楽天グループ株式会社(東京都世田谷区)と日本郵便株式会社(東京都千代田区)の合弁企業、JP楽天ロジスティクス株式会社(東京都千代田区)が9月末に配信したプレスリリースがドローンの関係者の間で話題になった。標題は「山岳エリアにおける配送の実用化に向けた実証実験を実施」で強調された表現はない。しかし本文を読むと、山間地の離陸地点から標高が約1600m高い目的地まで、地元事業者を中心に2人体制で、7㎏の荷物をドローンで運び、しかも自動で届けたあと離陸点までドローンを帰還させている。難易度は低くない。登山者を受け入れる山小屋が飲み水や食料などを調達することは、必要な作業だが大変な重労働だ。担い手の確保も難しい。ドローンの取り組みはこの難題の解決に道を開きそうに見える。JP楽天ロジスティクスドローン・UGV事業部の向井秀明ジェネラルマネージャーにインタビューをすると、主に4点の成果があったことと、この取り組みに使った機体が、台湾大手の機体をカスタマイズして使ったことが分かった。向井氏は「今回の取り組みでインフラ化の『やり方の型』を見つけた」と話す。
JP楽天ロジスティクスが参加した実験は、2021年8月から9月までの2か月間、長野県白馬村の山岳エリアで行われた。実施主体はJP楽天ロジスティクスを含めて11の企業、団体、自治体で構成する「白馬村山岳ドローン物流実用化協議会」だ。構成する企業・団体は、JP楽天ロジスティクスのほか、株式会社白馬館、一般財団法人白馬村振興公社、株式会社からまつ、白馬村、株式会社MountLibra、株式会社eロボティクス、株式会社丸和運輸機関、株式会社カナモト、有限会社KELEK、株式会社先端力学シミュレーション研究所だ。
実験は、山岳エリアでの物資輸送の課題を、ドローンを活用して解決を目指す取り組みで、JP楽天ロジスティクスが配送ソリューションの提供を担った。
実験は、白馬岳の標高1250mの登山口にある宿舎「猿倉荘」から、標高2730mの白馬岳頂上宿舎や、標高2832mの「白馬山荘」までの、生鮮食品や飲料、医療物資などの運搬。往復10㎞、標高差は最大1582m、積み荷は最大7㎏。パイロット任務や運航管理を地元事業者が主体で担う体制にした。また2020年8月に白馬村で行った前回の実験では7人の補助員を配置するなど10人以上の体制で運用していたが、今回は補助員の配置をせずに2人体制で運用に臨み、それを成功させた。
このドローン配送の成功は、運用体制の省人化、大幅なコスト削減の実現にめどをつけた。また発表では、「新機体を用い」たことも明かしている。さらに許可承認を受けたうえで、対地高度1m以下の高さから積み荷を切り離して落下させる物件投下による配送も実施した。補助者を配置しない目視外飛行での物件投下による往復配送の実現は、本実証実験が国内で初の事例とも伝えている。
この実験をどう見ているのか。JP楽天ロジスティクスドローン・UGV事業部の向井秀明ジェネラルマネージャーに聞いた。
――この発表には複数の見るべき要素が詰まっていると感じた。実験の成果を整理すると?
