DRONE STARを開発する株式会社ORSO(東京)が、かねて開発を進めてきたドローン国家試験向けトレーニング用マット「DRONE STAR トレーニングマット」を完成させ、発表した。実地試験の3種類のコースを1枚のマットの上に集約した約3分の1スケールのマットで、ドローンスクールが空きスペースに敷き受講生の自主練習にあてたり、会議室で活用したりすることを想定している。価格は55,000円(税込)で12月18に発売する。予約者は先着20組に20%割安になるキャンペーンも実施中だ。
「DRONE STAR トレーニングマット」は3.2m×1.6mで、実地試験コースの約3分の1。二等試験の「スクエア飛行」「8の字飛行」「異常事態における飛行」に3種に対応している。3分割でき、中央をはずし左右両端のマットをつなぐことで円のコースにすることもできる。丸めて持ち運ぶことも可能だ。
ORSOの発表は以下の通りだ。
~発表を記念して先着20社限定、20%OFFキャンペーンを開始~
DRONE STARブランドを手掛ける株式会社ORSO(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:坂本義親、以下ORSO)は、ドローン国家試験向けに、実地試験における3種類のコースを集約した、「DRONE STAR トレーニングマット」を発表します。また、新製品の発表を記念して、先着20社限定で「DRONE STAR トレーニングマット」を20%OFFで予約ができるキャンペーンを開始します。
■先着20社限定、20%OFFキャンペーン
新製品『DRONE STAR トレーニングマット』の販売を記念し、特別価格でご提供するキャンペーンを開始します。
本キャンペーンでは、実際に製品を使用いただき、導入事例のご協力をお願いできるお客様を募集しています。導入事例は弊社Webページ等でご紹介させていただき、同様の導入を検討中のお客様の参考情報として活用させていただきます。
ご協力いただける方には、通常価格55,000円(税込)のところ、20%OFFの44,000円(税込)でご提供いたします。 先着20社限定 となりますので、この機会にぜひお申し込みください。
【キャンペーン期間】2024年11月26日 ~ 2024年12月17日
【キャンペーン対象者】
・製品を使用し、その活用方法についてご意見をいただける方
・導入事例として、弊社WEBサイト等での掲載にご協力いただける方
【予約受付サイト】 https://www.dronestar.jp/product/training
■「DRONE STAR トレーニングマット」の特徴
◯ 約3分の1スケールで実地試験コースをリアルに再現
「DRONE STAR トレーニングマット」は、横幅3.2m×縦幅1.6mで、実地試験コースを約3分の1スケールで再現しており、スクールの空きスペースや会議室に手軽に設置できます。マットを敷くだけで、二等試験に必要な「スクエア飛行」「8の字飛行」「異常事態における飛行」の練習をすぐに始められます。メジャーやパイロンを使った準備が不要なため、練習のセットアップ時間を短縮でき、より多くの飛行時間を確保し、苦手な飛行技術を繰り返し練習することが可能です。さらに、3つのパーツに分割でき、両端のマットを重ねることで1つの円を作ることができます。小さく丸めることができるため、収納や持ち運びも簡単です。
■「DRONE STAR トレーニングマット」製品情報
【名称】DRONE STAR トレーニングマット
【価格】55,000円(税込)
【発売日】2024年12月18日
ドローンの国家資格を満たす知識や技能を受講生に提供する「登録講習機関」が5月20日現在、300機関を超えた。ひとつの機関が複数のスクールを設置しているケースも含めると、スクール数は460校となった。昨年(2022年)12月5日の航空改正法施行によりスタートした国家資格制度は、講習機関の設立が相次いでいる。国家資格制度以前に、国交省のホームページに掲載を認めていた民間スクールである「講習団体」は1000件を超えていたため、今後も従来スクールから講習機関への転換や新規開設が続くとみられる。
