導を取り入れている。南氏を中心にドローンの専門家が学校に出向き、直接、指導をする「ドローン特別講座」を提供しており、これまでに映像クリエイター、ドローンレーサーら第一線で活躍する専門家が指導に関わってきた。
船引高校はそれ以外にも、独自にドローンの練習をしたり、撮影をしたり、交流希望を受け付けたりと活動の場を増やしてきた。田村市内で開催された音楽フェスで飛行させたり、市内の総合防災訓練で撮影を請け負ったりとか領域も拡大させてきた。卒業生が県内のドローン関連企業に就職したり、農薬散布の資格を取得したりと、社会に役立てる道筋も描き始めている。
船引高校の高校案内の表紙が、平成30年、令和元年、令和2年とドローンで撮影した写真が採用されているのも、ドローンが特徴であることを示しており、船引高校のドローン活動が地域の特徴を形作り、住民の誇りとなるなど、さらに地元の活性化に貢献することが期待されている。
ドローンを活用して地域を活性化する取り組みに力を入れている福島県田村市で5月18日、市内にある福島県立船引高等学校の「ドローン特別講座」が第4期を開講しました。田村市はドローンを積極的に受け入れている地域として、慶應義塾大学とドローンを活用した包括連携協定を結んでいます。田村市のドローンへの取り組みは、ドローン事業や研究に携わる関係者にも知られ始めていて、第4期の生徒たちは「ドローンのまち、田村」でさらなる実績を積み上げる取り組みをけん引することになります。
この日の講座には船引高校の生徒15人が参加しました。このうち9人が初参加です。ただし、学校の部活動、ドローン部に所属していて、毎週練習に励んできていて、特別講座第1回にして、すでに操縦の経験を持っている生徒が大半でした。
第4期の開講にあたり、中心的に指導をしている慶大ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表は、生徒たちに「ドローンを使えるようにはなってほしいですが、それだけではなく、それを使って何ができるか、ということを考えてほしいと思います。先輩の中には、ドローンの会社に就職したり、農薬散布の資格をとったりした方がいて、ドローンで地域の力になれる、ということを示してくれています。みなさんは地域の力になれます。それを一緒に考えていきましょう」とあいさつをしました。
元号が令和に代わって初開催であることや、節目といわれる3期を超えた開催であることなどもあり、この日は市の幹部も視察に訪れていました。
田村市の本田仁一市長もその一人で、生徒に「ドローンを活用できればすばらしいことにつながると信じています。前向きに取り組んでください」、土屋省一市議会議員も「自分は新しいものが好きでドローンにとびつきました。今は個人で5台、持っています。いろいろなことができますので、よく学んでください」と激励しました。
船引高校の卒業生で、ドローン事業を手掛ける株式会社スペースワンに勤務する佐藤史隆さんが「ドローンは決して難しくはありません。しりごみしないで取り組んでください」と呼びかけました。このほか、皮籠石直征副市長、市の関係者、高校関係者らが生徒に向けてメッセージを送りました。
講座は、南氏のドローンの定義に関する解説でスタート。「人が空を飛ぶための3つの方法」には「浮力、推力、揚力」を得ること、と説明したあと、ドローンが飛ぶ仕組みや、空中で自由自在に動ける理由などを解説しました。そのあと、体育館の中でトイドローンを使って飛行練習。前進して、後退させる、からはじめ、正面を前に向けたまま四角を描く練習、円を描く練習などに取り組みました。すでに先輩から手ほどきをうけている生徒もいて、すいすいと飛ばす生徒も多く、見守っていた市の関係者から「上手ですね」という声も上がりました。
ドローン特別講座は2016年12月に、慶大と田村市がドローンに関する包括連携協定を結んだことがきっかけで始まりました。大学がドローンの活用をめぐって自治体と提携したのはこのときが全国でも初めてでした。そして、協定の最初に取り組みが、市内にある県立高校、船引高校でのドローン特別講座でした。
市内でドローンの取り組みを進めるにあたり、ドローンの運用の担い手を地元で確保できることは大切です。このため、地元でのドローン人材の育成の役割を果たすのが、この特別講座です。各期それぞれにゴールが設定され、参加者はそれぞれのゴールを目指してきました。この間、田村市内で開催された音楽フェスの模様、総合防災訓練の記録を担ってきました。その評判をききつけ、外部から撮影の依頼が舞い込んでくることもありました。
これまで3期の間に、先輩が生徒に伝えると仕組みができました。特別講座をきっかけに高校にドローン部ができました。ドローンを積極的に取り入れている地域として、田村市は全国のドローン関係者から知られるようになっています。4期のメンバーは、ドローンを適切に運用してその魅力を十分に味わうことや、地域の活性化の取り組みの担い手として活躍することが期待されています。