「どちらかと言えば、一見、地味な発表だと思います。ふだん山に行かない方も多いと思います。ただ、業界や実情をご存知の方には『実用化が見え始めたのではないか』と思って頂けそうなことを詰め込みました」
――どんな性格を持った実験だったのでしょう
「実施したのは標高2832mの高地に向けて荷物を運ぶミッションです。ヘリを使うか、歩いて7時間かけて運ぶか、という選択肢しかないところで、ドローンという新たな選択肢を試した重要なイベントでした。新たな配送インフラとなるかどうかという大きな意味を持っています。高低差約1600mを往復飛行させたのですが、従来はドローンで7㎏運び終えたあと、離陸地点まで飛んで戻るのは難しかった。それを成功させた意味でも重要だったと思っています」
――改めて取り組みの意義を教えてください
「大きく4つありました。一つ目が省人化です。ドローンの取り組みはさまざま行われていますが、それを見た人は『こんなに人が必要なんですね』と口にします。必要な人員が多いと1配送のコストが高くなります。インフラ化したいのに人手をかけていてはなり立ちません。いかに少人数にするかが重要です。現時点では1人体制は難しい。最低2人は必要です。それであればこの2人でどう実現するか。それをこの1年間、チームで考え抜きました。白馬で10人以上の人手をかけ運んでいたところを、目視外・補助者なし飛行のレベル3の承認を受けて、さらにドローンの機体性能や、遠隔監視システムなども大幅に向上させて、今回ついに、2人運用体制で配送を成功させることができたわけです。事情をご存知の方が見ると、2人で運用できるのならコストが見合うのではないか、などと思って頂けると思います」
――地元の事業者が主体で運用させた、というお話でした
「そこが二つ目の意義です。現時点であれば楽天のメンバーが現地に赴いて運用すればよいのですが、今後インフラ化するにあたっては、毎回楽天が出張して運用する体制にするわけにはいきませんし、専門家しか使えないソリューションであってもいけません。地元のドローン事業者、将来的には未経験の山小屋のスタッフさんや、地元の運送業者が導入できるようにすることにこそ意味があります。今回は、地元の事業者さんに適切なトレーニングを提供し、運用できるかどうかを試しました。それに成功したことが今回の大きな成果でした」
――「地元で」「2人で」可能なソリューションであれば導入のハードルが下がりそうです
「その『2人で』を実現させるには、往復飛行ができることが大事なのです。それが三つ目の意義です。それまでは離陸場所、着陸場所のそれぞれに人を配置していました。なぜなら着陸場所でドローンのバッテリーを交換しなければならなかったからです。しかしバッテリー交換なしで往復飛行できるようになったことで、標高2800mの目的地に人を配置する必要がなくなりました。ドローンの専門家は離陸側にさえいればいい。それを今回はしっかり実現できました。実はこれを実現させるために、長距離を飛べて、重い物が運べる信頼性の高いドローンの開発を進めてきました。その開発が進み、本実証における飛行に成功したということも、このリリースに隠れている事実です」
――発表には「新機体」とだけ、あっさりと表現されていました
「『新機体』の正体は、台湾のCIRC(コアトロビック・インテリジェント・ロボティクス・コーポレーション、中光電智能機器人、https://www.coretronic-robotics.com/)製のドローンがベースです。台湾では非常に有名なメーカーで量産機器も作っています。生産品質が量産品質ですので今回採用しました。過酷な飛ばし方をさせるので、そのままで使うのではなく共同開発をしたドローンです」
――さて、3つの大きな成果を教えて頂きました
「もうひとつありまして、それが往復飛行を実現できた大きな要素です。3月の法改正です。従来は目視外・補助者無しの飛行では、物件を投下してはならない、となっていましたが、物流をするうえでは障害になります。なぜなら着陸場所に草があったり、石があったりして、着陸をすることが危険になるケースがあるからです。またドローンは『地面効果』の影響で着陸直前にもっとも不安定になります。法改正により1メートル以下からの物件投下が許可されたことで、ドローンが安定している中で、安全に荷物を下ろすことができるようになりました。さらにバッテリーの消費も節約できます。これが可能になったことで、十分にバッテリーを残せるようになりました」
――4つの成果を得られるまでを振り返ってどんな感想をお持ちですか