国交省が公開している一覧表によると、登録講習機関は5月19日現在で309件。機関によって地域別スクールなどを複数設置しており(一覧表では「事務所」)、スクールは全国で461校を数える。一覧表には各スクールが対応できる8つの項目ごとに「〇」が表示してあり、全項目対応校は96校だ。
今年(2023年)2月までは一定の条件を満たすと認められた民間スクールが「講習団体」として国交省のホームページに掲載されており、それぞれの講習団体が上位組織の策定したカリキュラムに準拠するなど管理を受けている場合もあり、講習団体を管理する「管理団体」も掲載されていた。
国家資格制度に移行後は、講習団体、管理団体の区別はなく、国家資格の知識、技能を提供する機関は「登録講習機関」に統一されている。準拠する講習内容は国が定めている。
一方、ひとつの機関が複数のスクール(一覧表のうえでは「事務所」)を運営するケースはあり、一般社団法人農林水産航空協会は32校、一般社団法人DPCAが31校、日本無人航空機免許センター株式会社(JULC)は28校、日本ドローン機構株式会社は8校、株式会社先端技術無人航空機トレーングセンターは8校、一般社団法人ドローン大学校は6校、株式会社モビリティテクノは6校を展開している。なお旧管理団体が引き続き指導、管理、手ほどきしているケースも多いが、旧管理団体自身が講習を行わない場合には登録講習機関に名を連ねておらず、一覧表には表示されていない。
旧管理団体の中には、傘下のスクールの登録講習機関への登録手続きを支援し、管理団体自身は講習機関には登録ない団体もある。国家資格創設の環境整備を支援するなどいわば裏方業務をこなしてきた団体も多く、中央省庁や民間スクール、産業界の中には、今後も旧管理団体の活動に期待を寄せる声も多い。
通信インフラ大手株式会社ミライト・ワン(東京)のドローン事業を担う子会社、株式会社ミラテクドローン(東京)は1月24日、一般社団法人日本建築ドローン協会(JADA)と一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(JUIDA)が開発した高層ビルなどの外壁点検専門カリキュラム「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」の講習を開始した。このコースの開講の第1号となる。あわせてJUIDAの鈴木真二理事長がミラテクドローンの佐々木康之社長に開講証書を手渡した。コースではドローンを細いケーブルに係留させて飛行する方法などを学ぶ。都市部にある高層ビルなどの外壁点検で頭痛の種となっている時間、コストなどの課題の解決、負担軽減が期待される。修了者は「ドローン建築物調査安全飛行技能者」となる。
「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」が開講したのは、ミライト・ワンの人材育成拠点、みらいカレッジ市川キャンパス(千葉県市川市)。受講生3人が3日間のカリキュラムの初日の講座に臨んだ。2日目、3日目には実技講習が行われ、最後に確認テストが行われる。修了を認められた受講生には、手続きのうえJADA、JUIDAが「ドローン建築物調査安全飛行技能者証明証」を交付する。
ミラテクドローンは開講にあわせて報告とカリキュラムの説明会を実施した。佐々木社長は「人材育成に力を入れている中で、近年は応用コースの要望が増えており、特に建築関連の問い合わせが多い。開講したコースで貢献したい」とあいさつした。JADAの本橋健司会長は「昨年4月に施行された建築基準法12条の定期報告制度のガイドラインで、ドローンの活用が盛り込まれたが、従来の打診と同等の精度が求められる。このコースで、都市部でも外壁にドローンを接近させて、安全を確保しながら飛ばす方法を身に着けて頂くことで、外壁点検のコスト削減、合理化が図られたらいいと思っている」と述べた。
JUIDAの鈴木理事長は「2022年12月の改正航空法の施行でレベル4飛行を可能とする制度がスタートしたが、実際には都市部での飛行はハードルが高い。このコースは係留飛行させる技能を身につけることで都市部での点検にドローンを使うことに道を開く」と、都市部でのタワーマンションなどの外壁点検が抱える課題の解決を期待した。
