「空飛ぶクルマ」をとりまく環境が賑わいを増し、議論が活発化しています。空の移動革命に向けた官民協議会が議論を深め、企業による公開実験も進む中、開発動向や、活用の可能性、そして将来を見据えたアクションについて専門家による対談を企画しました。臨んだのは、空飛ぶクルマの開発を手掛ける株式会社SkyDriveの福澤知浩代表、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発に携わった航空機開発に詳しいPwCコンサルティング合同会社の宮川淳一顧問(Aerospace&Defense担当)、ドローンや空飛ぶクルマ関連の業務・技術支援に携わるPwCコンサルティング合同会社の岩花修平ディレクター。3人の対談を詳しくお伝えして参ります。
岩花氏:空飛ぶクルマをめぐる動きがこのところ活発になってきています。今回は、開発の原点や活用法、市場の可能性などについて、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)への展望から、そこで想定されるユースケース、その後に普及した際、どのような市場や世界が広がっているのかといった将来の展望まで、多角的に理解を深めたいと思います。まず空飛ぶクルマの開発を手掛けている株式会社SkyDrive代表の福澤知浩さんに、原点である開発の動機やきっかけについて伺います。
福澤氏:私はもともとモビリティについて、イノベーションが少ない分野だと思っていました。この何年間かを見ても、IT、またはIoTと呼ばれる分野や、スマートフォンなどの領域ではイノベーションが進んでいますが、モビリティはそれほどでもない。それを残念だと感じていました。ここにイノベーションをもたらしたらどうなるか、というのが発想の原点です。何か画期的なモビリティを作りたいと思い、最初はボランティアで開発をスタートしました。大企業であれば、細分化されたタスクからスタートして、大規模に展開するまでに時間がかかってしまいがちです。画期的なモビリティとはいっても、できるだけ時間をかけずに実現するにはどんなものにすればいいか、といったところから考え始め、そこで空飛ぶクルマが良いのではないかという結果になりました。
岩花氏:画期的なモビリティ、の発想から、空飛ぶクルマが出てきたのですね。その後、海外からも同様の話題が持ち上がりました。
福澤氏:そうなんです。そのころにちょうど、空飛ぶクルマを利用する可能性や現実味が世界で広がり始め、盛り上がってきていました。中でもインパクトが大きかったのは、2016年に米国の主要プレーヤーが公表したホワイトペーパーでした。その内容からは、空飛ぶタクシーの稼働率を上げていくと採算が取れるようになり、道路を走るタクシーよりもむしろ安くなる、という展望が読み取れました。スマートフォンなどの普及によるスケールメリットでセンサーやチップ(半導体集積回路)の値段が下がってきていましたし、ドローンが普及して安価に飛べる形が出てきたという時代背景もあります。そうなると、「これはもう事業化するしかない」と考えるようになりました。事業化をするとモビリティだけではなく、人々の生活スタイルも変わっていきます。移動に地上のインフラを使い、遠回りをして渋滞に巻き込まれたり、満員電車を我慢したりする生活は、もう必要ではないのではないか。そう思い始めました。
岩花氏:米国の企業は既存のライドシェア事業を活用した陸と空の移動の連携も構想しているようです。SkyDriveにはそういったユースケースのイメージはありますか。また、連携できそうな事業者と相談することはあるのでしょうか。
福澤氏:あります。ただ、当初は“妄想段階”だったので「いつかこんなことにも使えると思う」というレベルでした。リアルなPL(損益計算書)を作るよりも、「確かにコストパフォーマンスは良さそうだよね」という程度の感覚でさまざまな事業者に相談していました。ボランティア時代にいろいろな企業とタイアップをすることもありましたので、そうした相談をする機会も多かったと思います。
岩花氏:そこからどうやって具体化させていったのですか。
