「空飛ぶクルマ」をとりまく環境が賑わいを増し、議論が活発化しています。空の移動革命に向けた官民協議会が議論を深め、企業による公開実験も進む中、開発動向や、活用の可能性、そして将来を見据えたアクションについて専門家による対談を企画しました。臨んだのは、空飛ぶクルマの開発を手掛ける株式会社SkyDriveの福澤知浩代表、小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発に携わった航空機開発に詳しいPwCコンサルティング合同会社の宮川淳一顧問(Aerospace&Defense担当)、ドローンや空飛ぶクルマ関連の業務・技術支援に携わるPwCコンサルティング合同会社の岩花修平ディレクター。3人の対談を詳しくお伝えして参ります。
岩花氏:空飛ぶクルマをめぐる動きがこのところ活発になってきています。今回は、開発の原点や活用法、市場の可能性などについて、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)への展望から、そこで想定されるユースケース、その後に普及した際、どのような市場や世界が広がっているのかといった将来の展望まで、多角的に理解を深めたいと思います。まず空飛ぶクルマの開発を手掛けている株式会社SkyDrive代表の福澤知浩さんに、原点である開発の動機やきっかけについて伺います。
福澤氏:私はもともとモビリティについて、イノベーションが少ない分野だと思っていました。この何年間かを見ても、IT、またはIoTと呼ばれる分野や、スマートフォンなどの領域ではイノベーションが進んでいますが、モビリティはそれほどでもない。それを残念だと感じていました。ここにイノベーションをもたらしたらどうなるか、というのが発想の原点です。何か画期的なモビリティを作りたいと思い、最初はボランティアで開発をスタートしました。大企業であれば、細分化されたタスクからスタートして、大規模に展開するまでに時間がかかってしまいがちです。画期的なモビリティとはいっても、できるだけ時間をかけずに実現するにはどんなものにすればいいか、といったところから考え始め、そこで空飛ぶクルマが良いのではないかという結果になりました。
岩花氏:画期的なモビリティ、の発想から、空飛ぶクルマが出てきたのですね。その後、海外からも同様の話題が持ち上がりました。
福澤氏:そうなんです。そのころにちょうど、空飛ぶクルマを利用する可能性や現実味が世界で広がり始め、盛り上がってきていました。中でもインパクトが大きかったのは、2016年に米国の主要プレーヤーが公表したホワイトペーパーでした。その内容からは、空飛ぶタクシーの稼働率を上げていくと採算が取れるようになり、道路を走るタクシーよりもむしろ安くなる、という展望が読み取れました。スマートフォンなどの普及によるスケールメリットでセンサーやチップ(半導体集積回路)の値段が下がってきていましたし、ドローンが普及して安価に飛べる形が出てきたという時代背景もあります。そうなると、「これはもう事業化するしかない」と考えるようになりました。事業化をするとモビリティだけではなく、人々の生活スタイルも変わっていきます。移動に地上のインフラを使い、遠回りをして渋滞に巻き込まれたり、満員電車を我慢したりする生活は、もう必要ではないのではないか。そう思い始めました。
岩花氏:米国の企業は既存のライドシェア事業を活用した陸と空の移動の連携も構想しているようです。SkyDriveにはそういったユースケースのイメージはありますか。また、連携できそうな事業者と相談することはあるのでしょうか。
福澤氏:あります。ただ、当初は“妄想段階”だったので「いつかこんなことにも使えると思う」というレベルでした。リアルなPL(損益計算書)を作るよりも、「確かにコストパフォーマンスは良さそうだよね」という程度の感覚でさまざまな事業者に相談していました。ボランティア時代にいろいろな企業とタイアップをすることもありましたので、そうした相談をする機会も多かったと思います。
岩花氏:そこからどうやって具体化させていったのですか。
福澤氏:ボランティア時代に1/5スケールを最初に作った時には、DIY・ものづくり系の展示会などに出展していました。専門業者だけでなく、個人も出展できるのですが、さまざまな人が見に来てくれて、とても有意義なフィードバックをいただきました。専門家は「事業化なんて絶対できない」で終わってしまうのですが、個人の方々は「できるかどうかはわからないけれど、おもしろいね」と言ってくれました。投資家の方は「このレベルにしないと事業化は難しいよ」というアドバイスを下さったり、大学教授の方は専門的な見地から感想を述べたりと、いろいろな意見をいただきました。
