大型物流ドローンの開発を手掛ける米Sabrewing Aircraft(セイバーウィング・エアクラフト社、カリフォルニア州)の大型eVTOL「レイガル」が、飛行の実現に向けてカウントダウンに入った。レイガルは2,500kgの貨物を積載して垂直離陸をする。飛行が実現すれば航空貨物が現在直面している課題の多くを解決し、空の物流に大きな発展をもたらすことが期待される。「レイガル」は空の物流をどう変えるのか。DRONE FUNDの投資先でもあり、セイバーウィング・エアクラフト社CEOのエド・デ・レイエス氏の寄稿を掲載する。原文は英語で、翻訳は株式会社アイ・ロボティクス取締役でセイバーウィング・エアクラフト社取締役の齋藤和紀氏が担当した。
米国の貨物ドローン企業「セイバーウィング・エアクラフト社」が
物流の諸問題を解決する
by Ed de Reyes

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とある年末の午前4時、霧に覆われるカリフォルニア州サンバーナーディーノの物流基地にMD-11貨物機が着陸した。本来はもっと早く到着するはずだったが、濃霧の影響でだいぶおくれての到着だ。ロサンゼルス近郊は一様に霧に覆われている。そのため、サンバーナーディーノの航空機の多くは離陸できていない。
地上クルーはMD-11からトラックや小型航空機に大急ぎで荷物を乗せ換えていく。クリスマス配達の大渋滞が始まる前に、できるだけ早く多くの荷物を捌かなければいけない。ロサンゼルス続く大動脈であるI-10はここ数日工事が行われており、大渋滞を巻き起こしている。迂回路であるI-15も濃霧の中ではスムーズに通れる期待はできない。
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実はこれ、世界中の物流拠点では「よくある問題」だ。しかし今、着陸したMD-11を、パイロットや天候に左右されない複数の小型航空機が待ち受けていたと仮定しよう。
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クルーは、総重量2,400キログラムになるLD-2サイズの標準コンテナ4つを、大きく開いた機首部分からスライドさせて小型機に積載すると、濃霧にもかかわらず速やかに離陸の準備を整える。小型航空機は次々と離陸し、30分後には近隣の空港に続々と到着。そこで待ち受けるクルー達は速やかに貨物を機体から下ろし、仕分けていく。そして、次の貨物が積み込みまれた小型航空機達は、今度はビバリーヒルズの集荷拠点へと向かう。
航空管制から離陸許可を得ると、航空機はヘリコプターのようにフワリと浮上する。地上クルーは2名程度、翼が折りたたまれた風変わりな機体は、近くの枝や送電線を問題にすることはなく駐車場から飛び立つ。たとえ、車両が着陸予定場所に停まっていても、障害物を認識し、地上クルーが障害物を除くまでの間、上空に浮かび待機する。そして、安全を確認したのち、着陸し、貨物を下ろし、新たな貨物を受け入れ、再び離陸許可を得て次の目的地へ飛び立つ。
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これらは小型の航空物流ドローンによるサプライチェーンのイメージだ。
航空機は濃い霧や雨という気象条件が苦手だ。また、今日では地上車両の故障ですら物流を麻痺させる原因となりえる。しかし、これらは全てドローン物流では問題ではなくなるかもしれない。たとえ荷下ろしのフォークリフトがぬかるんだ原っぱを横切れなかったとしても問題はない。地上作業員の一人が機体の機首を傾けてフックを外すだけで、貨物コンテナはウインチで安全に運び出すことができる。仕分け、積み込み、離陸というプロセスを南カリフォルニアの各空港で日に15回繰り返し、最終的に4,500kgの集荷積み荷を航空機に積み込んでサンバーナーディーノに戻る。給油は1日の終わりに1回行われるだけだ。
このようなアーバンエアモビリティは決してSFでは無い。電動化と自律航行のテクノロジーの進歩に裏付けされた、実用的なプロジェクトとして進めているのだ。例えば、エアバス社は、彼らがヴァハナと呼ぶ機体のテスト完了を公表した。ヴァハナは、都市や町の中や町の間を低空飛行することを目的とした電動垂直離着陸機(eVTOL)だ。また、グーグル社の野心家たちはコーラという機体を生み出したが、こちらも近距離や低空飛行のみを目的としている。ところで、これらの2つの航空機はどちらもまだ人が操縦することを想定している。つまり、特に悪天候の場合には飛べず、多くの貨物を運ぶことはできないのが難点だ。