福澤氏:ボランティア時代に1/5スケールを最初に作った時には、DIY・ものづくり系の展示会などに出展していました。専門業者だけでなく、個人も出展できるのですが、さまざまな人が見に来てくれて、とても有意義なフィードバックをいただきました。専門家は「事業化なんて絶対できない」で終わってしまうのですが、個人の方々は「できるかどうかはわからないけれど、おもしろいね」と言ってくれました。投資家の方は「このレベルにしないと事業化は難しいよ」というアドバイスを下さったり、大学教授の方は専門的な見地から感想を述べたりと、いろいろな意見をいただきました。
岩花氏:幅広くお話を聞かれたのですね。
福澤氏:はい。また、当時は自動車会社に勤めていたので、そこでハイブリッド車など画期的なクルマを生み出した主要メンバーから、どうやってそれらを生み出したのかを聞くことができました。そういった話の中に、こう進めると新しいモビリティができるのか、と腹落ちしたことはあったと思います。
岩花氏:次に今後の方向性について伺います。大きな節目として2025年の大阪・関西万博に向けた取り組みを教えてください。
福澤氏:万博の前の2023年にサービスの提供を開始したいと考えています。いきなり都会の空を飛ぶのは難しいので、ステップを踏むつもりです。その最初のステップは大阪地域を中心としたサービス展開で、飛ぶ場所は海や川の上に限定します。機体はどこか1カ所故障してもすぐに墜落するものではありません。クリティカルな事象が発生したらすぐに緊急着陸をするという前提で、その場合でも、第三者や生活をしている人たちがいる場所に降りることはなく、海や川の上に着地します。2023年にサービスインし、2年後の2025年には実用化できている状態で、国内外から大阪・関西万博を訪れた方々に利用してもらえるという姿を目指しています。
岩花氏:導入のスケジュールが示されると、一気に現実味も楽しみも高まります。大阪・関西万博では、どのようなユーザーが、どういった目的で使うことを想定していますか?
福澤氏:会場のある大阪の湾岸部には大規模施設が集積しているので、各施設を行き来する需要を取り込むことを想定しています。この地域は道路網の利便性に欠ける面があり、2拠点間の移動に時間がかかることがあります。万博に向けて最寄り駅の開設を含めた鉄道整備の話はありますが、空を使えば既存の交通より早く移動できると思っています。車で15分、20分かかるところを、5分程度に短縮できるでしょう。
岩花氏:移動の利便性を享受できそうです。
福澤氏:こうした利便性の向上に加えて、空を飛んで楽しい時間を過ごすといった、移動手段以外の価値も提供できます。空には遊覧の楽しみ方もあります。この地域は景色が良く、すでにヘリコプターなどによる遊覧飛行のサービスが行われています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を除けば、年間に数百万人の来訪者がありますし、その半分がインバウンドです。ここで空飛ぶクルマを使った遊覧飛行サービスを提供すれば、いろいろな方に楽しんでいただけると見込んでいます。料金も最初は数万円ほどと想定しているので、まずはエンタテイメントの一環として使う方々が多いと思います。将来的には、関西国際空港に到着したら空飛ぶクルマに乗り継ぎ、目的地まで行くといった使い方をしていただき、交通機関として機能させることを目指しています。
岩花氏:2025年の大阪・関西万博後の普及期でのユースケースのイメージはどのようにお考えでしょうか。
福澤氏:空飛ぶクルマは、MaaS(Mobility as a Service)の領域に入ると想定しています。パーソナルモビリティで、かつネットワークにつながっているとなると、定期的な航路で大人数を輸送するよりも、タイムリーな輸送で活躍することが多いでしょう。また、都会と地方のMaaSの使い方には違いがあると思っています。都会では渋滞を回避して、タイムリーに行きたい時に移動を可能にするという需要があります。一方、地方では道路の老朽化が進んでいて、インフラのメンテナンス費用の負担も大きい、といった課題への対策となり得ます。現在インフラに投じている費用を一部転換する方法でもいいかもしれません。MaaSのニーズが高い都会ではビジネスとして、地方ではインフラの一環としてという2パターンがあると感じています。
岩花氏:サービスの形態としては、オンデマンドでその都度料金を支払う場合もあれば、プライベートジェットのように自家用機として購入する場合もあると思います。空飛ぶクルマを駐車できる住宅を考えている住宅メーカーもあると聞いています。いずれは「一家に一台、空飛ぶクルマ」といった世界が来るのでしょうか。