「今回の取り組みで、実証実験から実用化に向けて大きくギアが切り替わったとわれわれは感じています。取り組みの間は、ずっと実用化の扉を開くために必ず成功させよう、と声をかけあってきた経緯もあります。われわれとしての本丸はラストワンマイル配送です。第三者上空飛行の解禁スケジュールもある程度みえはじめていますが、それまで十二分なノウハウを蓄えておきたい。そのノウハウを蓄えるために、山小屋で実用化を展望できる取り組みが進められたことは大きいと思っています。山小屋のサービスクオリティーが向上し、登山客が増え、登山道の整備が進む、雇用も生まれる、という形で地方創生が進むことを願っていますし、たとえばヘリからドローンへの代替が進むことでカーボンニュートラルが進むことにも期待します。われわれは今回の取り組みで、インフラ化するための『やり方の型』を見つけましたので、料金を頂戴して運用する実用化につながることを目指します。そこが見えたことこそが、今年の実証の非常に大きな成果だと思っています。それと、白馬の登山シーズンには当たり前のようにドローンが飛んでいるようになればいいですね」
――白馬の風景にドローンが溶け込む日が来そうですね。楽しみです。ありがとうございました
■JP楽天ロジスティクスの実証実験の概要 ・実施期間 : 2021年8月から9月までの約2カ月間 ・配送ルート: 「猿倉荘」(標高1250m)から離陸し、 白馬岳頂上宿舎(標高2730m)および「白馬山荘」(標高2832m)に配送 ・飛行距離 : 往復約10km、高低差約1600mの配送 ・配送物資 : 生鮮食品、飲料、医療物資他(最大7kg) ・運営主体 : 白馬村山岳ドローン物流実用化協議会 ・ソリューション提供 : JP楽天ロジスティクス株式会社 ・実行 : 地元事業者
株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市)が、音楽ユニットYOASOBIのライブ会場で、メンバーから参加者けメッセージをドローンショーで夜空に投影した。8月5日に兼六園に近い「本多の森北電ホール」(金沢市)で行われたライブ終了後、ホールから出て帰路につく来場者の頭上に、「ありがとう I♡石川 いくら」「石川ありがとう YOASOBI あやせ」のメッセージが浮かび上がらせ、来場者に感動の余韻を残した。
ドローンによるメッセージが投影されたのは、7月に熊本でスタートした全国ツアー『YOASOBI HALL TOUR 2025 WANDARA』のうち、8月5日に「本多の森北電ホール」で4日間にわたって開催されたの金沢市でのライブの初日。ライブの終了後に会場を後にしようとした参加者の頭上に、このツアーのキービジュアルである犬のキャラクターのモチーフや、メンバー2人から来場者への感謝を伝える直筆のメッセージを再現した映像が投影され、来場者へのサプライズとなった。
メッセージの投影はドローンショー・ジャパンの特別協力で行われ、同社が開発した専用機「DSJ MODEL-X」500機が使われた。
YOASOBIは新型コロナ感染症拡大期の2021年7月に開催し配信ライブ『SING YOUR WORLD』でもFPVドローンを駆使した映像をまじえるなど、ドローンの活用に前向きなことで知られる。
またドローンショー・ジャパンは7月26日、27日に開催されたMrs.GREEN APPLEの野外ライブでバンドロゴを浮かび上がらせるなどライブでの演出活動が話題になっている。(参考記事はこちら)
ドローンショーの企画・運営を手がける株式会社レッドクリフ(東京)は、秋田県大仙市で8月30日(土)に開催される開催の第97回全国花火競技大会「大曲の花火」をドローンショーで盛り上げる。約1300機のドローンで夜空にシンガーソングライター、KANさんの代表曲『愛は勝つ』の歌詞を投影し、来場者が合唱する。この取り組みは大塚製薬株式会社(東京)の炭酸栄養ドリンク「オロナミンCドリンク」発売60周年記念特別プロジェクト「元気ハツラツ!大空大合唱」の一環で、ドローンショーではたて225m、横65mのオロナミンCボトルも登場する。
「大曲の花火」は、JR大曲駅から直線距離で約1.5㎞での雄物側河川敷で開催される。レッドクリフがドローンショーを手がける大塚製薬の特別プロジェクト「元気ハツラツ!大空大合唱」は8月30日午後6時半ごろからの開催が見込まれる。大会の主役である花火は午後6時50分ごろから打ち上げが始まる予定だ。観覧席はいくつもの種類があるが完売している席が多い。
