ドローン、エアモビリティーが価値ある未来を手繰り寄せると期待される中、世界規模のコンテストで善戦中の「テトラ」に注がれる視線が熱い。テトラとは何か、チームのの取り組みとはどんなものか。その実態について、テトラに詳しいアイ・ロボティクスの斎藤和紀CFOに原稿としてまとめてもらった。以下、そのまま紹介する。(村山繁)
ボーイングがメインスポンサーを務めるGoFlyというコンテストがあることをご存じだろうか。2020年の春までに、軽自動車サイズの空飛ぶクルマ(有人エア・モビリティ)を30km以上飛行させ、そのスピードやデザイン、静粛性などを競うコンテストであり、賞金総額は日本円で2億円を超える。
実は、このコンテストには日本からも東大発の「テトラ」が参戦している。設計を競う第一フェーズで世界トップ10入りを果たし話題となったことは記憶に新しい。プロトタイプを競う第二フェーズでも好成績を残し、現在、実飛行に向けた最終フェーズへの出場権を手にした。世界では現在31チームがエントリーしているが、テトラはGoFlyの技術陣からも高評価を受けているチームの1つとされている。
筆者が創業メンバーでもあるアイ・ロボティクスもテトラを技術面などで支援している。そのため、色々見聞きするのだが、テトラに集まる人とその集まり方はまさに新時代の働き方、副業の在り方を示している。デジタルツールを呼吸するように使いこなし、新しい産業を創り出す志の下に集まる、熱狂を帯びたギルドとしての性格を有している。新しい働き方がそこでは体現しているのである。
このテトラのリーダーは東大工学部博士課程に現役で所属する中井佑氏である。開成高校から東大工学部へと進学、傍から見れば順風満帆なエリートコースを進んできた人間だ。普通に研究を続けていれば大手建設や重工メーカーへの道が約束されていたはずだ。しかし、彼はいとも簡単にその道を捨ててしまう。「何かをやらないことの方がリスクだろう」
中井氏は博士課程に所属しながらテトラを旗揚げした。JAXA社会連携講座の受講や企業インターンなどの経験を通し、企業という形にこだわるよりも「エキサイティングな未来に繋がる活動であれば自然と仲間が集まり、実現に近づいていく」ということを実感したのだろう。中井氏がテトラを旗揚げするために筆者を訪ねてきたのは2018年1月。GoFlyのコンテストに個人で登録していたメンバーに対し、一人ずつ声をかけていったという。
現在、この若いリーダーの下、実に30人以上のエンジニアやデザイナーが集結している。航空力学の専門家もいれば、航空機エンジン技術者、ラジコン制御の専門家、航空管制の専門家等20代から60代まで様々な年齢層が集結している。彼らは一様にプロであり、昼間は自らの仕事を持つものがほとんどだ。そのプロたちが、就業後になるとSlackと呼ばれるツールで議論を始める、クラウドのコミュニケーションツールで回線をつなぎっぱなしにして設計に没頭する。クラウドツールでプロジェクト管理を行い、議論を行うのだ。
彼らの機体の組み立ては大手町のビルの中で行われることもある。協賛する大手デベロッパーが場所を提供し、制作や試験を担当するメンバーは夜な夜なこちらに集まって作業をするのだ。その機体を週末になると北関東に運び、飛行テストを行う。メンバーの中には、学生時代に琵琶湖で鳥人間コンテストの夢を追っていた者も多い。彼らを突き動かすのは、空を飛ぶという夢、世界の航空産業にもう一度日の丸を輝かせたいという情熱だ。
この30人は全てそれぞれの領域のプロであり専業はいない。メンバーは相当な時間を費やしているとは言え、それは空飛ぶクルマを飛ばすという夢に対しての投資であり、今のところ対価は得ていないのだから副業でもない。全て業務外の時間を当てているのだ。必要があれば有給休暇をとってテストに参加する。
だが、メンバーのほとんどは所属する会社に対し、副業の申請をして了解をもらっているのも事実である。これは会社の機密情報を持ち出さないという誓約でもあり、ここで得た人脈や情報は本業に還流して活かせるという自信の表れでもある。全員正々堂々とテトラに参加しているのだ。いずれにせよ、企業内で純粋培養されているよりは相当に戦闘力が高まっているはずである。