福澤氏:多くの人が何を求めるのかはなかなか読みづらいものですし、どんどん変わっていきます。COVID-19の影響も受けるかもしれません。私たちはオンデマンドも自家用機もどちらもあり得ると思っていますが、最初のサービスは機体販売よりも、都度払いの定期航路にするつもりです。その方が安全の確保もしやすいのです。その後は所有していただくパターンもありますし、あくまでもサービスのみというパターンもあります。現時点では両方想定していて、ニーズに合わせて臨機応変に対応できます。個人的には販売はハードルが高いのではないかとは思っています。リースやレンタルという選択肢もありますね。最終的には、スマートフォンで呼び出せば機体が充電基地から飛んで来て、それに乗って移動するという形を思い描いています。
岩花氏:富裕層向けの高額サービス、あるいは大衆向けのサービス、どちらかに特化するといった考えはありますか。
福澤氏:最終的には大衆車向けサービスを目指していて、幅広く日常的に使っていただけるようにしたいです。乗用車の価格もかつては月給20数カ月分だったところから徐々に下がった経緯がありますし、初期段階では必然的に高所得者層が利用することが多くなるでしょう。モノの購入ではなくサービスの利用であることを想定していますので、例えば万博に出かけた際のように特別なハレの日であれば、1回2万円といった多少高額の料金でも利用されることがあると思います。富裕層以外の方にも「私たちには関係ない」というものにはせず、多くの方が利用できるもの、もしくは、5年後には乗れるかもしれないと思っていただけるものにしたいです。
宮川氏:機体の開発者の立場から話をすると、欧米ではまず富裕層に購入してもらい、機体をカスタマイズするなどの段階を経て、その後コモディティ化させて市場を伸ばしていくという方法をとりがちですね。
福澤氏:そうですね。高級な自動車メーカーがタイアップしているのはまさにそのような富裕層の購入を狙ったケースですね。また、オーストラリアのある会社はレースに特化していて、eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing:電動垂直離着陸機)レース用の機体を作って、レースを開催しています。私たちは、まずは安全に飛ぶ技術をきちんと確立するのが第一で、富裕層に購入をアピールするのはそれからかなと考えています。
宮川氏:今後の市場発展のステップの話はとても興味深いですね。現在の取り組みでは、万が一機体が落下しても地上被害が起きないように水上での飛行のみとする、その後の展望としてエンタテイメントや観光としての運航を考えている、という点で、市場の照準の定め方としては非常に地に足がついていると思います。一方でそこから、最終的に都心の上空をくるくると飛ぶ将来構想フェーズまで、あるいはその先のコモディティ化までの話との距離が大きいとも感じます。その中間段階をより具体的に示せるとおもしろいのではないでしょうか。例えば、過疎地や離島での活用などです。過疎地や離島は人口も経済力も大きくはないので、それほどスケールメリットは出ませんが、だからこそ、そこでの活用によってこの先のステップを描いて、みんなが手の届く世界であると納得してもらえれば、爆発的に市場が拡大するのではないでしょうか。私はこの中間段階の絵を描くことがとても重要だと思っています。
福澤氏:そうですね。ドローンはそれに近いですよね。最初はホビーとして使われていましたが、その後、点検や監視などの用途で産業に広がりが出て来ましたね。空飛ぶクルマの場合は、物流がこの中間段階にあたると思います。都心部の第三者上空での物流が次に目指すところです。それが実現できれば、視界が広がってきます。
宮川氏:物流が中間段階の役割を果たすのですね。
福澤氏:また、エアモビリティとしてどう発展させていくかという話もあります。大阪で取り組みを始めることのメリットは、エアモビリティでA地点からB地点にモノを運ぶのが比較的容易な地形であることと、移動に困っている地域であるためニーズがあることです。東京にもそういうところがありますよね。お台場を含めた港湾部は移動が難しかったり、公共交通機関の料金が割高だったりします。単なるホビーではなく、役にも立つ。そういった角度から開拓していくべきですし、移動を担うサービスとして使われるポテンシャルは高いと感じます。
宮川氏:その場合、どんな段階が考えられますか。