岩花氏:幅広くお話を聞かれたのですね。
福澤氏:はい。また、当時は自動車会社に勤めていたので、そこでハイブリッド車など画期的なクルマを生み出した主要メンバーから、どうやってそれらを生み出したのかを聞くことができました。そういった話の中に、こう進めると新しいモビリティができるのか、と腹落ちしたことはあったと思います。
岩花氏:次に今後の方向性について伺います。大きな節目として2025年の大阪・関西万博に向けた取り組みを教えてください。
福澤氏:万博の前の2023年にサービスの提供を開始したいと考えています。いきなり都会の空を飛ぶのは難しいので、ステップを踏むつもりです。その最初のステップは大阪地域を中心としたサービス展開で、飛ぶ場所は海や川の上に限定します。機体はどこか1カ所故障してもすぐに墜落するものではありません。クリティカルな事象が発生したらすぐに緊急着陸をするという前提で、その場合でも、第三者や生活をしている人たちがいる場所に降りることはなく、海や川の上に着地します。2023年にサービスインし、2年後の2025年には実用化できている状態で、国内外から大阪・関西万博を訪れた方々に利用してもらえるという姿を目指しています。
岩花氏:導入のスケジュールが示されると、一気に現実味も楽しみも高まります。大阪・関西万博では、どのようなユーザーが、どういった目的で使うことを想定していますか?
福澤氏:会場のある大阪の湾岸部には大規模施設が集積しているので、各施設を行き来する需要を取り込むことを想定しています。この地域は道路網の利便性に欠ける面があり、2拠点間の移動に時間がかかることがあります。万博に向けて最寄り駅の開設を含めた鉄道整備の話はありますが、空を使えば既存の交通より早く移動できると思っています。車で15分、20分かかるところを、5分程度に短縮できるでしょう。
岩花氏:移動の利便性を享受できそうです。
福澤氏:こうした利便性の向上に加えて、空を飛んで楽しい時間を過ごすといった、移動手段以外の価値も提供できます。空には遊覧の楽しみ方もあります。この地域は景色が良く、すでにヘリコプターなどによる遊覧飛行のサービスが行われています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を除けば、年間に数百万人の来訪者がありますし、その半分がインバウンドです。ここで空飛ぶクルマを使った遊覧飛行サービスを提供すれば、いろいろな方に楽しんでいただけると見込んでいます。料金も最初は数万円ほどと想定しているので、まずはエンタテイメントの一環として使う方々が多いと思います。将来的には、関西国際空港に到着したら空飛ぶクルマに乗り継ぎ、目的地まで行くといった使い方をしていただき、交通機関として機能させることを目指しています。
岩花氏:2025年の大阪・関西万博後の普及期でのユースケースのイメージはどのようにお考えでしょうか。
福澤氏:空飛ぶクルマは、MaaS(Mobility as a Service)の領域に入ると想定しています。パーソナルモビリティで、かつネットワークにつながっているとなると、定期的な航路で大人数を輸送するよりも、タイムリーな輸送で活躍することが多いでしょう。また、都会と地方のMaaSの使い方には違いがあると思っています。都会では渋滞を回避して、タイムリーに行きたい時に移動を可能にするという需要があります。一方、地方では道路の老朽化が進んでいて、インフラのメンテナンス費用の負担も大きい、といった課題への対策となり得ます。現在インフラに投じている費用を一部転換する方法でもいいかもしれません。MaaSのニーズが高い都会ではビジネスとして、地方ではインフラの一環としてという2パターンがあると感じています。
岩花氏:サービスの形態としては、オンデマンドでその都度料金を支払う場合もあれば、プライベートジェットのように自家用機として購入する場合もあると思います。空飛ぶクルマを駐車できる住宅を考えている住宅メーカーもあると聞いています。いずれは「一家に一台、空飛ぶクルマ」といった世界が来るのでしょうか。