「元気ハツラツ!大空大合唱」では、光を放つドローンがオロナミンCのボトルを音符に見立てた『愛は勝つ』の楽譜や、歌詞を投影する。会場では『愛は勝つ』を流し、参加者、来場者、関係者らで合唱する。合唱中はドローンがカラオケのテロップのように、歌うべき歌詞を光らせて参加者を歌いやすいように導く。プロジェクトを主導する大塚製薬の主力製品、オロナミンCの巨大ボトルも浮かび上がらせる。
レッドクリフのドローンショーは「元気ハツラツ!大空大合唱」の一環で実施される。7月27日に開催された北海道小樽市の小樽港第3号ふ頭基部で開催された「第59回おたる潮まつり大花火大会」で実施したときの動画はオロナミンCドリンク公式SNSで8月4日時点で、総再生数が1350万回超を記録するなど大きな反響を呼んだ。大曲の花火は約75万人の来場実績があり、今回も大合唱が期待される。
「元気ハツラツ!大空大合唱」は小樽、大曲に続き、10月18日には八代市<熊本県>の球磨川河川緑地で開催される「第38回やつしろ全国花火競技大会」でも開催される計画だ。実は7月の「第72回安倍川花火大会」(静岡県)でも開催の計画があったが荒天により河川が増水した影響で花火大会とともに中止になっていた。
またレッドクリフは、日本三大花火大会のうち今回の「大曲の花火」と「長岡花火大会」でドローンショーを実施した実績があるほか、全国各地の花火大会をドローンで盛り上げている。大阪・夢洲で開催中の大阪・関西万博でも連日、ドローンショーを開催し来場者を楽しませ、ギネス世界記録の達成への挑戦も続けている。
株式会社エアロネクスト(東京)は8月15日、ドローンでフードデリバリーの試験飛行を 実施したと発表した。6品、約2.5㎏を有人地帯での補助者なし目視外飛行(日本ではレベル4に該当)で、地元モンゴルの有力企業と連携して実施した。
エアロネクストのモンゴル国でのフードデリバリは7月25日に行われた。同社の「モンゴル展開パートナー」である モンゴルを代表する投資会社Newcom Group(ウランバートル市)、同社の子会社、Mongolian Smart Drone Delivery LLC(ウランバートル市)、モンゴル国フードデリバリー最大手、Tok Tok LLC(ウランバートル市)と組んで実施した。エアロネクストの調べでは、7月時点でモンゴル国内では初めての取り組みという。
試験飛行では、アプリ「TOK TOK」を通じて注文を受けたレストラン KIBO の料理6品、2,420gを、ウランバートル市内からウランバートル郊外の研修・保養施設まで片道約 16.5km、株式会社ACSL(東京)製の「PF4」で運んだ。動画にはTOK TOKのロゴの入ったデリバリボックスをPF-4が運ぶ様子や、都心部を飛行する様子、受け渡しの様子がおさめられている。
エアロネクストはすでにウランバートル市内で定常運航として血液製剤の配送を実施しており、6月には郵便輸送も実施している。フードデリバリは第3のユースケースとなる。
(モンゴル郵便とのドローン配送試験運航の実績についてはこちら
株式会社ドローンショー・ジャパン(金沢市<石川県>)は、8月16日、奥能登のやなぎだ植物公園(能登町柳田植物公園、能登町上町)で、能登半島地震からの復興を応援するドローンショー「Charge & Go!能登復興応援スペシャルバージョン」を開催する。2011年に男女混合のパフォーマンスグループAAA (トリプル・エー) の楽曲としてリリースされた『Charge & Go!』の特別バージョンをモチーフにした光のショーで、この曲の作詞を担当したKenn Kato氏とのコラボレーションで実現することになった。作品は三部作で8月16日はその第1回となる。
8月16日のドローンショーは、やなぎだ植物公園で開かれる「2025年 ござれ祭り」の目玉行事のひとつとして午後8時から行われる。ドローンショー・ジャパンが主催し、同社が開発したドローンショー専用機体「DSJ MODEL-X」500機を使う。作詞家Kenn Kato氏が代表を務めるドローンショービジネスのアゲハライド株式会社(東京)が企画協力し、ドローンショー企画などを手掛けるルーカスドローン株式会社(うるま市<沖縄県>)が制作協力する。
今回は「Charge & Go!能登復興応援スペシャルバージョン」全3部作の第1回で、第2回で、その後第2回を9月7日(日)、 宇出津港いやさか広場(能登町)、第3回を10月25日にやなぎだ植物公園で開催する予定だ。各回で演出と表現が異なり、復興への願いを段階的に描くという。