コースの中心となる技術は、機体と地上の固定点とを細いケーブルでつなぐ「1点係留」と、ビル屋上からはりだしたつり竿と、地上の固定点との間にはったケーブルを、ドローンに取り付けたストロー状の中空のアタッチメントを通すことで、機体の暴走リスクを管理する「2点係留」を用いる方法。
JADAの宮内博之副会長は、「これにより安全技術を構築し、発注者の心配を抑える第三者視点の安全を両立できる」と説明した。コースでは機体操縦、安全管理責任者、係留操作者、補助者の4つの役割と、それぞれが協力しあうチームビルディングについても伝える。ドローンやカメラについて、要求される要件について伝えるものの、機体の具体的な制約はないという。
ミラテクドローンの谷村貴司取締役教育事業部長は、「座学で安全管理、撮影の知識、係留の知識、飛行計画書などを学び、実技で安全管理、筆耕技術、撮影技術、係留技術などを学ぶ。参加者は役割を交代しながらぞれぞれの責任を身に着けることになる」と説明した。
JUIDAの操縦技能証明証と安全運航管理者証明証を取得していて、JADAの建築ドローン安全教育講習を修了していることが受講条件。2022年12月に運用が始まった操縦ライセンスを取得している場合、JUIDAの操縦技能証明証にかえることが可能という。受講料はミラテクの場合、1人あたり39万6000円だ。
ドローンで外壁点検をする場合、建築基準法の要件を満たし「12条点検」であることが必要だ。要件を自力で満たす選択もあるが、ドローン建築物調査安全飛行技能者コースは12条の要件を身に着けられるようカリキュラムが組まれており、証明証の取得は、12条点検と認められる近道となる可能性がある。
国家資格であるドローン操縦ライセンスの教習所「登録講習機関」になるための申請手続きをめぐる現状について、申請者側の事情にも当局側の事情にも精通している黒沢怜央氏(株式会社ジーテック代表取締役・行政書士)に聞く最新情報第3弾。登録番号が発番されたあとの講師研修や修了審査員研修の方法について掘り下げた。修了審査員の研修はすべてeラーニングで行われる見通しだ。(文中敬称略)
ーー登録番号の発番が始まったようですが、登録講習機関の講習開始に向けての手順を改めてお聞かせください。
黒沢 はい、私どもがサポートさせていただいているスクール各社にも登録免許税納付通知が出てきております。登録免許税の納付後に4桁の登録講習機関コードとTから始まる8桁の事務所コードが発番され、その後、登録証が郵送されることになります。発番後にやらなければならないことが多いので、流れをまとめてみます。次のようになります。(表1参照)
ーー登録講習機関コードが発番されたあと、講師研修を行う前に講習事務規定等の届出をする必要があるのですね?
黒沢 はい、講習事務規定に別添資料として作成して添付しなければならない文書が20種類以上あるのですが、その中に「登録講習機関管理者及び講師(修了審査員を含む。)に対する研修指導要領」がありまして、こちらを作成して届出をしたあとでなければ講師や管理者の研修を行うことができません。
ーー20種類以上ですか。こちらはまた別の機会に取材させてください。各スクールは講師研修を行うためには、研修指導要領を届け出てからでなければならないのですね。研修で行わなければならない内容等は決まっているのでしょうか?
黒沢 はい、告示第2条第2項及び別表第5に研修内容が具体的に記載されていますので、こちらに紹介します。現在のパブリックコメントを募集していますが、こちらが最新のものです。この内容でおそらく確定します。
ーーこの6番目の修了審査要領(実地)の部分が、指定試験機関(一般財団法人日本海事協会)が実施するということですか?
黒沢 はい、そのとおりです。まずは1~5の研修を各登録講習機関で行い、その後、修了審査員になられる方は6の研修を受けていただくことになります。
ーー修了審査員の研修はいつ、どこで実施されるのでしょうか?
黒沢 日本海事協会様にも確認をさせていただきましたが、こちら全てeラーニングでの実施ということです。登録番号が発番されましたら、申し込みをして、専用のeラーニングアカウントをもらい、ログインいただいて研修受講料を納付後、各講師に受講いただくことになります。
ーーすべてeラーニングなのですか? 自宅でも受講できるのでしょうか?