福澤氏:まずはクリティカルではない移動で使われ始めて、徐々に通勤手段に代わり、新幹線に代わりといったように、レベルを上げていくことになるでしょう。最初は比較的人が少ないところや、海上、川上を飛ぶ。そこから少人数がいる場所を飛ぶようになって、最後に人が混雑している場所を飛ぶ、という3段階だと思っています。レベル1、レベル2、レベル3、と非連続に切り替わるよりも、連続的に変わっていくイメージです。
宮川氏:なるほど。面白いですね。(後編につづく)
<後編では空飛ぶクルマの普及に向けた課題や、新型コロナウイルス感染症の影響、取り巻く市場をどう考えるか、といったテーマで意見を深めます>

<3人談義参加者> ■福澤 知浩氏(写真左) 株式会社SkyDrive 代表取締役 東京大学工学部卒業。トヨタ自動車株式会社にて自動車部品のグローバル調達に従事。同時に多くの現場でトヨタ生産方式を用いたカイゼンをし、原価改善賞受賞。2014年に有志団体CARTIVTORに参画し、共同代表に。2017年に独立し、製造業の経営コンサルティング会社を設立。20社以上の経営改善実施。2018年に株式会社SkyDriveを創業、代表に就任し現職。 ■宮川 淳一氏(写真右) PwCコンサルティング合同会社 顧問 40年以上にわたり、主に航空機開発に従事。B7J7(後のB777)主翼空力設計、JRリニア先頭車両形状設計、防衛省先進技術実証機基礎設計等の先端技術開発・製品開発や、民間航空機開発では50年ぶりとなるMRJ(SpaceJet)の事業化、基本設計、海外セールス取りまとめなどで責任者を歴任。三菱重工業執行役員フェローを経て現職。 ■岩花 修平氏(写真中央) PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 大手監査法人系コンサルティング会社、外資系統計解析ソフトウェアベンダーを経て現職。前職では、主に電力を中心としたエネルギー、自動車を中心とした製造業の企業に対する統計解析技術、アナリティクスを活用したソリューションの提供やIoTアナリティクスチームの立ち上げなどに携わる。現在は、デジタルテクノロジーを活用した新規事業の推進や企業の業務改善を支援しており、主にドローンや「空飛ぶクルマ」など無人航空機に関連するビジネスやMaaS(Mobility as a Service)などモビリティ関連ビジネス、IoTや人工知能(AI)、データサイエンスなどの領域を中心に従事。
<PWCコンサルティングのサイト> 空飛ぶクルマの未来展望(前編) ~未来のモビリティが創る新しい社会基盤~https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/disruptive-technology-insights/flying-car01.html エマージングテクノロジー コラム・対談
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/disruptive-technology-insights.html エマージングテクノロジー
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/disruptive-technology.html ドローンテクノロジー/ソリューション
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/disruptive-technology/drone-powered-solutions.html モビリティ(MaaS・自動運転)
https://www.pwc.com/jp/ja/industries/mobility.html トピック解説/コラム/対談
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column.html ナレッジ
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge.html PwC Japanトップ
https://www.pwc.com/jp/ja.html

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ブルーイノベーション熊田貴之社長 お客さまに組織で向き合うということ