仮に、人が操縦せずに貨物を移動させる方法があれば、どれほど楽になるか考えてみてほしい。乗客を乗せなければ、安全を確保するための重くてかさばる機材は要らない。パイロットが搭乗しなければ、目視用の計器や、機内防音や窓、床梁、隔壁、そしてそれらを支える部材も不要になる。場合にもよるが、航空機の重量は人が乗ることを想定するだけで25%も重くなる。
滑走路の確保ができない?ノープロブレム! カリフォルニア州カマリロにあるセイバーウィング・エアクラフト社は、無人貨物機の利点をフル活用するために設立された。最初から貨物のみを運ぶコンセプトで、ゼロから機体を設計している。そのため飛行中の「生命の危険」を考慮する必要はないし、だからこそ今まで行けなかった場所に安全に到達できるようになる。
セイバーウィングの開発中の機体の名称は「レイガル」だ。
2,500kgの貨物を積んであたかもヘリコプターのように垂直に飛び上がることができ、もし短い滑走路があれば、4,500kgもの貨物を積んで離陸することができる。これは、現在メジャーなセスナ社製408スカイクーリエが扱える以上の重量であり、より速く、より高く飛ぶことができるのだ。フォークリフトやパレットジャッキ、その他の専用機器の助けを借りずに積み下ろしができるよう貨物運用を考慮した設計も特徴だ。
レイガルは、駐機場でも砂丘でも、地面すれすれに機種を下げて開口することでコンテナ貨物やバルク貨物を素早く積み込むことができる。高浮力タイヤと4本柱のランディングギアを効率的に配置し、泥、雪、砂、湿地、深い水たまりにも着陸することができる。
レイガルは、米国連邦航空局(FAA)の規則「パート23」という、最大総重量600kg(1,320ポンド)を超えるカテゴリーに該当し、遠隔からであっても常時監視・制御と、航空管制とのコンタクトを維持することが義務付けられている。そのため、数百マイルから数千マイル離れた地上にいるオペレーターは、衛星通信を介して航空機を制御することになる。航空管制官は、あたかもコックピットに座っているパイロットと会話するのと同じように、航空機を通して地上にいるオペレーターに話しかけることができる。
また、航空管制から提供された正確な飛行計画を離陸前にコンピュータに読み込んでいるので、仮にオペレーターや航空管制官との通信が途絶えても機体が自ら帰路を確保することができる。
FAAは、航空機パイロットに対して航路上の他の航空機を目視して回避しなければならないと定めている。レイガルはこの作業をオペレーターではなく自ら行わなければならない。衝突回避(DAA:Detect and Avoid)システムとして知られるこのシステムは、衝突予防レーダー(ガーミン社製)と航空機を検知して自動で回避指令を出すカメラ・システム(アイリス・オートメーション社製)、ライダー(レーザー照射システム)を組み合わせた複合的なものだ。また、DAAシステムは、ADS-B(Automatic dependent surveillance-broadcast)と呼ばれる衛星航法システムも使用している。ADS-Bは、現在ではFAA管理空域内のあらゆる規模の航空機に搭載が義務付けてられており、空域内のすべてのフライトを追跡しているため、従来の地上レーダーよりもはるかに柔軟な航路設定を可能にする。
とはいえ、問題がすべて空中にあるわけではなく、時には地上にある事もある。例えば、駐車場に離着陸する場合、指定された場所に車両が停まっていたりすることもある。レイガルは、人工知能による着陸システムを使用して、車両、人、岩、凹凸のある路面などの障害物を上空から発見する。この人工知能による着陸システムは、船上のランディングパッドやあらゆる障害物を認識することができる。
センサーから送られた全てのデータは、インターフェース・コンピュータによって統合され、近隣を航行する他の航空機との安全な距離を保つ。その際に、コンピュータは地上に状況を報告し、オペレーターは飛行経路を変更するかどうか決定する。たとえオペレーターが何もしなくても、コンピュータは必要な処置を自ら行う。また、航空機がどこへ行こうとも、コンピュータは前方の天候を検知し、そのデータをオペレーターに提供し続ける。オペレーターは管制官とコミュニケーションをとりながら暴風雨等の障害を適宜回避することができる。