コラボレーションの相手となったKenn Kato氏は、AAAのほか青山テルマ、EXILE、三代目J Soul Brothers、東方神起ら多くの著名アーティストに楽曲を提供しているクリエイターとして知られる。また8月16日のショーが開催されるやなぎだ植物公園の「ござれ祭り」には、キャンドルアーティストCANDLE JUNE氏がキャンドルアートで、歌手の渡辺真知子さんがステージで参加し会場を盛り上げる。入場は無料。
ドローンショー・ジャパンは「ドローンが夜空に描く幻想的な光景が、見上げる人々の心に少しでも勇気と感動をもたらすことができれば幸いです。このドローンショーが単なるエンターテイメントの枠に留まらず、能登の復興を全国に発信するきっかけとなり、被災地の皆様の心の支えとなることを心より願っております」「本ドローンショーを通じて、被災された皆様に少しでも癒しと勇気を感じていただけることを願っています。14年の時を経て楽曲『Charge&Go!』が光のダンスとして蘇り、復興への新たな歩みを力強く踏み出すきっかけとなれば幸いです」とコメントしている。
会場への公共交通機関としては北陸鉄道バス「立ケ谷内」が最寄り。北陸鉄道バス路線図はこちら
東日本旅客鉄道株式会社(東京、JR東日本)は、高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)一体型の都市開発エリア、TAKANAWA GATEWAY CITYで8月23日、300機のドローンを使った「ドローンショー in Summer」を開催する。人が多く空港に近いうえ電波干渉対策も要するなど、都心開催につきまとう条件をひとつひとつクリアし、今回の実現にこぎつけた。観覧できるのは先着200人で、JR東日本が観覧希望者をTAKANAWA GATEWAY CITYアプリで受け付けすぐに満席となった。現在は予約の受付は修了している。
ドローンショーは、TAKANAWA GATEWAY CITYが目指す姿を周知する目的で開催される。ショーは午後7時、午後8時半の2回、行われる計画で、TAKANAWA GATEWAY CITY内のTHE LINKPILLAR 1 SOUTHに「特別観覧エリア」を設け、予約した200人を招待する。開始前には屋内ドローンショーも予定している。天候要因などにより中止になりうることを説明している。
JR東日本は、グループ経営方針「勇翔 2034」でエアモビリティを活用したビジネスの創造を掲げていて、TAKANAWA GATEWAY CITY ではその方針に基づき新たな移動・物流・エンターテインメントの可能性を探っている。すでに米ASKA社のAAMのモックアップ展示や、点検用ドローンを使ったドローンレースの開催などを進めていて、ドローンショーの実施もその一環としての取り組みだ。
JR東日本は「今後も新たなドローンの活用方法を模索してまいります」とコメントし、「ドローンが当たり前に飛ぶ未来」の創造を目指す。
施設に不正にもぐりこみ置いてある端末からネットワークに侵入するリスクが高まる中、施設への実際の物理的な侵入とサイバー攻撃の両方のリスクを確認する診断サービスを、サイバーセキュリティ事業者と警備大手が手を組んで実施する。実施するのはドローンとつながりの深いGMOサイバーセキュリティbyイエラエ株式会社(東京)とALSOK株式会社(東京)。すでに重要インフラ企業、防衛産業などに提案活動を進めており、9月にサービスを開始する計画だ。
GMOインターネットグループでサイバー攻撃対策事業を展開するGMOサイバーセキュリティbyイエラエとALSOKは7月29日、物理空間からサイバー空間まで一気通貫で不正侵入リスクを可視化するセキュリティ診断サービス「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」を開発したと発表した。発表時には東京・用賀のGMOインターネットTOWERに関係者が集まり報道陣向けに説明会を開いた。
「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」は、巧妙化、複雑化するサイバー攻撃への備えのためのサービス。サイバー攻撃では攻撃者が企業や組織などの外からメールなどを通じてネットワークに侵入して重要データの漏洩などを仕掛けるが、サイバー攻撃への防御が進むにつれ、施設そのものに攻撃者が侵入し、施設内の端末を使ってネットワークに侵入する手口が増え始め、金融庁などが警鐘を鳴らしている。このため、物理的に施設に入り込まれるリスクがどの程度あるか、そのうえでサイバー攻撃がしかけられるリスクがどの程度あるか、を同時に診断するサービスを開発した。