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【JapanDrone関西】台湾ウィストロンとGEOSATが初出展 ブルーイノベーション株式会社(東京)の熊田貴之社長がドローントリビューンのインタビューに応じ、「お客様」との向き合い方について語った。同社は複数のドローンやロボット、センサーなどを統合管理するデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」や、球体ドローン「ELIOS」シリーズ、ドローンポートなどの事業を展開していて、取引先、顧客との関係について模索を続けている。
ブルーイノベーションはBEP技術を軸に、「点検」、「ドローンポート」、「教育」、「ネクスト」の4つに分類したソリューションを提供している。11月14日に発表した2025年12月期第3四半期決算によると売上高は、7億7000万円で、1年前の第三四半期から4.3%増加した。売上高を構成する4ソリューションのうち「点検ソリューション」の構成比が46%と半分近くを占めた。
熊田貴之社長 「わたしたちはソリューションを提供している会社ですが、ソリューションはお客さまの声をしっかり聞くことなしに作れません。ドローンの機体を開発する、販売する、ということにだけ集中してしまうとプロダクトアウトになり、お客さまの要求に必ずしも合致せずにソリューションにならない、あるいは十分ではないということが起こりえます。ソリューションを提供するには、機体をお客さまの求める作業や動作ができるようアプリケーションが必要になるかもしれません。場合によってはドローンでない方がソリューションとしてふさわしいかもしれません。ソリューションはお客さまのご要望を伺うところから始まります。わたしたちはお客さまとメーカーとをつなぐ部分を担う面があるのかもしれません」
――持ち味はドローンやロボットなどの統合管理プラットフォーム「BEP」だ
熊田社長「はい。主な対象はドローンですが、お客さまとは無人搬送車の運用の話もしています。無人搬送車の複数制御。これにドローンが組み合わされることになれば、走る、飛ぶが統合されて、制御系に対するニーズにつながるのだと思います。それまでお客さまのご要望を伺いながら試行錯誤をしてまいります。プラットフォーマーになることは、その技術がみんなの共有財産になるということだと思っています」
――お話の随所に「お客さま」が登場し、強い意識を感じる
熊田社長「一般論ですが、ドローンに関連する産業が実証実験の段階から商売やビジネスなどの事業の段階に移りつつあることと関係しているかもしれません。実験は提供期間が実験の期間に限られます。それに対して商品を提供する事業段階になると、購入頂いた先での満足度の重要性が高まります。わたしたちも社内でカスタマーサポートの重要性に対する認識が日々高まっています」
――たとえば
熊田社長「ドローンポートは、購入頂いたお客さまのもとにずっと置いてあるわけです。そうするとお客さまからのご意見も寄せられます。問い合わせ、不安、クレーム、トラブル連絡など含めて、お客さまの声に向き合う期間が長くなります。わたしたちも十何年ドローン関連の事業に取り組んでおりますが、お客さまを担当する担当者が現場で親身に対応するフェーズから、組織として対応するフェーズに変わってまいりました。お客さまと向き合うサービスのフェーズに入ってきた、と言い換えてもいいかもしれません。ほかの会社ではすでにできているところもあるのだと思いますが、わたしたちは今年、社内にその体制をつくりました」
――トラブルを現場まかせにしない
熊田社長「はい。経営会議でも話をします。それはそのお客さまの中でわたしたちのサービスが浸透し始めている裏返しでもあると思っています。産業全体でもドローンがサービスのフェーズに入りつつあることを示しているかもしれません。いまではわれわれの提供しているプロダクトやサービスなどを通じて、LTV(Life Time Value)をしっかり提供できているか、本当の意味で長くお客さまに価値を提供するか、より強く意識するようになりました。LTVがKPIにもなりました」
――「お客さま」重視のサービスの会社だと