一方、テトラにはテトラ・アビエーション(通称TAC)という運営会社が存在している。TACはテトラの資金管理を行い、プロジェクトの途上で発生した知財を管理する。また、GoFly後の事業化の目的を担っている。さらに、TACはGoFlyに参加するための保険の契約や、航空機としての認証をうけるための窓口としての機能も担う。
TACは、先日、投資家数名から多額の資金調達を行った。その中にはドローンファンドやインキュベートファンドといったベンチャーキャピタルの他、鎌田富久氏、成毛眞氏といった著名なエンジェル投資家も名を連ねている。TACには給与を受け取る従業員が1人もいないが、このテトラの志に集まる30人以上の優秀なエンジニアと、GoFlyのコンテスト終了時に本格的な資金調達を行って事業化の軌道に乗せることの期待に対しての初期投資が集まっている。一方のテトラは現時点では調達資金の100%を機体の開発費に充てるとしている。これも通常のベンチャー企業ができることではない。
GoFlyコンテスト終了時にテトラは解散し、TACを中心とした事業化フェーズに移ることを明言している。その際に、集まったメンバーはいくつかの選択肢を与えられることになるのだろう。賞金の分け前を受け取って去るのもひとつの選択肢だ。しかし、多くのメンバーは志に対して集まってきたのであり、事業化まで見届けたいと思うに違いない。彼らは本業の雇用主を説得して出資をさせるかもしれないし、ちゃんと雇用契約を締結して副業として業務を開始するかもしれない。退職して転職という道を選ぶものもいるだろう。
現在、大企業は若者のパワーをうまく使いこなせてはいない。多くの優秀な若者は大企業内で悶々とした日々を送っている。彼らは一様にボールを投げたくても受け手となるキャッチャーがいないという問題を抱えている。テトラはうまくそのボールを受け取る役目を担っているのだろう。企業にとってもよいピッチャーを育てる役目を社外のテトラが担ってくれているのは非常に喜ばしいことではないだろうか。結果として、日本社会には多くの良いピッチャーが育っていくのだ。
テトラは現在GoFly事務局との守秘義務の関係で多くの開発経過を明かすことができないでいる。しかし、私が知る限り、このフルスケール機体は実験場の中ですでに「飛んでいる」ということを最後に申し伝えたい。空飛ぶクルマはもはや夢物語ではない。
テトラは引き続き、メンバーとサポート企業・投資家を募集中だ。
湘南・茅ヶ崎(神奈川県)の海岸、湘南エリア唯一の海沿いのキャンプ場など、魅力的な見どころを満載した茅ヶ崎・柳島地区の、ドローンで空から撮影した映像をまじえたプロモーション動画が茅ヶ崎市の公式YouTubeチャンネルで公開された。「湘南Girlsコンテスト」の4代目グランプリ、大月海風さんら3人のモデルが地域の魅力を満喫していて、視聴者を誘いそうだ。
動画は2025年7月7日にオープンした道の駅「湘南ちがさき」の周辺の柳島地区の魅力を伝えていて、砂浜と岩場が美しく、江の島や富士山を眺められる柳島海岸、湘南エリア唯一の海沿いのキャンプ場「ちがさき柳島キャンプ場」、はらっぱ、親水池、テニスコートなどが整備された柳島しおさい公園、陸上競技場、ジョギングコース、スタンドなどが整備された柳島スポーツ公園が紹介されている。
動画の中では柳島海岸の砂浜が上空から波打ち際を見下ろしている映像や、ちがさき柳島キャンプ場が海沿いにあることを象徴するように海岸と並んでうつる場面が収録されている。空撮ではDJIのMavic 3 Proが使われた。
動画に登場する3人のうち、2人は湘南地域のPRを目的に開催されている「湘南Girlsコンテスト」の入賞者。大月海風さんはこの夏決定した4代目グランプリで、2024年に決定した3代目特別賞受賞の鈴木桜子さん、さらに「鎌倉きものイメージモデルコンテスト」で特別賞を受賞した嘉山茜さんと3人で動画に彩りを添えている。
湘南Girlsコンテストは、ライブ配信事業の株式会社マシェバラ(東京)のほかJCOM湘南・鎌倉、レディオ湘南(藤沢エフエム放送株式会社、藤沢市)などが2022年にスタートさせた地域の活性化を担うキャラクターの選抜コンテストで、入賞者の中からPR動画に出演することが恒例だ。DroneTribuneも開催に参画している。
また今回、柳島地区のプロモーション動画に出演した3人は「道の駅・湘南ちがさき」のプロモーション動画にも出演している。