さらに、レイガルは半自律型であるため、たとえ操縦士や航空管制官との通信が途絶えても問題は少ない。あらかじめ計画された飛行ルートをたどって、途中でトラフィックを検知して回避し、離れた場所に着陸するだけだ。
レイガルの複合素材による機体は、現場で簡単に修理・交換が可能なセクションに分割して作られている。このモジュール式設計により、これまでは数週間、あるいは数ヶ月かけて航空機を着陸させて行っていた検査工程が、わずか数時間で可能になった。
レイガルは防衛や災害救助用途にも適している。地上からの火災を避けて高く高速で飛行したり、レーダーを避けて低く飛行したりすることができるため、孤立した部隊に重要な物資を運ぶことができるだろう。負傷発生後の「ゴールデンアワー」内に最大4人の負傷者と2人の衛生兵を移動式病院に急行させるのに十分な汎用性があり、負傷者の生存の可能性を大幅に高める。さらに、レイガルは独自のシステムにより仮に推進システムが損傷しても安全に着陸できるよう冗長化されている。ホバリング中にユニット全体の推力を失っても安全な地点まで滑空して着陸することができるのだ。
レイガルは、基本的にはジェットエンジンで推力を発生させるのではなく、特別に設計されたターボシャフトエンジンから電気モーターに電力を送ってローターの羽根を回転させる。これはプロペラのようなものだが、オープンローターよりも推力を出すことができる。またダクト型のカバーは、茂みや木の近くに着陸する際に地面にいる人やブレード自体を保護する目的もある。このドライブトレインは、巡航飛行では高効率を実現し、離陸・着陸時には高出力を実現することできるよう設計されている。この効率の向上により、セスナ製408スカイクーリエと比較して推定70%の二酸化炭素排出量を削減しながら、2倍の荷重で4倍の距離を運ぶことが可能になった。また、バイオ燃料を使用することで、さらに「環境に優しい」機体にすることができると考えている。
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数値で見るレイガル 翼幅:18m 全長:18m 全高:3.7m 航行スピード:180ノット 航行レンジ:1,850km(1,000海里) 最高高度:6,700m 垂直離陸時ペイロード:2,450kg 滑走路離陸時ペイロード:4,540 kg
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初代レイガルの機体は2020年3月に完成しており、この記事が掲載される頃には飛行テストが始まっているだろう。セイバーウィング・エアクラフト社は2017年からFAAと協議を続けており、新しい航空機の安全性を保証する「型式認証を開始する許可」が間もなく下りる可能性が高い。
航空機開発にとって認証はとてつもなく大きなウェートを占める。小型の自家用飛行機であっても型式認証には簡単に5000万ドルから1億ドルの費用がかかるが、(人の搭乗を前提としない)貨物用ドローンは認証にかかる費用は相対的に小さくなると考える。そして、レイガルは、他の他社のeVTOL輸送機に先行して認証プロセスを進めることができている事を申し添えておきたい。
「近い将来、世界中の子供たちへのクリスマスギフトは空から届けられるようになるでしょう!皆さん、頭上に浮いているレイガルを見ても驚かないでくださいね。」
“Originally published in English by IEEE Spectrum Magazine, June 1, 2020”(英文原文記事)
著者:エド・デ・レイエス セイバーウィング・エアクラフト社最高経営責任者 元米空軍テストパイロット
翻訳:齋藤和紀 株式会社アイ・ロボティクス取締役 セイバーウィング・エアクラフト社取締役