黒沢 はい、やはり全国に登録講習機関が設立される見込みですので、現地での実施は現実的に難しいとの判断かと思います。各講師の方は自宅で受講いただくことも事実上できます。ただ当然しっかりと視聴する必要がありますので、登録講習機関としてどう管理をするかが重要になると思います。
ーー視聴した記録のみで修了審査員になれるということでしょうか?
黒沢 いいえ、視聴後に確認テストがあるようです。こちらの確認テストは2回まで受けることができます。それに合格しない場合、再度、研修の申し込みをして、受講料も支払わなければいけません。また、eラーニングの受講時間ですが、2等は3時間半、1等は4時間半の受講時間であると聞いております。
ーー実際に講習を開始するためには登録講習機関として運営体制を固めて、各講師の方たちの研修をしっかり行っていく必要がありそうですね
黒沢 はい、特に法施行までのこの時期、情報が錯そうして混乱してしまうスクールが多いかと思います。正しい情報を得ながら、登録講習機関として継続できるように一つ一つ丁寧に準備していきましょう。
黒沢 怜央 Kurosawa Reo 株式会社ジーテック 代表取締役 Academic works 行政書士事務所 代表行政書士 ドローンやシェアリングエコノミー、FinTech、スマートシティといった先端領域の法規制を専門とする。2018年1月、行政領域におけるITソリューションを軸とした(株)ジーテックを設立、代表取締役に就任。民泊許可・届出手続のクラウドサービス「MIRANOVA(ミラノバ)」やドローンの飛行許可・承認手続のクラウドサービス「DIPSコネクト」等を展開。現在、行政手続のデジタル化に向けて、デジタル庁、デジタル臨時行政調査会への提言や地方公共団体におけるDX推進アドバイザー等も行う。
国家資格であるドローン操縦ライセンスの教習所「登録講習機関」になるための申請手続きをめぐる現状について、申請者側の事情にも当局側の事情にも精通している黒沢怜央氏(株式会社ジーテック代表取締役・行政書士)に再び話を聞く。黒沢氏は前回、登録制度や手続きについて関係者間の情報錯綜があることが、申請しているドローンスクールの戸惑いにつながっている可能性を指摘した。しかし戸惑いの要因はそれに限らないらしい。スクールが受講者に実施する修了審査に使う機体の仕様や要件も、てこずる原因のひとつになっているという。(文中敬称略)
ーー登録講習機関が受講生を“卒業”させるために実施する「修了審査」では、使う機体の要件が決められていて、それも戸惑いの原因になっているようですね
黒沢 はい。要件を満たしている市販の機体を市場で見つけることは、現状では難しくなっていて、それが戸惑いを招いています。登録講習機関が使う機体のうち、「実地講習」に使う機体の要件については、「必要履修科目の講習を適切かつ安全に行うことができるもの」であればよいと比較的ざっくりしています。しかし「修了審査」で使用できる機体については細かく告示(※)で示されておりまして、これに適合する機体が現時点で販売されている製品が、ほとんどないといえる状況なのです。
(※)登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示
https://www.mlit.go.jp/common/001510312.pdf
ーー修了審査用の機体の要件とは
黒沢 多くの要件があります。主な要件の一つが、ATTIモードに手動で切り替えのできるものでなければならないことです。告示においては、「位置安定機能による水平方向の位置の安定を、送信機で解除可能であり、位置安定機能なしに飛行可能であること。」という記載があります。
ーーATTIモードに手動に切り替えができるものであれば、それなりにありそうです
黒沢 はい、DJIやその他のメーカーの機体でもそれなりにあります。ドローンスクールにおいても、ATTIモードに手動で切り替えて講習を行っているところも多くありますので、この要件がただちに戸惑いの要因になるとは言えないかと考えます。
ーーではスクールにとって障壁となっている部分はどこでしょうか
黒沢 告示の記載をまず見ていただきたいのですが、
「無人航空機と組み合わせる送信機の機能により、修了審査を受ける受講者が操縦する間においても、当該修了審査を行う審査員及び修了審査員を補助する者が、受講者の保持する送信機とは異なる送信機を用いて、受講者に代わり操縦を行うこと(以下「オーバーライド」という。)ができること。ただし、当該受講者、修了審査員及び修了審査員を補助する者並びに修了審査を行う空域周辺の安全を確保できる場合は、この限りでない。」