AAM(アドヴァンスト・エア・モビリティ)運航事業を手掛け、大阪・関西万博の運航事業者にも名を連ねる株式会社Soracle(ソラクル、東京)が、2027年中にも大阪・関西エリアで旅客運航を目指す計画を明らかにした。9月10日に大阪府、大阪市と連携協定を結んでおり、その席で計画を明らかにした。米Archer Aviation(アーチャー・アヴィエーション)のパイロット1人を含めた5人乗りのeVTOL型AAM、Midnight(ミッドナイト)を使うことを想定しているという。
Soracleは2026年にも大阪府内で実証飛行を実施し、必要な審査をふまえ27年にも大阪ベイエリアでの遊覧飛行などを始める。周回して出発点に戻る運航のほか、離陸地点から別の場所に移動する二地点間飛行も想定する。
大阪府と大阪市との連携協定は、ソラクルの事業環境を整えることや、運航網整備に必要なインフラ整備に向けた調査、制度の整備、関連ビジネスの展開支援などの事業環境整備に向けた取り組みを進める。締結式では太田幸宏CEOが、大阪に来れば全国に先駆けて空飛ぶクルマに乗ることができる未来を実現し、中長期的には関西・瀬戸内海地点を結ぶ観光体験を創ると抱負を述べた。
吉村洋文知事は「さまざまな課題はあろうかと思いますが、Soracleさんと協力し、大阪府・市も全面的に当事者として取り組むことで、2027年に商用運航を、そして大阪に来れば空飛ぶクルマに乗ることができるということをめざしていきたいと思います。大阪・関西から、空の移動革命を実現していきましょう」と述べた。
Soracleの公式発表はこちらにあります
スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
参考:GMO熊谷氏、HEXA搭乗し飛行を公開
参考:GMO熊谷氏にHEXA公開搭乗の理由を聞く
参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始
ドローンショーの株式会社レッドクリフ(東京)が、フィンテックのフリー株式会社(freee株式会社)の活用事例に登場した。レッドクリフが搭乗したのはfreeeが提供しているプロダクト「freee販売」の活用事例で、ビジネスの急拡大に伴う業務管理の効率化に役立てていることが紹介されている。取引先の業務効率化をアピールすることが多いドローン事業者にとって、freeeの活用事例はモデルになりそうだ。またドローン事業者が他の事業者の活用事例に取り上げられることも今後、増えそうだ。
フリーが公表したレッドクリフの活用事例はこちらからみられる。
それによると、事業の急拡大で案件別の収支管理や、全体の把握、属人依存の管理に限界が見えてきた中で、それまでスプレッドシートに頼ってきた業務フローを見直しに着手した。freee販売の導入で、受発注データと原価情報を集約し案件ごとの収支把握が容易になり、部門を越えたデータ共有や、各部門がそれぞれの業務に集中できる態勢が整ったという。チェック漏れリスクの軽減と業務負担の軽減が同時に果たせ、人件費、立替経費、ドローンの減価償却費を案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が実現し、経営判断の精度向上にも繋がっている。
結果として、IPO準備に不可欠な「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」をデータに基づいて説明できる環境ができたという。
ドローンの事業者も、取引先の効率化をソリューションとしてアピールする事例が多く、活用事例でも導入先の作業の時間短縮効果などが掲載されることが多い。一方で、導入先にとっては、その事例が解決したい課題の一部にすぎないことや、導入による新たな負担などが発生するケースもあり、活用事例のアピールの方法について、各者が試行錯誤している。
freee販売の活用事例では、汎用性の高い困りごとを取り上げていて、freee販売の商品性のアピールになるとともに、多くの企業にそのアピールの手法そのものが参考になりそうだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンによるマンション外壁点検の仕事を請け負うための力を養う講座「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」の内容を解説する「講座ご案内ウェビナー」をJUIDAの公式ページ上で公開した。ウェビナーは7月に視聴者を募って行われ、講座は8月に開講した。現在も受講生を募集している。