テストでは、企業や団体などの依頼に応じて、指定された拠点に侵入するための方法を攻撃者の視点で検討する。拠点には許可された人が開錠したさいに続けて入り込む共連れやICカードの偽装して侵入を試み、侵入に成功したら、不正端末の接続などサイバー攻撃の足掛かりを探索し、ネットワークに入り込んで情報搾取を試みる。攻撃者の視点でテストすることで、防御の脆弱な個所を浮き彫りにする。侵入後には脆弱性や改善策をまとめたレポートを依頼主に提出することで、攻撃への備えに役立てる。
このテストでは、拠点への物理的な侵入の部分をALSOKが担い、サイバー攻撃部分をGMOイエラエが担った。ALSOKは新サービス開発にあたり、物理侵入を足掛かりとしたサイバー攻撃に焦点を当てた、新たなセキュリティ診断サービス「ALSOK物理ペネトレーションテスト」を開発し、GMOの診断と連結させサイバー空間まで一気通貫で不正侵入リスクを可視化する「ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト」を仕上げた。なお物理ペネトレーションテストの専門ベンダーBarrierCrack合同会社(東京)も開発に参画し技術提供を受けた。
GMOインターネットグループ株式会社の西山裕之取締役グループ副社長執行役員は「GMOグループは創業以来『すべての人にインターネット』のキャッチフレーズをかかげインターネット社会の発展に邁進し、現在1700万件以上のご活用を頂いています。しかしながら昨今、インターネットを悪用した犯罪が蔓延しており、その手法がますます高度化、頻発化しています。このため今年度より『ネットのセキュリティもGMO』をかかげ、さまざまな施策を進めすことにしました。インターネット社会の発展のために、サイバーセキュリティの課題に真摯に取り組んでいきたい。いまやリアルとネットは切り離せません。交通、物流、金融、医療、行政、あらゆるインフラはネットワークが前提です。ALSOKさまとの取り組みを通じて、リアルとネットの両面で安全、安心の社会の実現に貢献したいと願っています」と述べた。
ALSOKの佐藤将史執行役員は、2025年7月16日に創立60周年を迎えた機会に社名を綜合警備保障株式会社からALSOK株式会社に変更し、ブランドスローガンとして「ALwayS OK」を掲げたことを紹介し「警報を受信したら現場に駆け付けるインフラを使いひと、もの、かねを軸にセキュリティを提供し、2000年初頭の法改正以降、情報も含め物理的側面から守ることを続けてきました。今後は確かな現場対応力を武器にサイバー領域の業容を拡大したい。そこでGMOさんとタッグを組んで開発した商材が『ALSOK & GMOサイバー物理ペネトレーションテスト』です。われわれの60年の守りのノウハウを攻撃者の視点に活用することで物理侵入を足掛かりにしたサイバーセキュリティにフォーカスした新しいチャレンジです」と述べた。
GMOサイバーセキュリティbyイエラエの牧田誠代表取締役CEOは、「われわれはサイバーセキュリティの会社で、ホワイトハッカーが日本で一番多く所属していることが特徴です。ハッキングコンテストでも優勝、世界一などを受賞しています。そんなわれわれがしていることは脆弱性診断、侵入テスト、ペネトレーションテストです。1万2600件ほど実施しています。ゼロデイも研究していて、年間100件ぐらい見つけ報告しています。これは研究なので商売ではなく見つけたらボランティアで報告しています。ペネトレーションテストをするときには、攻撃者の視点を模します。WEBサイトがあれば、脆弱性を試します。スマホアプリならそこからの侵入ができないか探します。攻撃者は弱いところを狙います。資産を持つ側はインターネットでアクセスできないところに大事な資産をおこうということが進み、どんどん堅牢になっています。そうすると、攻撃者は次に弱いところを狙います。証券会社が侵入されて株価操縦されたという話は、銀行がセキュアになったことで次の標的になったとみられています。そちらがセキュアになると次にどうなるか。次の課題が物理の侵入です。日本は遅れている状況がありますので、そこが狙われるのではないかという懸念があります。ここをALSOKさまといっしょにテストをしてまいりたい。GMOでも物理セキュリティが大事ということで試してみたところ、3年前の実験では熊谷正寿グループ代表の部屋にカードキーを複製して侵入できてしまったことがあります。物理もサイバーも一気通貫で試すことが大事だと考えており、今回のサービスはそこに意義があると考えています」と述べた。