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GMOインターネットグループ、「2025国際ロボット展」に初出展 ブルーイノベーション株式会社(東京)の熊田貴之社長がドローントリビューンのインタビューに応じ、「お客様」との向き合い方について語った。同社は複数のドローンやロボット、センサーなどを統合管理するデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」や、球体ドローン「ELIOS」シリーズ、ドローンポートなどの事業を展開していて、取引先、顧客との関係について模索を続けている。
ブルーイノベーションはBEP技術を軸に、「点検」、「ドローンポート」、「教育」、「ネクスト」の4つに分類したソリューションを提供している。11月14日に発表した2025年12月期第3四半期決算によると売上高は、7億7000万円で、1年前の第三四半期から4.3%増加した。売上高を構成する4ソリューションのうち「点検ソリューション」の構成比が46%と半分近くを占めた。
熊田貴之社長 「わたしたちはソリューションを提供している会社ですが、ソリューションはお客さまの声をしっかり聞くことなしに作れません。ドローンの機体を開発する、販売する、ということにだけ集中してしまうとプロダクトアウトになり、お客さまの要求に必ずしも合致せずにソリューションにならない、あるいは十分ではないということが起こりえます。ソリューションを提供するには、機体をお客さまの求める作業や動作ができるようアプリケーションが必要になるかもしれません。場合によってはドローンでない方がソリューションとしてふさわしいかもしれません。ソリューションはお客さまのご要望を伺うところから始まります。わたしたちはお客さまとメーカーとをつなぐ部分を担う面があるのかもしれません」
――持ち味はドローンやロボットなどの統合管理プラットフォーム「BEP」だ
熊田社長「はい。主な対象はドローンですが、お客さまとは無人搬送車の運用の話もしています。無人搬送車の複数制御。これにドローンが組み合わされることになれば、走る、飛ぶが統合されて、制御系に対するニーズにつながるのだと思います。それまでお客さまのご要望を伺いながら試行錯誤をしてまいります。プラットフォーマーになることは、その技術がみんなの共有財産になるということだと思っています」
――お話の随所に「お客さま」が登場し、強い意識を感じる
熊田社長「一般論ですが、ドローンに関連する産業が実証実験の段階から商売やビジネスなどの事業の段階に移りつつあることと関係しているかもしれません。実験は提供期間が実験の期間に限られます。それに対して商品を提供する事業段階になると、購入頂いた先での満足度の重要性が高まります。わたしたちも社内でカスタマーサポートの重要性に対する認識が日々高まっています」
――たとえば
熊田社長「ドローンポートは、購入頂いたお客さまのもとにずっと置いてあるわけです。そうするとお客さまからのご意見も寄せられます。問い合わせ、不安、クレーム、トラブル連絡など含めて、お客さまの声に向き合う期間が長くなります。わたしたちも十何年ドローン関連の事業に取り組んでおりますが、お客さまを担当する担当者が現場で親身に対応するフェーズから、組織として対応するフェーズに変わってまいりました。お客さまと向き合うサービスのフェーズに入ってきた、と言い換えてもいいかもしれません。ほかの会社ではすでにできているところもあるのだと思いますが、わたしたちは今年、社内にその体制をつくりました」
――トラブルを現場まかせにしない
熊田社長「はい。経営会議でも話をします。それはそのお客さまの中でわたしたちのサービスが浸透し始めている裏返しでもあると思っています。産業全体でもドローンがサービスのフェーズに入りつつあることを示しているかもしれません。いまではわれわれの提供しているプロダクトやサービスなどを通じて、LTV(Life Time Value)をしっかり提供できているか、本当の意味で長くお客さまに価値を提供するか、より強く意識するようになりました。LTVがKPIにもなりました」
――「お客さま」重視のサービスの会社だと
熊田社長「それを目指していますが、正直なところ、まだ全然です。ようやくそのフェーズに入ったという感じです。サービスがお客さまに浸透していくプロセスを体験している段階かもしれません。カスタマーサポートには大きなコストがかかる面もありまし、決して華やかなことばかりではないです。注目もされないし記事にもなりません。それを繰り返していくことが大事なのだろうと思っています。いま巨大企業になっているメーカーもそこからはじまって、やがて強いブランドになっています。わたしたちもそこを通っていかなければいけないと感じています。社内でもお客さまからの声に、現現も組織も対応する。会社としてちゃんと向き合おうという話をしています。営業、開発、保守などすべてです」