「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」は、JUIDA、マンション管理など不動産管理大手の株式会社東急コミュニティー、ドローンスクール運営の株式会社ハミングバードの3者が作った講座で、5月に公表し、6月に開催された展示会「JapanDrone」で3者そろって発表会に臨んでいた。3者は新たな講座のマンション外壁点検の現場で求められる実務を盛り込んだことと位置付けている。
マンション外壁点検でのドローン導入期待は高いものの、外壁点検の現場や実務を知るドローン事業者は多くない。マンションの管理組合などから点検業務を請け負うマンション管理事業者側にとっては、現場知識の乏しいドローン事業者にドローンでの点検を依頼すると、ドローン事業者が担うべき実務を一から伝えなければならず、手間、時間、コストの負担が大きい。これがドローンの導入を阻む要因になっていると言われている。このため講座を通じてマンション外壁点検に求められる実務の知識を習得することで、マンションの外壁点検現場へのドローン導入を後押ししようとする狙いがある。
公開された動画は、全体で50分弱。事務局のあいさつ、カリキュラム概要、受講料、受講会場など講座に関わる説明が27分ごろまで行われる。この中では、点検作業後に作成し、依頼主に納める報告書の重要性が強調されている。ドローン作業者には、報告書の重要性や、報告書に掲載するための画像の要件が講座で解説されることなどが伝えられている。
その後、事務局が設定した想定質問に、担当者が回答する一問一答が行われる。一問一答の中では、講座の修了生には必ず外壁点検の仕事があっせんされるのか、タワーマンションにも対応可能なのか、など受講判断に関わりそうな質問がいくつも盛り込まれていて、担当者の回答は、受講を検討者の参考になりそうだ。
高校生FPVドローンレーサー・山本悠貴選手が、9月13日にドイツで開幕する国際レース出場に向けてクラウドファンディングを実施中だ。山本選手をスポンサーとして応援している株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)がプレスリリースで山本選手の活躍を紹介している。
山本選手は今年7月12日~13日にイタリア・アルビッツァーテで開催された「World Drone Cup Italy 2025」で予選を総合3位で通過してジュニア部門の決勝に進出した。山本選手としては初の決勝進出で、決勝でも4位入賞に食い込む活躍を見せた。なお、ジュニア部門ではすでに数々の大会で優勝経験を持つ日本の橋本勇希選手が優勝している。
山本選手は、2024年10月30日から11月3日まで中国杭州市のShangcheng Sports Centre Stadiumで開催されたドローンレースの世界戦主権「2024 FAI World Drone Racing Championship(WDRC)」で、橋本選手とともに日本からの5人の選手の一人として出場し、各選手の成績を集計した国別順位で日本代表チームが3位に導く立役者の一人となっている。 なお、イタリア大会で優勝した橋本選手は、中国杭州市の大会でも個人総合、ジュニア部門の2部門で優勝している。
ドローンショー・ジャパンのプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000131.000080729.html?fbclid
イタリア大会結果詳細: https://fpvscores.com/events/0DNj73gpMX/results
山本選手の動画:https://youtu.be/1auUXebjYTc
<参考>中国大会で日本総合3位、橋本選手は個人総合、ジュニア部門の二冠:https://dronetribune.jp/articles/24276/
山本選手のクラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/876711/view?utm_campaign=cp_share_c_msg_projects_show