となっています。この記載のとおり、プロポの機能によって、審査員のプロポで受講生の代わりに操縦が行えるようにオーバーライドできる仕様になっている必要があります。これは無線でも有線(トレーニングケーブル)でもどちらでも構いません。ただ機体メーカー側はオーバーライド機能が重視されることを見込んでいなかったためか、対応している機体が多く出回っていない実情があります。しかも先ほどお伝えしたATTIモードに手動で切り替えができることが前提です。
ーーATTIモードに手動で切り替えられる機体でオーバーライドできる送信機に対応している必要があるということですね。
黒沢 そうです。デフォルトの仕様で要件を満たす機体は、実際に現在発売されているものとしてはかなり限られそうです。ドローンスクールで利用されているものですと、Phantom 4 Pro V2.0があります。ただし、すでに生産が終了しています。また蒼天など国内メーカーの製品もありますが、産業用として開発された機体で、スペックや価格面でスクールによっては難しさを感じるかもしれません。この修了審査機の要件が公表されてから、Phantom 4 Pro V2.0は中古市場でも手に入りづらくなっています。
ーーちなみに25kg以上の機体でも同じ条件でしょうか?
黒沢 はい、マルチローターにおいては同様の機体要件になっています。25kg以上の機体においては、オーバーライド機能が標準で装備されているものがほとんどありませんから、余計に修了審査で使用できる機体は限られると思います。プロペラガードもつけなければなりませんが、これも大型機になりますと純正のものが販売されていないケースが多いように思います。
ーー告示を見ますと、「ただし、当該受講者、修了審査員及び修了審査員を補助する者並びに修了審査を行う空域周辺の安全を確保できる場合は、この限りでない。」と記載があり、安全が確保できればオーバーライド機能は不要なのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか?
黒沢 はい。私もこの点は航空局の担当官とも話をしましたが、まず屋外においては例え係留装置を用いたとしても認められないということです。航空局が公表しているFAQにも
「係留措置は安全確保の一部となる可能性はありますが、オーバーライドを不要とするためには不足していると考えております。告示で述べている安全を確保できている場合とは、修了審査員、受験者及び修了審査員補助者の安全が確保出来る他、機体の試験場外の空域への飛行を防ぐことを想定しております。一方、係留による措置では、機体の試験場外の空域への飛行を防ぐことは可能かと思いますが、修了審査員、受講者及び修了審査員補助者の安全は必ずしも確保できないと考えます。」
と記載があります。ですから、係留装置を用いてもダメということですね。この安全確保ができる場合というのは、屋内で完全にネットで囲われている状態で、受講者、修了審査員及び修了審査員の補助者がネットの外にいる状況が想定されているとのことです。そのような場合には例外的に機体がオーバーライド機能を有していないとしても認められるということです。
ーーでは、この基準は二等登録講習機関にのみ利用できるということですか
黒沢 そうです。一等の場合は必ず屋外で修了審査を行わなければなりませんから、二等で修了審査を屋内で行う場合に限られています。
ーー登録申請にあたり、必要な機体を揃えることも要件を満たすうえで難題になっていることが分かりました。今後の展望などもお聞かせください。
黒沢 はい、今回、国内初の無人航空機の操縦ライセンスを構築するにあたり、規制官庁も現状に合わせるということではなく、レベル4飛行が実運用されることを見据えて、安全性をどのように担保するかという視点で設計しているものと思います。示された要件に適合する機体を各メーカーが開発して流通するようになるまでは、そう長くはかからないのではないかと思いますので、少しだけ先を見据えつつ、登録講習機関の登録申請も進めていただけたらと思います。