福澤氏:多くの人が何を求めるのかはなかなか読みづらいものですし、どんどん変わっていきます。COVID-19の影響も受けるかもしれません。私たちはオンデマンドも自家用機もどちらもあり得ると思っていますが、最初のサービスは機体販売よりも、都度払いの定期航路にするつもりです。その方が安全の確保もしやすいのです。その後は所有していただくパターンもありますし、あくまでもサービスのみというパターンもあります。現時点では両方想定していて、ニーズに合わせて臨機応変に対応できます。個人的には販売はハードルが高いのではないかとは思っています。リースやレンタルという選択肢もありますね。最終的には、スマートフォンで呼び出せば機体が充電基地から飛んで来て、それに乗って移動するという形を思い描いています。
岩花氏:富裕層向けの高額サービス、あるいは大衆向けのサービス、どちらかに特化するといった考えはありますか。
福澤氏:最終的には大衆車向けサービスを目指していて、幅広く日常的に使っていただけるようにしたいです。乗用車の価格もかつては月給20数カ月分だったところから徐々に下がった経緯がありますし、初期段階では必然的に高所得者層が利用することが多くなるでしょう。モノの購入ではなくサービスの利用であることを想定していますので、例えば万博に出かけた際のように特別なハレの日であれば、1回2万円といった多少高額の料金でも利用されることがあると思います。富裕層以外の方にも「私たちには関係ない」というものにはせず、多くの方が利用できるもの、もしくは、5年後には乗れるかもしれないと思っていただけるものにしたいです。
宮川氏:機体の開発者の立場から話をすると、欧米ではまず富裕層に購入してもらい、機体をカスタマイズするなどの段階を経て、その後コモディティ化させて市場を伸ばしていくという方法をとりがちですね。
福澤氏:そうですね。高級な自動車メーカーがタイアップしているのはまさにそのような富裕層の購入を狙ったケースですね。また、オーストラリアのある会社はレースに特化していて、eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing:電動垂直離着陸機)レース用の機体を作って、レースを開催しています。私たちは、まずは安全に飛ぶ技術をきちんと確立するのが第一で、富裕層に購入をアピールするのはそれからかなと考えています。
宮川氏:今後の市場発展のステップの話はとても興味深いですね。現在の取り組みでは、万が一機体が落下しても地上被害が起きないように水上での飛行のみとする、その後の展望としてエンタテイメントや観光としての運航を考えている、という点で、市場の照準の定め方としては非常に地に足がついていると思います。一方でそこから、最終的に都心の上空をくるくると飛ぶ将来構想フェーズまで、あるいはその先のコモディティ化までの話との距離が大きいとも感じます。その中間段階をより具体的に示せるとおもしろいのではないでしょうか。例えば、過疎地や離島での活用などです。過疎地や離島は人口も経済力も大きくはないので、それほどスケールメリットは出ませんが、だからこそ、そこでの活用によってこの先のステップを描いて、みんなが手の届く世界であると納得してもらえれば、爆発的に市場が拡大するのではないでしょうか。私はこの中間段階の絵を描くことがとても重要だと思っています。
福澤氏:そうですね。ドローンはそれに近いですよね。最初はホビーとして使われていましたが、その後、点検や監視などの用途で産業に広がりが出て来ましたね。空飛ぶクルマの場合は、物流がこの中間段階にあたると思います。都心部の第三者上空での物流が次に目指すところです。それが実現できれば、視界が広がってきます。
宮川氏:物流が中間段階の役割を果たすのですね。
福澤氏:また、エアモビリティとしてどう発展させていくかという話もあります。大阪で取り組みを始めることのメリットは、エアモビリティでA地点からB地点にモノを運ぶのが比較的容易な地形であることと、移動に困っている地域であるためニーズがあることです。東京にもそういうところがありますよね。お台場を含めた港湾部は移動が難しかったり、公共交通機関の料金が割高だったりします。単なるホビーではなく、役にも立つ。そういった角度から開拓していくべきですし、移動を担うサービスとして使われるポテンシャルは高いと感じます。
宮川氏:その場合、どんな段階が考えられますか。
福澤氏:まずはクリティカルではない移動で使われ始めて、徐々に通勤手段に代わり、新幹線に代わりといったように、レベルを上げていくことになるでしょう。最初は比較的人が少ないところや、海上、川上を飛ぶ。そこから少人数がいる場所を飛ぶようになって、最後に人が混雑している場所を飛ぶ、という3段階だと思っています。レベル1、レベル2、レベル3、と非連続に切り替わるよりも、連続的に変わっていくイメージです。