熊田社長「それを目指していますが、正直なところ、まだ全然です。ようやくそのフェーズに入ったという感じです。サービスがお客さまに浸透していくプロセスを体験している段階かもしれません。カスタマーサポートには大きなコストがかかる面もありまし、決して華やかなことばかりではないです。注目もされないし記事にもなりません。それを繰り返していくことが大事なのだろうと思っています。いま巨大企業になっているメーカーもそこからはじまって、やがて強いブランドになっています。わたしたちもそこを通っていかなければいけないと感じています。社内でもお客さまからの声に、現現も組織も対応する。会社としてちゃんと向き合おうという話をしています。営業、開発、保守などすべてです」
――ありがとうございました。

「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」は11月27日閉幕し、二日間の合計で3006人が会場を訪れた。事前に公開していた来場者目標の3200人には届かなかったが、期間中は来場者、出展者の笑顔がはじけた。機体メーカーなど主要プレイヤーの出展の上積みなどが、来場者拡大のカギとなりそうだ。
Japan Drone関西は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の主催、株式会社コングレの共催で11月26、27日の2日間、JR大阪駅直結の「ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター」を会場に開催され、26日に1604人、27日に1402人が足を運んだ。講演、パネルディスカッションなどのステージには2日間で1131人が参加した。来場者の中には出展者ではないドローン事業の経営者、関係者も見られ、会場内で知人を見つけてはあいさつをかわす光景や談笑する様子が多くみられた。
関係者や愛好家の間で話題になったのは初出展、初公開プロダクトだ。360度カメラの開発で知られる中国のテクノロジー企業Insta360がパートナー企業と設立したドローンブランド「Antigravity」が、日本の展示会に初出展し、機体やコントローラー、ゴーグルを紹介した。日本での発売計画は未確定だが、来場者の多くが足を止め、製品の仕様や今後の計画を担当者にたずねていた。
台湾の電気機器メーカーWistronも、系列のドローンメーカーGEOSATとブースを共同出展し、GEOSATの機体3種が初公開された。イタリアのモニタリングソリューションを展開するTAKE OVERも老朽インフラの課題と向き合う日本市場の調査をかねて初出展し、来場者と意見交換をしていた。米Skydioが9月に発表したふたつの新型ドローンについて、日本市場向けの公式アナウンスが出ていない中、JapanDrone関西に出展したジャパン・インフラ・ウェイマークは、二機種のうちの屋内向けドローン「R10」について独自のポスターを張り出したほか、チラシも用意し来場者に配布するなど関心を集めた。
会場では多くのブースで来場者と出展者が意見交換をしたり、説明を求めたりしている様子がみられ、あちこちで笑顔がはじけていた。ジュンテクノサービスやMizubiyoriは会場内に設置されたプールで水中ドローンを実演し、来場者に囲まれていた。
自治体の取り組みなどを紹介するパネルも多く設置され、じっくりと観察する来場者がいた一方、説明員のいるところは限られ、見学者が途切れる時間帯もあった。自治体の取り組みについては、「主催者テーマ展示ゾーン」と「ドローン×地方創生:自治自治体PRゾーン」とに分かれて展示されていて、来場者の利便性に合致していたかどうかの検討が加えられる可能性がある。
Japan Drone関西はJUIDAが10年前から毎年、千葉・幕張メッセで開催しているドローンの大規模展示会「Japan Drone」の地方開催版で、大阪で開催するのは2度目。一度開催した地域で二度目を開催したのは今回が初めてだ。JUIDAの鈴木真二理事長は初日の講演の中で、「アンケートで大阪での開催を求める声が大きかったことが今回の開催につながりました」と話している。今後も来場者の声が開催方針に反映されることになりそうだ。