――ありがとうございました。

「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」は11月27日閉幕し、二日間の合計で3006人が会場を訪れた。事前に公開していた来場者目標の3200人には届かなかったが、期間中は来場者、出展者の笑顔がはじけた。機体メーカーなど主要プレイヤーの出展の上積みなどが、来場者拡大のカギとなりそうだ。
Japan Drone関西は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の主催、株式会社コングレの共催で11月26、27日の2日間、JR大阪駅直結の「ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター」を会場に開催され、26日に1604人、27日に1402人が足を運んだ。講演、パネルディスカッションなどのステージには2日間で1131人が参加した。来場者の中には出展者ではないドローン事業の経営者、関係者も見られ、会場内で知人を見つけてはあいさつをかわす光景や談笑する様子が多くみられた。
関係者や愛好家の間で話題になったのは初出展、初公開プロダクトだ。360度カメラの開発で知られる中国のテクノロジー企業Insta360がパートナー企業と設立したドローンブランド「Antigravity」が、日本の展示会に初出展し、機体やコントローラー、ゴーグルを紹介した。日本での発売計画は未確定だが、来場者の多くが足を止め、製品の仕様や今後の計画を担当者にたずねていた。
台湾の電気機器メーカーWistronも、系列のドローンメーカーGEOSATとブースを共同出展し、GEOSATの機体3種が初公開された。イタリアのモニタリングソリューションを展開するTAKE OVERも老朽インフラの課題と向き合う日本市場の調査をかねて初出展し、来場者と意見交換をしていた。米Skydioが9月に発表したふたつの新型ドローンについて、日本市場向けの公式アナウンスが出ていない中、JapanDrone関西に出展したジャパン・インフラ・ウェイマークは、二機種のうちの屋内向けドローン「R10」について独自のポスターを張り出したほか、チラシも用意し来場者に配布するなど関心を集めた。
会場では多くのブースで来場者と出展者が意見交換をしたり、説明を求めたりしている様子がみられ、あちこちで笑顔がはじけていた。ジュンテクノサービスやMizubiyoriは会場内に設置されたプールで水中ドローンを実演し、来場者に囲まれていた。
自治体の取り組みなどを紹介するパネルも多く設置され、じっくりと観察する来場者がいた一方、説明員のいるところは限られ、見学者が途切れる時間帯もあった。自治体の取り組みについては、「主催者テーマ展示ゾーン」と「ドローン×地方創生:自治自治体PRゾーン」とに分かれて展示されていて、来場者の利便性に合致していたかどうかの検討が加えられる可能性がある。
Japan Drone関西はJUIDAが10年前から毎年、千葉・幕張メッセで開催しているドローンの大規模展示会「Japan Drone」の地方開催版で、大阪で開催するのは2度目。一度開催した地域で二度目を開催したのは今回が初めてだ。JUIDAの鈴木真二理事長は初日の講演の中で、「アンケートで大阪での開催を求める声が大きかったことが今回の開催につながりました」と話している。今後も来場者の声が開催方針に反映されることになりそうだ。








11月26日に開幕した「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」では初公開、初出展を含め、多くの取り組みが披露されている。イタリアの保守、モニタリングソリューションを提供するTake Over社はFranz Lami CEO自身が来日して初出展。株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(東京)は、日本市場向けには公式発表がない米Skydioの屋内用ドローン「Skydio R10」について独自のポスターを作成し公開している。セントラル警備保障は不審ドローン対策ソリューションを提案している。