宮川氏:なるほど。面白いですね。(後編につづく)
<後編では空飛ぶクルマの普及に向けた課題や、新型コロナウイルス感染症の影響、取り巻く市場をどう考えるか、といったテーマで意見を深めます>
<3人談義参加者> ■福澤 知浩氏(写真左) 株式会社SkyDrive 代表取締役 東京大学工学部卒業。トヨタ自動車株式会社にて自動車部品のグローバル調達に従事。同時に多くの現場でトヨタ生産方式を用いたカイゼンをし、原価改善賞受賞。2014年に有志団体CARTIVTORに参画し、共同代表に。2017年に独立し、製造業の経営コンサルティング会社を設立。20社以上の経営改善実施。2018年に株式会社SkyDriveを創業、代表に就任し現職。 ■宮川 淳一氏(写真右) PwCコンサルティング合同会社 顧問 40年以上にわたり、主に航空機開発に従事。B7J7(後のB777)主翼空力設計、JRリニア先頭車両形状設計、防衛省先進技術実証機基礎設計等の先端技術開発・製品開発や、民間航空機開発では50年ぶりとなるMRJ(SpaceJet)の事業化、基本設計、海外セールス取りまとめなどで責任者を歴任。三菱重工業執行役員フェローを経て現職。 ■岩花 修平氏(写真中央) PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 大手監査法人系コンサルティング会社、外資系統計解析ソフトウェアベンダーを経て現職。前職では、主に電力を中心としたエネルギー、自動車を中心とした製造業の企業に対する統計解析技術、アナリティクスを活用したソリューションの提供やIoTアナリティクスチームの立ち上げなどに携わる。現在は、デジタルテクノロジーを活用した新規事業の推進や企業の業務改善を支援しており、主にドローンや「空飛ぶクルマ」など無人航空機に関連するビジネスやMaaS(Mobility as a Service)などモビリティ関連ビジネス、IoTや人工知能(AI)、データサイエンスなどの領域を中心に従事。
<PWCコンサルティングのサイト> 空飛ぶクルマの未来展望(前編) ~未来のモビリティが創る新しい社会基盤~https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/disruptive-technology-insights/flying-car01.html エマージングテクノロジー コラム・対談
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/disruptive-technology-insights.html エマージングテクノロジー
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/disruptive-technology.html ドローンテクノロジー/ソリューション
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/disruptive-technology/drone-powered-solutions.html モビリティ(MaaS・自動運転)
https://www.pwc.com/jp/ja/industries/mobility.html トピック解説/コラム/対談
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column.html ナレッジ
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge.html PwC Japanトップ
https://www.pwc.com/jp/ja.html
AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら
株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
ACSLの発表はこちら。