11月26日に開幕した「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」では初公開、初出展を含め、多くの取り組みが披露されている。イタリアの保守、モニタリングソリューションを提供するTake Over社はFranz Lami CEO自身が来日して初出展。株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(東京)は、日本市場向けには公式発表がない米Skydioの屋内用ドローン「Skydio R10」について独自のポスターを作成し公開している。セントラル警備保障は不審ドローン対策ソリューションを提案している。
イタリアのTake Over社は日本の老朽インフラが抱える課題に対しイタリア仕込みのソリューションを提案している。同社はイタリア国内で橋梁、鉄道、高速道路、ダムなどの保守点検などで実績を積んでいる。イタリアは歴史的な建造物から近代的な道路まで公共構造物の時代背景が幅広く、その知見が老朽インフラを多く抱える日本での需要を見込む。
来日し会場のブースにも立ったFranz Lami CEOによると、イタリアのインフラは近代のコンクリートと中世からの石でできたものなどとがある。課題の緊急性が高いのは重量のあるトラックなどを支える道路などコンクリート製のインフラで、内部の亀裂などをいち早く察知し対処する必要がある。同社はその点検やモニタリングなどで実績を積んできた。
データ取得のためDJIを中心としたドローン、3Dレーザースキャナ、モバイルマッピングシステムなどを機材として使っている。JapanDroneのブースではFranz Lami CEO自身が来場者に実績、技術などをアピールし、情報収集、市場調査を進める。来場者には。同社のロゴの入ったキャップを渡している。最近東京に開設したオフィスの人員の増強にもつとめていて、リクルートにも積極的だ。
JIW、日本向けアナウンスがされていないSkydio「R10」のポスター独自作成
ジャパン・インフラ・ウェイマークは米SkydioのAIドローン「Skydio X10」や、専用の格納庫「Dock for X10」など点検ソリューションを展示しているが、ブースにはもうひとつ、日本市場向けには正式なアナウンスがない機体のポスターがある。屋内向けドローン「Skydio R10」だ。
9月17日と18日に米国で開催されたSkydioの毎年恒例の発表会「Skydio Ascend 2025」では、「Skydio R10」が屋内向けドローンとして発表された。もうひとつ。長距離飛行に対応した固定翼ドローンのプロトタイプ「Skydio F10」も発表されているが、いずれも日本市場向けには公式の見解はない。
屋内の点検ソリューションを展開するJIWはR10について独自にチラシを作成し、ブースではポスターとして来場者に見せている。それによると、R10は785gでX10の2140gから大幅な軽量化が図られる。暗所飛行用の補助ライトを備え、自律飛行し、ライブ映像を配信し、点検を支援するという。市場導入の時期は公式発表を待つ必要があるが、関係者や愛好家の間で関心を喚起しそうだ。
セントラル警備保障が不審ドローン対策展示
セントラル警備保障株式会社(東京)は、不審ドローン対応のためのソリューションなどを展示している。会場にはカウンタードローンシステムのほかいくつもの緊急対応機能を備えた移動指揮所車両「CSP Drone Base Car」を車両ごと持ちこみ、中に搭載している映像監視システムや、電源機能、車内で指揮がとれる機能などを公開している。屋根にはドローンポートを備え、ここから離陸させることもできる。
また、不審ドローンを検知するためのソリューション「DS_005D」も展示してある。ブースではその機能や上位モデルの説明を求めて来場者が足を止めていた。
レッドクリフ、ジュンテクノ、ROBOZが存在感
このほか、開場では大阪・関西万博の協会企画催事プラチナパートナーとして連日ドローンショーを繰り広げた株式会社レッドクリフ(東京)が前面を赤、黒でペイントしたブースで来場者にドローンショーの特徴や効果を説明していた。また屋内ドローンショーを手がける株式会社ROBOZ(名古屋市)は、ドローンショーに使う機体の特徴や通信、飛行の安定性などについて石田宏樹代表取締役が率先して説明していた。会場の隣室でデモンストレーションも行い、手軽に運用できることを実践した。
ジュンテクノサービス(埼玉県川越市)も水中ドローンを中心に展示。ダム堤体、取水口、吐口撮影からポンプ場撮影、流域下水道点検など多くの現場での点検実績などのノウハウをブースで展示しているほか、会場内のプールでデモンストレーションも実施し、来場者がその様子をみるために取り囲む様子もみられた。