黒沢 怜央 Kurosawa Reo 株式会社ジーテック 代表取締役 Academic works 行政書士事務所 代表行政書士 ドローンやシェアリングエコノミー、FinTech、スマートシティといった先端領域の法規制を専門とする。2018年1月、行政領域におけるITソリューションを軸とした(株)ジーテックを設立、代表取締役に就任。民泊許可・届出手続のクラウドサービス「MIRANOVA(ミラノバ)」やドローンの飛行許可・承認手続のクラウドサービス「DIPSコネクト」等を展開。現在、行政手続のデジタル化に向けて、デジタル庁、デジタル臨時行政調査会への提言や地方公共団体におけるDX推進アドバイザー等も行う。
12月に制度の運用が始まる国家資格としてのドローンの操縦ライセンスをめぐり、知識・技能を身に着ける講習を担う登録講習機関になるための申請手続きで、申請するスクールを中心に、一部で戸惑いの声が上がっている。背景には、適切な手続きに関する情報が関係者の間で不十分であったり、関係者間で錯綜していたり、誤認していたりする事情があるとみられる。現場で何が起きているのか。適切な対応とは何か。行政手続きの専門家であり、申請者側の事情にも当局側の事情にも精通している黒沢怜央氏(株式会社ジーテック代表取締役・行政書士)に聞いた。(文中敬称略)
ーー登録の申請をめぐり、戸惑いの声を聞いています
黒沢 はい。登録の申請手続き9月5日に始まりましたが、円滑に進んでいるスクールはごく一部です。9月だけで航空局の方に400件 ほど申請があったと聞いておりますが、その8割以上は差し戻しをされたとみられていますので、困られているスクールの方は多いと思います。
ーー登録申請の難易度が高いということでしょうか?
黒沢 はい、そのとおりです。まず、こちらの資料を見ていただきたいのですが、今回、改正航空法やそれに基づく施行規則以外にも、これだけの基準が発表されております。申請にはこれら全てをつないで読み込まないといけません。そして登録申請にあたり、示されている要件に適合するように一つずつ証明をしていかなければなりません。私どもも雛形作成にかなり時間がかかりました。当然のことながらスクールごとに状況が違いますから、お手本を丸写しすれば出来上がるものではなく、一つずつ諸事情に合わせてカスタマイズすることになります。
ーーこれは膨大な作業になりそうです。手引きのようなものはないのでしょうか?
黒沢 そのまま書き写せるような手引きはありません。登録講習機関は、飛行許可申請のように一般個人が申請をするものではなくて、法人限定のいわゆる事業者向けの申請手続きです。そこまで手取り足取り教えなくても自分たちで要件に適合するように書類を用意しなさいというメッセージかと思います。また、雛形を用意しすぎてしまいますと中身を精査せずに穴埋めだけして書類を作成してしまう事業者の方が出てくることが想定されるため、警戒する必要性も生じます。少し前に問題になった補助金申請のように単にコピペして申請書類を作成するようなことが無いように考えた側面もあるかもしれません。
ーー他の行政手続きもこういうものなのですか?
黒沢 私たちが普段関わる手続きはこういった手引きやマニュアルがないものが珍しくありません。雛形を一つずつ作成して、行政の方にも説明してその雛形を採用いただくケースも多いです。
ーードキュメントを作成するうえで作業としての難易度が高いことはわかりました。一方、登録要件を満たすこと自体は厳しくはないのでしょうか?
黒沢 これが・・・・ひとことでは表現できないのですが、登録要件についてもよく調べてみますとハードルが高い部分があります。たとえば、修了審査用の機体についてですが、告示要件を満たすためにはATTIモード対応機体で、かつ、オーバーライドできる送信機が対応しているものでなくてはなりません。
ーー現在販売されている機体で考えると選択肢はそれほど多くなさそうです。
黒沢 そうなんですよね。Phantom 4 Pro V2.0は生産が終了していますし、国内メーカーの製品もありますが、価格面でだいぶ違いがありますから、難しさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ーー修了審査用の機体についても話が出ているので、次の機会に、細かく教えて頂きたいと思います
黒沢 はい、解釈の部分もまだ航空局の方でこれから固める部分があるかと思いますので、論点も含めて細かく次回ご説明いたします。
ーーあらためてお聞きしますが、戸惑いの声が多い理由はどこにあるのでしょうか?