スイスのドローンメーカーフライアビリティ社(Flyability SA)は、屋内点検用球体ドローン「ELIOS 3」用の新しい大容量バッテリーを発表し、6月26日に販売を始めた。日本でも同社の正規販売代理店ブルーイノベーション株式会社(東京)が6月27日に発売を発表した。新しい大容量バッテリーを使うと1回の充電で、Rev 6 LiDARを搭載した場合の飛行時間が13分30秒となり、標準バッテリーの9分10秒から47%増えるという。
発表によると、ELIOS3用の新しい大容量バッテリーの容量は187Wh(8200mAh)と標準バッテリーの99Whから増強された。LiDAR搭載時の飛行時間を9分10秒が13分30秒に増やすことで作業効率を高める。なお、ペイロードがない場合の飛行時間は17分(標準バッテリーでは12分50秒)、UTペイロードを搭載した場合は11分30秒(標準バッテリーでは7分30秒)だ。また推奨充電サイクル(推奨充電回数)も標準バッテリー(50回)の2倍の100回になる。充電時間は大容量バッテリー専用の充電器を使えば、標準バッテリーと同じ1時15分だ。
一方、使用可能な周囲の気温は従来の45度から35度にかわるので注意が必要だ。
利用にあたって利用者はユーザーマニュアルを理解することとファームウェアのアップデートが義務付けられる。
ELIOS3は、コンピュータービジョン、LiDARテクノロジー、NVIDIAのグラフィックエンジンを独自に組み合わせた「Flyaware」と呼ぶSLAMエンジンを搭載する屋内点検ドローンで、屋内を飛行中に自己位置を高い制度で推定し、リアルタイムで3Dマップを作成したうえパイロットの手元のタブレットにもリアルタイムに表示するなど屋内点検に求められる機能を集めている。GeoSLAMsソフトウェアパッケージとの統合で三次元データ化も可能だ。Flyabilityが英Cygnus Instruments(シグナス・インスツルメンツ社)との提携で開発され、2024年5月に導入された「UT 検査ペイロード」を使えば、立ち入り不可能な空間内の高い場所や狭小空間で、超音波による壁面の厚さ測定も可能だ。
フライアビリティ社は大容量バッテリーを、フライト最適化への取り組みを強化する技術と位置付けている。今年(2025年)4月に搭載したスマートRTH(Smart Return-to-Home)から始まっていて、最短の安全なルートで出発点に戻る機能や、バッテリー交換後にElios 3が自律的にスマートRTH発動地点に正確に戻りミッションを再開、継続するという。フライアビリティは「これにより飛行時間が短縮され、運用効率が向上し、パイロットはバッテリーや飛行時間の管理ではなく、最も重要なデータ収集に集中することができる」と発表している。
ブルーイノベーションも「これにより、パイロットはより余裕をもった飛行計画を立てることができ、点検業務の安全性と効率性が大幅に向上します。さらに、充電可能回数が従来の2倍に増加したことで、バッテリーの交換頻度と運用コストの削減にも貢献します」とコメントしている。
ブルーイノベーションの発表はこちら
フライアビリティ社の説明はこちら
千葉・幕張メッセで6月18~21日に開催された建設、測量技術の展示会「第8回国際 建設・測量展」(CSPI-EXPO2026)の主催団体、「国際建設・測量展実行委員会」は、期間中の来場者が合計で5万7362人だったと発表した。前回実績を21.3%上回った。
来場者は全体で前回実績(4万7294人)より1万以上増えた。来場者の内訳は業界来場者が45700人で全体の79.7%を占めた。「VIP」が4781人、報道関係者が45人、来賓が50人、一般来場者は6786人だった。主催者はこの数字は確認作業後、修正の可能性があると伝えている。
ドローン事業者の出展者も多く、今回もDJI JAPAN、AMUSE ONESELF(アミューズワンセルフ)、スペースワン、エアロセンス、テラドローン、ジュンテクノサービス、CHCNAV、セキド、システムファイブ、ブルーイノベーションなどがブースを構えた。
DJI JAPAN、AMUSE ONESELFなどのように、ドローンの展示会にブースを構えていない顔ぶれや、スペースワンなどのようにJapan Droneの出展と異なる展示構成が見どころとなった。
DJI JAPANは産業用ブランド「DJI ENTERPRISE」を前面に押し出して、「MATRICE 400」や「DJI Dockシリーズなどを展示した。CSPIの公式ページでは「Matrice 350 RTK」の展示を予告していたが、新型機が発表されたことから「MATRICE 400」が展示の中心になった。映像伝送システムが一新され制御感覚が格段に向上し効率性が向上したバッテリーシステム、包括性が高まった安全機能、パワフルな積載性能などが話題を集めブースでも多くの来場者が足を止めていた。