アメリカのドローンメーカー、Inspired Flight Technologies社の産業用ドローン「IF800 TOMCAT」「IF1200」が、「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」で公開されている。展示したのは株式会社栄光エンジニアリング(茨城県つくば市)だ。リスクを回避するオペレーターへの提案として出展した。いずれのモデルも日本のドローンの展示会での出展は初めてだ。
栄光エンジニアリングが展示しているのはアメリカInspired Flight Technologies社のクワッドコプター「IF800 TOMCAT」とヘキサコプター「IF1200」だ。
IF800 TOMCATはバッテリーなし重量が4.2㎏、バッテリー搭載時で8.5㎏で、最大54分飛行する。インフラ点検、LiDAR調査などの用途を想定している。また「IF1200」は最大43分飛行、最大積載量8.6㎏だ。栄光エンジニアリングの大島健一社長は、取引先からよりリスクの低い機体を求める声を聞き、Inspired Flight社にゆきあたった。「IF800 TOMCAT」「IF1200」とも米国防省のサイバーセキュリティやサプライチェーンの健全性基準を見た居た場合に認定を与えるプログラム「Blue UAS」に認定されている。栄光は現在、Inspired Flight社の日本国内代理店だ。
ブースでは大島社長らが機体の特徴などを来場者に説明していた。ブースではそのほかExyn Technologies社の自律飛行型3Dマッピングシステム「Nexys」「Nexys Pro」、Teledyne Optech社の軽量LiDARシステム「EchoONE」も展示している。




台湾の電子機器大手ウィストロン(Wistron)は、同社系のドローンメーカー、GEOSAT Aerospace & Technology Inc.(経緯航太科技)と共同でブースを構えた。GEOSATのドローンが日本の展示会で一般公開されるのは初めてだ。
初公開されたGEOSATのドローンは3機で、日本での展開は今回の反応をふまえるなどして今後検討するという。3機はいずれもスタイリッシュで、「スタイルは重視して作った」という。
ブースにはウィストロンでドローン部門を統括するAnn Liu氏も訪れ、来場者の反応などを確認していた。
展示会で製品を見る機会はそう多くなく、ブースを訪れた来場者の中にはこのブースに立ち寄ることを来場理由にあげる人もいた。
ブースの壁面にかけられていた薄型ディスプレイはウィストロンの製品で、その薄さに来場者が指をさしている様子もみられた。ディスプレイは投影する映像の切り替えや明るさの調整は遠隔で可能だという。




中国Insta360系のANTIGRAVITYが「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」に出展している。同社は8月に8Kで360度の映像が撮影できるドローン「Antigravity A1」の発表をし、話題を集めた。日本の展示会に出展するのは今回が初めてで、ブースのAntigravity A1にも多くの来場者が見入っている。
Antigravity 社は日本の展示会の出展は今回が初めてだ。出入口に近い場所に構えたブースにはひっきりなしに来場者が訪れた。8K360度全景ドローン「Antigravity A1」が今年8月に初の製品として発表され、ドローン愛好家や関係者に間で一気に話題が広がった。
全方位を捉える「デュアルレンズ設計」でドローン周囲のすべてを360度で記録し、ライブ映像や最終映像からはドローン本体を消すことができる。操作はレバー状のコントローラーで直感的な操作が特徴だ。
ブースでは機体重量がバッテリー含めて249gであることや、2026年1月に世界同時発売を目指していることなどが説明されていた。ただし日本での発売は、諸手続きの進み具合にもよるため未定で、今後正式に公表される見込みだ。
操作はゴーグルを装着して行うため、いわゆる目視外飛行の扱いとなる。価格は今後決まるが、現時点では標準型のセットで30万円台、最も基本的なセットで20万円台を想定しているという。
JapanDrone関西ではデモフライトを実施。開催2日目も行う予定だ。