イタリアのTake Over社は日本の老朽インフラが抱える課題に対しイタリア仕込みのソリューションを提案している。同社はイタリア国内で橋梁、鉄道、高速道路、ダムなどの保守点検などで実績を積んでいる。イタリアは歴史的な建造物から近代的な道路まで公共構造物の時代背景が幅広く、その知見が老朽インフラを多く抱える日本での需要を見込む。
来日し会場のブースにも立ったFranz Lami CEOによると、イタリアのインフラは近代のコンクリートと中世からの石でできたものなどとがある。課題の緊急性が高いのは重量のあるトラックなどを支える道路などコンクリート製のインフラで、内部の亀裂などをいち早く察知し対処する必要がある。同社はその点検やモニタリングなどで実績を積んできた。
データ取得のためDJIを中心としたドローン、3Dレーザースキャナ、モバイルマッピングシステムなどを機材として使っている。JapanDroneのブースではFranz Lami CEO自身が来場者に実績、技術などをアピールし、情報収集、市場調査を進める。来場者には。同社のロゴの入ったキャップを渡している。最近東京に開設したオフィスの人員の増強にもつとめていて、リクルートにも積極的だ。
JIW、日本向けアナウンスがされていないSkydio「R10」のポスター独自作成
ジャパン・インフラ・ウェイマークは米SkydioのAIドローン「Skydio X10」や、専用の格納庫「Dock for X10」など点検ソリューションを展示しているが、ブースにはもうひとつ、日本市場向けには正式なアナウンスがない機体のポスターがある。屋内向けドローン「Skydio R10」だ。
9月17日と18日に米国で開催されたSkydioの毎年恒例の発表会「Skydio Ascend 2025」では、「Skydio R10」が屋内向けドローンとして発表された。もうひとつ。長距離飛行に対応した固定翼ドローンのプロトタイプ「Skydio F10」も発表されているが、いずれも日本市場向けには公式の見解はない。
屋内の点検ソリューションを展開するJIWはR10について独自にチラシを作成し、ブースではポスターとして来場者に見せている。それによると、R10は785gでX10の2140gから大幅な軽量化が図られる。暗所飛行用の補助ライトを備え、自律飛行し、ライブ映像を配信し、点検を支援するという。市場導入の時期は公式発表を待つ必要があるが、関係者や愛好家の間で関心を喚起しそうだ。
セントラル警備保障が不審ドローン対策展示
セントラル警備保障株式会社(東京)は、不審ドローン対応のためのソリューションなどを展示している。会場にはカウンタードローンシステムのほかいくつもの緊急対応機能を備えた移動指揮所車両「CSP Drone Base Car」を車両ごと持ちこみ、中に搭載している映像監視システムや、電源機能、車内で指揮がとれる機能などを公開している。屋根にはドローンポートを備え、ここから離陸させることもできる。
また、不審ドローンを検知するためのソリューション「DS_005D」も展示してある。ブースではその機能や上位モデルの説明を求めて来場者が足を止めていた。
レッドクリフ、ジュンテクノ、ROBOZが存在感
このほか、開場では大阪・関西万博の協会企画催事プラチナパートナーとして連日ドローンショーを繰り広げた株式会社レッドクリフ(東京)が前面を赤、黒でペイントしたブースで来場者にドローンショーの特徴や効果を説明していた。また屋内ドローンショーを手がける株式会社ROBOZ(名古屋市)は、ドローンショーに使う機体の特徴や通信、飛行の安定性などについて石田宏樹代表取締役が率先して説明していた。会場の隣室でデモンストレーションも行い、手軽に運用できることを実践した。
ジュンテクノサービス(埼玉県川越市)も水中ドローンを中心に展示。ダム堤体、取水口、吐口撮影からポンプ場撮影、流域下水道点検など多くの現場での点検実績などのノウハウをブースで展示しているほか、会場内のプールでデモンストレーションも実施し、来場者がその様子をみるために取り囲む様子もみられた。