DJI Dockシリーズでも最新機、DJI Dock 3が展示の中心で、DJI Matrice 4D、またはMatrice 4TDの高性能ドローンを搭載し24時間365日のリモート操作を可能になったことで話題を集めた。このほかフレームベースのLiDAR、独自開発の高精度IMUシステムを備えるZenmuse L2は、フルサイズセンサーカメラと交換可能な単焦点レンズを3軸ジンバルスタビライザーに搭載するZenmuse P1は、広角カメラ、ズームカメラ、赤外線サーマルカメラ 、レーザー距離計、NIR補助ライトの5つの主要モジュールを搭載するZenmuse H30シリーズも展示された。
ブースでは連日、講演も開催。DJI Dockの活用法のほか、このところドローン事業者の間で話題の機体認証などが取り上げられ、多くの来場者が足を止めていた。DJI JAPAN標準化政策ディレクターの浦野靖弘さんは「ソリューションを求める来場者に関心をもっていただけた」と話していた。
スペースワンは6月上旬のJapanDroneで話題になった大きなLEDディスプレイをCSPIににも投入し、入口に近い場所で来場者の目を引いた。カナダのDeep Trekker社が開発した管路点検用ロボットパイプクローラー「PIPE TREKKER(パイプトレッカー)」シリーズ「A-150」と「A-200」を目立つように配置したことがJapanDroneとの大きな違いで、開場早々、このクローラーの説明を求めた来場者がブースに立ち寄っていた。A-150は管径150~600mm、A-200は管径200~900mmに対応する。それぞれHDカメラやパン・チルト・ズーム機能を搭載しているほか、水深50mの耐水圧構造を備えていることが特徴だ。このほかJapanDroneでも話題だった中国CHASING社の最新水中ドローン「CHASING X」がブース正面に展示されて来場者んぼ足を止めていた。8基の大型スラスターを搭載し、どの方向へも移動できる。高精細4Kカメラと12,000ルーメンの高輝度LED照明で鮮明で安定した映像の取得に寄与する。
ブルーイノベーションはコンパクトなブースの中にフライトエリアも設けて屋内空間の点検・測量ドローン「ELIOS 3」と、点検用ペイロード「UT 検査ペイロード」を展示した。
AMUSE ONESELFは入口に近い一角に広々としたブーススペースを確保。陸域と浅水域で使えるグリーンレーザースキャナシステム「TDOT 7 GREEN」や、ドローン搭載用レーザースキャンシステム「TDOT」と秒間最大2,400,000パルス、400ラインのリーグル社製「VUX120」を融合したハイエンドレーザースキャナシステム「TDOT 7 NIR-S」、汎用型レーザースキャナシステム「TDOT 7 NIR」のほか、国産エクステンダーで搭載なしの場合に4時間と長時間飛行を可能としたハイブリッドドローン「GLOW.H」などを展示し、多くの来場者が訪れていた。
ジオサーフは高精度な位置情報ソリューションを開発する中国ComNav Technology社のJupiter Laser Visual RTKを中心に展示。Jupiter Laser Visual RTKは最先端のGNSS、IMU、レーザー、デュアルカメラ技術を統合したハイエンドGNSS受信機で、従来到達が困難だった場所や、信号が遮断された場所、危険な場所で没入感ある測量や杭打ち作業が可能になる。
CSPI-EXPOは、前回まで「建設・測量生産性向上展」だったが、今回から「国際 建設・測量展」に名称を変更し、開催目的を建設・測量業界の発展貢献をさらに明確化していた。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は2025年6月24日、陸上自衛隊中部方面隊と災害時応援協定を締結したと発表した。応援エリアをさらに拡大した。
JUIDAは中部方面隊の第3師団、第10師団と個別に協定を結んでいた。今回中国地方を管轄する第13旅団、四国地方を管轄する第14旅団も含むことになった。すでに東部方面隊、東北方面隊と提携を結んでいて、応援エリアの拡大を進めている。JUIDAの公式サイトの中で紹介している。
https://uas-japan.org/information/36636/