ALSOK商品サービス戦略部情報セキュリティサービス推進室長の小野浩司氏は、「国内における営業秘密の情報漏洩におけるダントツの1位は中途退職者によるものだそうです。金銭目的でUSBなどにより情報を持ち出して転職先や競合会社に提供するといったことです。サイバーセキュリティについては金融庁のガイドラインや、それを反映した金融情報システムセンターのリスクのコンピューターシステムの安全対策基準に物理セキュリティの言及がなされたこともあり、われわれも人材、管理意識、鍵を渡す人への信頼などを含めた「ALSOK物理ペネトレーションテスト」を開発しました。ビジネス拠点の物理 進入のリスク、侵入後に拠点内部からを行われるサイバー攻撃のリスクを探索し、その結果と解決策を提出するサービスです。ダークウェブでお客様のアカウント情報が漏れていないか、現地で外から入れそうなところはないかも調査します。拠点への進入経路や手段を調査し、建物に入ったら共連れで中に入れないか、清掃業者になりすまして内部に入れないか、ICカード偽装、社員証偽造、スキミングにより入れないかなどを調査します。さらにサイバー攻撃の足掛かりとして侵入後のサイバー攻撃の経路と手段の調査としてWi-Fiを通じた社内無線LAN無線へのアクセス、LANケーブルへの不正な端末の接続も試みたりします。調査内容は事前に主催者と調整しますが、攻撃活動を交えることでリスク対応を強化してまいります。物理の方はネットワークに侵入するまで、サイバーの方は侵入した後のリスクを評価します。実施後は施報告書を提出し 多面的な評価と効果的な改善提案をします。報告書の内容はエグゼクティブサマリー、実施概要、テスト実施結果 リスクと対策。これらを示し実効性の高い資料として対策の検討にご活用いただきたい。セキュリティレベルをさらに強化のため高度なセキュリティテストを継続的にご活用頂きたいと考えております」
さらに、先行的に6月に診断サービスをうけた株式会社あおぞら銀行の萩尾崇執行役員は「たくさんの気づきがありました。親切のつもりで行っていることが侵入者にとって重要な情報になることにも気づきました。不審物を仕掛けられて気づかないこともありました。整理整頓ができていない場所ではそういうことがある、ということも気づきでした。われわれは、社内に知らない人がいたときの声掛けを徹底していますが、さらに浸透させる必要性を感じました。また、(得意先に)ストラップ、名札、シャツなどの『あおぞらグッズ』を配っていましたが、こうしたものを身に付けている人を社員と誤認するリスクもあるので、配布の制限も検討することになり意識がかわりました」と経験談を話した。
GMOサイバーセキュリティbyイエラエの村田学ディフェンシブセキュリティ部副部長は、「一般的なサイバー攻撃でサイバーだけで完結するものはオフィスの外側に攻撃者がいます。データは中にあります。データが欲しい場合は、たとえば攻撃者はインターネット経由でユーザーの方にメールを送り、言葉巧みにマルウェアを開かせます。この場合はPCを中継地点として攻撃を仕掛けデータを取るという流れになると思います。標的型攻撃というところです。それ以外にもVPNの脆弱性、Wi-Fiの脆弱性を狙うこともあります。 wi-fi のアカウントを取って攻撃する形です。ポイントはどうやって中に入るかです。攻撃者が中にいたらどうなるか。ネットワーク内のどこかからコンピューティングリソースにたどり着ければ侵入目標は達成できてしまいます。ネットワークさえつながっていれば本社とは別の事業所でも全く同じ効果が得られます。つまり内部にいれば攻撃者にとっては、一気にショートカットできるのです。LANを構成するプロトコルは古く暗号化や相互認証が基本機能として備わっていません。また内部からの通信は信用しても大丈夫だろうという認証の省略も危険です。インターネットのセキュリティをしっかりやっていても 物理的な接触にはかなり弱い面が存在ありますので、今回の取り組みが活動の一助になればと思っております」などと述べた。
<リリース>
https://group.gmo/news/article/9608/
<参考>
■ALSOK & GMO サイバー物理ペネトレーションテスト
https://www.digitalsales.alsok.co.jp/service/cyber-physical-penetration-testing/
■ALSOK 物理ペネトレーションテスト
https://www.digitalsales.alsok.co.jp/service/physical-penetration-testing/
■GMOサイバーセキュリティ byイエラエ