黒沢 はい、これはいくつか考えられるのですが、これまで「HP掲載講習団体」という法令で規定されていない仮の仕組みがありまして、これが一つの戸惑いの原因になっていると考えられます。HP掲載講習団体とはあくまで、一定の書類を提出すると国土交通省のHPに掲載しますよ、というもので、法令に規定されている制度ではありません。今回の「登録」のようには、法的な権限は与えられていないのです。
ーーHPに掲載されたことから「国土交通省認定」と表示しているスクールも見かけるように思います。
黒沢 これはドローンスクール特有のことだと思っております。通常であれば、「許可」とか「認可」とか「登録」、「認定」というのは国から法的な地位を認められて付与されたものということになります。もしもそういった許可や認定を受けていないのにそのように名乗ってしまったとしたら大変なことです。私どもが顧問で入らせていただいているスクールにはそのような表示をしないように指導してまいりました。
ーーHP掲載講習団体になっていれば、登録講習機関にも当然のようになれる、と考えているスクールが多かったかもしれません。
黒沢 はい、そう思います。登録講習機関はHP掲載講習団体と違って、国家ライセンスの講習と修了審査とを行えるようになるのですから、国は、登録にあたり、申請内容が要件を満たしているかしっかりと審査しなければなりません。HP掲載講習団体とは全く別の制度です。HP掲載講習団体は、既存のスクールや、管理団体に配慮した仕組みでもあり、国にとって提出された書類は、実態に沿っているかどうかを法令に則って厳密に審査する対象とはいえません。
ーー戸惑いの理由は、他にもありますか?
黒沢 はい、これは良くも悪くも管理団体の存在だと思います。誤解してほしくないのは管理団体があったからこそ、これだけ国内のドローン市場が伸びてきたと思いますし、登録講習機関のサポートについても現在の管理団体が担う役割は大きいと思います。一方、今回の登録制度は、スクールを運営している一つ一つの法人がそれぞれ国土交通大臣の登録を受けるものになっています。登録手続きの部分は管理団体とは切り離して考えた方がいいと思います。
ーーたとえば管理団体が傘下のスクールに代わって登録申請の手続きをすることはダメだということですね
黒沢 そうです。講習を行う機関がそれぞれ登録をする制度ですから、管理団体がまとめて申請を行うことは出来ません。また、講習に関して業務委託をすることも出来ません。登録をしている法人が講習をすることになります。他の許認可で考えても、名義貸しと見られるような業務委託は普通、 出来ません。当然といえば当然の話なのですが。
ーーやはり制度について情報が錯綜していたり、誤解が生じてしまっていたりすることがありそうですね
黒沢 そうですね。新しい制度が始まるときはある程度は仕方ない部分もあります。制度がスタートしてしばらくすると徐々に慣れてきて、理解も進んでいくと思いますが、正しい理解を広める意味でも今が一番重要ですね。今回のインタビュー記事で少しでもお役に立てば幸いです。
ーーありがとうございました。
黒沢 怜央 Kurosawa Reo 株式会社ジーテック 代表取締役 Academic works 行政書士事務所 代表行政書士 ドローンやシェアリングエコノミー、FinTech、スマートシティといった先端領域の法規制を専門とする。2018年1月、行政領域におけるITソリューションを軸とした(株)ジーテックを設立、代表取締役に就任。民泊許可・届出手続のクラウドサービス「MIRANOVA(ミラノバ)」やドローンの飛行許可・承認手続のクラウドサービス「DIPSコネクト」等を展開。現在、行政手続のデジタル化に向けて、デジタル庁、デジタル臨時行政調査会への提言や地方公共団体におけるDX推進アドバイザー等も行う。