アメリカのドローンメーカー、Inspired Flight Technologies社の産業用ドローン「IF800 TOMCAT」「IF1200」が、「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」で公開されている。展示したのは株式会社栄光エンジニアリング(茨城県つくば市)だ。リスクを回避するオペレーターへの提案として出展した。いずれのモデルも日本のドローンの展示会での出展は初めてだ。
栄光エンジニアリングが展示しているのはアメリカInspired Flight Technologies社のクワッドコプター「IF800 TOMCAT」とヘキサコプター「IF1200」だ。
IF800 TOMCATはバッテリーなし重量が4.2㎏、バッテリー搭載時で8.5㎏で、最大54分飛行する。インフラ点検、LiDAR調査などの用途を想定している。また「IF1200」は最大43分飛行、最大積載量8.6㎏だ。栄光エンジニアリングの大島健一社長は、取引先からよりリスクの低い機体を求める声を聞き、Inspired Flight社にゆきあたった。「IF800 TOMCAT」「IF1200」とも米国防省のサイバーセキュリティやサプライチェーンの健全性基準を見た居た場合に認定を与えるプログラム「Blue UAS」に認定されている。栄光は現在、Inspired Flight社の日本国内代理店だ。
ブースでは大島社長らが機体の特徴などを来場者に説明していた。ブースではそのほかExyn Technologies社の自律飛行型3Dマッピングシステム「Nexys」「Nexys Pro」、Teledyne Optech社の軽量LiDARシステム「EchoONE」も展示している。




台湾の電子機器大手ウィストロン(Wistron)は、同社系のドローンメーカー、GEOSAT Aerospace & Technology Inc.(経緯航太科技)と共同でブースを構えた。GEOSATのドローンが日本の展示会で一般公開されるのは初めてだ。
初公開されたGEOSATのドローンは3機で、日本での展開は今回の反応をふまえるなどして今後検討するという。3機はいずれもスタイリッシュで、「スタイルは重視して作った」という。
ブースにはウィストロンでドローン部門を統括するAnn Liu氏も訪れ、来場者の反応などを確認していた。
展示会で製品を見る機会はそう多くなく、ブースを訪れた来場者の中にはこのブースに立ち寄ることを来場理由にあげる人もいた。
ブースの壁面にかけられていた薄型ディスプレイはウィストロンの製品で、その薄さに来場者が指をさしている様子もみられた。ディスプレイは投影する映像の切り替えや明るさの調整は遠隔で可能だという。




中国Insta360系のANTIGRAVITYが「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」に出展している。同社は8月に8Kで360度の映像が撮影できるドローン「Antigravity A1」の発表をし、話題を集めた。日本の展示会に出展するのは今回が初めてで、ブースのAntigravity A1にも多くの来場者が見入っている。
Antigravity 社は日本の展示会の出展は今回が初めてだ。出入口に近い場所に構えたブースにはひっきりなしに来場者が訪れた。8K360度全景ドローン「Antigravity A1」が今年8月に初の製品として発表され、ドローン愛好家や関係者に間で一気に話題が広がった。
全方位を捉える「デュアルレンズ設計」でドローン周囲のすべてを360度で記録し、ライブ映像や最終映像からはドローン本体を消すことができる。操作はレバー状のコントローラーで直感的な操作が特徴だ。
ブースでは機体重量がバッテリー含めて249gであることや、2026年1月に世界同時発売を目指していることなどが説明されていた。ただし日本での発売は、諸手続きの進み具合にもよるため未定で、今後正式に公表される見込みだ。
操作はゴーグルを装着して行うため、いわゆる目視外飛行の扱いとなる。価格は今後決まるが、現時点では標準型のセットで30万円台、最も基本的なセットで20万円台を想定しているという。
JapanDrone関西ではデモフライトを実施。開催2日目も行う予定だ。
